遺書(サパ、ベトナム)

なんとか黒モン族の村にある家に泊めてもらうことに成功。
しかし、思い描いていたのとはずいぶん違いました。
この一家はかなり裕福らしく、大型テレビなどの電化製品を多数所有しています。
できることなら、もっと伝統的な黒モン族の家に泊まりたかったな。
あらら。
iPad まで持ってるよ、この人。
この村にはWiFiの電波も無いというのに・・・・


豚の血のスープ。
精をつけるために、なんとか飲もうと努力したのですが、全部飲み干すことはできませんでした。
おえぅっ。
吐きそう

モッ、ハイ、バ、ヨッ!
ベトナムに来てから何度このフレーズを聞いたことか。
この掛け声の後で、お酒を一気飲みしなければなりません。
しかもこのお酒、メチャメチャきつい。
せっかく彼らがもてなしてくれているのだから、と、最初のうちは付き合っていたのですが、もう限界です。
「もう飲めないよ」
と言って断ったら、その場の空気が途端に険悪なものに変わりました。
ベトナムでは、盃に注がれた酒を残すということは、ものすごく失礼なことのようです。
酒に弱い男はこの国では生きていけないのだな。
ところで、上の写真、私だけ長袖を着ているのがわかるでしょうか。
陽が暮れてから急激に冷え込んできました。
寒くてしかたありません。
「いやあ、真夏でもサパは寒いんだねえ」
と私が言うと、みんなポカンとしています。
「何言ってるんだ? 今夜はかなり暑いぞ」
あれ?
そう言えば、扇風機がガンガンにかかってるし、私以外の人は暑そうに汗なんかかいてる。
寒がっているのは私だけ。
どうも様子がおかしい。
食事を早々に切り上げ、一人ベッドに横になったのですが、寒くて歯がガチガチいってます。
だんだん息があがってきました。
横になってじっとしているだけなのに、ハァハァと肩で息をしている始末。
ゾクゾクと悪寒がする。
それなのに、ビッショリと汗をかいている。
かなりマズい兆候のように思われる。
非常用に持参したマラリアの薬を飲むべきだろうか。
こんな小さな村には病院なんてない。
ラオカイまで行けば大きな病院があるだろうが、キチンとした設備が整っているのかは疑問だ。
ハノイまで行けば比較的まともな治療を受けられるだろうが、ここからだと10時間以上かかる。
それに、今夜はもう電車が無い。
こんな状況だというのに、頭に浮かんでくるのは親や弟妹のことではなく、女の子たちの顔だ。
しかし、この村にはインターネットがないから、Skype もfacebookも使えない。
そうだ。
たとえ送信できなくとも、メッセージの下書きだけでも書いておこう。
明日の朝には意識が無くなっているかもしれないし。
後日、この時に書いた文を元にメールを送ったら
「So formal ! 」
と言われた。
そりゃそうだろう。
遺書のつもりで書いたのだから。
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