私は蚊になりたい

フランス人のカウチサーファー、マックスと、
ルーマニア人のカウチサーファー、デリアは、いい人たちだ。
でも、どうもしっくりいかない。
会話がないことはないのだが、なぜか尻つぼみになってしまう。
もちろん、私の英会話力がその大きな原因の一つなのだが、
どうも、それだけではないらしい。
彼らはとても礼儀正しい。
あからさまに私にガイドを頼んだりはしない。
「マサトは今日は忙しい?」
いそがしい、と答えると、明らかに落胆した表情を見せる。
彼らの今日の予定は嵐山の竹林と、金閣寺と、伏見稲荷。
地図を見せながら、道順を教えた。
彼らは旅行のプロだ。
私がいなくてもなんとかなるだろうと思っていたが、
やはり不安なようだ。
仕方がないから一緒に行くことにした。
あまり気乗りしなかったが。

いやな予感は必ず当たる。
一緒に歩いていても、なかなか盛り上がらない。
たいていのカウチサーファーは、嵐山の竹林を見ると歓声をあげる。
だが、この二人にはそれがない。
ガイドしていてもつまらない。
今は梅雨の真っ最中。
伏見稲荷も湿度が高かった。
そのせいか、蚊がたくさん舞っている。
だが不思議な事に、被害はデリアに集中した。
蚊も人を選ぶのだろう。
祇園を歩いている時、デリアが私に質問してきた。
「道行く人が私のことをチラチラ見るんだけど、
私、なにかおかしい?
特に足を見られてるような気がするんだけど、
このマニキュアが派手なのかな?」
どうやって説明すればいいんだろう。
デリアは日本人離れした、とてもきれいな顔をしている。
プロポーションも抜群だ。
その上、こんがりと日焼けしている。
とてもおいしそうなのだ。
英語で微妙なニュアンスを表現するのは難しいので、
ストレートに言った。
「デリア、君がとてもセクシーだからだよ。」

さすがに一日中一緒に歩いていると、
徐々に打ち解けてきた。
会話の合間に、笑い声も起こるようになってきた。
今日はずっと歩きっぱなしだったので、本当は早く家に帰りたかったのだが、
彼らが日本の居酒屋に行きたいというので、
河原町の「和民」で食事をすることにした。
お酒が入ったせいか、
意外にも盛り上がった。
よかった。
けっこう居酒屋が気にいってくれたようだ。
今日はお互い、気分良く眠ることができそうだ。
しかも、支払いは彼らがもってくれた。
しまった。
こんなことなら、もっと彼らに親切にしておくべきだった。
- 関連記事
テーマ : カウチサーフィン(Couch Surfing)
ジャンル : 旅行