正義はどちらに? (ミンスク、ベラルーシ)

ミンスクでの私のカウチ。
アレックスと同じ部屋です。

「お土産」
と言って、ベラルーシの帽子をくれました。

部屋の時計もベラルーシの国土をかたどったもの。
やはりサンダルイクは愛国者精神あふれる軍人なのか

いよいよ出発の時が近づいてきました。
サンダルイクたちは駅まで送ってくれるそうです。
アレックスがまたもや私の荷物を運んでくれました。


サンダルイクはエルトン・ジョンやレニークラヴィッツが大好き。
息子のアレクセイもマクドナルドが大好き。
彼らだけでなく、ベラルーシの多くの人がアメリカの文化に対して好意的なように感じました。

バスの窓から流れゆくミンスクの街を眺めます。
短い滞在期間だったけど、この街を去るのはなんだかとても寂しい気分です。

ミンスク駅についてしまいました。


電車が発車する直前まで一緒にいてくれたサンダルイクとアレクセイ。

車内の通路は狭く、バックパックを持っていると歩くのも一苦労です。

寝台車も狭い。
閉所恐怖症の人にはキツい環境です。

ついにベラルーシを出国。
48時間のうち、5時間ほど残してしまいました。
勿体無いけど、電車の時間は決まっているのでしかたありません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
正直言ってベラルーシにはそれほど期待していなかった。
東側陣営に属する社会主義国。
大使館員の対応も冷たかった。
カウチサーフィンのサンダルイクのプロフィール写真は悪人面。
滞在時間もわずか48時間。
それなのに、今まででもっとも立ち去り難かったのがこのベラルーシだ。
サンダルイク一家は本当によくしてくれた。
私がミンスクに滞在している間、片時も私を独りにしなかった。
「どうしたらこの日本人を喜ばせることができるだろう?」
彼らは常にその事だけを考えていた。
彼らがずっと私の身の回りの世話をしてくれていたせいで、ついに私はATMからお金を引き出すことはなかった。
ベラルーシに滞在中、この国のお金を触る機会は一度もなかったのだ。
こんなことは初めてだ。
どうしてこんなに親切にしてくれるんだ?
「外国人にベラルーシのことを好きになってもらいたい」
サンダルイクはしみじみと言う。
彼はアメリカを始めとする西側の文化が大好きだ。
だが、それと同時に、ベラルーシ軍の幹部でもある。
外からはうかがい知ることのできない、彼なりの煩悶があるのだろう。
そして彼なりに出した一つの答えがカウチサーフィンだったのではないだろうか。
はたして、私は彼の期待に応えうるゲストだっただろうか。
ずっと彼らの好意に甘えっぱなしだったような気がする。
でもまだ失点を挽回するチャンスはある。
「マサト、俺が日本に行ったら、今度はお前が案内してくれるか?」
もちろんだとも。当然だろ。
別れ際、アンジェラはベラルーシの帽子をくれ、弁当まで用意してくれた。
サンダルイクとアレクセイは駅まで一緒に来てくれた。
絵葉書を買う場所を探すのも手伝ってもらった。
ここを訪れる観光客はそれほど多くないのか、絵葉書を見つけるのはかなり難しいのだ。
やっと見つけた絵葉書もまったくセンスがない。
「どうしてこんな写真を採用したんだ?」
と首をかしげたくなるほど貧弱な絵葉書。
この絵葉書を受け取った友人から
「これはどこの絵葉書?」
と聞かれるほど、お粗末なものだ。
それでも、私にとってミンスクは他のどんな観光地よりも魅力的な場所となった。
サンダルイクたちは夜行列車の車内まで来てくれた。
アレクセイはベッドメイクまでしてくれたし、
サンダルイクは私の出入国書類に記入してくれた。
ベラルーシを訪れた外国人は滞在登録をしなければならないようだが、私はしていない。
他の人のブログを見ても、している人は見かけなかった。
滞在登録そのものの存在すら知らない人もいた。
それでも出国時に問題になったという話は聞いたことがない。
それに、私にはサンダルイクがついている。
内務省特殊部隊の大佐の家に泊まったのだ。
これ以上確かな身元引受人が他にいるだろうか。
列車の発車時刻が近づいてきた。
ほんとうに彼らともこれでお別れだ。
なんだか胸がグッと詰まる。
「泣くなよ、マサト」
そう言っているサンダルイクの方が悲しそうな顔をしている。
よせよ、サンダルイク。
悪代官に涙は似合わないぜ。
アレックスは肩を震わせている。
たった一泊しただけなのに、どうしてこんなに別れがつらいのだろう。
カウチサーフィンを利用してほんとによかったと思う。
もしもただ単にホテルに泊まって旅行していただけだとしたら、この国の印象はまったく違ったものになっていたに違いない。
ただの東側の国。
だが、私にとってベラルーシは特別な存在となった。
こんなに暖かい人たちを他には知らない。
彼らと過ごしたのはほんの短い間だったけど、心が通い合えたような気がする。
駅の待合室で列車を待っている時、テレビでウクライナ情勢のニュースが流れていた。
サンダルイクたちは食い入るように画面を見つめている。
「もしも事態が緊迫化したら、ベラルーシ軍は介入するのか?」
「そういうことになるだろうな。だが、あの地域は私の管轄外だ。私の部隊が直接関与することはないだろう」
アレクセイが息を荒くして話に割り込んでくる。
「ウクライナは大切な隣国だ。なにかあったらいつでも助けに行くさ。当然だろ」
なにか変だ。
彼らとこの話題について話していると、どうも違和感をおぼえる。
いったいベラルーシ軍はどちら側につくつもりなんだ?
「そんなの決まってるだろ。ロシア軍とともに戦って、ウクライナを助けるのさ」
きっぱりとそう言い切ったアレクセイの爽やかな笑顔が忘れられない。
アレックス、わかってるのか?
ロシア側につくということは、お前の大好きなマクドナルドはもう食べれなくなるかもしれないんだぞ。
世界中の人々がお互いに理解し合える日などきっと永遠に来ないのだろう。
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