告白
「マサト、聞いてほしいことがあるの」
いきなりのシリアス・モード。
彼女が帰国した後も、LINEやフェイスブックでずっと連絡を取り合ってきた。
絵はがきも何度もやり取りした。
気づいたら、かなり親密な関係になっていた(と思っていた)
「ほんとうに大切なことなのよ、マサト。真剣に私の話を聞いてくれる?」
彼女はそう言うものの、なかなか話を切りだそうとはしない。
なにをモジモジしてるんだ?
いや、彼女が何を言いたいのかはだいたい察しがついている。
以前から私に対する好意のようなものは感じていたが、まさかそこまで思いつめていたとは。
そういえば最近急に寒くなりだしてから、彼女はずっと、「さみしい。さみしい・・・」と言っていたっけ。
「あのね、マサト・・・」
まだ彼女は本題に入らない。
それはそうだろう。なかなか勇気のいることだ。そうすんなりと言葉にすることはできない。
彼女がためらう気持ちもよくわかる。
だから、あせって彼女をせかしてはダメだ。
じっくりと彼女の覚悟が固まるのを待とう。
「あのね・・・。あのね・・・」
彼女がためらっている間、なんといって返事をしようかと考えていた。
彼女はとてもいい子だ。私も彼女に対して好意のようなものは抱いていた。
だが、付き合うとかそういうのはなんだか違うような気もする。
それにお互い別々の国に住んでいる。
この程度の生半可な気持ちでは長続きしないのは目に見えている。
彼女には悪いが、・・・
ついに彼女は意を決したのか、一気に話し始めた。
皮肉なことに、私が結論を出したのとほぼ同時だ。
・・・・・・・・・・
最初のうち、彼女の話していることの内容は、うまく頭に入ってこなかった。
私が想像していたのとは、まるっきり異なる内容だったからだ。
ここで書くわけにはいかないが、どうやら恋愛相談のようだ。
彼女が思いを寄せているのは私ではなかった。
急に肩から力が抜けていく。
「彼が私に〇〇〇って言ったんだけどね、これってどういう意味なのかしら?」
おそらく彼女は男の本音を聞きたいのだろうが、そんなこと私に聞かれても困る。
同じ男といっても、いろんな考え方の人間がいるから、なんとも答えようがない。
それに、他人の恋愛相談なんて、正直言って身がはいらない。
時刻は深夜の1時を回っている。
彼女は延々と彼に関する悩みを吐露し続けている。
前々からうすうす感じてはいたが、どうも私は自分に都合のいい妄想を勝手に脳内に繰り広げてしまう傾向があるらしい。
自分で勝手にバラ色のストーリーを作りだしては、独りで暴走してしまうのだ。
このことはつい最近、別の人からも指摘されたばかりだというのに、まだ治っていないらしい。
彼女はまだなにかをしゃべり続けている。
最初は恋愛相談だったはずだが、いつのまにかのろけ話のようになっている。
なんだよ。なんだかんだいって、けっこううまくいっているんじゃないかよ。
だんだん返事をするのがおっくうになってきた。
眠たい。 俺はいったいなにをしてるんだろう。
ああ、今日も秋の夜は更けていく。
- 関連記事
テーマ : カウチサーフィン(Couch Surfing)
ジャンル : 旅行