嵐山の思い出

私の部屋の壁には、たくさんの絵葉書が貼り付けてある。
自分が旅行した時に、自分宛てに送った物や、友人からもらったものだ。
私の家に泊まっていったカウチサーファーが帰国後、送ってくれたものもある。
外国から絵はがきが届く。
これもカウチサーフィンの楽しみの一つだ。
それを見たイーシャンが、
「私も台湾に帰ったらマサトに絵はがきを書くわ!」と言った。
あまり期待していなかったのだが、数日後、本当に彼女から絵葉書が届いた。
「期待していなかった」というのは、彼女がいい加減な人間だという意味ではない。
イーシャンはとても活発な女の子で、何にでも興味津々なのだが、どうも私に対してはあまり関心がない、という印象がずっとあったのだ。
だから、「絵葉書を書く」という約束も、台湾に帰ったらすぐに忘れてしまうだろうと思っていた。
そんな事情だったから、彼女からの絵はがきが届いた時には、うれしいというより、むしろ驚いた。
彼女がネパールを旅行した時に撮った写真をハガキにしたもののようで、裏面にはびっしりと文字が書かれている。
あまりにたくさんの文章を詰め込んだため、私の住所を書くためのスペースがなくなってしまったらしい。
大きめの付箋が貼り付けてある。
なるほど、こんなやり方もあるのか。
絵はがきをもらうというのは、やはりうれしかったので、彼女宛てに私からも絵はがきを書いた。
日本と台湾は近い。
数日もあれば到着するはずだ。
イーシャンからの
「絵はがき着いたよ!」
の連絡を期待して待っていたのだが、1週間が過ぎ、2週間が経過してもなんの音沙汰もない。
もしかして、住所を間違えたのかな?
イーシャンとは Facebook でもつながっているので、連絡をとるのは容易だ。
私からの絵はがきが到着したか聞いてみようと思っていたら、彼女が Facebook に京都で撮った写真をアップしていた。
タイトルは、「嵐山の思い出」
「俺の写真もあるかな?」
と期待して見てみたのだが、予想していたのとはまったく違った内容だった。
そこに写っているのはただひたすら、人力車をひいているお兄さんたち。
渡月橋や竹林は、お兄さんたちの後ろに申し訳程度に小さく写っているのみ。
もちろん私の写真はどこにもない。
「京都の嵐山には、こんなにたくさんのイケメンがうじゃうじゃいるのよ!
見て見て、このさわやかな笑顔!
引き締まったお尻!
真っ黒に日焼けした筋肉質の脚!
人力車に乗ってるお客さんのほとんどは女性なんだけど、
彼女たちがほんとに嵐山の景色を見ているのかどうかは疑わしいわね。
でもまあ、こんなにかっこいいお兄さんの後ろ姿を眺めることができるのなら、
高いお金を払って人力車に乗る価値もあるってものね」
というのが、イーシャンの書いたコメントだ。
イーシャン、君の言う「嵐山の思い出」って、人力車のイケメンのことだったのか・・・
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