ブダペストでカウチサーフィン


























ブダペストでカウチサーフィン
私はゲイにモテる。
今回のヨーロッパ旅行でそれがハッキリした。
今朝は6時起き。
七時に出勤する彼らに合わせて家を出るためだ。
車で駅まで送ってくれるという。
バルナバスは頭を剃っていて、見た目はちょっと怖いが実はやさしい。
彼とは車の中で少し話しただけだが、機会があれば、また会いたい。
エスツァーは私と一緒に途中まで地下鉄に乗ってくれた。
仕事に向かう途中で忙しいだろうに、なんて親切なんだろう。
しかも、昼食まで持たせてくれた。
後で味わって食べよう。
ブダペストの駅に荷物を預けて身軽になった。
今夜にはハンガリーを発つ。
ブダペスト観光に費やせるのは一日のみ。
効率よく移動せねば。
聖イシュトヴァーン大聖堂のあと、ブダペストのランドマーク、国会議事堂へ。
ウロウロして敷地に迷い込みそうになったら、戦闘服を着た警備兵に止められた。
よかった、撃たれなくて。
くさり橋のライオン像の所で定番の記念撮影。
ああ、これがあのドナウ川なんだなあ、と一人で感慨にふけった。
ブダペストは思ったより小さな街だ。
歩いてまわってもさほど時間はかからない。
王宮の丘へのケーブルカーは一日乗車券の適用外なので歩いて登る。
大した距離ではないのだが、連日の観光で疲れがたまっているらしい。
足が重い。
まだ朝早かったので、聖マーチャーシュ教会や漁夫の砦はガラガラだった。
中国人団体観光客を除いては。
またしても中国人の大群。
世界は彼らに支配されつつあるのか。
王宮をブラブラした後はゲッレールトの丘だ。
ここにはとりたてて面白い物はないようだが、ブダペストの街を一望できると聞いて行ってみたくなった。
馬鹿と煙は高い所に登りたがるのだ。
バスを探すのが面倒だったので歩いて登った。
足が思いし、息もきれる。
丘の頂上は予想通り何もなかった。
確かに頂上からの眺めはきれいだが、涙がでるほどではない。
疲れた体を癒すためにゲッレールト温泉で残りの時間を過ごそう。
日本円にして二千円ほど。
けっして安くはないが、ハンガリーの名物だからぜひ体験したい。
水着は持ってきていなかったので、受付で白いフンドシをもらう。
日本では、タオルは湯船に入れない。
だからこの白いフンドシも湯船に浸かる時は外すのがルールだと思った。
それがすべての始まりだった。
私がフンドシを外すと、中にいた五人ほどの男たちが一斉に私の方を見た。
自意識過剰だって言いたいんでしょ?
私も最初はそう思いました。
例のカールの一件もあったし。
地球の歩き方には、中央の円形の場所に一人でいることは、ゲイがパートナーを募集しているという意味だと書いてあったので、端っこのほうに行きました。
これが二つ目のミス。
浴場はガラガラなのに、一人の男がわざわざ私の方に近づいてきました。
私の斜め前に陣取り、私の大事な場所をジーっと見ているではありませんか。
ウソだろ?
その男は少しずつ移動しながら渡しに近づいてきます。
横に並びました。
ああ、これでアソコを見つめられなくて済む。
ん?
まだ見てる。
露骨に見てる。
男はさらに距離を詰めてきます。
たまらず私は別の浴槽に逃げました。
すると男もついてくるではありませんか。
今度は私はサウナに移動しました。
やはり彼はサウナにも入ってきます。
私の前に仁王立ちになり、ハァハァ言っています。
他の客も異変に気づいたようです。
みんながそのゲイの方を見たので、彼は去って行きました。
だが、それで終わりではありませんでした。
私が湯船に浸かっていると、またあの男が隣に座ってきたのです。
最初のうちは手を平泳ぎのようにヒラヒラとさせていたのですが、そのうち真っ直ぐに私のアソコに向けて手を伸ばしてきたのです。
ここは公衆浴場です。
まわりには他の人も大勢います。
なので身に危険は感じません。
それでも、です。
男に体を触られるのは嫌です。
ここはキッパリと言うしかありません。
「I'm not GAY!」
だが、彼はひるみません。
「I like you.
I want to touch you.」
暴力こそふるいませんでしたが、彼はかなりしつこかったです。
「私はアジア人のボーイが好きだ。
君を気持ち良くさせてあげられるよ。」
けっこうです!
「Why not?」
ダメにきまってるだろっ!
そう言っている間も、彼の手は私の股間の方へ伸びてきます。
なんだか蕁麻疹が出てきました。
彼は65歳。
デンマークから来ているそうです。
家族もいるとか。
いったいどういう父親を演じているんだろう。
悪い人ではなさそうだったので、しばらく彼と話していました。
「君のモノは実にいい。
私は君のアソコが大好きだ。
Suckさせてくれないか。」
いや、日本人のは小さいでしょ。
黒人とかの方が大きくていいんじゃないんですか?
「いや、あれはダメだ。
だが君のは素晴らしい。」
なんかほめられても全然うれしくありません。
「君は何歳だ」
40歳です。
「えっ!
20歳くらいかと思った。
私は若い男の子が好きだ。」
どうやら急速に彼は私に対する興味を失ったようです。
よかった。
助かった。
まわりを見れば、みんな水着を着用しています。
白いフンドシをしているのは少数派です。
しかも、そのフンドシを外して入浴しているのはゲイっぽい人ばかりです。
私の不用意な行動が誤解を招いたのかもしれません。
リラックスするはずの温泉で、思わぬ緊張を強いられてしまいました。
まあ、ゲイに迫られるのも刺激的でそれなりに楽しめたので よしとしましょう。
ホッとしたら急にお腹がすいてきました。
市場の中にレストランを見つけたので夕食にすることにしました。
ここは地元の人が利用してるようなので、おそらく安いだろうと思ったからです。
ハンガリーの定番料理「グヤーシュ」にありつくことはできましたが、値段は普通。
600円くらいでした。
そんなに安くはありません。
ブダペストの駅でこの記事を書いていると、ニコニコしながら男が話しかけてきました。
またゲイか?
違いました。
宗教の勧誘でした。
まさかヨーロッパで宗教の勧誘を受けるとは。
一度 人生を考え直したほうがいいのかもしれません。
電車の時間までには間があったので、ペギーに絵葉書を書いたりしてノンビリと過ごしたのですが、これが間違いでした。
まず、ポストが見つかりません。
地元の人に聞いても
「どこだったかなあ」
という返答。
見つけるまでかなり時間を要しました。
結局は駅の中にあったのですが・・・
次に通貨の両替。
ルーマニア のお金に変えなくてはなりません。
これにもかなり手間取りました。
大量のお札を渡され、財布がパンパンです。
お金持ちになったような気になりました。
もしかしてルーマニアでは豪遊できるかも。
最後に電車の出発するホーム。
電光掲示板のどこを探しても私の目的地の地名は表示されていません。
同時刻に発車する電車は複数あり、一つに絞ることはできません。
こんな時は駅員に聞くに限る。
ヨーロッパの駅員はあてにならないので、複数の駅員に聞いてみました。
答えはバラバラ。
チョット待てよ。
どの電車に乗ればいいんだ?
時間はどんどん迫ってきます。
駅員に聞いてもわからないものが私にわかるはずはありません。
一体どうなってるんだヨーロッパの鉄道システムは!
出発の時間になったので、一番しっかりしてそうな駅員を信じることにしました。
予約をしていたはずなのに、その席には他の人が座っています。
私の名前も書いてありません。
なんだかいやな予感。
列車を間違えたか?
いったいこの電車は私をどこに連れて行ってくれるんだろう。
楽しみだなあ。
うたた寝をしていると駅員に起こされた。
「どこまで行くんだ?」
ブラショフ。
「この電車はブラショフには行かない。」
いいんですよ。
そんな予感はしてましたから。
じゃあ私はいったいどうしたらいいんですかねえ。
眠たさも手伝って、投げやりになっていた。
「この車両は切り離される。
隣に移れ。」
よかった。
ブラショフには行けるのか。
これで眠れそうだ。
隣の車両はうるさそうな若者のグループがいたので、さらにその隣に移った。
ここなら静かだ。
と思っていたら、次の駅でうるさそうな夫婦が乗り込んできた。
荷物を10人分くらい積み込んでいる。
一体何人乗り込んでくるんだ?
しかし、列車が発車してもその夫婦の他には乗って来なかった。
どんだけ土産物買い込んでるんだよ。
しかも夜行列車に。
今夜も眠れそうにない。
がんばれ、俺!
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