カウチサーフィン(CouchSurfing)と愉快な仲間たち

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ティミショアラ(ルーマニア)~ベオグラード(セルビア)

ティミショアラ(ルーマニア)~ベオグラード(セルビア)


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ティミショアラの駅


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まだ夜も明けきらないというのに、駅前はかなりの人で混雑していた。
さすがルーマニア西部の拠点都市。
この街には牛も馬車も走っていそうにないな。


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ひっきりなしにトラムが目の前を通り過ぎる。
こんな朝早くから、みんなどこへ行くのだろう。

ここはある意味、日本よりも都会かもしれない。


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ベオグラード駅前(セルビア)

いやな雨だ。
東ヨーロッパの夏は毎日雨ばかりなのか?
体中からカビが生えてきそうだ。


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「この電車に乗って、ノヴィ・サドまで行こうか?」

そう考えている間に土砂降りになってしまった。
駅から一歩も外に出ることができない。
吹きさらしの寒い構内に釘づけだ。



==========================================


バイアマーレを出た時は比較的空いていた電車も、だんだんと乗客の数が増え、乗り降りする人の数も多くなってきた。
夜中の3時にこんなにも人の出入りがあるものなのだな。
いったいこの人たちはどういう生活サイクルをしているのだろう。

この電車は寝台列車ではない。
だから座席は倒れないし、そもそも寝ることを想定していない。
夜中の0時に出発して、朝の6時に到着するというのにだ。

それでも体力を温存したかった私は、4人がけのコンパートメントを一人で占有して、無理やり寝た。
かなり無茶な姿勢となるが、少しでも体を横にしておきたかった。
まだまだ体調は思わしくない。
できるかぎり体力を回復させねば。

電車の座席は木製で固く、振動がモロに伝わってくる。
乗客のざわめきもあって、本来ならとても寝れた状態ではないのだが、それでも寝るしかない。
当然のごとく、変な夢を見た。
夢の中でヘヴィメタがガンガン鳴り響いていた。
実際には電車の振動と乗客の喧騒だったのだが。
頭と首と、背中。それに腰が痛い。


最初のころは乗客が少なかったから、4人がけの座席を独占していてもなんの問題もなかったが、いつのまにか車内は満席で、大勢の人が立っていた。
それでも誰も私に文句を言う人はいなかった。
よくもまあ頭を蹴られずにすんだものだ。

ゆっくりと起き上がり、他の人のために座席を開けた、
つもりだったが、しばらくの間、誰も私のコンパートメントに座ろうとはしなかった。
薄汚い東洋人と同じ席にはなりたくないということなのだろうか。


以前ルーマニアを旅行した時は、列車が2時間以上も遅れたことがあった。
なのでこの国のダイヤなんてあてにはしていなかったのだが、
驚くべきことに、列車はほぼ定刻通りにティミショアラに到着した。

降りる前にトイレに行っておこうとしたら、車掌が外からドアをガンガン叩く。
なんだよ。
小便くらいゆっくりさせてくれよ。

私がトイレから出ると、すぐに電車は猛スピードで走り去って行った。
中には誰も乗っていない。
どうやら車庫に入れるらしい。

あの車掌は親切でトイレのドアを叩いてくれたのかもしれない。
危うく閉じ込められるところだった。




ここティミショアラから私をベオグラードに連れて行ってくれるバスは8時に到着する予定だ。
バスと言っても、乗り合いバスのようなもので、こちらが指定した場所から、指定した場所まで運んでくれる。

ルーマニア後もセルビア語も話せない私は、本来ならこんな乗り物には乗れないはずなのだが、
バイア・マーレでのホスト、アディが手配してくれた。
カウチサーフィンのおかげで、またひとつ、普通の日本人なら経験できないことを体験させてもらえた。
便利な世の中になったもんだ。

バスが私をピックアップする予定時刻まで、あと1時間半ほどある。
なにをするにしても中途半端な時間だ。

待ち合わせ場所のガスステーションに早目に着いて、メールやLINEをして時間を潰す。
貴重なバッテリーの浪費以外のなにものでもないのだが、人間、ヒマだとロクなことをしないものだ。

8:00にガスステーションを一通り見て回ったが、それらしき車はない。
きっとドライバーは遅れてくるのだろう。
ルーマニアとセルビアとの間には時差がある。
彼らはセルビア時間で待ち合わせ時間を指定してきたのかもしれない。

そう思ってのんびりと待つことにした。
1時間経ってもドライバーが現れなければ、バス会社に電話すればいい。

待ち合わせ時刻を50分ほどすぎた頃、電話が鳴った。

「おい、マサト。あんたいったいどこにいるんだ?
うちのドライバーはもう1時間もあんたを待ってるんだぞ。
黒のフォルクスワーゲンのヴァンだ」


確かに駐車場にそれらしき車が停まっている。
荷物を持って近づくと、ドライバーが血相を変えて飛んできた。

「おい、てめえっ! いったいどういうつもりだ?
約束の時間をもう1時間も過ぎているんだぞ。
なんで今頃やってきやがったんだ?」

冗談じゃない。
こっちはここで1時間半も待ってるんだ。
あんたが見つけやすいように、わざわざガスステーションの入り口で待ってたんじゃないかよ。

「待ち合わせ場所はガスステーションだ。
誰がガスステーションの外で待てと言った?
それに、どうして俺を探しに来ない?」

俺は8時に一通りガスステーション内を探したぞ。
その時にはこの車は無かった。
遅れてきたのはそっちなんだから、そっちが俺を探すべきだろう!

「俺は会社から8時に家を出ればいいと言われた。だからここに着いたのは8:15だ。その時いなくて当然だろう。
それに俺はあんたの顔を知らない。だが、この車には会社のロゴが書いてある。そっちが俺を見つけるほうがはるかに簡単だろうが」

このガスステーションには入り口は一つしかない。
俺はそこで待っていたんだからあんたは絶対俺を見ていたはずだ。
それにこんなでかいリュックを2つも持っているんだから、俺を見つけるのなんて簡単だろ?

「おい、よく見ろよ。このガスステーションにはリュックを持った人間なんて他にもゴロゴロいるんだ。そう簡単にお前を見つけることなんてできるもんか」

俺の顔を見ろよ。明らかに東洋人の顔つきだろ?
他の人間とは容易に区別がつくだろうがっ!



一晩中列車に揺られて、意識が朦朧としているはずなのに、口からポンポンと英語がついて出た。
思わず笑みがこぼれる。

すげぇー!
俺、今、英語でけんかしてる!

私の英語はとても粗末なものだ。
普段はつっかえながらゆっくりと話す。
「あー」とか「うー」とかうめきながら。

それなのに今はどうだ。
まるでオバマ大統領のようにとうとうとまくし立てている。
(ゴメン。言い過ぎました)


お互い言うことを言ってスッキリしたのか、車内ではお互い普通に会話をしていた。
この運転手は意外と大人なのかもしれない。

彼は日本や日本を取り巻く状況を熟知していた。
とりわけ対中関係については詳しかった。
どうやら彼は中国でビジネスを展開しようとしているらしい。

今はバスの運転手をしている彼だが、冬はスキーのインストラクターをしているらしい。
今、中国ではレジャー産業が急成長していて、これからスキーが大流行する。
あの国にはまだインストラクターはほとんどいないから、彼がスキースクールを展開すれば、きっと大当たりするに違いないと言っていた。
現在、中国大使館に通いつめて、詳細を詰めているとのこと。
大使館の職員も、
「あんたのビジネスは絶対に成功する。あんたは中国におけるスキー界のパイオニアとなるにちがいない」
と太鼓判を押してくれたそうだ。


ほんとかどうか知らないが、彼が言うには、セルビア人の平均月収は300ユーロ。
もちろんそれだけでは生活していけない。

「この国にはマジシャンが大勢いるんだ。毎月の収入より支出のほうがはるかに多いのに、それでもなぜか生活している。不思議な国だろ」


ユーゴ紛争が集結して20年が経つ。
それでもまだまだこの国の経済は脆弱だ。
EUにすり寄りたいが、ロシアの助けも要る。

「戦争は形を変えてまだ続いている。」
彼はそう言った。


ルーマニア - セルビアの国境を越えて、ベオグラードに着く頃には雨模様となっていた。
駅の建物に逃げ込んだものの、待合室がない。
バス停の待合室にはチケットがなければ入れない。

wifiはなかなか見つからず、やっと見つけたwifiもすぐに接続が切れてしまう。
ベオグラードのホストからメールが届いていた。
彼女に会えるのは夜の9時。
それまでどこかで待たなければならない。

貴重なベオグラードでの一日。
いつもなら雨などもろともせず観光に勤しむ私だが、今はまだ体調が万全でない。
ようやく下痢もおさまったと思ったのに、急に便意を催した。
きっとじとじとと振る雨のせいだ。

が、まだこの国のお金を持っていない。
駅構内の両替屋で、ルーマニアのお金をセルビアのそれに交換しようとしたら断られた。
ここでは取り扱っていないらしい。

隣の国だろ?
ここは首都だろ?
交換してくれよ。
トイレに行くには金が必要なんだよ。



駅の通路にしゃがみこんで雨をしのぐ。
通り過ぎる人々は興味深そうに俺のことをジロジロ見て行く。
ときおり冗談半分で「ニイハオ」と声をかけられる。

「俺は中国人じゃない。
日本人だ!」

そう叫ぶとキョトンとした顔をして去って行く。


ガラガラと大きな音をたてて通り過ぎようとしていたキャリーバッグが、
私の前でふと足を止めた。

見ると、東洋人の男のようだ。
日本人かもしれない。

私と目があった彼は、あわてて目をそらし、再び足早に立ち去っていった。
雨に濡れてドブネズミのようになってうずくまっている人間とはかかわりあいになりたくないらしい。



外は雨がざあざあ降っている。
寒い。
こんなところにあと6時間もいなければならないのか。
今日は雨だから暗くなるのも早いだろう。


どこからともなく、小便の臭いがただよってくる。
おかしいな。
トイレからはかなり離れているはずなのに。

尿の臭いが体にまとわりついて、このままずっと取れなくなるような気がした。


携帯のバッテリーは残りわずか。
あれ?
なんで携帯の電池残量なんて気にしているのだろう。

ここはセルビア。
電話をかける相手も、メールを送ってくる人間もいないというのに。

寒い。


となりでうずくまっている男は、さっきから奇妙な咳をしている。
どこか具合でも悪いのだろうか。

彼もバックパッカーのようだが、こんなところで何をしているのだろう。
今夜はここで夜を明かすつもりなのか?
雨が入り込み、冷たい風が吹き抜ける駅構内。
こんな所に一晩中いたら、健康な人間だって参ってしまう。
安宿に泊まる金さえ持ち合わせていないのだろうか。

それにしても、寒い。


ベオグラードは嫌だ。
どこまで行っても小便の臭いがする。



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マラムレシュ地方の木造教会(世界遺産)(バイア・マーレ近郊、ルーマニア)

マラムレシュ地方の木造教会(世界遺産)(ルーマニア)でカウチサーフィン(CouchSurfing)


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ルーマニアのテレビでは、毎朝、教会の礼拝を生放送しています。
たとえなんと言っているのか理解できなくても、とても美しい歌声を聞いているだけで心がやすらぎます。
こういうのを毎朝聞いてから出かける習慣を持つ人は、その日一日、心安らかに過ごすことができるのでしょうね。


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「こんなの、マサトにはつまらないだろう?」

そう言ってアディはチャンネルを変えようとしましたが、そのままにしておいてもらいました。

確かに、私にはルーマニアの宗教のことはわかりませんが、それでも見ていたかったのです。
せっかくカウチサーフィンを利用して、普通の人の暮らしを体験させてもらっているのですから。


朝食はニワトリだったのですが、これも近所の人からわけてもらったものだそうです。
自給自足をし、村の人どうしで助け合う。
そういう習慣がまだ残っているんですね、この国には。


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夜明けとともに、アディの車で市内へと送ってもらいます。
まだ暗さが残る中、車の行く手を阻むものがあります。

あれはなんだ?


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牛の大群です。
車道の真ん中を、堂々と歩いています。
誰もクラクションを鳴らしたりなんかしません。
ここでは牛に優先権があるのでしょう。

アディの会社で車から降ろしてもらい、あとはバスで木造教会へと向かいます。


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バスを降りたところには、看板こそありますが、その他にはなにもありません。
世界遺産に登録されているというのに、商売っ気がまったくないようです。
私はルーマニアのそういうところが好きなんですけどね。


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ここからは歩き。
まだ体調が回復していないから、あまり遠くなければいいのだけど・・・


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今日訪れるのは、このふたつの木造教会。


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道中はとても快適なハイキング。
静かです。
誰ともすれ違いませんでした。

こんなに人口密度が低いのに、教会だけはやたらとあります。
人の数よりも教会の数の方が多い国。それがルーマニア。


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一つ目の教会は、それほど遠くないところにありました。
中には誰もいません。
貸し切りです。
世界遺産を貸し切り!
なんてぜいたくな旅をしてるんだ、俺は。


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教会の敷地内は墓地となっています。
墓場だというのに、美しい。
お墓の写真を撮るなんて不謹慎だとは思いましたが、あまりの美しさに、シャッターを押さずにはいられません。


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鍵がかかっていたため、中には入れませんでした。
本来なら見学することができるそうなのですが、まだ朝早かったため、誰もいなかったようです。


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二つ目の木造教会を目指して歩いていると、遠くから爆音が聞こえてきました。
牧草を積んだトラクターです。
ルーマニアのトラクターはよほど性能が悪いらしく、大きな音を鳴らす割には、ちっとも前に進んでいませんでした。


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先ほど見た教会が、もうあんなに小さくなっています。
乾草の間から見える木造教会。
ルーマニア大好き人間の私には、見るものすべてが素晴らしく思えます。


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二つ目の木造教会まではかなり距離がありました。
乗り合いバスのようなものも見えたのですが、今日は天気もいいですし、もう少し歩くとしましょう。
こんなに気持ちいいウォーキング・コースを、車でひとっ跳びしてしまうなんてもったいない。


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道の横では、牛が放し飼いにされています。
よそ者の私のことを、おそるおそる見ているようでした。
おどかしてごめんね。


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私の横を、3匹の牛が通り過ぎていきます。
首につけた鈴をカラン、カランと鳴らしながら。

この国にいると、心が洗われていくのがわかります。
ルーマニア、来てよかった。


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牧草を積んだトラクターは、相変わらず爆音をまき散らしながら走っていきます。
うるせー。


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ついに到着。
先ほどの木造教会とほとんど同じ形です。

でも、不思議と飽きません。
いつまででも見続けていたくなるような、そんな不思議な魅力をこの建物は持っています。


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ここで、ついにダウン。
まだ体力が完全には回復していないのです。

「世界遺産でお昼寝」シリーズ、第二弾です。
誰もいない木造教会を眺めつつ、心行くまで午睡を楽しむ。
これほどぜいたくなものはありません。


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しかし、いつまでも寝ているわけにはいきません。
よろよろと起き上がり、ふらふらしながら着替えます。

「侍の衣装を着て世界遺産と写真を撮る」
本日のミッションは、これにて完了。
ふぅー。


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参道の工事中らしく、かなり足場が悪いです。


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せっかくだから牛さんと一緒に写真を撮ろうとしたら、露骨に警戒されてしまいました。
あちこちで牛が大きなうなり声をあげます。

へんてこな格好をした東洋人を見たら、そりゃあ怪しいと思いますよね。


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「誰もいない世界遺産」
心行くまで楽しむことができました。
なんだかものすごく得をした気分です。

観光客も、みやげ物屋も、飲食店もない。
こののどかで落ち着いた雰囲気を、ずっと保っていてほしいものです。


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もと来た道を、またてくてくと歩いて戻ります。

のどが渇いた。
お腹もへった。

「どこかに一軒くらい店があるだろう」と思って、飲み物も食べ物も持ってこなかったのですが、甘かった。
この界隈には、一軒のお店もないのです。
村の人たちは、いったいどこで買い物しているのだろう。
やはり、すべて自給自足の生活をしているのだろうか。


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途中でペンションのようなものを見つけます。

「看板には飲み物のマークもあるし、ここならなにかありつけるかもしれない」

そう思って門を叩いたのですが、出てきたおばちゃんはまったく英語が話せません。
身振り手振りで「のどが渇いた」というジェスチャーをしたのですが、首を振るばかり。

「水くらい飲ませてくれよ!」
と思ったのですが、どうも無理っぽい。


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今日はずっと歩きっぱなしだったのに、一滴も水を飲んでいない。
これはまずいぞ。

そこで、一つ目の木造教会に水のマークがあったのを思い出しました。
「あそこまで戻れば、水が手に入るかもしれない」

そう判断して、再び教会へと戻ります。


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たしかに水はあったのですが、どうも地下水っぽい。

私はここ最近、ずっとお腹をこわしています。
この状態で地下水を飲むことには抵抗がありましたが、飲まずにはいられませんでした。

旅をしていると、安全な水のありがたさに気づかされますね。


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最後にもう一度ぐるっと一回りして、教会に別れを告げます。
こんなに単純な造りなのに、いくら見ても飽きないのはなぜだろう。


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延々と続く道。
ああ遠いなあ。


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お城のような教会が見えてきました。
ということは、バス停はもう近いはず。


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教会、教会、また教会。
ルーマニア人の教会オタクっぷりは徹底しています。


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ようやくバス停に到着。
来た時には閉まっていた売店が、今は開いています。
よかった。
これで飲み物にありつける。

中にはきれいなルーマニア女性がいて、彼女からファンタを買いました。
うまいっ!
こんなにおいしいファンタ・オレンジは初めてだ。


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バス停にたどり着いてはみたものの、この荒れっぷり。
ごちゃごちゃと張り紙はあるものの、肝心の時刻表は見当たりません。

このバス停は「生きている」のだろうか?
ほんとにバスはここに停まるのだろうか?
一抹の不安が頭をよぎります。

屋根は一応ついているものの、半透明なため、日光を防ぐことはできません。
暑い。
またのどが渇いたので、今度はアイスクリームを買いました。


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バスがいつ来るかもわからなかったので、ヒッチハイクをすることにしました。
ここルーマニアは、私が人生で初めてヒッチハイクをした国です。
そして、世界でもっともヒッチハイクをしやすい場所なのです。

というわけで、意気揚々とヒッチハイクを開始したのですが、暑い!
黒い侍の衣装は、太陽の熱を容赦なく吸収していきます。

車も通りそうになかったので、涼を求めて、売店に逃げ込みました。


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「どうだった? 車は見つかった?」

売店のお姉さんは、再び舞い戻って来た私のことを憐れむように見つめています。
まるで、「誰からも乗せてもらえなかった残念な子」を見るかのように。



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ペプシ・コーラを飲んで元気を回復した後、再び私は道路に立ちます。
空は青く晴れ渡り、清々しいです。

しかし、暑い。
車はほとんど通らないので、日陰に隠れて車が来るのを待ち、接近したところで道路に向かって飛び出します。

でも、よく考えたらこれは間違った戦法でしょう。
だって、侍の格好をした男が、いきなり木陰から刀を振り回しながら飛び出して来たら、
停まってくれるつもりの人だって、びっくりして逃げて行ってしまうかもしれません。



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それでも、すぐに車は止まってくれました。
それも、こんなに美人が!

ちょっとヤンキーぽい気もしますが、それぐらいでなければヒッチハイカーを乗せたりはしないでしょう。
「ヒッチハイクは危険だ」とよく言われますが、乗せてもらう方だけでなく、乗せる方だって危険と隣り合わせなのです。

それなのに、若い女性が乗せてくれた。
これにはちょっと感動しましたね。


彼女に限らず、ヨーロッパの女性は車の運転がうまいです。
オートマなんてほとんど走ってませんから、女性でも普通にミッション車を運転しています。
ぐいぐいとシフトチェンジしている様子は、見ていてほれぼれします。

時々彼女はすれ違う車に向かって手を上げたり、ウインクしたりします。
どうやら彼女はこの周辺では人気者のようですね。

というのも、すぐそこのガソリンスタンドが彼女の職場なので、この道路を走るドライバーとは顔見知りだということでした。

そのガソリンスタンドは市内からは少し離れたところにあります。
私のヒッチハイクはそこでおしまい。

「大丈夫よ。すぐそこにバス停があるから」
お姉さんはそう言い残してガソリンスタンドへと消えていきました。

なかなか威勢の良い、男前のお姉さんだったなあ。


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バス停では英語がまったく通じず、切符を買うのもひと苦労。
まわりの乗客も誰一人英語を理解しないのです。


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それなのに、乗客はみんな私に群がってきて、なにやらわめいています。
「一緒に写真を撮れ! 撮れ!」とうるさいです。

ルーマニアに限らず、東欧の路線バスには冷房はありません。
ものすごく暑いので、侍の衣装を脱ぎたかったのですが、まわりの乗客の雰囲気がそうはさせてくれませんでした。
ここで私が侍の衣装を脱いだりしたら、みんながっかりしそうな気がしたからです。

なので、炎天下、あつくるしい侍の衣装を着続けるはめになってしまいました。

マサト、日本のイメージアップのためにがんばってます。



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アディのオフィスに帰ってきました。
ここは冷房がガンガン効いています。
気持ちいいー!
汗がすーっとひいていきます。


アディは仕事の合間をぬって、私のためにバスを予約してくれました。
ここバイア・マーレからティミショアラまでは夜行電車で行くのですが、そこからセルビアまでは乗り合いバスを利用します。

ルーマニアからセルビアへの国境越えはなかなかややこしそうだったのですが、アディのおかげでスムーズにいきそうです。


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アディの仕事が終わるのを待ちました。
焼きたてのパンのいい匂いが鼻をくすぐります。


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バイア・マーレに立ち寄る機会があったら、ぜひアディ一族の経営するベーカリーでパンを試してくださいね。
おいしいですよー。


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まだ明るいうちに仕事を終えたアディの車で、村へと戻ってきました。
そしてすぐに夕食をごちそうになります。
至れり尽くせりだな。
私はほんとにホストに恵まれています。


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食事は大変おいしいもの、のはずなのですが、私は相変わらずお腹の調子が悪い。
そして、ルーマニアの料理というのは、とにかく濃い!
こってりとしているので、胃の調子が悪いときには、かなりこたえます。

アディのお母さんは毎回腕によりをかけてルーマニア料理をふるまってくれたのですが、
結局私はここにいる間、ずっとお腹を壊していました。
なので、ついにおいしいごちそうを心から味わうことができなかったのです。

ああ、なんてもったいないことを!


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バイア・マーレでの私のカウチ。
豪華でしょー


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市内に何か所もあるアディのお店。


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彼のお店から、いくつかの商品をいただきました。
「夜食に」ということです。
ありがたや、ありがたや。


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アディのお母さんからは、ジャムを一瓶もらいました。
そうです、あの手作りのジャムです!
これ以上のお土産はありません。

アディ一家のみなさん、この御礼はいつかきっと、必ず。


駅のすぐ近くにあるアディのベーカリーは24時間稼働しています。
なので、私の乗る夜行列車の出発直前まで、事務所で休ませてもらいました。
社長一族の客人ということで、従業員の方たちも、それはもう親切にしてくれました。
VIP待遇です。

いやはや、こんなに豪華なカウチサーフィンも久しぶりだな。


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バイア・マーレの駅構内。
ルーマニア北部の拠点駅だというのに、なんともさびしいかぎりです。


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これが私の乗る夜行列車。
ルーマニアともついにお別れ。
明日にはセルビアだ。

テーマ : ヨーロッパ旅行記
ジャンル : 旅行

バイア・マーレでジャム作り!(ルーマニア)

バイア・マーレでカウチサーフィン(CouchSurfing)、ルーマニア



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バイア・マーレでのホスト、アディの家は市の中心部から少し離れた村の中にあります。
なかなか落ち着いた雰囲気の静かな村で、ひと目でここが気に入りました。

今日は月曜日。
もちろんアディには仕事があるので、出勤のついでに車で市内まで送ってもらいました。


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アディが家族で経営しているパン屋さん。
バイア・マーレ市内に9つものお店を持つというアディ一家。
なかなか裕福な家庭のようです。
いつも鷹揚な態度をくずさない彼らからは、余裕のようなものを感じました。


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アディの会社から市内へは、この線路をまたいで抜けていきます。
踏切なんてありません。
これがルーマニア方式なのか!

なかなかスリルがあって楽しかったです。
私の他にも、たくさんのバイア・マーレ市民がこの線路を横断していました。
日本の国土交通省が見たら大泣きしそうな光景です。


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線路を抜けるとそこにはバスターミナルが。
鉄道網があまり発展していないルーマニアでは、このミニバスこそが重要な庶民の足となります。
ただ、外国人観光客へ向けた配慮はありません。
まあ、それが旅のおもしろさでもあるんですけどね。


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バスターミナルのとなりには、バイア・マーレの鉄道駅があります。
ここはルーマニア北部の拠点都市のはずなのですが、駅前でもそれほど発達はしていません。
市の中心部でもかなり静か。
ルーマニアはやはり落ち着きます。


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まだ体調は回復していなかったので、今日は一日、バイア・マーレ市内を散策します。
アディに教えられた鉱物博物館へとやってきました。

しかし、どうやら今日はお休みのようです。
本音をいうと、あまり博物館には興味がなかったのでほっとしました。


次は郊外にある民俗博物館を目指します。
アディはバスを使うように言ってくれましたが、私はあえて歩きます。

途中、旧市街区のような場所を通ったのですが、近代化されたバイア・マーレ中心部とは違い、なんだかとてもルーマニアっぽくてよかったです。

アディは地図をプリントアウトしてくれた上に、道順を詳細に書き込んでくれました。
おかげで迷わず民俗博物館にたどりつくことができました。



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民俗博物館では、ルーマニア各地の伝統家屋を見ることができます。
なかなかいいと思うのですが、本物の木造教会を見た後では、やはりもの足りません。
さっとひととおり見ただけで、すぐに出てきてしまいました。


一日かけてバイア・マーレ市内を見てまわるつもりでしたが、あまりおもしろそうな街ではありません。
公園のベンチで昼寝をして時間をつぶすことにしました。

このトイレには仮設の公衆トイレがあり、無料で使えます。
ヨーロッパではたいていトイレは有料なので、これはとても珍しいです。

ところが、いざ使おうとして、断念してしまいました。
鍵は壊れているし、タンクも見事なまでに破壊されていて、どう考えても水は流れそうになかったからです。


夕方近くまで昼寝をしていると、アディからメッセージが届きました。
仕事を終えた彼は、わざわざ車で公園まで迎えにきてくれ、その後いくつかの支店をまわりました。


そしてその後はいよいよ帰宅です。
今日はアディの家に、親戚の人が集まっているといいます。
ぶどうを収穫して、みんなでジャムをつくるのです。

ジャム作り!
そんな経験したことないぞ。
おもしろそう!


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私たちが帰宅したとき、すでにジャム作りは始まっていました。
いったいどうやってジャムは作られるのだろうか。
なんだかわくわくします。


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このおじさんはなぜ上半身裸なのか。
ジャムを煮立てる釜は火を焚いているので、とても暑いのです。


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おじさんにジャム作りを教わりました。
単純なようでいて、けっこう難しいです。
同じペースでゆっくりとかきまぜないと、火が均等にゆきわたりません。

「だめだ、だめだ。もっと腰をいれろ!」

何度もダメ出しをされてしまいました。


そしてなぜか、

「おっ! いい時計してるな。 俺はセイコーの時計が大好きなんだ。セイコーの時計は最高だ。
 その時計、俺にくれよ」

なにを言ってるんだ、このおじさんは。
なんでいきなりあんたにあげなきゃならないんだよ。


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ふたを開けるとこんなかんじ。
ぶどうがぐつぐつと煮立っています。
バチバチとあたりに飛び散ります。

おじさんはこれを、「地獄の釜」と呼んでいました。



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アディの家のとなりには、果樹園があります。
ぶどうはこの畑で採れた新鮮なものなのです。


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ぶどう。
収穫は今日一日では終わらないので、明日も続きます。
人手が必要なので、親戚が集まってみんなで共同作業をするのです。


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ジャムを煮るのは主に男性の仕事。
女性はまた別の作業を担当します。
私も体験させてもらいました。


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ここでの作業はぶどうをひとつひとつ種を取り除いて、水できれいに洗うというもの。
地味だけど、けっこう大変な作業でした。


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アディの家ではさらに鳥も何種類か飼っていました。
まさに自給自足です。

さらに、親戚もそれぞれ別の作物を栽培しているので、みんなで持ち寄れば買い物に行く必要はないそうです。
ルーマニアの生活って、なんだか健康によさそう!


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ジャムができあがったので、さっそく試食させてもらいました。
できたてのほやほやなので、湯気がたっています。
アツアツのジャムを食べるのなんて初めてです。

そしてこのジャム、うまいっ!
こんなおいしいジャム食べたことない。

このジャムに比べれば、スーパーで売っているジャムなんて、死んだジャムも同然です。
できたてのジャムというのは、工場でパックされたものとはまったくの別物でした。
こんなの食べた後には、もう既製品なんて食べれません。


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今日の作業はもう終わりかと思っていたのですが、そうは問屋がおろしません。
今度は別の色をしたぶどうが運び込まれてきました。

うへえ、まだあるのかよ。
もう腰が痛いんですけど。

しかし、おいしいジャムをごちそうになってしまった以上、作業に参加しないわけにはいきません。


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アディのお母さんからお声がかかります。

「ほらほらマサト。いつまで油売ってんのよ。さっさと仕事に戻りなさい。
 これが終わるまで、晩御飯は食べれませんからね」

ううっ。
働かざる者、食うべからず。
この法則は世界共通のようです。

まさかルーマニアまで来て、ジャム作りを体験させてもらえるとは思ってもみなかった。
ありがとう、カウチサーフィン。



テーマ : カウチサーフィン(Couch Surfing)
ジャンル : 旅行

ルーマニアのバス事情(Sighetu Marmatiei ~ バイア・マーレ、ルーマニア)

バイア・マーレ(ルーマニア)でカウチサーフィン(CouchSurfing)


木造教会を見学した後、再び宿に戻ってきました。
チェックアウトはもうすでに済ませてあったのですが、バスの時間までまだかなりあったので、この宿でしばらく休ませてもらうことになりました。

「どこか具合でも悪いの?」

例の受付の色っぽいお姉さんも、私の体調の変化に気づいていたようです。

「なにか飲む?」

本来なら、きれいなお姉さんの申し出を断ることなどありえません。
しかし、今の私の胃袋はなにも受け付けないのです。
食べても飲んでも、かたっぱしからもどしてしまうのです。

ましてやこれから私はバスに数時間揺られることになります。
バスの中で吐いてしまったらシャレになりません。



宿からバス停までの道のりが、ものすごく遠く思えました。
荷物がいつもの3倍くらいの重さに感じます。
ギリギリ肩に食い込んでくるため、少し歩いては荷物を降ろして休憩しなければなりませんでした。

のどもカラカラです。
バスの中で吐くのが怖くて、なにも飲んでなかったのですが、もう口の中はカラカラ。
さすがにこれは脱水症状がヤバいだろう。

水をひとくちだけ口にふくみ、それを10分くらいかけてちびちび飲みました。
でも、ひとくちじゃあ全然足りません。

「もっと飲みたい」

昨日も今日も吐きっぱなしだったので、もうまる二日間なにも食べていない計算になります。
食欲はありませんが、とにかくのどが渇いた。
手元に水を持っていながら飲めないというのは、かなりつらい。

「バス停に着いたら、なにかジュースでも買ってやるから、それまで我慢しろ」

自分にそう言い聞かせながらバス停を目指します。
本来なら20分くらいで行けるはずの距離を、1時間くらいかけてやっとたどりつきました。

約束どおり、自分にファンタ・オレンジを買ってやります。
ひとくちだけ口にふくんで、じっくりと時間をかけて飲みます。

「うまい!」

ファンタ・オレンジがこんなにおいしいなんて知りませんでした。
ひとくちだけ飲んで、あとは捨てるつもりだったのですが、結局ぜんぶ飲んでしまいました。

「あーあ。結局全部飲んじまったよ。バスの中で吐いたらどうするんだ?」


しばらく待っていると、バスがやってきました。
私は重い荷物を持っているため早く動けないので、列の最後尾です。

早く車の中に入りたいのに、なかなか列が前に進みません。
列の先頭にいる人とバスの運転手がなにやら話し込んだ後、バスは行ってしまいました。
あれれれ。
いったいどうなってるんだ?
なんで俺たちはバスに乗れなかったんだ


バスに乗りそこなった乗客たちは集まってなにやらボソボソと話し合っています。
ルーマニア人でない私は蚊帳の外。
話に寄せてもらえません。

しかし、状況がまったくつかめないのは不安です。
みんなの話がひと段落ついたころあいを見計らって、話しかけてみました。

「あのー、バイア・マーレまで行きたいんですけど、次のバスには乗れますかね?」

ルーマニアでは英語が通じないことが多かったので、私の言っていることが通じるか不安だった。
が、一人の若い女性が親切に答えてくれた。


「私たちも今それを考えているところなの。
 さっきのバスはすでに満員で乗れなかった。
 次のバスは最終だから、状況はもっと悪いと思うの」

「えっ! 最終バスに乗れなかったらいったいどうなるんですか?」

彼女は肩をすくめながら言った。

「明日の朝まで待つしかないわね」

おいおいおい。冗談じゃないぞ。
俺は腹をこわしてるんだ。
それなのにこんな寒いバス停で朝まで待ってろっていうのか。


だんだんと太陽が沈んでいく。
そうだ、ルーマニアには吸血鬼がいるんだ。
こんな国で野宿なんて絶対にごめんだぞ。
かくなるうえは、ヒッチハイクか。
日が暮れてからのヒッチハイクはできれば避けたかったが、他に方法はない。


打開策を練っていると、バス停で待っていた乗客たちが一斉に立ち上がる。
来たのか、最終バスが!

乗客たちは我先にとバスへと殺到する。
そりゃそうだろう。
このバスを逃したらもうあとはないのだから。
みんな必死だ。

だが、重い荷物を持っている私はまたしても列の最後尾となった。

あのー、異国の地をさまよっている外国人をもう少しいたわってくれませんかね。


今度もバスの運転手は「もう満員だ」と言って乗車を拒んでいたのだが、みんな無視して強引に乗り込んでいった。
やれやれ。
なんとかなりそうだ。

と思ってバスに乗ろうとしたら、運転手に制止された。
「もう無理だ。これ以上は乗せられない」

そんな殺生な!
頼むよ、なんとか乗せてくれよ。
こんなところに置き去りにされて、いったい俺にどうしろっていうんだ。

普段は押しの弱い私だが、今はそんな悠長なことを言っている場合ではない。
なんとかごり押しして、バスにもぐりこんだ。

ふぅーっ。これでバイア・マーレにたどりつける。
あー、疲れたっ!




(運転手の横の「特等席」にへたりこむ私)


これは後から聞いた話なのだが、ちょうどこの前日、ルーマニアの道路交通法が改正された。
これにより、バスの座席以上の人数は乗せることができなくなったのだそうだ。
つまり、通路に立った状態で乗客を乗せてはいけないらしい。

そしてこれに違反した場合、バスのドライバーは処罰される。
だから運転手はあんなにかたくなに乗車を拒否したのだ。


さらに、この法律改正によって、ヒッチハイクも禁止された。
そのことを聞いて複雑な気分になった。

ルーマニアはヒッチハイク王国だ。
交通インフラがあまり発達していないこの国では、ヒッチハイクが庶民の重要な足となっている。
朝夕の通勤にヒッチハイクを利用する人も大勢いる。

いわば、ヒッチハイクはルーマニアの文化なのだ。
それなのに法律でいきなり禁止されても、人々は納得いかないだろう。

私も納得いかない。

私が生まれて初めてのヒッチハイク・デビューをはたしたのも、3年前のここ、ルーマニアでだった。
ビュンビュン走る車に向かって親指を立てる時のあの恥ずかしさと期待、車が停まってくれたときのうれしさは一生忘れることができない。
ずぶの素人の私でも、なんとかヒッチハイクに成功できたのは、この国の文化によるところが大きかったと思う。

だから私にとってヒッチハイクとルーマニアとは切っても切れない関係なのだ。

たしかにヒッチハイクは危険な側面もある。
実際に事件も起こっているのだろう。
政府が法律でヒッチハイクを禁止しようとする趣旨は理解できる。

これも時代の趨勢か。
なんだかさびしい気もするが仕方がないことなのだろう。

世の中はどんどんとつまらなくなっていくのだな。



とにかくバスには乗り込めた。
これであとはバイア・マーレに到着するのを待つのみだ。

ほっとすると同時にどっと疲れが押し寄せてきた。
私の体調はまだ万全ではない。
目をつぶって体力温存につとめる。


バスはしばらく走って、次の停留所にさしかかった。
見ると停留所には大勢の人が待っている。
このバスはすでに満員。
どう考えても全員は乗れない。

どうするのだろうと見ていると、案の定、ひと悶着起こった。
ルーマニア語なのでよくわからないが、

「なに言ってんだテメェ、ぶっ殺すぞ! とにかく乗せろっ」

とものすごい剣幕で怒鳴っている。

それはそうだろう。
もうあたりは日が暮れて暗くなりかけている。
この最終バスに乗れなかったら、もうどうしようもないのだから。


運転手が制止するのも聞かず、何人かの乗客たちが乗り込んできた。
私は運転手のとなりに腰を下ろしていたのだが、そこにいると他の乗客が入ってこれないので、奥へと追いやられた。
これでもう座っていられない。

疲れがどっと押し寄せてきた。
バイア・マーレまであとどれくらいだろう。
立ってるのがつらい。

倒れそうな私を見て、一人の若い女性が席を譲ってくれた。
かたじけない。
本来なら固辞すべきところだが、今の私にはそんな余裕はない。
倒れこむようにして席になだれこんだ。

異国の地で受けた親切は本当に身にしみる。
体調の悪い時はなおさらだ。
この借りは必ず日本で返そう。
重い荷物を持った外国人観光客を見つけたら、ぜったいに親切にしよう。


席を譲ってくれた女性は英語が話せたので、気になっていたことを聞いてみた。


「このバスは最終バスだろ。停留所には車に乗り切れなかった人がまだ大勢いたけど、あの人たちはどうなっちゃうんだい?」

「なんだ、そんなこと心配してたの。彼らは地元の人間だから、みんななんとかするわよ。
 それに、この国では時間がゆっくりと流れてるの。今夜乗れなかったら、明日乗ればいいだけの話よ。
 1日や2日の遅れなんてどうってことないのよ」


なんだかむちゃくちゃな論法だなあ。
でも、他に手段がないのだから、どうしようもないのだろう。


バスの中でうつらうつらしていると、窓の外がまぶしくて目がさめた。
今までずっと山の中を走っていたのだが、どうやら市街地にはいったようだ。
バイア・マーレか。

乗客たちがそわそわし始めた。
きっと停留所が近いのだろう。

私に親切にしてくれた女性も次で降りるみたいだ。

「バイア・マーレのどこまで行くの?」

え? どこまで?
えーっと、どこまでだろう。
そういえば詳しく聞いてなかった。
確かここでのホスト、アビィはバスターミナルまで迎えに来てくれると言ってたような気がするな。

「バス・ターミナルまで友人が迎えにきてくれるんだ」

私がそう言うと、女性はほっとしたようだった。

「なら、最後まで乗ってなさい。私はここで降りるわ。よい旅を!」

そう言い残してあわただしくバスを降りていってしまった。
ドタバタしていたので、彼女にお礼を言うひまもなかった。
あんなに親切にしてもらったというのに、俺はなんて恩知らずな人間なんだ。



バス・ターミナルといっても、屋根とベンチ以外にはなにもない。
アビィにメールを送ると、「すぐに行く!」という返事が返ってきた。
よかった。
どうやら今夜は無事にベッドの上で眠ることができそうだ。


アビィは大きな4WDの車で現れた。
恰幅のよい体型をしている。
性格もおっとりしている。
優しそうな人でよかった。
今は体調が万全でないから、あまり気を使う相手はいやだ。

アビィのお母さんもやさしい人だった。

「よく来たわね。お腹すいたでしょ」

と言って夜食をだしてくれた。

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おいしそうだ。
だが、ルーマニアの料理は味付けが濃い。
それに、これにはチーズがたっぷりとのっている。
はたして、今の俺に食えるだろうか。

スプーンを口に運ぶ。
こってりとした食感がのどを通過していく。

うぐっ。
吐きそう。


「ごめんなさい。僕は今体調を崩してるんです。
 せっかくのお料理ですが、どうやら食べれそうにありません。」

そう言うと、アビィのお母さんは嫌な顔一つせず食器を片付けてくれた。
それどころか、とても私のことを気遣ってくれる。

「そうだわ、いいものがあるからちょっと待ってて」

そう言いながら台所で何か作ってくれている。
もう夜も遅いというのに、私ひとりのために手をわずらわせてしまい、申し訳ない。


彼女は手にドリンクを持ってやってきた。
見ると、グラスの中にはレモンが浮かんでいる。
これは胃によさそうだ!

ひとくち飲んで、思わず吐きそうになった。
グラスの中に入っていたのは強烈なアルコールだったからだ。

「うぐっ、うぐ。 こ、これはいったいなんですか?」

「ウォッカのレモン割よ。病気の時はこれが一番でしょ」


そうか、ルーマニアの人は病気の時はウォッカにレモンを入れて飲むのか。
日本人が風をひいた時にたまご酒を飲むのと同じ理屈だな。
現地の風習を体で感じることができる。
カウチサーフィンをやっててほんとによかったー!

なんて言う余裕は私にはなかった。
こんなに気分が悪いときに、アルコールなんか飲めるか。
やばい、吐きそうだ。

チェンジ! チェンジ!
私の心の叫びが聞こえたのか、
アビィのお母さんは今度はデザートを作ってくれたようだ。


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さっきのこってりとした料理に比べれば、今度のは格段に食べやすい。
ふた口目くらいまではスムーズに食べることができた。
だが、それ以上はやはり食べれない。
無理に食べたとしても、きっと吐いてしまうだろう。

アビィのお母さんにはほんとに申し訳ないが、スプーンを置かざるをえなかった。

「そんなに悪いの?
 お薬は持ってる? 病院に行かなくても大丈夫?
 今夜は暖かくして早く寝なさいね。」

なんだか今日は親切にしてもらってばかりだ。
ルーマニアの人って、みんなこんなに優しいのだろうか。


テーマ : バックパッカー
ジャンル : 旅行

カウチサーフィン(CouchSurfing)とは?

CouchSurfingKyoto

Author:CouchSurfingKyoto
.カウチサーフィン(CouchSurfing)とは。

日本に観光に来た外国人の宿として無償で自宅を提供し、国際交流を深めるというカウチサーフィン。

また、自分が海外に旅行に行く時には、現地の一般家庭に泊めてもらい、その土地に住む人々の生の暮らしを体験することだってできてしまいます。

ここは、そんなカウチサーフィンの日常をありのままにつづったブログです。

「カウチサーフィンは危険じゃないの?」
そんな危惧も理解できます。
たしかに事件やトラブルも起こっています。

なにかと日本人にはなじみにくいカウチサーフィン。

・登録の仕方がわからない
・詳しい使い方を知りたい
・評判が気になる

そんな人は、ぜひこのブログをチェックしてみてください。
きっと役に立つと思います。

最後に。

「カウチサーフィンを利用すれば、ホテル代が浮く」

私はこの考え方を否定しているわけではありません。
私もそのつもりでカウチサーフィンを始めましたから。

しかし、カウチサーフィンは単なる無料のホテルではありません。
現在、約8割のメンバーはカウチの提供をしていません。サーフのみです。

だって、泊める側にはメリットなんてなさそうですものね。

「自分の部屋で他人と一緒に寝るなんて考えられない」
「お世話したりするのってめんどくさそう」

時々私はこんな質問を受けることがあります。

「なぜホストは見知らぬ人を家に招き入れるのか?」

それはね、もちろん楽しいからですよ。

自己紹介
プロフィール


こんにちは。
京都でカウチサーフィン(CouchSurfing)のホストをしている、マサトという者です。
ときどきふらりと旅にも出ます。
もちろん、カウチサーフィンで!


(海外)
2011年、ユーレイル・グローバルパスが利用可能なヨーロッパ22カ国を全て旅しました。
それに加えて、イギリスと台湾も訪問。
もちろん、これら24カ国全ての国でカウチサーフィン(CouchSurfing)を利用。

2012年、東南アジア8カ国とオーストラリアを周遊。
ミャンマーを除く、8カ国でカウチサーフィンを利用しました。

2013年、香港、中国、マカオをカウチサーフィンを利用して旅行。 風水や太極拳、カンフーを堪能してきました。

2014年、侍の衣装を着て東ヨーロッパ20か国を旅行してきました。


(日本国内)
これまでに京都で329人(53カ国)のカウチサーファーをホストしてきました(2013年6月25日現在)。

もちろん、これからもどんどんカウチサーフィンを通じていろいろな国の人と会うつもりです。



カウチサーファーとしてのカウチサーフィン(CouchSurfing)の経験:


オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、チェコ共和国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、ルーマニア、スロヴェニア、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、台湾

シンガポール、インドネシア、オーストラリア、マレーシア、タイ、ミャンマー、ラオス、カンボジア、ベトナム

香港、中国、マカオ

スロヴァキア、ポーランド、リトアニア、ラトヴィア、エストニア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドヴァ、沿ドニエストル共和国、ルーマニア、セルビア、マケドニア、アルバニア、コソヴォ、モンテネグロ、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、リヒテンシュタイン


ホストとしてのカウチサーフィン(CouchSurfing)の経験:


アイルランド、アメリカ、アルゼンチン、イギリス、イスラエル、イタリア、イラン、インド、インドネシア、ウクライナ、エストニア、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カナダ、韓国、クロアチア、コロンビア、シンガポール、スイス、スウェーデン、スコットランド、スペイン、スロヴァキア、スロヴェニア、タイ、台湾、チェコ共和国、中国、チュニジア、チリ、デンマーク、ドイツ、トルコ、日本、ニューカレドニア、ニュージーランド、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、ブラジル、フランス、ベトナム、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、香港、マダガスカル、マレーシア、メキシコ、モルドバ、リトアニア、ルーマニア、ロシア



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