決戦は金曜日(シンガポール)

メイサンは仕事で忙しいので、今日は一人でシンガポール観光。
とはいえ、シンガポールはこれで3度目なので、特に見たいものがあるわけでもない。
メイサンに会いたいがためにやって来たというのに、これではなんの意味もないではないか。
まあ、愚痴を言っても仕方がない。
せっかく異国の地にいるのだから、思う存分楽しむことにしよう。
それに、午後からはメイサンと合流することだし。
あれ?
そういえば、マリーナベイサンズのホテル宿泊券の話はどうなったんだろう?
明日の深夜には、日本に向けて発たなければならない。
とすれば、今夜がシンガポール最後の夜となる。
手抜かりは許されない。
ちょっと下見に行っとくか。
ちょうどマーライオンも見たかったことだし。

ん?
なんだあれは?

なーにが、「マーライオンは休暇中!」だ。
シンガポールからマーライオンを取ったら、メイサンしか残らないじゃないかよ。
工事なら夜にやれ!
炎天下をフラフラになりながら歩いてきたこっちの身にもなれってんだ。

マリーナベイサンズが遠くに見える。
こんな高級ホテルに泊ったことなんて、これまでの人生で一度も無い。
いったい一泊いくらくらいするのだろう。

エスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ
現地の人は「ドリアン」と呼んでいる。
ドリアンといえば、なぜこれが「果物の王様」といわれているのか、いまだにわからない。
においだけでなく、味も吐き気をもよおす。
私は3度挑戦したが、3回とも一口以上食べることができなかった。
私にとっては、「果物の大魔王」だ。

おとといまでベトナムにいた私は、シンガポールに来てからというもの、ずっと違和感を抱いていた。
街がとても静かなのだ。
車のクラクションの音がまるで聞こえない。
バイクもほとんど走っていない。
信号や横断歩道が整備されている。
私が道路を横断しようとしたところ、向こうから車がやって来たので、止まって待つことにした。
するとその車は、横断歩道の手前で停車し、私を先に渡らせてくれた。
驚いたし、戸惑ってしまった。
日本やヨーロッパではさして珍しくもない光景だが、ベトナムではこんなことは絶対にありえないからだ。
シンガポールというのは先進国なのだな、と感心するとともに、
3か月におよぶ私の東南アジアの旅も、ついに終りの時が来たのだということを実感させられた。
なんだかさびしいな。
あんなに嫌だったはずの東南アジアの混沌と無秩序が、
今ではすっかり私の体に染みついてしまっているらしい。

シティ・ホールと最高裁判所は工事中で見学不可。
ツイてない

セント・アンドリュース教会

チャイムス。
ここはメイサンのお気に入りらしい。

ラッフルズ・ホテル。
シンガポールには、イギリス統治時代の面影をしのばせる建物がたくさんある。
街全体がおしゃれで、南国の陽光も相まって、とてもすがすがしい。
しかし、清潔すぎる。
どうも私には猥雑な東南アジアが性に合っているようだ。
日本に帰りたくないな。

戦争記念公園。
何を記念しているのかというと、第二次世界大戦後、日本からの解放だ。
この塔には、「日本占領時期死難人民記念碑」というおどろおどろしい名前がつけられている。
メイサンは子供のころ学校で、
「日本軍は、ただ楽しみのためだけに罪の無い人々を殺戮する、とても残虐な集団」
というふうに習ったそうだ。
だから、正直言って、日本人に対してあまりいい印象を持っていなかったらしい。
私と出会うまでは。
そうか。
私という人間は、彼女の固定観念を覆すほど高潔で、仁徳のある人物だったのか。
「違うわよ。
あなたを見て思ったの。
我がシンガポール軍が、こんなへなちょこに負けるわけがない、って。」
「へなちょこ」って・・・
そういえば、いつの頃からかメイサンは私のことを(ドラえもんに出てくる)「のび太」と呼ぶようになった。
そりゃあ、のび太が何人束になって襲ってきたとしても、負ける気がしないわな。


シンガポールには伊勢丹や高島屋など、日本の企業が数多く進出しています。
また、日本食レストランの人気も高いらしい。
神戸牛などは日本でも高いのに、シンガポールではさらに高値となっています。
そのため、一般庶民には「日本食=高級」という感覚もあるとか。

一方で、こういう庶民向けの日本食屋も人気。

またひとつ、日本という国が誤解されたような気がする。

シンガポール市内を巡る、ツアーバス(ボート?)




今夜の下見も兼ねて、マリーナベイサンズに向かう。
それにしても大きい。
こんな立派なホテルに、私みたいなのが泊ってもいいのだろうか。

ショッピングモールの中はとても広々としている。
たくさんの人がいるはずなのに、混雑さを感じさせない。
ここはできてまだ間がないのだろうか。
何もかもがピカピカで、清潔感にあふれている。
とても居心地がいい。

なんと、スケートリンクまである。
これはいい。
メイサンを誘おう。
こう見えても私はスケートやスキーが得意なのだ。
南国育ちのメイサンはきっとスケートが苦手だろう。
いじめてやれ!

これはきっと、イタリアのヴェネツィアを模したのだろう。
デートコースにはもってこいだ。
メイサンのすすめで、カジノにも足を運んだのだが、どうも私の性には合わなかった。

せっかくマリーナベイサンズに来たのだから、全フロアを見てやろうと歩き回ったのだが、ここは巨大すぎる。
疲れてしまった。
ベンチに座って休憩していると、メイサンからの電話が鳴った。
私の携帯だと国際通話料がかかってしまうので、彼女の会社で使っている業務用の電話を借りている。
ちなみに地下鉄とバスの乗り放題パスも借りている。
会社を経営しているメイサン家は太っ腹なのだ。
「今 どこ?」
MBS。
「天気があまり良くないけど、それでもセントーサに行きたい?」
せっかくの機会だから、ぜひ行きたい。
(本音を言うと、日本に帰る前にもう一度メイサンの水着姿が見たい。)
「わかったわ。
私、今、仕事で外にいるの。
今日はもう会社には帰らないから、ここまで来てくれる?」
メイサンはそう言って、MRTでの行き方を説明してくれた。
「あの、メイサン。
今夜、マリーナベイサンズのホテルに行くっていう話なんだけど・・・」
と私が言いかけたところで、彼女は一方的に電話を切ってしまった。
今、わざと途中で切らなかったかい、メイサン?
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