エヴァ
これはいい。
ちょうど私は来月、クラクフに行くところだ。
「君のところに泊めてもらえないかい?」
とエヴァに聞いてみたところ、
「いいわよ」
と二つ返事で承諾してくれた。
ところが、忙しい彼女のこと。
「急な用事が入っちゃって、あなたが来る3泊のうち2日間はクラクフを離れなくちゃならなくなったの。ごめんね。」
との連絡がきた。
しかたがない。
じゃあ他のホストを探すことにするよ。
もしも君が疲れてなければ、最後の日に会おう。
「いやいや、大丈夫よ。
あなたに部屋のカギを預けておくから、私がいない間も自由に使ってちょうだい。」
いやいや。いくらなんでもそこまでしてもらうのは気が引けるよ。
一人暮らしの女の子の部屋に泊めてもらうだけでも大変なことなのに、
そのうえ部屋の鍵まで渡されたりなんかしたら恐縮してしまう。
エヴァが京都に来た時、彼女は私の部屋に二晩泊まった。
私と彼女の関係はたったそれだけなのだ。
普通、何年も付き合いのある知り合いにだって部屋の鍵なんて渡したりすることなどまずないだろう。
カウチサーフィンというのは本当に不思議な世界だな。
実を言うと、エヴァが私の家にいる時、私は彼女に対して不義をはたらいた。
京都の街を2日間案内してあげる約束をしていたのに、あまりの暑さと疲労のため、
2日目、私はガイド役を放棄。彼女を一人で行かせたのだ。
なんといういいかげんな男だろう。
こんな人間には、彼女の行為に甘える資格などない。
幸いなことにクラクフには大勢のカウチサーフィン登録者がいる。
ホストを探すのはそれほど難しいことではないだろう。
そう判断して、エヴァの申し出は丁重に断ることにした。
「なに遠慮してるのよ、マサト。
私が京都にいたとき、あなたは私に親切にしてくれたじゃない。
あなたには私の部屋を自由に使う資格があるのよ」
どうやら彼女は社交辞令でそう言っているわけではないようだ。
こんな俺に、彼女の好意を受ける資格なんてあるのだろうか。
「エヴァが京都の俺の部屋にいた時、どうしてもっと親切にしてあげなかったのだろう」
いまさら悔やんだってもう遅い。
それにしてもエヴァは男気のある女性だなあ。
こういう人がいるからカウチサーフィンというシステムは機能することができるんだな。
とにかく、ポーランド最初の都市でのホストは決まった。
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以下の写真は、去年エヴァが京都を訪れた時のものです。







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