中尉の村( ミール城、 ベラルーシ)

朝から寿司。
サンダルイクに、
「マサト、この寿司は日本人のお前から見て本物か?」
と聞かれます。
冷蔵庫き一晩入れていて硬くなっているけれど、一応寿司の味はします。
おいしいとは言えませんが。
サンダルイクにそう伝えると、
「ふーむ・・・」
とうなったきり黙ってしまいました。

朝からピザと肉。
しかも寿司との組み合わせ。

朝からケーキ。
ベラルーシ人の胃袋はいったいどうなってるんだ?

サンダルイクの部下の車でミール城へと向かいます。
ミンスクからちょっと車を走らせれば、そこには広大な平原が広がっています。
日本とは人口密度が違う。


ミール城が見えてきました。

今朝は冷え込んだので、凍えている私を見てサンダルイクの奥さんがジーンズとセーターをくれました。
ありがたや。
しかし、今は8月の中旬なんですけど。

ミール城内部




サンダルイク夫妻と



一番左がサンダルイクの部下の中尉。
カンフーの達人だそうです。

「中尉、お前もサムライの衣装を来てみろ。」
始めは嫌がっていた中尉ですが、大佐殿の命令には逆らえません。


ミール城のすぐそばには湖があります。
アンジェラの用意してくれたアップルパイをみんなで食べました。
ポットから注がれる熱いコーヒーが美味しい。
水面には鳥が泳いでいて、なんとものどかな気分に浸れます。

ミール城の近くには教会もありました。
敬虔な信者であるサンダルイクはもちろん中で祈りをささげます。

侍の衣装を着て写真を撮っていると、いつのまにか私の周りに人だかりができていました。

途中で車を停めて買い物をするサンダルイク。

ガソリンを補給する中尉。

郊外にはまだまだ伝統的なベラルーシの家屋が残っています。

軍事博物館。
現役の軍人二人と一緒だと、なんか落ち着かない。


中尉はよくここに釣りに来るそうです。




朽ち果てた教会。
共産主義時代、多くの教会が破壊されたそうです。

中尉は車で彼の生まれ育った村を案内してくれました。


郊外のレストランで昼食

英語のメニューはありません。

とりあえず、ビール。
旅行中は昼間からアルコールを飲んでも許されるのです。

「伝統的な料理が食べたい」
との私のリクエストに応えてサンダルイクが注文してくれたのがこれ。
あれ? リトアニアでも同じようなのを飲んだ気が・・・
そしてこのスープ、冷たい・・・



ここでの支払いは私がしました。
けっこうな値段がしましたよ。
4人分だから仕方ないんだけど。
勘定書に書かれた値段を見てギョッとした私にサンダルイクが
「高いか? だが、昨日お前が食った料理はもっと高かったんだぞ」
ベラルーシの物価はけっして安くはありません。

ミンスクに戻って来ました。
ありがとう中尉。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ミール城
今日はサンダルイクたちがミール城に連れていってくれるという。
玄関を出たところで、一台の車が待っていた。
中から男が飛び出してくる。
サンダルイクの部下で、階級は中尉だという。
英語で簡単なあいさつをしたのだが、通じない。
どうやら彼は英語ができないらしい。
サンダルイクの部下ということは、彼もまた内務省の所管する特殊部隊の兵士ということだ。
その眼光は鋭く、動作がものすごく素早い。
間違いなく彼は人を殺したことがある。それも何人も。
直感的にそう感じた。
握手を交わす力は強く、握られた箇所が痛い。
その後何時間もその感触が残っていた。
中尉の車でミール城まで向かう。
車の中で私は萎縮していた。
バックミラー越しに彼と視線があわないように気をつかった。
ミール城で侍のコスチュームを着て写真を撮っていると、いつのまにか私のまわりに人だかりができていた。
「おいマサト、みんなお前の切腹ショーがいつ始まるかと待っているぞ」
そう言ってサンダルイクは私をからかった。
え?そうなの? みんな私にそんなことを期待していたのか。
「マサト、「ハラキリッ!」と叫べ」
できるかアホ。
ミール城の湖畔で、アンジェラの持参したアップルパイをみんなで食べる。
城と湖と青空。
目の前にはたくさんの鴨が泳いでいる。
とても平和な光景だ。
中尉とは冗談を言い合うほど打ち解けてはいたが、いまだに私は緊張している。
お腹がでっぷりと出ているサンダルイクとは違い、中尉は明らかに現役の兵士だ。
しかもベラルーシ軍の精鋭部隊所属。
彼らの同僚たちの多くはすでにこの世を去っている。
逆を言えば、彼らも大勢の人間の命を奪ってきたということだ。
そんな人たちと、温かい日差しのもと、一緒にアップルパイを食べながらコーヒーを飲む。
なんともヘンな気分だ。
ミール城からの帰り道、小さな村に立ち寄った。
ミンスクとは異なり、まだ昔のベラルーシの面影を残している。
聞けば、中尉の生まれ故郷だという。
村のはずれには朽ち果てた教会があった。
共産主義時代、多くの教会は打ち壊され、大勢の僧侶が殺されたという。
そう説明する中尉の口ぶりは、共産主義にあまり好意的でないようにも聞こえる。
それなのになぜ彼は政府のために命を賭けて戦うのだろう。
20年ほど前までこのあたりにはミサイル基地があったらしい。
今でも兵舎などは残っている。
「マサト、20年前ならお前はこの地区には近寄れなかったんだぞ」
サンダルイクがそうからかう。
ベラルーシ軍の最重要機密であるはずのミサイル基地跡を内務省の特殊部隊兵士たちの車で通り過ぎる。
彼らは時々、私のために車を止めてくれる。写真を撮るためだ。
「ほれマサト、じゃんじゃん写真を撮れよ。
20年前は、この地区の情報を得ようとして数多くの西側のスパイが侵入し、命を落としていったんだぞ。
でもお前は安全だ。俺たちと一緒にいるんだからな。わははは。」
そう言って大笑いするサンダルイク大佐のTシャツにはこう書いてある。
「ブロードウェイ NYC」
この世界はきっと、いい方向に向かっているのだろう。
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