Hold onto me (シンガポール)
彼女の家は、家族で会社を経営している。
他の家族はみんな朝早く会社に出かけてしまったが、私とメイサンだけはゆっくりと惰眠をむさぼらせてもらった。
今日は私にとって、シンガポール最後の日。
そして東南アジア最後の日でもある。
本来ならたっぷりとシンガポールを堪能するべきなのだが、なぜか、家の中でゴロゴロしている。
いったい俺は、シンガポールに何をしに来たんだろう?
もちろん、メイサンに会うためさっ!

タイの首長族の村で買ったおみやげ。
本当はこれ、ブレスレットなんだけど。


ベトナムで買った、インスタントラーメン。
日本に帰ってから、ベトナムを思い出しながら食べるつもりだったのだが、
メイサンと一緒に食べざるをえなくなった。
というのも、彼女の家には食べ物がないのだ。
メイサンの一家は、食事は毎回外食。
なので、家の中に食材を置いておくという概念があまりない。
お腹がへった。
しかし、外に食べに行くのはめんどくさい。
それに、今日はずっと家の中でゴロゴロしていたい気分だ。
シンガポールでベトナムのインスタントラーメンを食べったって、別にいいじゃないか。
今日は長かった旅の最終日。
メイサンと二人でまったりするのも悪くはない。

夕方になると、おうちの人達が帰ってきました。
今日はメイサンのお母さんの誕生日。
家族でお祝いをするそうなのですが、部外者の私は遠慮しました。
なので、一人さびしくホーカーセンター。
メイサン一家は今頃、高級レストランで家族団らんの真っ最中なんだろうな。
いや、いいんですよ。
ホーカーセンターはシンガポールを語る上で欠かせない存在ですから。
日本に帰る前に、じっくりとシンガポールを味わうにはもってこいの場所です。



ホーカーセンターにはたくさんの飲食店が入っている。
いろんな種類の料理があるので、食べ物にうるさい人でも、どれか一つくらいはお気に入りの料理が見つかるはず。
「どの店で食べようかな」
とウロウロするのもおもしろい。
メニューには英語と中国語の両方が載っている。
それに写真がついていることも多い。
なので、注文に困ることはないだろう。
思えば、シンガポールではずっとメイサンに頼りっぱなしだった。
でも、何事も自分でやってみないと印象には残らない。
こうして一人でホーカーセンターを訪れ、自分で判断することで、
シンガポールがより身近な物になったような気がした。
でも、やっぱり一人はさびしい。
早くメイサン来ないかな。

ついつい料理を頼み過ぎてしまった。
ホーカーセンターは観光地ではなく、居住地エリアにある。
地元の人が毎日利用する場所なので、値段もかなりリーズナブル。
日本円にすると、1食200円くらい。
東南アジアの国々の中では、ずば抜けて物価が高いと言われるシンガポールだが、
日本人の感覚からすれば、それでもかなり安い。
街はきれいだし、治安もいい。
しかも一年中夏。
メイサン、俺、シンガポールに住むわ。
よろしくね。

誕生日祝いを終えて、メイサンの家族がやってきました。
みんなでデザートを食べます。
カウチサーフィンをやってる人は、圧倒的にサーファーの方が多い。
「自分の家に他人は泊めないけど、自分が旅行する時には泊めてもらいたい」、
という人がほとんどだ。
その理由の一つとして、
「私は両親と同居してるので、ホストすることはできません。」
というのがある。
確かにその通りかもしれない。
そう考えると、メイサンの両親って懐が深いよな。
だって、私のような、どこの馬の骨ともわからないおっさんを家に泊めてくれるのだから。
年頃の娘がいるというのに。
デザートを食べ終えた後、彼女の家族は車で家に帰っていきました。
私とメイサンは歩いて帰ります。
数時間後には、日本へ向かう飛行機が飛び立ちます。
残された時間はあとわずか。
そう考えると、急に何もかもが愛おしくなってきました。
生温かい風、物干しざおの突き出た高層住宅、そしてメイサン。
なんだか今日は、一緒に歩くのが照れくさい。
どうしてだろう?
彼女と知り合ってから、もう、ずいぶん経つというのに。
道路の向かい側に、見覚えのある店が見えてきました。
メイサンは私の方へ振り向きながら
「ここ、覚えてる?」
と聞いてきます。
もちろん覚えてるさ。
初めてシンガポールに来た夜、空港からのドライブの途中で立ち寄った店だ。
あれからもう3か月も経つのか。

空港まで見送りに来てくれたメイサンは別れ際、
ぎゅううううっ、と抱きしめてきました。
声にならない吐息も漏れ聞こえてきます。
私も抱きしめ返そうとしたのですが、メイサンの力があまりにも強過ぎて、腕に力が入りません。
「どうしてメイサンはあんなに真剣な表情をしてたのだろう」
日本へ向かう飛行機の中で、ずっと考えていました。
大阪とシンガポールの間には、格安航空会社が就航することになりました。
メイサンは冬に日本にやって来る、とも言っています。
だから私は彼女との別れもそれほど悲しくはありませんでした。
でも、メイサンは感じていたのかもしれません。
私たちはもう二度と会えない、ということを。
メイサンに関する他の記事:
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