6月7日(木) 不都合な真実 (メーホーソン、タイ)

パドゥン・カレン族の人は早起き

朝食前に向かった先は・・・

彼女たちの畑




もちろん私も手伝わなければなりません

けっこうハード



日が登り、暑くなってきたので、家に帰ります

彼らの学校


マシャの娘、ムコ。
彼女は英語が話せるので助かりました






彼女はアメリカ人男性と結婚することが決まり、もうすぐこの村を去るそうです。
村の中に若い女性が少ない理由がわかったような気がしました。




首長族の人たちと一緒に食事をする私

朝食





村には電気が通っていないので、
ソーラパネルで発電します

バッテリー



学校の先生も首長















最後に取れたてのマンゴーをいただきました


マシャたちのお母さん。
彼女も以前は首輪をしていたのですが、
歳をとり、重たくなったので外したそうです

見送りに来てくれたマシャとムコ

遠ざかる首長族の村。
また来たいな
6月7日(木) 不都合な真実 (メーホーソン、タイ)
首長族の朝は早い。
まだ夜が明けきらぬうちから、あちこちで鶏が鳴き始め、
とても寝ていられない。
もう少し寝ていたかったので狸寝入りをしていたら、
マシャに蚊帳を取り払われてしまった。
朝食の前にまず一仕事しなければならない。
マシャとその妹、ムパイ、そして私の三人でクワを担いで山奥にある彼らの畑へと向かう。
なぜ俺も?
まあいいか。
どうせ他にやることもないんだし。
私の仕事はというと、ひたすら畑を耕すこと。
普段畑仕事などやったことのない私にとって、これはけっこうな重労働だ。
畑にはすでに植えられている作物があり、
これらを刈り取らないように注意しながら耕さなければならない。
だが、私には雑草とそれらの作物との区別がつかない。
何度も作物を刈り取ってしまい、
その度にマーシャにしかられた。
それに、畑にはたちの悪い虫がいる。
何カ所も刺されてしまった。
蚊とは違い、刺された場所から出血している。
かゆいだけでなく、痛い。
少し腫れてもいる。
だが、蚊よりはマシだ。
マラリアやデング熱にかかれば死ぬこともあるのだから。
私が痒がっている様子をマシャたちは笑っていた。
そんなに笑うなよ。
ホントにかゆいんだってば。
山の間から日が昇り、暑くなってきたところで作業は終了。
手にはマメができてしまった。
でも、腹の底からふつふつと笑いがこみ上げてくる。
小さい頃にテレビで首長族のことを見た。
自分とはまるで関係のない、遠い世界の話だと思っていた。
だが俺は今、彼らと一緒にいる。
彼らの畑で一緒に作業をし、
ミスをしては叱られ、虫に刺されてかゆがっている俺を見て彼らは笑っている。
信じられるか?
首長族と一緒に畑を耕しているんだぜ?
首長族が俺の名前を呼んで笑っているんだぜ?
なぜだかわからないが、笑いながら泣きたくなってきた。
家に戻り、虫に刺された所に薬を塗っていると、
マシャが「私にも塗って」と言う。
見ると、彼女も何カ所も刺されていた。
なんだ、お前も刺されてるんじゃん。
だったら もっとかゆそうな顔をしろよ。
一般に、地元の人は蚊に刺されにくい、と言われている。
だが、それはウソだ。
彼らだって虫に刺されるのだ。
ただ、かゆがらないだけ。
いちいちかゆがっていたらキリがないからだろう。
私がベビーパウダーを塗っていると、
「それは何?」
とマシャが聞いてくる。
ベビーパウダーだよ。
これを塗っとかないと汗疹になるんだ。
「ふうん」
と言いながら彼女も塗り始める、
おいおい。別に使うのは構わないが、一言 俺にことわってからにしろよ。
「お前の物は俺の物」という文化がこの村にはあるのだろうか。
マシャの娘、ムコにデジカメとipadを渡して、村の人々の写真を撮ってきてもらった。
私がカメラを向けると、村の人は警戒してしまう。
彼女が撮った方が自然な写真が撮れると思ったからだ。
彼女はことのほかipadが気に入ったようで、握りしめて離さない。
「デジカメ、携帯、ipad。
あなたはなんでも持っているのね。
でも、私には何もない。」
彼女はポツリとそう言った。
私はたまたま日本に生まれ、
彼女はたまたま首長族の村に生まれた。
それだけの違いだ。
彼女が悪いわけでも、
私が偉いわけでもない。
だがこの違いは大きい。
彼女の友達の何人かは、村での貧乏な生活を嫌ってアメリカやフィンランドに移住していった。
首のリングを外して。
「この村を出たい?
その首のリングを外したい?」
と私が聞くと、
ムコは
「そんなの考えられない!」
という顔をした。
彼女にとって、一番の遠出はチェンマイ。
その時の写真を見せてもらった。
首にはスカーフを巻いている。
リングを隠すためだ。
この村を出たいとは思わない、
このリングを外したいとは思わない。
はたしてそれが彼女の本心なのだろうか。
昼からは何もすることがなかったので、
マシャたちの家で昼寝をして過ごす。
時折、村を訪れた観光客が家の中の写真を撮って行く。
スペイン人らしき観光客が私の写真を撮りながら、
「彼も首長族なの?
なんだか日本人みたい」とつぶやく。
日本人だってば!
マシャと一緒に村の中を歩いていると、
マシャにカメラを向ける観光客に何度も出くわした。
彼女はその度に笑顔で応える。
だが、マシャは本当に心の底から笑っているのだろうか。
彼女に村の学校を案内してもらっていると、
若者が叫びながら走って行く。
その方向を見ると、大トカゲがいた。
1メートルはないが、それでもかなり大きい。
トカゲというよりワニのようだ。
数人の男性がトカゲめがけて石を投げる。
惜しい。
すんでのところで、取り逃がしてしまった。
川に住むトカゲは黄色い色をしていて、泥臭い。
山に住むトカゲは黒く、身がしまっていて美味しいそうだ。
今回現れたのは山トカゲの方。
だからみんな必死になって石を投げていたわけだ。
トカゲもかわいそうだな。
おちおち散歩もしてられない。
最後に、マシャの妹、ムパイがマンゴーの皮を剥いてくれた。
この村の中にはいたるところにマンゴーの木がある。
新鮮なマンゴーが食べ放題なのだ。
あまりにもおいしかったので、ペロリとたいらげると、
ムパイがもう一つ木からむしり取ってきてくれた。
私は南国のフルーツはあまり好きではないのだが、
このマンゴーは別格だ。
この味を生涯忘れることはないだろう。
夕方になり、迎えのボートがやってきた。
いよいよこの村ともお別れだ。
ムコとムパイが港まで見送りに来てくれた。
この村は好きだ。
もう一度ここにやって来たい。
でも、次にここにやって来た時、この村はこの村のままでいてくれるのだろうか。
現在でも彼らのうち何人かは携帯電話を持ち、
ソーラパネルで電気も蓄えている。
村の住人みんながスマートフォンを持ち歩き、Facebookで連絡を取り合う。
そんな風に変わってしまう日も近いのかもしれない。
もちろん彼らにも近代的で快適な生活を送る権利がある。
いつまでも彼らに原始的な生活を送って欲しいと願うのは、
エゴ以外のなにものでもない。
やはり首長族の文化は消えゆく運命なのか。
チェンマイ行きの夜行バスのシートは貧弱で、よくきしむ。
車体が揺れるたびに振動が伝わって来て、むちうちになりそうだ。
首に痛みを感じる度に、村の人たちのことを考えずにはいられなかった。
- 関連記事
-
- 6月13日(水) パークベン商法 (パークベン、ラオス)
- 6月12日(火) ラオス(ファイサーイ、ラオス)
- 6月11日(月) 金三角(チェンセーン、タイ)
- 6月10日(日) 12歳ならどうだ?(タチレイ、ミャンマー)
- 6月9日(土) 3対1 勝ち目なし (タチレイ、ミャンマー)
- 6月8日(金) タイを旅する理由 (チェンマイ、タイ)
- Last day of Mae Hong Son
- 6月7日(木) 不都合な真実 (メーホーソン、タイ)
- 6月6日(水) 首長族の村でカウチサーフィン! (メーホーソン、タイ)
- 6月5日(火) 首長族 (メーホーソン、タイ)
- 6月4日(月) オンボロバス (スコタイ チェンマイ 、タイ)
- 6月3日(日) スコタイ オールドシティ (スコタイ、タイ)
- 6月2日(土) 日本人宿 (スコタイ、タイ)
- 5月31日(木) 散髪、耳掃除、タイマッサージ (バンコク、タイ)
- 6月1日(金) パジャマ 邪魔だ (バンコク、タイ)