ベトナムの強さの秘密(バックハー、ラオカイ)

グエンの友達がバックマー寺を案内してくれました。
どうやら英語の練習がしたいようです。
しかし、私のバックハーでの目的は花モン族のみ。
こんな小さなお寺には、あまり興味ありません。
なので、彼の説明も上の空。
ごめんね。


中国との国境に近いこともあってか、このお寺もかなり中国の影響を受けているように見受けられます。

バックハーからラオカイまではバスを利用しました。
ツアーバスではなく、地元のローカルバスです。
座席は歪んでいるし、冷房なんてもちろんありません。
でも、なんだか気分がうきうきしている自分がいます。
これまでの経験からいって、こういうオンボロバスの方がおもしろい経験ができるんだよね。
このバスには、出稼ぎ労働者や行商人やらが乗り込んでいるらしく、通路にまで荷物があふれかえっています。
足の踏み場もありません。
しかし、これらを乗り越えていかなければ座席にたどりつけないのです。
ぐにゅ
何か柔らかいものを踏みつけてしまいました。
プギィーイイイイイイイイイイ
どうやら私は、子豚の詰まった袋を踏んでしまったようです。
プギィー、プギィー、プギィー!!!!
バスの中を子豚の絶叫が響き渡ります。
あわわわ。
中に豚が入ってるなんて知らなかったんだよー。
その後もしばらく子ブタちゃんは鳴き続けていましたが、だんだんと鳴き声が小さくなっていきます。
プギー、 プギー、プ・・・
突然おとずれた静寂。
その瞬間、前の方に座っていたベトナム人たちが一斉に振り返り、非難がましい目で私を見ます。
お、俺のせいじゃないぞ。
中に小ブタが入っていたなんて知らなかったんだよ。
ほんとにごめんよー。
やわらかいものを踏んづけた時の感触は、まだはっきりと足に残っています。
こりゃしばらく豚キムチ丼も肉まんも食べれないな。
他の乗客の冷たい視線を肌で感じ、なんとも居心地の悪いバスの旅とあいなりました。

ラオカイは国境の街です。
この橋を渡れば、そこはもう中国。
うう。行きたい!
手の届くところに中国があるというのに、行かずにいれるかっ。
でも、中国は広大な国だ。
別の機会に、じっくりと時間をかけて回ろう。
今日のところはがまんじゃ。



あともう少しでラオカイ駅、というところで、渋滞につかまってしまいました。
渋滞?
こんな田舎の街で?
ふと路面を見ると、血が流れています。
それは何かに引きずられたようで、最初は赤い液体だったものが、
だんだんとドロドロとした物質に変わっていきます。
これはただの血液じゃない。
その先に目をやると、なんともおぞましいものを見てしまいました。
バイクと衝突したトラックは、運転手を車体の下に巻き込んだまま走り続けたのでしょう。
見たくないはずなのに、まばたきすらできませんでした。
私は日本では、死人がでるような交通事故を見たことはありません。
ところが、東南アジアの旅行中に2度もその現場に遭遇してしまいました。
きっとここでは頻繁に発生しているのでしょう。
ベトナムに限らず、東南アジアではバイクは最も便利で安価な乗り物です。
私もハノイではバイクタクシーを利用するつもりです。
明日は我が身・・・
その言葉が頭から離れませんでした。

ラオカイ駅の待合室。
「寝台車のチケットはいらないか?」
と声をかけられました。
値段を聞くと、法外な料金。
寝台車に閉じこもっているより、一番安い席でベトナム人を観察している方がおもしろそうなので、
相手にしないでいたら、だんだんと値段を下げてきました。
ハノイ-ラオカイ間の列車のチケットは、シーズンオフの平日でもすぐに売り切れてしまいます。
旅行会社やホテル、それにこういうダフ屋が買い占めてしまうからなんですね。
一般旅行者にはいい迷惑です。

ラオカイ駅にはWiFiはありませんが、ipadをひろげて写真の整理をしていたら、欧米人の旅行者に声をかけられました。
オランダ人の家族です。
しかも、小さな女の子を連れています。
彼らは娘と一緒に世界中を旅してまわってるとか。
うらやましい子供だな。
きっと将来は世界を股にかけた大きな仕事をする人間になるのでしょう。
彼らと「ベトナムのここがひどい」というテーマで話をしたのですが、
「インドに比べれば、ベトナムなんてまだまだかわいいものよ。」
というのが彼らの結論。
そうか、インドはそんなにおもしろい場所なのか。
これは一度行ってみないとだめだな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜行列車はあいもかわらず満席。
今夜も、足を伸ばして眠ることはできそうにないな。
最初に私の前に座ったのは、若い女の子でした。
「どこまで行くのだろう。ハノイまでかな。」
と考えていると、おもむろにその女の子はシャツのボタンをはずして胸を露出させました。
突然目の前に現れたおっぱいに戸惑う私を尻目に、彼女は赤ちゃんに授乳しはじめたのです。
この光景を目撃するのは、ベトナムに来てこれで2回目だ。
どぎまぎしているのは私だけで、周りを見渡してみると、他の乗客たちは何事もなかったかのように平静です。
ベトナムではこれが普通なのだろうか。
前を向いていると、どうやっても彼女のおっぱいが視界に飛び込んでくるので、私は眠ったふりをするしか他に方法はありませんでした。
もちろん、薄眼を開けて。
それにしても、2回もおっぱいを目撃してしまった。
それも至近距離で。
ベトナムってけっこういい国だな。

(電車の床で眠るおばちゃん二人)
(残念ながら)女の子は1時間ほどで列車を降りていきました。
でもまあ、これで足を伸ばして眠ることができる。
しかし、ベトナムの夜行列車はそんなに甘くはありません。
すぐに次の乗客が乗り込んできました。
常に満員状態です。
私の前に座ったのは、今度はおばちゃん二人。
彼女たちは、他の乗客となにやら話していたかと思うと、
床にビニールシートを敷き始めました。
???
なんだ、何が始まるんだ?
おばちゃん二人は床にごろんと横になり、そのまま眠ってしまったのです。
いくらシートを敷いているとはいえ、電車の床でなんかよく寝れるなあ。
しかも座席の間の狭いスペースに。
ベトナムのおばちゃんはタフだな。
あんたらならどこでだって生きていけるよ。

(座席の下に、人がいるのが見えるでしょうか。心霊写真ではありません!)
深夜に列車が停車した時、おばちゃんたちは降りていきました。
次に乗り込んできたのは若い夫婦。
奥さんはどうやら妊娠しているようです。
お腹が大きい。
彼女はすぐさま座席の上で横になり、寝てしまいました。
ベトナムの電車は日本のと比べて乗り心地は格段に悪い。
ガタゴト揺れるし、座席は硬い。
エアコンもないから暑い。
健康な私でも音をあげそうなのだ。
ましてや、お腹の大きな妊婦さんには過酷な環境だろう。
そんな私の心配をよそに、妊婦さんは気持ちよさそうに眠っています。
ベトナムの女性は本当にタフだ。
あれ?
じゃあ、旦那さんはどこで寝るんだ?
妊婦の夫はスルリと座席の下にもぐりこみ、これまた眠ってしまいました。
ええーっ!!!
座席の下に、人間が眠れるだけのスペースなんてあったんだ?
そりゃあ、ベトナム人は小柄だけど、それにしてもそんな狭い場所で眠るなんて、ちょっと信じられない。
いくら愛する奥さんのためとはいえ、よくそんなことができるなあ。
ベトナム人には、苦痛を感じる神経が欠落しているのでしょうか。
軍事力で圧倒的に優位な立場にありながら、ついにアメリカもフランスもベトナムに勝てなかった理由がわかったような気がしました。

翌朝、夜行列車はハノイに到着。
結局、よく眠れませんでした。
朝日が目にしみるぜ。

ハノイB駅ではホームレスの青年と再会。
そりゃそうですよね。
だって彼はここで寝泊まりしているホームレスなのですから。
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