ノルウェーヘ




ノルウェイへ
フィンの家からコペンハーゲンまでは順調だった。
だが、コペンハーゲンの駅は英語表記が少なく、どうも使い勝手が悪い。
インターネットが使える設備があった。
もちろん有料だ。
そのため、もう使うことの無いポンドを両替した。
が、駅の構内に郵便局を見つけてしまったので、ペギーに絵葉書を書いてしまった。
セブンイレブンで食べ物を買うのにも時間がかかった。
慣れない通貨の計算はどうも苦手だ。
感覚がつかめない。
あせるとロクなことがないので、気持ちを落ち着かせるためにトイレに行く。
例のごとく受付に人が座っている。
またトイレにお金を払わなければならないのか。
小銭を探していると、あることに気づいた。
誰もお金を払っていないのである。
払わなくてもいいのか。
じゃあ、この受付と係員は何のためにいるんだ。
今日乗る列車は調べてある。
が、念のため、窓口で電車を確認する。
愛想の悪いねえちゃんだった。
乗り換えなどいろいろ聞きたかったのだが、どうもそんな雰囲気ではない。
時間が迫って来たのでホームへ向かうが、なかなか見つからない。
どうもデンマークとは相性が悪いようだ。
ホームで駅員を捕まえて聞くと、この電車だという。
だが、掲示板の表示は私の目的地とは違う。
なにかしっくりとこない。
別の駅員がいたので聞くと、この電車ではなく、次の電車だという。
危ないところだった。
やはり最後に頼りになるのは自分しかいないのか。
電車がやって来た。
だが、電車の表示と掲示板の表示が違う。
いったいどうなっているんだ。
乗るべきかどうか悩んでいると、駅員がけたたましく笛を吹く。
この音色に、死刑執行のような不吉な印象を受けた。
何か違うような気がする。
だが、駅員に聞いた時間とホームは間違いなくこれだ。
ドアが閉まる瞬間に、意を決して飛び乗った。
最初に目が合った乗客に聞いてみる。
この電車は違う場所に向かうらしい。
なんてことだ。
やってしまった。
時刻表を開いて、打開策を考える。
「May I help you?」
初老の男性が声をかけて来てくれた。
彼によると、マルメで乗り換えなければならないらしい。
時刻表で確認すると、マルメからヨーテボリの電車はある。
助かった。
なんとか今日中にオスロにたどり着けそうだ。
男性も一緒にマルメで降りてくれた。
親切にも駅員に訪ねてくれる。
駅員の答えはまたまた私を混乱させた。
なんと、この電車であっているという。
だが、別の車両だ。
一つの列車に、複数の目的地に向かう列車が接続されている。
ガイドブックで事前にこの知識は持っていた。
なんともわかりにくいシステムだ。
しかし、郷に入っては郷に従わなければならない。
とにかくヨーテボリ行の列車に乗ることはできた。
これで数時間はゆっくりできる。
またもや親切な男性に救われた(?)
感謝、感謝。
時折、列車の窓から海が見える。
北海だろうか。
雨も風も強く、空は灰色。
これから行くスカンジナビア地方は、年中こんな天気らしい。
なんだか気分が滅入ってきた。
雨だとなにかと行動が制限される。
電車の中では一騒動あった。
無賃乗車が発覚したらしい。
外国人らしきその男性は、言葉が不自由なようだった。
係員に、パスポートや身分証明書の提示を求められていた。
二人の女性職員はバッチリと黒い制服でキメていて、腰には手錠がぶら下がっている。
一人は目の覚めるような赤い髪の色だった。
何かのプレイを見ているようで、思わずニヤリとしてしまう。
ヨーテボリからオスロへの列車も一等車を利用した。
電源があるだけでなく、インターネットが使えるからだ。
これでたまっていたメールの処理ができる。
と喜んだのも束の間、気分が悪くなってきた。
電車が激しく揺れるため、画面を見ているうちに酔ってしまったのだ。
オスロでは夜行列車とフィヨルド観光に必要なチケットの手配をした。
そのためにノルウェーの通貨も入手した。
今回の旅行で初めてシティバンクのカードを使った。
準備は整った。
ベルゲン行きの列車に乗り込み、あとは出発を待つのみ。
寝台車ではなく、普通の座席車にした。
眠ることができるだろうか。
オフシーズンの、平日の夜だというのにけっこう乗客はいるもんだな。
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