ハッピーエンディング
初対面の日本人の女の子とはうまく会話できない私でも、彼女とならディープな話ができてしまうから不思議だ。
たいていのカウチサーファーはそうだが、やはりエイミーも旅行が好き。
しかも彼女はシンガポールに住んでいる。
私も東南アジアを3か月かけてバックパック旅行したので、その話で盛り上がった。
「でも、あまりおおっぴらに東南アジアに行ってきた話をするのは、はばかられることもあるんだ」
「どうして?」
「ごく一部だけど、買春目的で東南アジアに足を運ぶ輩がいるからさ。
日本とは物価が違うから、驚くほど安い値段で性風俗を楽しむことができるんだ。
だから男が一人で東南アジアに行ったって言うと、そういう目で見られることもある。
それがいやなんだ」
「で、ハッピーエンディングだった?」
「え? ああ、うん。楽しかったよ。」
最初、私はエイミーの言わんとしていることが理解できずに、あいまいな返事をしてしまった。
が、これは大失敗。
東南アジアの風俗産業で「ハッピーエンディング」といえば、日本で言う「本番」にあたるそうだ。
「いや、そんなことしてないよ。
風俗の店に連れて行かれたことはあるけど、ハッピーエンディングはなかったよ」
あわてて弁解したが、エイミーは信用してくれない。
「へえー。タイのバンコクに行って、アクアショーやピンポンショーも見なかったの?
ゴーゴー・バーには行ったんでしょ?
え? 行ってない?
じゃああなた、バンコクになにしに行ったのよ」
「なにしにって・・・。
そりゃあお寺を見たり、いろいろだよ」
「いろいろって?」
エイミーはまったく私のことを信用していないようだ。
だから東南アジアに男一人で行ったって言いたくなかったんだよ。
「俺はバンコクでもカウチサーフィンを使ったんだ。
その時のホストの女の子がまた敬虔な仏教徒でね。
そういういかがわしいお店には連れて行ってくれなかったんだよ」
「あらそう。それは残念ね。
せっかくバンコクにまで行くんだったら、そういう夜の街ものぞいてみた方がいいわよ。
でも気をつけてね。なかには危ない店もあるみたいだから。
店内に入ったらドアに鍵をかけられて、法外な料金をふっかけられるんだって。
お金を払うまで出してくれないそうよ」
それは怖そうだなー。ハッピーエンディングどころじゃないやん。
しかし、エイミーの言うことにも一理ある。
性風俗の取り締まりは年々厳しくなっていくようだし、
日本と東南アジアとの物価の差もだんだん縮小していくことだろう。
その前に一度、その手の店をのぞいてみるのも悪くはないかもしれない。
病気と警察が怖いから、たぶん利用はできないだろうけど。
東南アジアにある性風俗のお店の入り口をよく見ると、
「NO HAPPY ENDING !」
と書かれていることがあるらしい。
これは日本でいう、「本番お断り」という意味らしい。
「本番」って聞くと、なにやら生々しくていやらしい響きだが、
「ハッピーエンディング」だと、なんだかさわやかで、すっきりしたイメージに思えてくるから不思議だ。
日本でも呼び方を変えたら、利用者層も広がるんじゃないだろうか。
まあ、やってることは同じなんだけど。
「それにしても、シンガポールに住んでる君がうらやましいよ。
シンガポールは東南アジアの中心に位置しているから、安い料金でどこへだって気軽に行けるじゃないか」
「そうはいうけどね、女の子が一人で東南アジアを旅するのはけっこう大変なのよ」
そう言ってエイミーは、ある話をしてくれた。
あるシンガポール人の女の子が、独りでマレーシアを旅行していたときのこと。
深夜にタクシーに乗っていた彼女は、運転手に乱暴されたそうだ。
その後、彼女は道路上に放置された。
そこへ通りかかったパトカーが彼女を見つけ、保護する。
警察署に連れて帰って、これでひと安心。
となるところだが、そうはならなかった。
なんと、警察署にいた警官たち全員に、彼女はまたしても暴行されてしまったというのだ。
日本の警察はいろいろ言われることもあるが、まさかここまではしないだろう。
この話は都市伝説のようなもので、もしかしたらまったくのでたらめかもしれない。
でも、ひょっとしたらありえるかも・・・、と思えてしまうのが東南アジアのこわいところ。
まだまだ安全ではない地域もたくさんあるからだ。
なんか今回のブログ、全然ハッピーエンディングじゃないぞ。
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