









トゥルク (フィンランド)へ
トゥルク行きのフェリーは7:10に出港するので、朝の5:00に起きた。
私だけではなく、ジアドもだ。
日曜の朝だというのに、本当に申し訳ない。
彼はフェリー乗り場まで車で送って行ってくれるという。
申し訳ないので私が断っても、譲らない。
ジアドの家からはバスや電車の接続が悪く、車で行った方が圧倒的に速いらしい。
早朝なので車は少なく、あっという間に港に着いた。
本当にジアドにはどうやって感謝したらいいのかわからない。
フェリーのチェックインは機械で行ったが、eチケットは英語表記ではないのでイマイチわかりにくい。
世界中から観光客がこの船に乗るだろうに、なんなんだろうこの不親切さは。
フェリーのチケットは一番安いデッキクラスを買った。
だがeチケットには私の部屋番号は書いていない。
まさかと思ってインフォメーションセンターで聞いたら、デッキクラスには部屋は無いそうだ。
勝手に船内をウロウロしといてくださいということらしい。
なんてこった。
行きのフェリーは昼便だからまだいい。
しかし、帰りは夜行便を予約してあるのだ。
いったいどこで寝ろというのか・・・
雨風をしのげるだけマシか。
朝日が登ってきたので甲板に出た。
というより、私には他に居場所がない。
甲板には誰もいない。
ご飯をこっそり食べるチャンスだ。
昨日の夕食の残りをジアドが袋詰めにしておいてくれたものを食べる。
フェリーの乗客は金持ちそうな人が多く、私のようなバックパッカーは他には見当たらない。
みんな高そうなレストランで食事をしている。
なんだか急に自分がみじめに思えてきた。
食事を終えて、旅行の計画を練っていると、一人の男が近づいてきた。
私に握手を求めて来る。
もう片方の手にはウィスキーの瓶。
どうやら酔っ払っているらしい。
彼の名はオッセ。
フィンランド人で、BMWのセールスマンをしていたらしい。
だが、いきなり解雇された。
それで朝っぱらから飲んだくれているのか。
目は座っているが、私には危害を加える気はないらしい。
フィンランドの話も聞きたかったので、しばらく彼の話に付き合うことにした。
彼は二度 結婚している。
合計で五人の子供がいる。
私とはそんなに変わらない年齢なのにとても大所帯だ。
うれしそうに子供達の写真を見せて来る。
ふと疑問に思った。
彼の家族はこのフェリーには乗っていないのだろうか。
私なんかとしゃべっているより、かわいい娘達と一緒に居た方が楽しかろうに。
だが、そのその話題に触れると急に怒りだしそうな気がしたのでやめておいた。
今日は快晴で、太陽がとても気持ちいい。
それでも海の上の風は冷たく、レインコートを着ていないと寒い。
それにもかかわらず、オッセは半袖のシャツ一枚だ。
フィンランド人は身体の造りが違うらしい。
彼はラップランドの出身らしい。
私がトナカイの肉を食べたがっていることを知ると、ラップランドに来い、と言う。
ヘルシンキなどの都会では、本当のトナカイ料理は食べられないらしい。
ロシアの話になると、オッセの鼻息が荒くなる。
どうやらロシアが大嫌いらしい。
彼が私には聞いてくる。
「で、お前はどこの国が嫌いなんだ?
正直に言ってみろよ。
わかってるさ。
アメリカだろ。」
いや、別にきらいじゃないけど・・・
じゃあ、どこの国が嫌いなんだとしつこく聞いてくるので、北朝鮮と答えておいた。
だが彼は北朝鮮のことを知らなかった。
中国の一部か?
とか言っていた。
ウィスキーの瓶が空になったらしく、オッセが新たな酒を買うために席を立った。
「I'll be back!」
と何度も言いながら。
これ以上酔っ払いの相手をするのも面倒なので、私も席を移動することにした。
ちょうど船はオーランド島に寄港するところで、向きをグルグルと変えている。
身体が冷えてきたので船内に入った。
この船はジャグジーやカジノなどの豪華設備が自慢なのだが、どうも行く気にはなれない。
日の当たる場所で、海を眺めながら昼寝することにした。
それにしても、フェリーの中にはやたらと子供が多い。
あちこち走り回って、うるさいことこの上ない。
日曜日だからだろうか。
あまりにも天気がいいので、もう一度甲板に出てみることにした。
せっかく目の前に大海原が広がっているのにキャビンに閉じこもっているのはもったいない。
青い海を眺めながら、エマにもらったチョコレートを食べることにしよう。
寒い!
こんなに晴れてるのに寒い。
風がものすごい勢いで吹いている。
どうりで甲板には誰もいないわけだ。
鼻水をすすりながらエマにもらったチョコレートを食べる。
ウィスキー入りなのだが、つぶれてリュックの中がベトベトになっていた。
スウェーデンで買ったお菓子も食べた。
チョコレートの中にキャラメルが入っているのだが、これがとても固い。
普通のキャラメルなら口の中で溶けるのに、これは歯にくっついたままだ。
あまりの寒さに、せっかくのおやつを味わう余裕は無かった。
船内放送が流れる。
あと三十分でトゥルクに到着すると言う。
え?
なんか早くないか。
遅れることはあっても、予定より早く着くことはないと思っていたのであせった。
そう言えばスウェーデンとフィンランドの間には時差があるんだっけ。
忘れてた。
ドカッ、ドカッっと大きな音がする。
どうやら若者が殴り合いの喧嘩をしているらしい。
酔っ払いのオッセといい、フィンランド人というのは血の気が多いのだろうか。
ここトゥルクでもカウチサーフィンを利用する。
マルコとクセニアの指示通り一番のバスに乗ろうとしたら目の前でドアを閉められた。
バスのドライバーからは私が見えているはずなのに。
例のごとく、バスの中には電光掲示板は無い。
車内アナウンスもない。
この状態で、どうやって降りるバス停を確認しろというのだろうか。
隣の女性に聞いてみたが、知らないという。
マルコとクセニアに電話したがつながらない。
後ろに座っている男性に聞いたら、今度は丁寧に教えてくれた。
助かった。
待ち合わせ場所の広場に到着しても、まだ問題は残っていた。
彼らに電話することができないのだ。
メールも送れない。
今回のヨーロッパ旅行では同じことが度々起こった。
ある国ではちゃんと携帯電話が使えるのに、別の国では役に立たないのだ。
こういうこともあろうかと、予め彼らの家の周辺地図を保存しておいた。
iPadを開く。
画像が崩れていた。
モザイクのようになっていて、肝心なところが見えないのだ。
なんてこったい。
この寒い寒いフィンランドで野宿か。
と、その時、クセニアからメールが届いた。
「もうトゥルクには着いた?
あなたからの連絡を待ってるのにどうしたの?
何かトラブルでも?」
今 広場にいる、と即座に返信した。
不思議なことに、返信は問題なくできる。
「すぐに行くからそこを動かないで!」
クセニアからすぐに返事がきた。
とにかくこれで助かった。
クセニアとマルコは自転車で現れた。
とても穏やかで親切なカップルだ。
私がトナカイを食べたがっていることを知ると、わざわざホテルの受付まで行って聞いてくれた。
近くにバイキング料理のレストランがあるらしい。
彼らのおかげで念願のトナカイ料理を食べることができた。
意外にも、とても柔らかい。
もちろんフィンランドのビールも味わいましたよ。
店内はこれでもか、と言わんばかりにバイキング風の内装を施している。
クマの剥製、鹿の毛皮、バイキングの武器など。
ウエイトレスもバイキング風の衣装を着ていて、とても感じの良い人だった。
マルコはフィンランド人だが、クセニアはロシア出身。
二人とも寿司が大好きで、日本にもかなり興味があるらしい。
日本人の友達もいるとか。
食事のあと、彼らの家まで歩いた。
フィンランドでの私の目的は、トナカイ料理とムーミン村とサウナだと伝えると、いろいろと教えてくれた。
ここがカウチサーフィンのいいところだ。
彼らのマンションには共同のサウナがあるので、明日使わせてもらうことになった。
観光地にあるような豪華なサウナではないが、実際に地元のフィンランド人が使っているものだ。
私にとってはそのほうがありがたい。
せっかくカウチサーフィンをしているのだから、普通の観光とは違ったこともしてみたい。
ここでも快適な個室があてがわれた。
今のところ、ハズレのホストはなし。
ツイてる。
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