ドブロヴニク クロアチア















ドブロヴニク クロアチア
スプリットにはまだ朝早いうちに着いた。
幸い、ドブロヴニク行のバスもすぐに来る。
今回の旅はユーレイルパスを使わずにバスを多用したのでお金がみるみる減っていく。
夜行バスの中では熟睡できない。
だからこのドブロヴニク行のバスの中でも仮眠をとって、少しでも体力を回復させねば。
しかし、とても眠れなかった。
バスはアドリア海の沿岸沿いを走る。
しかも今日は快晴。
青い海、青い空。
そして白い壁に赤茶色の屋根の家々。
なんて美しいんだ。
この景色を見ずにいったい何を見ろと言うんだ。
結局 眠れなかった。
教訓
スプリットからドブロヴニク行のバスに乗る時は、左側に座るべし。
バスはドブロヴニクに着いた。
バスから降りた途端、
「コンニチハ」
と日本語で話しかけられた。
もちろん知らない人だ。
誰かと勘違いしているのだろうか。
話をよく聞くと、ホテルの客引きのようだ。
いいねえ。
さすがは世界に名だたる観光地。
私が今夜の夜行バスに乗ってザグレブまで行くから宿はいらない、と断ると呆れていた。
「ドブロヴニクに一泊もしないですって?」
ここは街の西の外れ。
ここから旧市街へはバスを使わなければならない。
ところがこのバスのチケットカウンター、対応が最悪なのである。
窓口が閉まっていたのでガラスを叩くと、隣へ行けという。
じゃあなんでそこに座ってるんだ?
隣の窓口の姉ちゃんも、とても横柄な態度。
慣れないクロアチアのお金に私がモタモタしていると、
「Come On!」
と怒鳴られた。
どのバス停なのか聞いても、
「そこ」とか「あっち」とかしか言わない。
バスのナンバーを聞いてもハッキリとは言わない。
何度も聞き直さなければならなかった。
指を使うなりしてくれれば もっとスムーズにいくのに。
今夜の夜行バスの予約もしたのだが、どうも的を得ない。
もっといろいろと聞きたかったのだが、とてもそんな雰囲気ではなかった。
バスのチケット売り場の横にインフォメーションセンターがあった。
ここならもっとましな対応をしてくれるだろう。
甘かった。
むしろさっきよりも悪いくらいだ。
何を聞いてもロクな回答が返って来ない。
私のクロアチア人に対する第一印象は最悪なものになった。
ところが、このむしゃくしゃした気持ちは、バスがピレ門に到着した途端に吹き飛んだ。
今までいくつものヨーロッパの観光地を回って来たが、このドブロヴニクはそのどれとも雰囲気が違う。
どこか南国を思わせる。
とても開放的な気分になる。
ついついアイスクリームなぞ買ってしまった。
もう11月だというのに。
11月と言えば、今頃京都は紅葉のシーズンが始まっているんだろうな。
とてもアイスクリームなんて食べる気候じゃないはず。
今日はこのドブロヴニクでのんびりしよう。
城壁の上で長く過ごす為に、食料や飲み物を買い込んだ。
そうだ。
城壁の上で絵葉書も書いてしまおう。
旧市街を取り囲む城壁の上はまさにパラダイスだった。
あまりの気持ち良さに 思わず叫び出したくなる。
こんな時、一人で旅行しているとつらい。
この喜びを 誰とも分かち合うことができないなんて。
空は青く、海は蒼い。
真っ白なカモメがまぶしい。
そしてドブロヴニクの旧市街の街並み。
なんて美しいんだ。
来てよかった。
しかも天気は最高。
これ以上何を望むことがあるだろう。
城壁の上で、ソーニャに持たせてもらったデザート、プレクムルスカ・ギバニツァを食べた。
私はなんて幸せな男なんだろう。
今日はクロアチアでは祝日なので、荷物の預かり所は休みだという。
なんだって?
観光地が祝日に休んでどうするんだ。
彼らは商売をする気がないのか?
今日開いている荷物預かり所はバスターミナルまで行かなければ無いという。
というわけで、重い荷物を背負ったまま一日中歩くハメになってしまった。
暑い。
とにかく暑い。
シャツ一枚しか着てないのに汗をかいてしまった。
あろうことか、海の中には泳いでいる人がたくさんいる。
本当に今は11月なのだろうか。
私も今すぐ海に飛び込みたい。
ドブロヴニクで海水浴。
こんなに贅沢なことは他には思いつかない。
水着を持って来なかったことを後悔した。
この城壁は3時に閉まってしまう。
時間ギリギリまでここで過ごそう。
問題はその後だ。
ロヴリイェナツ要塞は何時まで開いているのだろうか。
スルジ山のケーブルカーはどうか。
城壁の係りの人に聞いたら、2時か3時までだと言う。
なら急がねば。
しかし、別の係りの人に聞くと真夜中までやっているというではないか。
真相を探るべく、さらに別の係りの人に聞いた。
6時までだと言う。
日本人の観光客とすれ違ったので聞いてみたら、5時までだと言う。
面白いくらいに、皆 異なる時間を言ってくれる。
こういう時はインフォメーションセンターだ。
8時までらしい。
これが公式見解だ。
ちなみに「地球の歩き方」によると、スルジ山へのケーブルカーは戦争で破壊されて現在は残骸しか残っていないそうだ。
へぇー。
じゃあ今 山を登って行っているあれは一体なんなんだろうねえ。
ケーブルカーには時間の余裕があることが判明したので、まずはロヴリイェナツ要塞に行くことにした。
インフォメーションセンターによると、ここは6時まで開いているらしい。
ところが看板には4時までと書いてあるではないか。
急がねば。
ロヴリイェナツ要塞に到着すると、係りの人が私を見て舌打ちした。
看板を見ると3時までと書いてある。
だが今は2時55分。
「五分だけだぞ」
エラそうに念を押された。
本当にこの国の人は働くのが嫌いらしい。
こうなると、ケーブルカーが本当に8時まで開いているのか怪しくなってきた。
チケット売り場で聞くと5時までだという。
なんてこった。
インフォメーションセンターまで信用できないのかこの国は。
私は断言する。
クロアチアは不親切でいいかげんな国だ。
ただ、景色は最高。
スルジ山から見るドブロヴニクは文句なしに美しい。
この絶景を眺めながら食事にした。
長い間憧れていたこの眺めを目に焼き付けるべく、一時間ほどジーッと見つめていた。
それでも飽きない。
日が暮れてきたので山を降りた。
この景色は絶対に忘れない。
夜行バスの時間までにはかなり余裕があったので、ドブロヴニクの旧市街をブラブラする。
ありこちで日本語が聞こえてきた。
ここは本当に日本人に人気のあるスポットなんだな。
大きなリュックを背負って歩いていると、しょっちゅう声をかけられる。
「いい宿を紹介するよ」
他の観光地ではこんなことなかったのに、
ここだけなぜだろう。
疲れた。
そろそろ体力の限界だ。
バスの時間まではまだまだあるのだが、重いリュックを担いで動き回るのはもう無理だ。
今、この日記はバスの待合室で書いている。
長距離バスが到着するたびに、ホテルの客引きたちが飛び出して来る。
だが結果はかんばしくない。
どの乗客もすでに宿は決まっているようだ。
今日は本当に疲れた。
明日こそはザグレブでのんびりしよう。
ザグレブでは特にこれといって見たいものはない。
本当はプリトヴィツェまで足を伸ばしたいのだが、それをやってしまうと体を壊してしまいそうなのでやめておこう。
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