祇園祭・山鉾巡行
でも、カウチサーフィンは出不精の私を外へと連れて行ってくれる。

阪急の駅で電車を降り、地上に出ると、ちょうど巨大な山鉾が烏丸通りを横断するところだった。
信号を封鎖し、車はおろか、人も道路を横断することはできない。
そのあまりの迫力に、一瞬とまどった我々3人だったが、すぐに気を取り直してカメラを構えた。

目の前をゆうゆうと山鉾が通り過ぎていく。
気のせいか、昨夜見たものよりも大きく見える。
これほど巨大なものが動いているというのに、驚くほど静かだ。
ブラジルのリオのカーニバルとはまったく違う。
これが日本の祭りなのだろうか。
一台の山鉾を見送った後は、急いで浴衣のレンタル・ショップへと向かう。
着付けとヘア・セットをさっさと済ませて、メイン・イベントである辻回しを見に行かねば。

本来なら四条通りから御池までは徒歩圏内なのだが、ノルウェーの女の子たちは今は浴衣を着ている。
彼女たちを炎天下歩かせるのはかわいそうだ。
そこで値段のバカ高い地下鉄で御池まで行くと、そこにはすでに大勢の人があふれていた。
私はすぐにでも祭りに参加したかったのだが、彼女たちはマイペース。
コンビニで買ったパンを日陰で食べることにした。
お腹がすいて、がまんできないんだと。
浴衣姿でパンをほおばる北欧美人を、通り過ぎる人たちはカメラに収めていた。
花壇に腰掛けてむしゃむしゃ、ガツガツと食べることに夢中になるイングリッドとソブリグ。
ある意味、絵になる光景だ。

白人女性が浴衣を着ていると、とても人目を引くようで、この日の彼女たちの人気っぷりはすごかった。
いろんな人から撮影を求められていた。
まるでスターのような扱いに、彼女たちもまんざらではないようだ。
浴衣と金髪美少女と山鉾。
この組み合わせはある種の魅力があるらしく、アマチュア・カメラマンらしき人が熱心に何枚も彼女たちの写真を撮っている。

山鉾の動くスピードは遅く、浴衣を着ている女の子がゆっくりと歩いてもすぐに追い越せてしまう。
おかげで何枚も写真を撮ることができた。
それにしても静かな祭りだ。
これが本当に日本三大祭りの一つなのだろうか。
熱狂というにはほど遠い。

イングリッドとソブリグの浴衣姿はよく似合ってると思う。
ついついうれしくなって、何枚も一緒に写真を撮ってしまった。

ここが山鉾巡行の最終ポイント。
最後の辻回しをした後、山車は静かに狭い路地へと入っていく。
年に一度のお祭りも、フィナーレを迎える。
それにしてもさびしい終わり方だ。


せっかくの機会なのだから、俺も浴衣を着てくればよかった。
来年の祇園祭には浴衣を着よう。
だがその時、俺は誰と一緒にこの祭りを見ているのだろう。

着物を着て、日本髪を結った女性を見かけた。
だがどうやら芸者や舞妓ではないようだ。
立ち居振る舞いがなんとなくしろうとっぽい。
いったいどういう素姓の人なのだろう。
最後の山鉾が通り過ぎるのを見届けた後、我々は河原町の方へと向かった。
彼女たちにバスや電車の乗り方を教えた後、ひとり、帰路につく。
彼女たちはこの後、浴衣を着たまま京都観光をするのだそうだ。
「浴衣でキョートのナイトライフをエンジョイしたい」
と言っていた彼女たちだが、私の家に帰ってきたのはかなり早い時間だった。
ノルウェーの女の子にはやはり、京都の夏はかなりこたえたらしい。
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