ジプシーとカウチサーフィン

バスを降ろされた所は、ほんとに何もないド田舎。
道路には車の姿はなく、代わりに馬車がのんびり通り過ぎていく。
これぞ古き良きトランシルヴァニア。

ジプシーの家でトイレを借りる。
もちろん水洗式なんて文明の利器はない。
古き良きトイレ。

ジプシーの女性はとてもフレンドリー。
「私、日本人って大好き!」
もちろん社交辞令だろうが、やはり悪い気はしない。

ジプシーの家の中にはやたらと鍋が置いてある。

彼がチャック。
アメリカはニューヨークの出身だ。
彼のおかげでジプシーの生活を体験することができた。

ここにも大量の鍋が。
ジプシーにとって、鍋とはとても縁起のいいものなのだそうだ。

家の裏ではブタを飼っている。
自給自足の生活なのだな。

道の向こう側を馬車が通り過ぎて行くのが見える。
のんびりした光景のせいで時間の感覚が狂いそうだ。

この日は私のほかにアメリカ人の女の子もいた。
大学で東ヨーロッパの文化を専攻しているのだそうだ。

かいがいしく昼食の準備をすすめるジプシーの女性たち。

テーブルの上に乗っているのはピクルスのようなもの。
お味のほうは・・・
「これぞジプシーの料理だ!」というものはないのだろうか。

壁掛けテレビに最新式の洗濯機。
なんだか調子が狂っちゃうなあ。

お腹がいっぱいになって気分がよくなったのか、小さな男の子が躍りだす。

女の子もそれに加わった。

ジプシーの女性はとてもきれいだ。
もっとがめつい性格を想像していたのだが、なかなか控え目で、日本人とは相性がよさそうだ。
もっとも、向こうは私のことをどう思っていたのかは知らない。

ジプシーとカウチサーフィン(ルーマニア)
チャックはメールではジプシーの家は駅からすぐ近くだと言っていた。
ところが 道のりは平坦ではなかった。
まず、バスの乗り方がわからない。
これから私が行くところは、観光客は決して行かないであろう場所だ。
だからガイドブックには載っていない。
バス停の近くの酒場のような場所で聞いたら、ちょうどその人がバスの運転手だった。
ラッキー!
ん?でもここは酒場なんだよな。
もしかして、昼間から飲んでる?
バスの運転手は英語が話せなかったが、
一応 私の目的地は理解してくれたようだ。
途中 何度か停車したが、バス停にはなんの表示も無い。
そのバス停がなんという名前なのかすらわからないのだ。
これでどうやって降りる場所を確定しろというのか。
バスの運転手だけが頼りだ。
「ここがヴァーレンだ」
そう言って降ろされた場所は、本当に何もない場所だった。
いや、家はたくさんある。
その奥には広大な農場が広がっている。
だが、店らしきものはどこにもない。
チャックに連絡をとらなければならないのだが、私の携帯は使えない。
だが、こんな ど田舎に公衆電話なんてあるのだろうか。
途方に暮れる私の横を 馬車が通り過ぎて行った。
のどかだなあ。
これぞ古き良きトランシルヴァニアだな。
うん。
なんて言ってる場合ではない。
公衆電話はどこだ?
通りかかったおばあさんに聞いてみた。
予想通り英語は全く通じない。
何を言ってるのか全くわからない。
私の周りに人だかりができた。
東洋人が珍しいのか?
みんなで ああでもない こうでもない と話し合っている。
言葉は通じなくても、彼らが親切なんだということはよくわかる。
そのうち、一番若い少年がついて来い、と手招きする。
どこに連れて行かれるんだろう。
半信半疑でついていくと、そこには公衆電話があった。
チャックはニューヨーク出身。
そんな彼が、こんな田舎に暮らしている。
いったいどんないきさつがあったのだろう。
ジプシーの家はバス停からすぐ近くだった。
民族衣装をまとった女性が三人、とてもにこやかに出迎えてくれた。
そのほかに白人の女の子が二人。
ジプシーの子供たちと遊んでいる。
アメリカ人らしい。
昨日の夜はここに泊まったのだとか。
チャックがジプシーの家の中を案内してくれた。
なんと、トイレは昔懐かしい汲み取り式だ。
裏庭には豚や鶏が飼われている。
その向こうには農場。
基本は自給自足なんだそうだ。
彼らの部屋の中は装飾が派手だ。
やたらとたくさんの鍋がある。
彼らにとってとても大事な意味があるらしい。
結婚式のお祝いに大量に贈られる、とチャックが説明してくれた。
ジプシーの民族衣装もとても派手だ。
既婚の女性はスカーフを頭に被り、未婚の女性はおさげ髪にする。
わかりやすいシステムだ。
みんなで一緒に昼食を食べる。
ジプシーの伝統料理だという。
まずは ゆで卵や豚肉、野菜など。
もちろんこれらは裏庭からやってきたものだ。
料理自体はそれほど特別なものではなかったが、ジプシーの人たちと一緒に食べていると思うと、なんだか感動する。
彼女たちが何を言っているのか全く理解できないが、とても気さくで楽しい人たちだ。
ジプシーのことが前よりも増して好きになった。
チャックがジプシーの伝統的な音楽をかけると、男の子が踊り出した。
とても楽しそうだ。
そのうち女の子も一緒に踊り出した。
スカートを軽くつまんで、とてもかわいらしい。
なんだか体がムズムズしてきた。
一緒に踊りたい気分だ。
馬車を引いて旅をして、夜には焚き火を囲んでダンスする。
ジプシーと一緒に旅をしたら、人生観変わるかな。
彼らと一緒にいると、あっという間に時間がすぎる。
こんなに楽しいのなら、ここに泊まることにすればよかった。
チャックはカウチサーファーだが、今回の訪問はカウチサーフィンではない。
だから食事代は払わなければならない。
約1500円。
ルーマニアの物価を考えると かなり割高だ。
でも、ジプシーの人たちの家で一緒に伝統的な食事が楽しめたのだから良しとしよう。
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