(ウィーン オーストリア)
今日はチェコ共和国のプラハから、オーストリアのウィーンまで移動。
観光もしっかりしたかったので、朝の5時に出発することにした。
だが、プラハでのホストのアパートは、中から外に出るときにも鍵が必要なので、エヴァも五時に起きるはめになった。
本当に申し訳ない。

チェコのお金を処分したかったのだが、まだ朝早く、両替商は開いていない。
仕方がない。ウィーンで交換することにしよう。
さすがに早朝なので、ウィーン行きの電車はすいていたのだが、乗り合わせた家族がやけにうるさく、あまりよく眠れなかった。
何事もなくウィーンに到着。
ウィーンと言えば、世界でも指折りの観光都市。
だからなんの準備もしていなくても、自動的に楽しめるものだと思っていた。
が、到着した駅は殺風景で何もない。
どこに何があるのかもわからない。
外貨の交換所や、インフォメーションセンター、土産物屋が所狭しと並んでいる風景を期待していたのだが、
なんだかごちゃごちゃしていて、薄汚い。
これが本当に「音楽の都」ウィーンか?
ロンリープラネットの地図はわかりにくい。
街の様子を把握するために、自分の足で歩いて、実際に地図と照らし合わせてみる必要がありそうだ。
いろいろ批判もされているようだが、私には「地球の歩き方」の方がロンリープラネットよりも数段使いやすい。
痒い所に手が届いているのだ。
少々過保護すぎるきらいがあるが。
しばらく駅の周辺を歩いているうちに、銀行を発見。
もう用済みのチェコの通貨をユーロに交換した。
手持ちのお金が増えたため、なんだかホッとする。
コインロッカーが見つからなかったので、重い荷物を抱えたまま歩き回ることになった。
なんだか気分まで重くなる。
ウィーン市内の交通システムがよくわからなかったので、「ウィーンカード」を購入。
少し高い気がするが、3日間全ての交通機関が乗り放題になる。
これで、道に迷っても追加料金を取られる心配はない。
しかも、詳細な交通マップまでついてきた。
なんとか移動できそうだ。
マクドナルドを見つけたので、Wi-Fiの有無を確認。
この作業が、もうすっかり習慣になってしまった。
FREEのWi-Fiがあるものの、おそろしく遅い。
まあ無料だから文句はいえないか。
ロンリープラネットの指示に従い、まずはStephnsdomへ。
とても複雑に思えたウィーン市内の交通網も、勝手がわかってくると実に使いやすい。
地下鉄、バス、トラムが縦横無尽に張り巡らされている。
しかもありがたいことに、待ち時間がほとんどない。
たとえ電車を乗り過ごしても、数分以内に次の電車がやってくるのだ。
だが、街の中心部はものすごい混みよう。
人が多すぎて、満足に歩けない。
私はウィーンに対して、もっと静かなイメージを持っていたのにがっかりだ。
まあ、私もその大勢の観光客の一人なのだから文句を言える立場ではないのだが。
それでもStephnsdomは圧巻だった。

さすがはオーストリア。
威厳を感じさせる。
ただ残念なことに、工事中のため一部にカバーがかけられていた。
これがなければもっと素晴らしかっただろうに。
これで、ウィーンにまた来る口実ができた。

その後もロンリープラネットの推奨コースを辿った。
広い道を歩いていても、急に細い道に変わって心細くなる。
通りの名前の確認の仕方を把握するまでは何度か迷った。
もっとも、こういう街は迷った方が楽しいので気にしない。

Hofburg地区はロンリープラネットが推奨するだけあってとても刺激的だ。
何組ものツアー客が通りを埋め尽くす。
豪華な建物群は、これぞオーストリア、と言わんばかりだ。

ガイドブックに書いてあるとおり、リングの内側はかなり小さい。
徒歩で十分回れる。
一通り見て回るのに、さほど時間はかからなかった。

もちろん市内には無数の美術館があるので、全てを見るためには数日を要するだろう。
しかし、残念ながら、私は芸術にはあまり興味がない。
市内観光は切り上げて、ウィーンでのホスト、カールに連絡した。
実はこのカールという男、いわく付きの人物なのである。
彼は男しかホストしない。
だから最初は、彼はゲイなのだと思っていた。
そして実際、彼はゲイだった。
しかし、ただのゲイではない。
彼はヌーディストなのだ。
カールは、家の中では一切服を着ない。
素っ裸で過ごすのだ。
それでも良かったらどうぞ、
というのが彼の条件だった。
そりゃあ女性をホストすることは不可能だわな。
しかも彼の趣味はマッサージ。
怪しすぎる。
ゲイでヌーディスト。趣味はマッサージ。
最悪の組み合わせだ。
できることなら余計な危険は冒したくない。
だが、ウィーンは超人気都市。
他のホストがすんなり見つかる保証はない。
カウチサーフィンの彼のレファレンスは全てポジティブばかりだ。
そんなに危なくはないだろう。
もっとも、レファレンスを残したカウチサーファーが全てゲイだった、
という可能性もなくはないが。
時間きっかりにカールは駅に現れた。
身のこなしにも一切無駄がない。
どうやら彼は、厳格な性格の持ち主のようだ。
私の彼に対する第一印象は、
「恐怖」
だ。
ニヤニヤしながら私の目をじっと見つめる。
気のせいか、私の顔を見ながら舌舐めずりをしたような気がした。
背中に悪寒が走る。
「こいつ、間違いなくゲイだ」
直感的にそう思った。
ヌーディストでゲイ、趣味はマッサージ。
この時私は、彼をホストに選んだことを後悔した。
カールは豪華なマンションに住んでいる。
駅からすぐ近く。
セキュリティーも厳しい。
しかも市内が見渡せる高層階。
どうやら彼はかなりのお金持ちらしい。
一通りウィーン市内や、彼のマンションについて説明してもらった。
カールの話には一切の無駄がない。
まるで軍人か、有能なビジネスマンのようだ。
でも、彼といるとあまりリラックスできない。
まるで自分が、猫と一緒に暮らしているネズミになったような気がするからだ。
それでもカールはとても親切だった。
詳細な地図をくれ、効率的な移動の仕方やウィーン市内の見所を教えてくれる。
さすがはオーストリア生まれの地元民。
頼りになる存在だ。

お腹が減っていたので、カールの車でレストランへと向かう。
ウィーン郊外にある、伝統的な食堂に連れていってくれるという。
もちろんガイドブックには載っていない。
これぞカウチサーフィンの醍醐味だ。
この村にはいくつものレストランがあり、彼らは農業を営んでいる。
だから素材は新鮮だ。
交通の便は悪く、車がないと来れない。
普通の観光客はまず来ない。
もちろん英語のメニューは無い。
カールは丁寧にドイツ語のメニューを説明してくれる。
オーストリアにはたくさんの魅力的な料理がある。
とても自分では選べない。
全てカールにお任せした。
少しだけ彼を信じてもいいかな、という気になった。
ここではビールではなくワインを選ぶように、とカールに言われた。
この村の全てのレストランは独自のワインを作っており、
お互いにその味を競い合っているのだとか。
レストランの雰囲気はとても落ち着いている。
料理やワインの味も最高。
おまけに値段も安い。
本格的なオーストリアの料理が、日本のファミレスよりも安く食べられるのだ。
ワインまで頼んだというのに。
観光客向けのレストランに行くことがバカらしくなる。
カウチサーフィンやっててよかった。

すっかり気分がよくなって、急に眠たくなってきた。
まさかカール、私のワインに睡眠薬を入れたんじゃないだろうな。
だがここで眠る訳にはいかない。
カールの私を見る目つきがなんだか変だ。
私の唇をジッと見つめている。
そして、たまにニヤリと笑う。
まるで何かを想像しているようだ。
きっと彼の頭の中では、私の口が彼のイチモツをくわえているのだろう。

ゾッとした。
こんな感覚は生まれて初めてだ。
私は男だから、今までこんな気分になったことはない。
女性はいつもこんな感覚を味わっているのだろうか。
いやらしい目つきで女性を見ることはとても罪なことなのだと、この時初めて身を持って知った。

彼の部屋に戻り、シャワーを浴びて出てくると、私の寝床が用意されていた。
自分の目を疑った。
カールの枕の隣に私の枕が並べられている。
一つのベッドで彼と一緒に寝なければならないらしい。

「自分の寝袋があるから、俺は床で寝るよ」と私が言っても、
「いや、ダメだ。そんなことは私が許さない。」とカールは有無を言わせぬ口調で私に命令する。
ひえええええ。怖いよー。
さらに恐ろしいことに、カールは全裸。
足を広げて、自分のイチモツを見せつけるようにベッドに横たわっている。
そして私の目をジッと見つめて微笑んでいるではないか。
ゲイのルールは知らないが、カールの意思表示は明らかだ。
「うわあ、俺、誘われてるよ。ゲイに誘われちゃってるよ。」
ごめんなさいお父さん、お母さん、エマ、そしてペギー。
私は今夜、汚されます。
危機的な状況にあるにもかかわらず、睡魔には勝てない。
昨日の夜はほとんど寝ていないし、今日は一日中ウィーンの街を歩き回ったのだ。
カールの隣に横たわり、目を閉じる。
すぐそばに全裸の男がいることは、なるべく考えないようにした。
私はすぐにでも眠りたかったのだが、カールはなかなか私を寝かせてはくれない。
目をギュッとつぶっている私に、いろいろと話しかけてくる。
「屋上にあるプールに行かないか」、と誘ってくる。
プールまでついてるのか、このマンションは。
なんて豪華なんだ。
眠たそうな私の様子を見て諦めたのか、カールはそれ以上しつこく誘ってはこなかった。
しばらくして、枕元の電気が消える気配を感じた。
よかった。
これで眠れる(はず)。
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