ワルシャワ工科大学からメトロに乗り、ドミニカの住む街で降りた。
今まではドミニカたちと一緒に家に帰っていたが、今回は自分独りだ。
ドミニカに書いてもらったメモを頼りに、彼女のアパートを探す。
共産主義時代に建てられた巨大な住宅群は無機質で、どれも同じに見える。
それでもなんとかドミニカのアパートを探し当てた。
はずだった。
それなのに、なんだか記憶と違う。
何度もメモを確認したが、やはりここであっている。
だが、これは私の知っているドミニカの家ではない。
「メモの数字が間違ってるのかも」
と思い、広大な団地をぐるっと一回りした。
一時間ほど無為に歩き回ったあげく、再び同じ場所に戻って来た。
おかしい。
こんな場所は見覚えがない。
いったいどうなってるんだ?
日が暮れて、だんだんとあたりが暗くなってきた。
共産主義を象徴するかのような巨大なビル群が圧倒的な存在感をもって私を圧迫する。
私はパニックにおちいった。
見知らぬ街で野宿なんてしたくない。
ひとまずメトロの駅に戻る。
そこで、駅には別の出口があることに気付いた。
出る場所を間違えたのか。
もうあたりは真っ暗だから、ヘタにウロウロしたら方向感覚を失って、ほんとに遭難しかねない。
共産主義の団地はそれほど巨大なのだ。
チャンスは一度しかない。
また帰り道を間違えたら、もう体力も気力も残っていない。
記憶を必死に手繰り寄せる。
うろ覚えだが、今度はなんとなく見憶えがある。
暗闇の中を手探りで進むようにゆっくりと記憶の中の道をたどる。
今度はなんとか一発でドミニカのアパートを見つけることができた。
棟の入り口で彼女の部屋番号を押すも、反応がない。
おかしい。
手順を間違えたのか?
何度かやり直したが、うまくいかない。
いったいどうなってるんだよ。
私は疲れ果て、その場にしゃがみこんでしまった。
しばらくすると、中から人の気配が。
「ひょっとして、ドミニカたちが心配して見にきてくれたのか?」
と思ったのだが、出てきたのは知らない男性だった。
ドアが開いたすきに建物の中に滑り込む。
やった。
あとはドミニカの部屋に行くのみだ。
彼女の部屋のベルを押したのだが、またまた反応がない。
壊れてるのか?
中からはにぎやかな話し声が聞こえてくる。
おしゃべりに夢中で気づかないのかもしれない。
何度もベルを押し、最後にはドアを思いっきりたたいた。
中の話し声が止み、扉は開かれた。
長い道のりだった。
私がこの話をすると、ドミニカたちは大声で笑った。
「共産主義時代に建てられた古いアパートだからね。
ドアロックはうまく作動しないのよ」
いや、そんなに軽く言われても・・・

疲れ果てた私を、温かい食事が待っていた。
プラツキというらしい。
ポーランドの定番メニューで、街中のレストランでもよく見かけるものだが、やはり家庭の手作りにはかなわない。

しかも作ってくれたのはこの人なのだ

夕食の後、
「サムライのコスチュームを見せろ」
ろ言われて持っていったらとりあげられた。



侍の衣装を完全におもちゃにしている人たち

「セップク!」
と叫ぶドミニカ。
なんか間違ってる。






代わる代わるサムライの衣装を着て遊ぶ一家。
ほのぼのとしていいなあ。
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