
ミンスクの駅。
屋根なんてありません。


ベラルーシは共産主義の国なので、もっと暗~いイメージがあったのですが、とても健全な雰囲気。
ちょっとがっかり。

「ミンスク」と読むらしい。
アルファベットが異なると、旅行の難易度がグッと上がります。
が、その分、エキゾチックな雰囲気も味わえます。

ミンスクのランドマークの一つ。

わざわざ駅まで迎えに来てくれたサンダルイクとその息子アレックス。
ベラルーシの人って冷たい印象があったのですが、彼らは違います。
満面の笑顔で出迎えてくれました。
あまりにも親切すぎて
「こいつら、何か企んでるんじゃねえか?」
と疑ってしまうほどです。

ミンスク駅構内。

サンダルイクに手伝ってもらって、キエフ行きのチケットも購入しました。
なんて書いてあるのかわからん。
英語で書け、英語で。

けっこうな値段がしましたよ。
ウクライナ情勢の緊迫化を受けて、値段も跳ね上がったのだとか。
旅行者にはいい迷惑です。

モダンな感じのミンスク駅。

街中にはこんなハレンチな広告も。
私の抱いていたベラルーシのイメージと違う。

キオスクでバスのチケットを購入。
私はまだこの国のお金を持っていないので、サンダルイクが買ってくれました。

バスのチケット。
ゼロが多すぎて、値段の感覚がわからん。

バスのチケットはこの機械に通さなければなりません。

このトロリーバスに乗って、サンダルイクたちの家へと向かいます。

ミンスク郊外の街並

アレックスは私の荷物を運んでくれました。

ミンスク郊外の住宅群。
日本のとは微妙に異なる気がします。

家に到着すると、さっそくサンダルイクの奥さんがベラルーシの料理を作ってくれていました。

奥さんもとてもいい感じの人です。

ヨーグルトのようなものをかけて食べます。
ほんのり甘くて、もっちりと柔らかく、とてもおいしいっ!
日本人の口にもよくあいます。


食後のコーヒー

私の侍に対抗してか、サンダルイクはベラルーシのサーベルを持ち出して来ました。
もしかして本物?

食事をとって一服したら、さっそくミンスク市内に繰り出します。
私には48時間しかないのです。

なんかよくわからんけど、写真を撮らされた。

聖シモン・聖エレーナ教会では、結婚写真を撮っていました。

政府機関っぽい建物。

侍姿でビシッときめてみました。

サンダルイクとその息子、アレクセイ。

教会の内部




広場では催し物をやってました。
決闘です。
「For You ! マサト、お前のために用意した。楽しめ」
光栄です、大佐殿。

がシャンッ、ガシャンッ。
剣と盾がぶつかりあう。
けっこう迫力があります。
近くでみるとビビります。

真紅のドレスに真っ赤な髪。
うわーダメだ。
俺、こういう女性に弱いわ~。

アーチェリーも体験させてもらいました。

まぶしい笑顔に清楚なドレス。
うわーダメだ。
俺、こういう女性に弱いわ~。

戦い終わった剣士たちと。
息遣いも荒く、汗ばんでいて、けっこう怖かったです。


広場では何かが始まろうとしています。
「For You ! マサト、お前のために用意した。楽しめ!」
絶対ウソだろ、それ。

視聴者も参加して、ダンスが始まりました。
私もさんかしたかったのですが、踊りはほんとに苦手なのです。
でも、せっかくなのでやはり参加しておくべきでした。

サンダルイクたちは、今度は精霊大聖堂に連れていってくれました。
アレクセイはここで洗礼をうけたそうです。


教会内部

一心不乱に祈りをささげる敬虔な女性。
うわーダメだ、俺、こういう女性に弱いわ~。

マリア様(?)も萌え化してないか?
かわいすぎるマリア様にも困ったもんだ。

ミンスクの地下鉄駅構内。

宇宙人の書いた記号にしか見えん。
サンダルイクたちがいなければきっと、私は路頭に迷っていたことでしょう。



ミンスクには変わった形の建物が多い。

でも、もっとも特徴的なのはこれ。
ベラルーシ国立図書館。
通称「アルマーズ(ダイヤモンド)」。

もちろん外から眺めるだけでなく、屋上まで登ってきましたよ。

ベラルーシ国民にも人気の観光スポットになってるみたいですね。


屋上から見たミンスク市内の眺め。
首都とはいえ、けっこうガランとしています。



地下鉄車内にて。

英雄都市記念碑。
ここはベラルーシ国民にとって、とても大事な場所らしいです。

戦争で命を失った兵士たちの名前が刻まれています。

サンダルイクたちは今度は賑やかな場所に連れていってくれました。

ん? ベラルーシなのにサリー?

どうやらインド・フェスティバルが開かれている模様。
「For You ! マサト、お前のために用意した。楽しめ!」
いや、気持ちはありがたいんですが、できたらベラルーシっぽい催しの方がいいんですけど・・・

ステージの上では、いかにも「インド!」といった踊りが繰り広げられています。

私にとって、インドの踊りを生で見るのはこれが初めて。
なんかインドっていいっ!
ぜひ行ってみたくなりました。




ここってベラルーシだよなあ~。インドじゃないよなあ~。

すっかりインド気分になってしまった頭を切り替えるために、サンダルイクたちが連れてきてくれたのがここ。
ほら、「ミンスク」って書いてあるでしょ。

しかし、男三人で観覧車?!


ここからミンスク市街が見渡せるから、という理由で連れてきてくれたらしい。
でも、どうせならもっと男らしい場所がいいなあ。

という私の不満を察してか、次に彼らが連れてきてくれたのがここ。
おおっ!
これぞ社会主義国家ベラルーシ!
私の思い描いていたイメージそのものだ!





今、私が立っているのがベラルーシの中心。

ベラルーシを象徴する場所でもあるため、過去に何度かテロの標的になったことがあります。
そのため警備も厳重。

そんなベラルーシにだってマクドナルドはあります。

今日はたくさん歩いたので、お腹がすきました。
いよいよお待ちかねの夕食の時間です。

あいかわらずなんて書いてあるのかまったくわからん。

なんか高そうなレストラン。
支払いは大丈夫かな~。

メニューも豪華。

マイ・ルール
「その土地のお酒を必ず飲む!」

「これが名物だから」
そう言われて、よくわからんけど甘~い飲み物も飲まされました。


本日のメイン・ディッシュ。
ベラルーシ名物、ドラニキ。
おいしいのなんのって!

ほろ酔い気分でミンスクのメイン・ストリートを歩くのは最高の贅沢。


日も暮れかかり、長かった一日もようやく終わろうとしています。
でも、まだまだサンダルイクは私を解放してくれません。
今度はスーパーに連れていかれました。

スーパーの中は外から見たよりもずっと大きいです。


寿司コーナーに連れていかれ、
「マサト、お前の目から見てこの寿司は本物か?」
と聞かれました。
偽物っぽい・・・気がする。

家に帰るなり、待ちわびたかのように私の侍の衣装を着るサンダルイク。



内務省特殊部隊の大佐も、家庭内ではこんな感じです。

侍の衣装に気を良くしたのか、彼らの接待攻勢はまだまだ続きます。
もうお腹いっぱいなのですが、だされたら食べなくてはなりません。



ミンスクの夜はこれからです。
トランジット・ヴィザの効力は48時間のみ。
与えられたチャンスを最大限に活かさなければ。
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正直言って、ミンスクでのホスト、サンダルイクにはそれほど期待していなかった。
なんというか、彼の顔は時代劇の悪役風なのだ。
ところが、息子を伴ってわざわざミンスク駅まで迎えに来てくれた彼らから、いきなりのディープ・ハグ。
そこから怒濤の接待攻勢が始まる。
水をくれ、私の荷物を運び、バスの席を確保してくれる。
「さあマサト、この席に座れ」
そう言う彼らは立ったままだ。
悪役風のサンダルイクはその外見からは想像もつかないほど細やかな気配りをしてくれ、彼のハンサムな息子、アレクセイはチャーミングな笑顔を絶やさない。
あまりの彼らの親切さに、
「なにか企んでいるのでは?」
と疑ってしまったほどだ。
サンダルイクの家に着いたら、今度は奥さんのアンジェラが私を出迎えてくれた。
彼女は英語が話せないが、それでも精一杯もてなそうとしてくれているのが痛いほどわかる。
軽く食事をいただいた後、サンダルイクとその息子、アレクセイと一緒にミンスク観光に出かけることになった。
彼らが最初に連れて行ってくれたのは、聖シモン・聖エレーナ教会。
彼らは入り口でいきなり片膝をつき、うつむいて十字をきる。
マリア像のたもとにある聖水で指を清めてから、また十字をきる。
正面にあるキリスト像にむかって、再び十字をきる。
わけのわからないうちに、私も同じことを強要された。
ただの観光じゃなかったのか!
どうやら彼らは敬虔な信徒らしい。
あまりの厳かな雰囲気に、写真を撮ることさえはばかられる。
しかし、教会を出たらすぐにまた陽気な彼らに戻った。
私が侍の衣装を着ると、大喜びで一緒に写真を撮る。
ネザレージナスツイ通りでサンダルイクがアイスクリームを買ってくれた。
息子のアレクセイがこっそり私に耳打ちする。
「父は自分では言わないが、実は彼はかなりの金持ちなんだ。
だからマサト、あんたはお金のことは気にしなくていい。
全部父が払うから心配するな。」
ミンスクに到着した時、私はベラルーシのお金を持っていなかった。
だからサンダルイクにATMか両替所に連れて行ってくれと頼んだのだが、彼は「わかった、わかった」と言うのみで、結局連れていってくれなかった。
だからいまだに私はベラルーシの通貨を持っていない。
彼らと話をしているうちに、サンダルイクの実態がだんだんとわかってきた。
彼は軍人。
しかも内務省管轄の軍に所属し、階級は大佐だという。
アレクセイがまた私に耳うちする。
「父はこの国では英雄なんだ。
この国の軍人で父のことを知らない人間はいない」
事実、街中で出会う軍人はサンダルイクの姿を見ると直立不動の姿勢をとった。
広場でアーチェリーをさせてもらったのだが、そこの支払いは無料だった。
おそらくアーチェリー屋の主人は元軍人なのだろう。
彼の写真を見せてもらったが、重たそうな勲章をズラリとぶら下げた、軍服姿のサンダルイクがいた。
ただでさえ悪代官風の顔なのに、軍服と勲章の組み合わせはもう悪の帝国の支配者そのものだ。
その他の写真も、Mig29戦闘機のコクピットに座っていたり、背景に戦車部隊が写っていたりと、ミリタリーテイスト満載の内容となっている。
「マサト、これを知ってるか? 世界最大の輸送機だ。この世に三機しか存在しない貴重なシロモノだぞ」
そう言って彼が見せてくれた写真の中では、彼はアントノフ輸送機のコクピットに座っていた。
どうやら彼が軍の大物だという話は本当らしい。
だが、私の頭の中でなにかがひっかかる。
リトアニアやラトヴィアでは、ソヴィエト時代にいかに圧政を強いられていたか、という話をたくさん聞いた。
ソ連に反抗することはすなわち死を意味する。
多くの人たちが連行され、拷問され、そして処刑された。
当時、ソ連の施政下にあった人たちがもっとも恐れていたのはKGB。
民主化を望む人たちが政府に抵抗しようとするたびにその試みを打ち砕いたのが、内務省の特殊部隊だった。
東側陣営ではエリート部隊と位置付けられるのだろうが、市民や西側の人間からすれば、恐怖の対象でしかない。
サンダルイクはその内務省に所属する。
彼がその地位に昇りつめるために、いったいどんな功績をあげてきたのだろうか。
とてもフレンドリーな表情のなかに、ときおり見せる残酷なまでに冷たい目。
もしかして私は、とんでもない人の家にお世話になっているのだろうか。
いや、きっと考えすぎだろう。
だって彼は私にとてもよくしてくれるのだから。
「マサト、ベラルーシのビールを試してみるか?」
そう言って、彼が連れていってくれたのは高そうなレストランだった。
メニューを見ると、ベラルーシの名物、ドラニキがズラリと並んでいる。
レパートリーがたくさんありすぎて、自分ではとても選べそうにない。
サンダルイクはきっと、その中からとびっきりのドラニキを私のために、選んでくれたのだろう。
ベラルーシのビールはあまりおいしくなかったが、ここのドラニキは絶品だった。
私はベラルーシのお金を持ってなかったので、クレジットカードで彼らの分も払おうとしたのだが、サンダルイクがそうはさせてくれない。
うーむ、ここまでされるとなんだか気持ち悪い。
家に戻る前に、ちょっとスーパーに寄って行こうとサンダルイクは言う。
買い物カゴをぶら下げた大佐。
なんだか現実味がない。
彼が私をスーパーに連れてきたのにはもちろんわけがある。
寿司コーナーに行って、
「マサト、この寿司はお前の目から見て本物か?」
と聞かれた。
ふーむ、そんなこと言われても答えようがないよ。
いちおう見た目は寿司に見えるが、なんとなく違和感を感じる。
でも、食べてみないことにはなにもわからない。
息子のアレクセイは寿司が嫌いだが、奥さんのアンジェラは大好きだという。
ひととおり買って帰ることになった。
寿司以外にも、日本食の素材コーナーにも連れていかれ、一つ一つ
「これは本物か?」
と聞かれた。
しょう油やワサビ、海苔などが並んでいる。
それらの品は、いちおうもっともらしい外見はしているが、日本人の目から見れば、やはりどことなく胡散臭い。
「どの醤油を買えばいい?」
と聞かれ、唯一私の知っているブランド、「キッコーマン」を推薦したら、その場にいた他のベラルーシ人たちも一斉にキッコーマン醤油を買っていった。
サンダルイクはその他のコーナーにも私を連れて行き、
「これは日本と比べて高いか?」
といちいち聞いてくる。
そんなこと言われても、ブランドやランクによって値段なんて変わってくるから、その商品が高いかどうかなんていちがいには言えない。
サンダルイクの家に帰ったら、また食事が待っていた。
もうお腹いっぱいだったが、無下に断るわけにもいかない。
「観光は終わりだ。今からはウィスキータイム。」
そう言って彼が持ってきたのはバランタイン。
普段アルコールを飲まない私にはかなりきつい。
酔いがまわってきた頃に、
「マサト、お前は約束したよな、日本の歌を聞かせてくれるって。」
そうサンダルイクに念を押された。
彼は日本の古い歌が聞きたいらしい。
そんなの小学校以来歌ってないから、もう忘れちゃったよ。
インターネットで歌詞を探し、彼らの前で「さくら」とか「かごめ」などの歌を披露した。
恥ずかしかったが、どうせ彼らは本物の歌を知らない。
そう開き直って調子に乗って歌っていたら、その様子をビデオに撮られていた。
きっと後で友人たちに見せるのだろう。
ああ恥ずかしい。
彼らはかなり日本のことを知っていた。
AKB48のことも知っていたし、彼らの娘は初音ミクのことが大好きらしい。
ベラルーシというと閉鎖的なイメージがあるが、そんなことはない。
人々は明るく、外国のこともよく知っている。
サンダルイクは私の侍の衣装に興味津々で、明らかに着たがっている。
だが、彼はこの国の大物軍人。
威厳を保たなければならない。
私が勧めても、
「いや、今はダメだ。 家に帰ってからにする」
と言って我慢していた。
外見は厳格で近寄り難いが、実は暖かくて人懐っこい。
サンダルイク個人だけではなく、社会主義国家そのものにもそれはあてはまるのではないだろうか。
ホテルに泊まって普通に旅行していたら、この国の印象はまた違ったものになっていたことだろう。
カウチサーフィンと出会えた私は幸せ者だ。