決別
バスの座席はせまい。
隣に座っているキャンディーの腕やふとももが、私の体に密着している。
「こんなかわいい子と今夜・・・」
頭の中でみだらな妄想をしているうちに、体が熱くなってきた。
そんな私の様子に、キャンディーも気がついたようだ。
「あのー、マサト。
誤解しないでね。
あなた何か勘違いしてるみたいだけど、そういうのじゃないのよ。」
うっ。
なんで俺がエッチな想像してたことがキャンディーにバレたんだろう。
そんなにだらしない顔をしてたのかな。
キャンディーは、今夜私の部屋に泊ることを、まだエミリーに話していなかったようです。
伊勢市駅で二人の話し合いが始まりました。
彼女たちは中国語で話しているので、私には会話の内容はわかりません。
でも、かなり深刻な内容のようです。
少し離れたところで、彼女たちの会談が終わるのを待ちます。
かなり長い時間が経過した後、二人の話し合いはようやく終わりました。
エミリーだけが立ち上がり、私の方へと歩いてきます。
「マサト、私はこれから、次のホストの家に行かなくちゃならないんだけど、
どのバスに乗ったらいいかわからないの。
バス乗り場までついてきてくれる?」
歩きながらエミリーは、なぜキャンディーと別行動をとるようになったかを説明してくれます。
もともと彼女たちはほとんど面識がありませんでした。
その上、エミリーは何度も意地悪な言葉をキャンディーに投げつけてきました。
最初のうちは我慢していたキャンディーですが、
もうこれ以上、エミリーと一緒に旅行するのは耐えられないと判断したようです。
ついにエミリーに絶縁状をたたきつけました。
これには、さすがのエミリーもこたえたらしく、ちょっと落ち込んでいます。
「そんなこと言われたの、初めてだわ。
マサト、あなたこれまでたくさんのカウチサーファーをホストしてきたんでしょ。
今までにもこんなことあった?」
いや、初めてだよ。
でも、カウチサーフィンをしていると、いろんな人間模様を見ることができる。
だからカウチサーフィンは面白いんだ。
と私が言うと、エミリーに肘鉄を喰らわされました。
「何をおもしろがってるのよ。
人が真剣に悩んでるっていうのに。」
だったらそのキツい性格を直した方がいいんじゃないかなー、エミリー。
彼女の乗るバスがやってきました。
別れ際、エミリーは大きなハグをしてくれました。
期待通りです。
やっぱり彼女はアジア人ばなれしてるなあ。
「キャンディーと二人きりだからって、変なことしちゃダメよ。
でも、がんばってね。」
エミリーがいたずらっぽくウィンクすると同時に、バスのドアが閉まりました。
余計なお世話だ。
俺が何をしようが、君には関係ないだろ。
電車の駅に戻り、キャンディーと一緒に京都へと帰ります。
フ・フ・フ。
これで邪魔者はいなくなった。
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