リトル・オバマ

右からデレク(アメリカ)、イーシャン(台湾)、ジュン(香港)、そして私。
今夜は多国籍ナイトなのだな。
「マサト、今夜は空いてる?」
朝、出かける準備をしながらイーシャンが聞いてくる。
台湾人の彼女は今、私の家に泊まっているのだが、カウチサーフィンを利用してたくさんの人に会いたいようだ。
今日も別のカウチサーファーと会う約束があるので、一緒に食事でもどうか、ということだった。
それはいいが、イーシャン、なんだその格好は。
彼女は昨日私と会った時は、いかにもバックパッカーらしい、シンプルないでたちだった。
ところが今朝の彼女はとてもオシャレ。
ひらひらしたスカートにハイヒール。メガネをコンタクトに変え、化粧も念入りに。
どこからともなくいい香りが漂っている。
俺と会う時と他のカウチサーファーと会う時ではずいぶんと気合いの入れ方が違うじゃないかよ。
イーシャンのお目当ての人はデレク。京都で英語の教師をしているアメリカ人だ。
英会話スクールではなく、公立学校で教えているらしい。
職業柄、彼は日本人の英語が壊滅的にひどいということを知っている。
そのせいか、私に話しかける時もとてもはっきりと発音してくれる。
たいへんありがたいことなのだが、なんだかくやしい。
デレクは会話する時、必ず最初に相手の名前を呼ぶ。
一見するとフレンドリーなようだが、まるで教師が生徒に語りかけているようでもある。
彼は小柄で歳も若いのだが、とても貫禄がある。
全身から自信がみなぎり、威風堂々としているのだ。
かといって、えらそうにしているわけでもない。
アメリカ人にはこういうタイプが多い。
そしてバリトンの効いた声で理路整然と話す。
なんだそのかっこよさは。
まるでオバマ大統領じゃないかよ。
そんなわけだから女性陣はうっとりとして、目がハートになっている。
はっきり言っておもしろくない。
食事の後、4人で八坂神社へ行った。
そこで干支の話になり、私を除く3人ともが同じ干支であることが判明。
私を除く3人で大いに盛り上がっていた。
話せば話すほど、デレクという人間の素晴らしさがわかってくる。
本来ならこういう人間に出会えたことに感謝するべきなのだが、俺はそんなにできた人間じゃない。
そう素直には喜べない。
だめだ。
勝てる気がしねえ。
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