
ゲストハウスを掃除していたお姉さん。
なんだか挙動不審でした

この舟に乗ってルアンパバーンへ。
二日間のメコン・クルーズです


6月13日(水) パークベン商法 (パークベン、ラオス)
朝、廊下を掃除する音で目が覚めた。
宿の女将さんとは違う、女の子だ。
目があったのであいさつすると、ラオス語が返ってきた。
彼女は私の部屋の中をじーっと見ている。
なんだ、なんだ?
そんなに俺の部屋が汚いのか?
そのうち彼女は私の部屋の中にまで入ってきた。
私と話がしたいのかと思って話しかけても
あいまいな微笑を浮かべるばかり。
なんとも奇妙な時間だった。
今日は一日中スローボートの上で過ごすことになる。
スピードボートを使えばルアンパバーンまで6時間で行けるのだが、
メコン川の雄大な流れにゆったりと身をまかせてみたかったので
あえて2日間かけて川を下ることにしたのだ。
ゲストハウスの主人がボートのチケットを手配してくれた。
「窓際のいい席を確保しておいた。
のんびり船旅を楽しんできてくれ。」
船の上でどの位食料を調達できるのかわからなかったので、
船着場の売店で水と食べ物を買い込む。
この売店のお姉さんは美人で人当たりが良く、
簡単なラオス語を教えてもらったりした。
彼女が「これはいらないの? それもおいしいわよ。」と勧めるので、
ついつい買い過ぎてしまった。
なかなか商売上手なお姉さんだ。
でも、最後にバナナをおまけにつけてくれたから良しとしよう。
きれいなお姉さんからもらったバナナはきっとおいしいに違いない。
余談だが、ラオスのバナナは小ぶりで皮も薄い。
そして少し酸っぱい。
9時30分にボートに乗り込んだのだが、なかなか出発しない。
結局2時間も待たされた。
出航するにあたって、英語の流暢なラオス人のお兄さんから説明があった。
「この船は夜の8時にパークベンに到着する。
その頃には辺りは真っ暗だ。
くれぐれも気をつけて欲しい。
ラオスには良い人もいれば、悪い人もいる。
パークベンに到着したら、全員この船を降りなければならない。
何人もこの中で眠ることは許されない。
各人で宿を手配して欲しい。
さっきも言ったように、この船がパークベンに到着する頃、周りは真っ暗だ。
各人、身の安全には十分気をつけるように。
パークベンには悪い人もいれば、悪い人もいる。」
おどかすなよ。
なんだか悪い人だらけの街みたいに聞こえるぞ。
お兄さんの説明はさらに続く。
「パークベンは小さな街だ。
ホテルのキャパシティには限りがある。
おそらく諸君のうち何人かは宿にあぶれることになるだろう。
だが、くれぐれも注意して欲しい。
怪しい人の誘いにのって、暗い夜道をついていったりしないように。」
おいおい、そんな話 聞いてないぞ。
宿が無いかもしれないって?
じゃあいったいどこで寝ろっていうんだよ。
それに、そうなることがあらかじめわかっているんだったら、
もっと早く出航しろよ。
そうすれば明るいうちに港に着いて、まだ手の打ちようがあるのに。
そしてお兄さんはこう締めくくった。
「もしどうしても宿が見つからなかったら、怪しい人にはついていかずに、私に相談して欲しい。
私はいつでも諸君らの味方だ。」
これだけ脅されたら誰だって不安になる。
ラオスの暗い田舎町で蚊に喰われながら野宿なんてしたくはない。
みんな我先にと争って、このお兄さんの斡旋する宿を申し込んでいた。
そういえば、地球の歩き方にも、
「スローボート到着と同時に乗客が宿へ殺到し、宿は早い者勝ちとなる」と書いてあった。
おもしろそうな光景だ。
あえて最後に船を降りて、どうなるか様子をみてみよう。
船は壮大なメコンの流れをのんびりと下る、
はずだった。
だが現実はそんな悠長なものではない。
水しぶきがものすごく、すぐにずぶ濡れになった。
なにが「窓際のいい席」だ。
そんな状態だったから、係員が窓に布やシートを被せて回った。
この船にはガラス窓などという洒落たものは搭載していないのだ。
おかげで水しぶきは入ってこなくなったが、今度は外が見えない。
こうして、メコンの雄大な流れを眺めながら2日間をのんびり船の上で過ごす、という私の目論見はあっさりと崩れ去った。
夜までいったい何をして過ごそうか。
退屈だな。
と思っていたら、面白い余興が催された。
突然、ボートのエンジンがストップしたのだ。
船は航行の自由を失って、川の流れのなすがままになっている。
なんとも言えない焦燥感に襲われる。
岩に激突しやしないだろうか。
港に着くのはいったい何時になるのだろう。
幸いすぐにエンジンは修復されたが、もはやこの船に対する信用はゼロ。
やれやれ、なかなか楽しい航海になりそうだ。
夕方の6時前に船は港に入った。
まだまだ明るい。
港の周辺には、ホテルの客引きが大勢待ち受けている。
あれ?
聞いていた話とずいぶん違うぞ。
この様子では、ホテルの部屋は余りまくりじゃん。
あのお兄さん、なかなか商売上手だな。
さんざん乗客を脅しておいて、高いホテルを斡旋したに違いない。
ラオス人はしたたかなのだな。
ゲストハウスでくつろいでいると、突然真っ暗になった。
停電だ。
これがラオスか。
なかなか楽しませてくれそうな国だ。
とりあえず明日、ろうそくを買わなくちゃ。
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