永遠の18歳
私はエヴァ。ポーランド人の女の子。
年齢?
心はいつも18歳よ。
こんな私にあなたの住む素晴らしい街、京都を案内してくれないかしら?」
彼女からのカウチリクエストは、他のとは一味違った。
読んでいるとワクワクする、何かが起こりそうなある種の予感を連想させるものだった。
そしてその予感は的中する。
もっとも、彼女の実年齢は18歳ではなく、私の歳にかぎりなく近かったのだが。

初夏の嵐山。
新緑がとても力強い。
嵐山といえば紅葉が有名だが、私はどちらかといえばこの燃えるような緑の方が好きだ。

日光に照らされて、光り輝く金閣寺。
だが、エヴァも負けてはいない。
明るい日差しの下で、彼女の肌の白さがさらに増幅されていた。
白人というのは本当に白いんだな。

それにしてもこの日はほんとに暑かった。
京都の夏は暑い。
ここに住んでもうずいぶん経つが、いつまでたってもこの暑さに体が慣れることはない。
ポーランドからやってきた彼女は、この暑さに耐えられるのだろうか。


クーラーの効いた寿司屋でホッと一息。
寿司よりも、彼女の笑顔に癒されました。

こんなに猛暑の日でも、龍安寺の石庭はひんやりとすずしい。
もうここから動きたくない。

しかし、パワフルなエヴァは動き続けます。
金閣寺から一気に南下して祇園、そして安井金毘羅宮へ。

清水寺で彼女は修学旅行生たちに捕まります。
写真攻めにあっていました。
金髪で色白。
その上、赤いドレスを着ているのですから、いやでも目立ちます。


暑さでヘバっているはずなのに、精力的に京都観光を楽しむエヴァ。
「心はいつも18歳」のキャッチフレーズにウソ偽りはありません。
貪欲に人生を謳歌するその姿に、私も大いに感化されました。

ようやく平安神宮にたどりついた時には、もう閉園時間寸前でした。
まだまだ日は高いのですが、京都のお寺が閉まるのは早い。
もっといろいろまわりたそうなエヴァでしたが、今日はここまで。
「やっと終わった」
少しホッとする私。

お好み焼き屋さんでもパワーが衰えないエヴァ。
なんで彼女はいつもこんなに楽しそうなんだろう。

それにひきかえ、目が死んでいる私。
炎天下の京都を一日歩けば、こうなるのが普通だと思う。
きっとエヴァが強過ぎるだけなんだろう。
「ありがとう、マサト。今日は楽しかったわ。
明日も私をエスコートしてくれるんでしょ?」
「え? う、うん。そりゃまあ・・・」
「ほんと? うれしいっ!
でも、無理しないでね。
日本人って本心をあまり見せないって聞いたことがあるわ。
いやならいやってハッキリ言ってくれていいのよ。」
こんな美人と一緒に歩けるのだ。
いやなはずがない。
ただ、問題は、体がついてこないということ。
家に帰ってシャワーを浴びたら、倒れこむように眠った。
すぐ隣には色白の欧州美人が寝ているというのに、わき目もふらずに眠った。
そこには煩悩のかけらもなかった。
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