
これ、なんのジュースだろう。
まあいいか。カンボジアらしくて。
おっかなびっくり飲んでみた。

プリア・ヴィヘア行きの車が出発するにはまだ時間があったので、
ここで食事をして時間をつぶすことに。

お箸とスプーンは熱湯に浸かった状態ででてきます。
そんなに衛生環境に問題があるのか、この国は?


プサー・ルー(マーケット)。
ここは観光客向けではなく、
地元の人でにぎわっていておもしろかったです。
ただ、お店の人は外国人の扱いに慣れていないようで、
誰も私と目を合わせようとはしませんでした。

この狭い通りを、オートバイがビュンビュン通り抜けて行きます。
道の真ん中に立ってお店を眺めていると、後ろから容赦なくクラクションを浴びせられました。

この豚のお面、まさか本物じゃないよね?

これが噂のポンティア・コォンか?
(孵化寸前のアヒルのゆで卵)
一人で食べる勇気がないから、
誰かと一緒に食べよう。

これ、どう見てもコオロギにしか見えないんだけど、
まさかカンボジアの人はこれを食べたりはしないよね?

これ、あきらかに積み過ぎだろ。
この車でプリア・ヴィヘアまで行くのですが、
何人乗ったと思います?
8人ですよ、8人!

運転手のレス。
喰えない奴でしたが、なぜか憎めません。

車は道中の小さな町に、いちいち停まります。

そしてさらに荷物を積み込みます。

変なトラック

また別の町に停まりました。
今度は少し長めに止まるようなので、
市場で買い物をすることにします。

おお!
こんな汚い町に、こんな美人が!
好みだわー。
「もしアメリカ・ドルを持ってるのなら、
それで支払ってもらえないかしら?」
米ドルは非常用にとっておきたかったのですが、
お姉さんの頼みなら断れません。
そのうち痛い目に会うな、俺。

昼食はこの店で。
それぞれの鍋の中には、別々のおかずが入っているのですが、
いちいちふたを開けなければ中身を確認することはできません。
一通り確認して、最後の蓋を閉め終わった頃には、
最初の鍋に入っていたおかずがなんだったか忘れてしまいました。
また最初からやり直し。
だって暑さで頭がうまく働かないんだもん。


すべての荷物と乗客を運び終わり、ホッと一息つく運転手のレス。

ようやくプリア・ヴィヘアに到着。
カンボジアと国連、ユネスコの旗が掲げられています。
まるでタイ側を挑発するかのように。

一人のカンボジア軍兵士が私にまとわりつきます。
うっとおしいなあ。

数年前に起きた銃撃戦の模様を説明する兵士。
確かに遺跡のあちこちには弾痕が見受けられます。

ナーガ(蛇神)



プリア・ヴィヘアの遺跡内には、あちこちに人影が見えます。
彼らは観光客ではなく、ここに暮らす軍人とその家族たちです。
なんの娯楽もないこの集落。
彼らはただボーっと遺跡内に座っているだけ。
写真撮るのに邪魔なんだけどなあ。



向こうにはタイ軍の陣地が見えます。
それほど遠くはありません。
小銃の射程距離内です。

もう一人兵士が我々のパーティーに加わりました。
彼は少し英語が話せます。
ガイドをしてやろうと、勝手にしゃしゃりでてきました。
もちろん、あとでガイド料を請求するつもりです。



3人で一緒に記念撮影をしようとしたのですが、なかなかうまくいきません。
右側の男はカメラの自動シャッターのことを知らないらしく、すぐに動いてしまいます。


この断崖からの見晴らしは絶景で、カンボジア領が見渡せます。




カンボジア軍の駐屯地。
これが彼らの兵舎です。
なんてショボいんだ。




この駐屯地に泊ることになった私に、彼らは興味津々。
大勢の人が寄って来ましたが、彼らは英語がほとんど話せません。
それでもお茶を出してくれたりと、彼らの好意は伝わってきます。


この駐屯地には兵士たちの家族も一緒に暮らしています。
ひとたび紛争が勃発すれば、この子供たちも巻き込まれることになるんだろうな。
そう思うとやりきれません。
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6月25日(月) 国境守備隊とカウチサーフィン(プリア・ヴィヘア、カンボジア)
カンボジアと言えば、アンコールワット。
少なくとも私はそれ以外の観光地を知らなかった。
だから、カンボジアでの日程は、他の国よりも短く設定してある。
だが、シーパードンで会ったシンガポール人のダンからプリア・ヴィヘアの事を聞いてしまった。
これは行くしかない。
プリア・ヴィヘアでは数年前にタイ軍とカンボジア軍との間に銃撃戦が起こり、
双方に死傷者が出た。
外務省も「渡航の是非を検討してください」と危険情報を出している。
でも、「行ってはいけません」と言われると行きたくなるのが人間。
ダンからいろいろと情報ももらったことだし、せっかくカンボジアまで来たんだから行かない手はないでしょう。
ただ、問題はどうやってプリア・ヴィヘアまで行くかだ。
こういう事情だから、観光客向けのツアーバスはなさそうだ。
地元のローカルバスはあることはあるが、本数は少なく、
夕方まで待たなくてはならない。
そんな時に役立つのがカウチサーフィン(CouchSurfing)。
ここシェムリアップでのホスト、メンはゲストハウスを2軒経営している。
いわばその道のプロだ。
彼にアドバイスをもらって、地元の人が使う乗り合いタクシーを紹介してもらった。
交渉の結果、100ドルということになった。
昨夜、別のホテルのスタッフから提示された金額は200ドルだったから、
ずいぶんと安くなったことになる。
それでも100ドルは高い。
運転手のレスと相談した結果、チャーターではなく、他の乗客と一緒に行くのなら20ドルでいい、
ということになった。
ただ、他の乗客が集まるまで待たなければならない。
レスが他の乗客を確保する様を眺めていたこの数十分間は、私に大きな衝撃を与えた。
ここは乗り合いタクシー乗り場。
地元の人の公共交通機関だ。
乗客がやって来る度に、ドライバーたちが客を奪い合う。
他人を押しのけ、突き飛ばし、時には蹴りをいれる。
それはもうすさまじい。
客を獲得するのになりふり構わない。
それはそうだろう。
カンボジアの人たちはけっして裕福ではない。
今日を生きるために、飯を食わねばならない。
自分だけでなく、家族も養っていかなければならないのだ。
彼らを見ていて、いろいろと考えさせられた。
仕事とは何か。
働いてお金を得るとはどういうことか。
家族を養っていくことの大変さ。
自分が日本にいた時、彼らのように真剣に働いていただろうか。
「あーあ、早く終わらないかなあ。さっさと片付けて帰りたいよ。」
「この仕事、割にあわないな。」
そんな風に考えていた自分が恥ずかしい。
ドライバーのレスはかなり優秀なようだ。
あれよあれよという間に他の乗客や荷物を確保してしまった。
というより、優秀すぎるようだ。
彼が獲得した顧客は私をふくめて7人。
集めた荷物は膨大だ。
この小さな車に、いったいどうやって積み込むつもりだ?
運転手を含めると8人。
まさか全員は乗れないだろう、と思っていたのだが、乗せてしまった。
お互いに折り重なるようにしてシートに座る。
こんな無理な姿勢で数時間も我慢しなければならないのか。
背骨が痛い。
これなら100ドル払って車を丸ごとチャーターしとくべきだった。
今さらそんな事を言ってももう遅いが。
車は道中、いちいち小さな村に立ち寄る。
そこで新たに荷物を積み込んだり、配達したりするためだ。
そう、レスの車は宅配便も兼ねているのだ。
公共インフラが整備されていないこの国では、
彼のような私営の運送業者が不可欠だ。
ダイレクトにプリア・ヴィヘアに行くのに比べ、かなり時間がかかったが、
カンボジアの小さな村々を回って人々の生活を垣間見ることができた。
観光バスに乗っていては経験することのできない、貴重な体験だと思う。
ただし、背骨を痛めてしまい、しばらくまっすぐ歩けなかったが。
膨大な荷物と乗客を運び終わり、残ったのは私とレスの二人だけになった。
やれやれ、これでやっと背中を伸ばして座ることができる。
ところが、レスはとんでもないことを言い始めた。
「俺、もう疲れたよ。
ここまででいいかな?」
何を言ってやがるんだ、この野郎!
プリア・ヴィヘアまで行く約束だっただろ?
「そんなこと言ったって、ここからプリア・ヴィヘアまではまだ30キロもあるんだぜ。
客はもうあんただけだし、割に合わないよ。」
おいおい、そんなことは最初からわかってたことじゃないか。
今さらそんなこと言うなよ。
これだからカンボジア人は・・・
こんな田舎道で車を降ろされたらたまったもんじゃない。
なんとかレスをなだめすかして、プリア・ヴィヘアまで走らせた。
ようやくプリア・ヴィヘアのふもとまでたどり着いたものの、
ここからは一般車両は入れないらしい。
専用のバイクか車に乗り換えなければならない。
もちろん、有料だ。
「そんな話聞いてなかったぞ。
てっきりお前の車で頂上まで行けるものとばかり思っていた。」
私が不平を言うと、レスは投げ捨てるように言った。
「往復6ドルだ。
お前ら日本人にとっては、どうってことない額だろ?」
レスとは道中、いろいろな話をした。
彼の言葉の端々には、どこか世をすねているようなフシがある。
彼はこれまで、多くの外国人観光客を乗せてきたのだろう。
湯水のごとく金を使う彼らを見て、レスはいったい、どんな気持ちだったのだろうか。
彼はたまたまカンボジアに生まれたばっかりに、毎日馬車馬のように働かなくてはならない。
私はたまたま日本に生まれたために、海外で物見遊山を楽しむことができる。
これからは、むやみに値切るのはやめようと思う。
同じ1ドルでも、彼らと我々とでは、その重みがまったく違うのだ。
我々にとってはたかが1ドルでも、
彼らにとってその価値は計り知れない。
カンボジアに限らず、東南アジアの諸国を旅する時には値段交渉は不可欠だ。
もちろん、相場の10倍の値段を提示された時など、明らかに吹っかけられているなら話は別だが、
1ドルくらいなら上乗せされたってかまわないじゃないか、と思えるようになった。
「カンボジア人だろうが日本人だろうが、1ドルは1ドル。
1銭だって無駄にはしたくない。」
そういう考え方もあるだろう。
でも、ゲーム感覚で値切るのはいかがなものか。
時々、欧米人のツーリストが50セントを巡って延々と値段交渉しているのを見ることがある。
ああいうのは時間とエネルギーの無駄じゃなかろうか。
少なくとも我々は海外旅行を楽しむだけの余裕がある。
少しくらい彼らに還元したっていいじゃないか。
「日本はもはや、豊かな国ではない。」
そう言う人は、カンボジアの人の目を見てじっくり話したことがあるのだろうか。
アリの這いまわる食堂のテーブルで、食器にたかるハエを追い払いながら、
腐って変色した箸で彼らと一緒に食事をした後でも同じことが言えるのだろうか。
とにかく、プリア・ヴィヘアの頂上に辿りついた。
ゆっくりと遺跡の観光を楽しむことにしよう。
だが、なかなか物事はうまくは運ばない。
一人の男が近づいてきて、私にまとわりつくようになった。
うっとうしいことこの上ない。
ここプリア・ヴィヘアを巡っては、カンボジアとタイがその領有権を巡って争っている。
国境線をはさんで、両国の軍隊がにらみ合いを続けているのだ。
そのためプリア・ヴィヘアは世界遺産でありながら、カンボジア軍が駐留している。
遺跡内には兵士がウロウロしているのだ。
しかもこの兵士たちの質はあまりよろしくない。
時々金を無心してくる。
「観光税だ。5ドルよこせ。」
彼らは軍人だ。
しかもここは人里離れた国境地帯。
観光客は私以外には誰もいない。
彼らを刺激してはいけない。
彼らがその気になれば、私一人くらい簡単に消せるのだから。
幸い彼らの英語力はおそろしく拙い。
何を言ってるかわからないフリをしてなんとか切り抜けた。
が、一人、かなりしつこく私につきまとってくる兵士がいた。
どうやら少し頭がおかしいようだ。
英語はおろか、クメール語もまともに話せないのではないだろうか。
彼の身振り手振りから察するに、数年前の銃撃戦の時、
彼も戦闘に加わったらしい。
タイ軍の陣地の方を指さし、銃を撃つ仕草をする。
自分がいかに勇敢に戦ったか、ということを知ってもらいたいようだ。
だが、事実はそれとは異なるらしい。
もう一人、若い兵士が私の後についてきた。
彼は少し英語が話せる。
彼が言うには、戦闘の際、この男は草むらにうずくまって泣いていたということだ。
ひょっとして、その時の恐怖が原因で彼は頭がおかしくなったのだろうか。
この二人は私の後にくっついて離れない。
ガイドをして、後でお金を請求しようという魂胆なのだろう。
ここプリア・ヴィヘアは南北に一直線に配置されているので、迷いようがない。
ガイドなんていらないのだ。
私が彼らに期待するのはもっと別のことだ。
シーパードンで出会ったシンガポール人のダンも、このプリア・ヴィヘアを訪れていた。
その際、軍隊の武器を触らせてもらったり、兵舎に入れてもらったりしていたのだ。
ならば、ここに泊めてもらうことも可能なんじゃないだろうか。
英語が話せる兵士にその事をもちかけると、彼も乗り気になった。
「ここに泊まりたいのか?
待ってろ、今、嫁さんに聞いてくる。」
お前、ここに嫁さんと一緒に住んでるのか?
聞けば、彼には子供もいるらしい。
「嫁さんの許可はとった。
ただ、さっきの金額じゃあちょっと・・・」
わかった、わかった。
さっきの金額に上乗せするから。
「あと、見ての通り俺たちの家は粗末だ。
日本人のあんたに耐えられるかな?」
大丈夫だ。
俺は寝袋も蚊帳も持ってる。
プリア・ヴィヘアでカウチサーフィン(CouchSurfing)か。
なんだか興奮してきた。
すぐ先には銃口を構えたタイ軍が対峙している。
そんな紛争地帯の駐屯地に泊まるなんて、そうそうできる体験じゃあない。
自分がまるで戦場カメラマンになったような気がした。
気分はすでに渡部陽一。
話がまとまり、彼らの宿舎に向かおうとしたその時、
後ろから鋭い声が飛んできた。
「お前ら、何をしているっ?」
「やべっ!基地司令だ」
ここの駐屯地を預かっているだけあって、司令官は見るからに厳しそうな人だ。
他の兵士たちはTシャツにサンダル姿なのに、彼はきちっと軍服を着こなしている。
手には無線機を持ち、眼光もするどい。
こいつは手強そうだ。
司令官に見つかってしまった以上、これ以上隠し通すことは不可能だ。
若い兵士はすべてを基地司令に話した。
「ここは軍の管轄区だ。
民間人はおろか、外国人が宿泊することはできない。
すぐに山を降りろ。
じきに日が沈む。」
それはそうだろう。
だが、私はダンからいろいろ情報を仕入れていた。
相場も知っている。
ここはドルの威力に賭けてみることにしよう。
厳しそうな軍人も、米ドルには弱いらしい。
意外にあっさりと転んだ。
札束を懐にしまいながら、司令官は
「見ての通り、ここの兵士たちはみな貧乏だ。
お前の身の安全は保障できないが、それでもいいか?」
これもダンから聞いた情報通りだ。
脅し文句のようにも聞こえるが、要するに用心棒代を払えということらしい。
同じ基地内の兵士から私を守るために、護衛の兵士をつける。
なんともおかしな話だが、ここは国境紛争地帯。
何が起きても変じゃない。
司令官はさらに続ける。
「兵舎内は軍の機密事項にあたる。
写真撮影は厳禁だ。
カメラは預からせてもらう。」
なーにが「軍の機密事項」だ。
こんなボロ兵舎、京都の俺の安アパートの方がよっぽど立派だぞ。
荷物を兵舎に置いて、駐屯地内を散策する。
子供たちだけでなく、その他の大人たちも私を珍しがって寄ってきた。
だが、彼らは英語が話せない。
意思疎通は難しそうだ。
彼らは貧しく、私に食事を提供するだけの余裕はない。
持参した非常用のビスケットを一緒に食べた。
彼らの水も、私は飲まない方がいいだろう。
衛生状態に問題がありそうだ。
持参したペットボトルの水を節約しながら飲んだ。
彼らの家にはシャワールームなんてものは存在しない。
山から湧き出している水で体を洗う。
あれ?
女の子はどこで体を洗ってるんだろ?
などと不埒なことを考えるのはよそう。
撃ち殺されるぞ。
一般兵士の家には電気は無く、夕食後は寝るしかない。
もちろんここは軍の施設だから、電気の通っている場所もある。
だが、そこには兵士たちがたむろしていて、なんだか不穏な空気が漂っていた。
近づかない方が無難だろう。
私は今、パスポートや現金、クレジットカードなど、すべての荷物を抱えている。
貧困にあえぐ兵士たちに囲まれた状態で眠るのは危険だが、今日は疲れた。
あっと言う間に熟睡してしまい、気が付いたら夜が明けていた。
数年前、プリア・ヴィヘアの銃撃戦のニュースを見た時、
私にはまったく関係のない、遠い世界の出来事だった。
だが、私はここの人たちを知ってしまった。
たった一晩だけだが、寝食をともにした。
子供たちとも遊んだ。
ここは国境を巡る紛争地帯。
いつ銃撃戦が起こっても不思議ではない。
できることなら、いやなニュースは聞きたくない。
戦闘が始まっても、ここには十分な遮蔽物は無い。
兵士と家族たちの家は木の枝にビニールシートを張っただけの簡素な造りだ。
鉄砲の弾は簡単に貫通する。
みんな無事に逃げおおせてくれよ。
そう祈ることしかできない。
私は無力だ。
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このブログはフィクションです。
すべて私の作りだした虚構のストーリーです。
実際には私はプリア・ヴィヘアには泊まっていません。
観光客は例外なく、夕方には山を降りなければなりません。
私はいかなる賄賂も支払っていませんし、
誰も受け取っていません。
テーマ : カウチサーフィン(Couch Surfing)
ジャンル : 旅行