カウチサーフィン(CouchSurfing)と愉快な仲間たち

ゲイとヌーディストとカウチサーフィン。
























ゲイとヌーディストとカウチサーフィン。

秋のヨーロッパの朝は遅い。
10時間以上眠ったにもかかわらず、あたりはまだ薄暗い。

お尻に痛みは感じない。
どうやら私の貞操は守られたらしい。

だが、まだ油断は禁物だ。
一日目で安心させておいて、二日目に何かしかけてくるかもしれない。

彼には挙動不審なところはあるが、とても親切だ。
この日も朝食を用意してくれ、市内観光のアドバイスをくれた。

今日のメインはシェーンブルン宮殿。
混むことはわかりきっていたので朝一番に行った。
てっきり有料だと思ってチケットを買ったのだが、庭園を見るだけなら無料だった。
しまった、損した。
前述したように、私は宮殿の豪華な内装や歴史にはあまり興味はない。
それでもせっかくチケットを買ったのだからシェーンブルン宮殿の中に入った。
たまたま日本人の団体客が、日本語で説明を受けていたので彼らの後をついてまわった。
が、あまりにも移動スピードが遅い。
さっさと追い越してしまった。

私の目的は庭園を見ることなのだ。

ガイドブックなどの写真でシェーンブルン宮殿のことは知っていたが、これほどまでに美しいとは思わなかった。
ただのだだっ広い庭なのだが、なぜか感動した。
これで色とりどりの花が咲き誇っていたら感涙ものだろう。
次回は春か夏に来よう。

このシェーンブルン宮殿が大いに気に入ったので、チケットに含まれているコースを全て見学することにした。
もちろんGlorietteにも登った。
まだ観光客は少なく、Glorietteの上には私一人しかいない。
この素晴らしい眺めを独占できて光栄だ。

途中 ベンチで休憩していると、リスが寄ってきた。
リスといっても、日本の猫くらいの大きさがある。
動き方も変で、かわいいというよりも不気味だ。

Mazeにも挑戦した。
所詮は子供向けのアトラクションだと思っていたら、なかなか展望台まで近づけない。
かなり時間を費やしたのにダメだった。
これは他の客も同じで、みんな何度も同じ道を辿ってウロウロしている。
これ以上時間をロスするのは勿体無いと判断して諦めた。
すると、別の場所に展望台への直通コースがあるではないか。
なんと意地悪な作りなんだ。

展望台までたどり着けたのは私一人。
他の人たちが羨ましそうに迷路の中から私を見上げている。
しばし優越感に浸った。

とにかくシェーンブルン宮殿が気に入った。
出来れば一日中いたい。

この感動を誰かと共有したかったので絵葉書を書くことにした。
ペギーとマリアとエマ。
エマの住所は聞いていなかったので電話した。
彼女の声を聞くと、なんだかホッとする。
エマが心配するといけないので、ゲイでヌーディストのカウチサーファー宅に泊まっていることは伏せておいた。

次はBelvedere宮殿だ。
シェーンブルン宮殿での教訓を生かし、ここではチケットは買わなかった。
無料で広大な庭園を散策できるのだ。

だがあまりにも敷地は広かった。
文字通り足が棒になった。
それでも貧乏性な私は、敷地内を全て歩かなければ気が済まなかったのだ。

歩き疲れたので、トラムで再びStephansdomへと向かう。
ここは昨日も来たのだが、カールが勧めてくれたレストランがあるのだ。

さすが地元のカウチサーファーが推奨するだけあって、申し分ないレストランだった。
あらかじめカールに聞いておいた料理を注文する。
そういえば、ヨーロッパで一人でレストランに入るのはこれが初めてだ。
しかも観光客用のレストランではなく地元民御用達の場所だ。
ちょっと緊張した。

スープとメインディッシュ、パン、それにサラダバーまでついて1000円ほど。
もちろん本格的なオーストリア料理。
しかも観光地のど真ん中にあるのだ。
これは安い。
改めてカールを見直した。
そしてカウチサーフィンをしていてよかったと感じた。

チップを1ユーロ渡したら、えらく感激された。
きっと、みすぼらしい東洋人からチップをもらえるとは期待していなかったのだろう。

今日はこれで観光はおしまい。
カールの家はなんでも揃っているのだが、Wi-Fiは使えない。
私のiPadは使えないのだ。
そこで例のごとくマクドナルドの電波を借用する。
まだザグレブでのホストは見つかっていない。
今まで何件もリクエストを送っているのだが、なかなか良い返事が帰って来ない。
カウチサーフィンには不確定な要素も多い。
少し焦る。
ザグレブでホスト可能な人は400人を超える。
だからホスト探しは楽だろう、とタカをくくっていた。
まあいいか。
もし見つからなければ駅で寝ればいい。

今夜もカールが地元のレストランへ連れて行ってくれた。
食事中、あいかわらず彼はニヤニヤしながら私の唇を見つめている。
今夜こそ襲ってくるつもりなのだろうか。

カールがデザートを頼んだ。
これはかつて皇帝も愛したというほどの絶品だ。
だが彼が頼んだのは一つだけ。
どうやら二人で一緒に食べようということらしい。

想像して欲しい。
大の男が一つのケーキを顔を付き合わせて食べる光景を。
ごめんなさいお父さん、お母さんペギー、そしてエマ。

家に帰るとさっそくカールは全裸になる。
彼のモノがブラブラしていてももう気にならない。
慣れとは恐ろしいものだ。

たまたま今夜は夏時間から冬時間へと変更する日に当たった。
時計をあわせ直さなければならない。
日本ではできない経験だ。
カウチサーフィンを利用していなければ、きっとこのことに気づかなかっただろう。
海外旅行初心者の私にとって、カウチサーファーは頼もしい存在だ。

が、カールに新たな疑惑が浮上した。
トイレを汚してしまったので、ブラシの場所を聞いたら無い、という。
トイレ掃除にブラシは使わないというではないか。
じゃあどうやって掃除すればいいんだ、と聞くと、後でカールがきれいにしておくからマサトは気にしなくていい、と言う。
まさかカール、そっちの趣味まであるのか?

カールの性癖についていろいろと書いてきたが、彼はとてもいい人だ。
気配りもよくゆきとどいて居て、親切。
彼のマンションはとても快適で、洗濯機や乾燥機も借りた。

それになにより、私の体もきれいなままだったし。
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ウィーン(オーストリア)でカウチサーフィン

(ウィーン オーストリア)

今日はチェコ共和国のプラハから、オーストリアのウィーンまで移動。

観光もしっかりしたかったので、朝の5時に出発することにした。


だが、プラハでのホストのアパートは、中から外に出るときにも鍵が必要なので、エヴァも五時に起きるはめになった。

本当に申し訳ない。



チェコのお金を処分したかったのだが、まだ朝早く、両替商は開いていない。

仕方がない。ウィーンで交換することにしよう。

さすがに早朝なので、ウィーン行きの電車はすいていたのだが、乗り合わせた家族がやけにうるさく、あまりよく眠れなかった。


何事もなくウィーンに到着。

ウィーンと言えば、世界でも指折りの観光都市。

だからなんの準備もしていなくても、自動的に楽しめるものだと思っていた。


が、到着した駅は殺風景で何もない。

どこに何があるのかもわからない。

外貨の交換所や、インフォメーションセンター、土産物屋が所狭しと並んでいる風景を期待していたのだが、

なんだかごちゃごちゃしていて、薄汚い。

これが本当に「音楽の都」ウィーンか?


ロンリープラネットの地図はわかりにくい。

街の様子を把握するために、自分の足で歩いて、実際に地図と照らし合わせてみる必要がありそうだ。

いろいろ批判もされているようだが、私には「地球の歩き方」の方がロンリープラネットよりも数段使いやすい。

痒い所に手が届いているのだ。

少々過保護すぎるきらいがあるが。


しばらく駅の周辺を歩いているうちに、銀行を発見。

もう用済みのチェコの通貨をユーロに交換した。

手持ちのお金が増えたため、なんだかホッとする。


コインロッカーが見つからなかったので、重い荷物を抱えたまま歩き回ることになった。

なんだか気分まで重くなる。


ウィーン市内の交通システムがよくわからなかったので、「ウィーンカード」を購入。

少し高い気がするが、3日間全ての交通機関が乗り放題になる。

これで、道に迷っても追加料金を取られる心配はない。

しかも、詳細な交通マップまでついてきた。

なんとか移動できそうだ。



マクドナルドを見つけたので、Wi-Fiの有無を確認。

この作業が、もうすっかり習慣になってしまった。

FREEのWi-Fiがあるものの、おそろしく遅い。

まあ無料だから文句はいえないか。



ロンリープラネットの指示に従い、まずはStephnsdomへ。

とても複雑に思えたウィーン市内の交通網も、勝手がわかってくると実に使いやすい。

地下鉄、バス、トラムが縦横無尽に張り巡らされている。

しかもありがたいことに、待ち時間がほとんどない。

たとえ電車を乗り過ごしても、数分以内に次の電車がやってくるのだ。



だが、街の中心部はものすごい混みよう。

人が多すぎて、満足に歩けない。

私はウィーンに対して、もっと静かなイメージを持っていたのにがっかりだ。

まあ、私もその大勢の観光客の一人なのだから文句を言える立場ではないのだが。


それでもStephnsdomは圧巻だった。



さすがはオーストリア。

威厳を感じさせる。

ただ残念なことに、工事中のため一部にカバーがかけられていた。

これがなければもっと素晴らしかっただろうに。

これで、ウィーンにまた来る口実ができた。




その後もロンリープラネットの推奨コースを辿った。

広い道を歩いていても、急に細い道に変わって心細くなる。

通りの名前の確認の仕方を把握するまでは何度か迷った。

もっとも、こういう街は迷った方が楽しいので気にしない。




Hofburg地区はロンリープラネットが推奨するだけあってとても刺激的だ。

何組ものツアー客が通りを埋め尽くす。

豪華な建物群は、これぞオーストリア、と言わんばかりだ。



ガイドブックに書いてあるとおり、リングの内側はかなり小さい。

徒歩で十分回れる。

一通り見て回るのに、さほど時間はかからなかった。




もちろん市内には無数の美術館があるので、全てを見るためには数日を要するだろう。

しかし、残念ながら、私は芸術にはあまり興味がない。

市内観光は切り上げて、ウィーンでのホスト、カールに連絡した。



実はこのカールという男、いわく付きの人物なのである。

彼は男しかホストしない。

だから最初は、彼はゲイなのだと思っていた。


そして実際、彼はゲイだった。

しかし、ただのゲイではない。

彼はヌーディストなのだ。

カールは、家の中では一切服を着ない。

素っ裸で過ごすのだ。

それでも良かったらどうぞ、

というのが彼の条件だった。

そりゃあ女性をホストすることは不可能だわな。



しかも彼の趣味はマッサージ。
怪しすぎる。



ゲイでヌーディスト。趣味はマッサージ。

最悪の組み合わせだ。

できることなら余計な危険は冒したくない。



だが、ウィーンは超人気都市。

他のホストがすんなり見つかる保証はない。



カウチサーフィンの彼のレファレンスは全てポジティブばかりだ。

そんなに危なくはないだろう。


もっとも、レファレンスを残したカウチサーファーが全てゲイだった、

という可能性もなくはないが。




時間きっかりにカールは駅に現れた。

身のこなしにも一切無駄がない。

どうやら彼は、厳格な性格の持ち主のようだ。



私の彼に対する第一印象は、

「恐怖」

だ。




ニヤニヤしながら私の目をじっと見つめる。

気のせいか、私の顔を見ながら舌舐めずりをしたような気がした。

背中に悪寒が走る。

「こいつ、間違いなくゲイだ」

直感的にそう思った。



ヌーディストでゲイ、趣味はマッサージ。

この時私は、彼をホストに選んだことを後悔した。




カールは豪華なマンションに住んでいる。

駅からすぐ近く。

セキュリティーも厳しい。

しかも市内が見渡せる高層階。

どうやら彼はかなりのお金持ちらしい。



一通りウィーン市内や、彼のマンションについて説明してもらった。

カールの話には一切の無駄がない。

まるで軍人か、有能なビジネスマンのようだ。



でも、彼といるとあまりリラックスできない。

まるで自分が、猫と一緒に暮らしているネズミになったような気がするからだ。



それでもカールはとても親切だった。

詳細な地図をくれ、効率的な移動の仕方やウィーン市内の見所を教えてくれる。

さすがはオーストリア生まれの地元民。

頼りになる存在だ。



お腹が減っていたので、カールの車でレストランへと向かう。

ウィーン郊外にある、伝統的な食堂に連れていってくれるという。

もちろんガイドブックには載っていない。

これぞカウチサーフィンの醍醐味だ。



この村にはいくつものレストランがあり、彼らは農業を営んでいる。

だから素材は新鮮だ。

交通の便は悪く、車がないと来れない。

普通の観光客はまず来ない。

もちろん英語のメニューは無い。



カールは丁寧にドイツ語のメニューを説明してくれる。

オーストリアにはたくさんの魅力的な料理がある。

とても自分では選べない。

全てカールにお任せした。

少しだけ彼を信じてもいいかな、という気になった。




ここではビールではなくワインを選ぶように、とカールに言われた。

この村の全てのレストランは独自のワインを作っており、

お互いにその味を競い合っているのだとか。



レストランの雰囲気はとても落ち着いている。

料理やワインの味も最高。

おまけに値段も安い。

本格的なオーストリアの料理が、日本のファミレスよりも安く食べられるのだ。

ワインまで頼んだというのに。

観光客向けのレストランに行くことがバカらしくなる。

カウチサーフィンやっててよかった。






すっかり気分がよくなって、急に眠たくなってきた。

まさかカール、私のワインに睡眠薬を入れたんじゃないだろうな。




だがここで眠る訳にはいかない。

カールの私を見る目つきがなんだか変だ。

私の唇をジッと見つめている。

そして、たまにニヤリと笑う。

まるで何かを想像しているようだ。

きっと彼の頭の中では、私の口が彼のイチモツをくわえているのだろう。




ゾッとした。

こんな感覚は生まれて初めてだ。

私は男だから、今までこんな気分になったことはない。

女性はいつもこんな感覚を味わっているのだろうか。

いやらしい目つきで女性を見ることはとても罪なことなのだと、この時初めて身を持って知った。





彼の部屋に戻り、シャワーを浴びて出てくると、私の寝床が用意されていた。

自分の目を疑った。

カールの枕の隣に私の枕が並べられている。

一つのベッドで彼と一緒に寝なければならないらしい。






「自分の寝袋があるから、俺は床で寝るよ」と私が言っても、

「いや、ダメだ。そんなことは私が許さない。」とカールは有無を言わせぬ口調で私に命令する。


ひえええええ。怖いよー。


さらに恐ろしいことに、カールは全裸。

足を広げて、自分のイチモツを見せつけるようにベッドに横たわっている。

そして私の目をジッと見つめて微笑んでいるではないか。



ゲイのルールは知らないが、カールの意思表示は明らかだ。

「うわあ、俺、誘われてるよ。ゲイに誘われちゃってるよ。」


ごめんなさいお父さん、お母さん、エマ、そしてペギー。

私は今夜、汚されます。



危機的な状況にあるにもかかわらず、睡魔には勝てない。

昨日の夜はほとんど寝ていないし、今日は一日中ウィーンの街を歩き回ったのだ。


カールの隣に横たわり、目を閉じる。

すぐそばに全裸の男がいることは、なるべく考えないようにした。



私はすぐにでも眠りたかったのだが、カールはなかなか私を寝かせてはくれない。

目をギュッとつぶっている私に、いろいろと話しかけてくる。

「屋上にあるプールに行かないか」、と誘ってくる。

プールまでついてるのか、このマンションは。

なんて豪華なんだ。



眠たそうな私の様子を見て諦めたのか、カールはそれ以上しつこく誘ってはこなかった。

しばらくして、枕元の電気が消える気配を感じた。


よかった。

これで眠れる(はず)。

テーマ : 海外旅行
ジャンル : 旅行

チェスキークルムロフ、プラハでカウチサーフィン



プラハ市内にあるカメラ屋の兄ちゃん。

チェスキークルムロフでカメラを失くしてしまったため、新しい物を買わなくてはならなくなった。




失くしたカメラとまったく同じ機種を手に入れることができ、私は有頂天になってしまった。

新しく手に入れたカメラをさっそく使ってみたくて、店員の兄ちゃんと記念撮影。


きっとこの店員さん、私のことを「ヘンな日本人」と思ったことだろう。




日本製のカメラは人気があるので、世界中どこででも入手できるんじゃないだろうか。




チェスキークルムロフで撮った写真はすべて失ってしまった。

残ったのはこの絵葉書のみ。

とほほ・・・




プラハでのホスト、エヴァとマニュ。

おとぎ話のような国、チェコで出会った美しいカップル。




調子に乗って、エヴァと肩なんて組んじゃいました。

ごめんね、マニュ。








プラハは本当に美しい。

同じ街なのに、昼と夜とではまったく別の顔になる。


昼間はため息がでるが、夜には涙が出そうになる。

今度はかわいい彼女と一緒にここを訪れたいな。


__________________________________


チェスキークルムロフ


朝、暗いうちにトラムの停留所に向かう。

通りを歩いている人はほとんどいないので、迷っても道をたずねることができそうにない。

なんとか自力でプラハ駅まで行かねば。

幸いなことに、昨日の夜、エヴァが丁寧なメモを書いておいてくれたので、それを頼りに進む。



大都市間の移動は楽だ。

情報も充実していてわかりやすい。



しかし、市内の細かい場所を移動するのは骨が折れる。

観光地から外れた場所では、英語の表示やアナウンスは望めない。

バスの運転手は外国人の対応に慣れていない。


カウチサーフィンのホストは都市から離れた所に住んでいるケースが多く、

メインステーションから彼らの家に行くのに苦労することがある。


だが、それだけ地元の人の普通の暮らしを垣間見ることもできるのだ。

ここがカウチサーフィンの最大のメリットと言えるかもしれない。


とにかくプラハ本駅にはたどり着けた。

チェスキークルムロフ行きの電車の時間はまだ先だ。

電車の中で食べる食料を買い込んでおこう。


北欧諸国を旅した後は、チェコの物価はとても安く感じる。

値段を気にせずにバンバン買えるのは気持ちいい。



チェスキークルムロフ行きの電車の車掌はとて厳しい女性だった。

私のユーレイルパスを隅々まで点検し、

「旅程欄の記入が無いじゃないの!」と大声でどなる。


なにもそんなに怒らなくったっていいじゃないかよ。


私が、「後で記入する」と言うと

その車掌はボールペンを差し出し、「今すぐに書け」と言う。

ここまで厳しい人は初めてだ。


だが、私が目的地の欄にチェスキークルムロフと記入すると、彼女の表情が一変した。

「Lovely!」

とひとこと言った後、微笑みを残して立ち去っていった。


今日はいい日になりそうな予感がする。



車内で食事を済ませ、ウトウトしていたら突然、コンパートメントの扉が開いた。

腰に大型の拳銃をぶら下げ、威圧的な制服に身を包んだいかつい兄さんたちが二人、ドカドカと踏み込んできた。


なんだ、なんだ?!

ちょっと本気で怖いんですけど。

もしかして俺、拳銃で撃たれちゃうの?



あまりに急な事だったので狼狽したが、

「パスポートコントロール」と言う言葉が聞こえたのでようやく事態が飲み込めた。

日本では警察官と接する事など滅多にないので緊張する。


見た目は強面の警察官だったが、意外といい奴だった。

私のとなりにドカッと腰を下ろし、いろいろと話しかけてくる。

電車が到着すると、親切にも、

「チェスキークロムロフに行くのか? それなら乗り換えは二番ホームだ」と教えてくれたりもした。

結果的には間違っていたけれど。



乗り換えのために立ち寄ったチェスケーブディェヨヴィツェではかなり混乱した。

定刻になっても列車は来ないし、やっと来たと思ったら、「これは回送車だ。乗るな!」と言われた。

まあ、他にも観光客は大勢いたので、彼らの行動を真似していたらなんとかなるだろう。


チェスキークルムロフ行きの電車に乗ったあとも油断はできない。

途中で全員降ろされた。

英語での説明は無し。

わけのわからないまま他の乗客の後ろにくっついていく。



それでもまあ、とにかくチェスキークルムロフには着いた。

この駅、ものすごーく さびれている。

あたりにはほんとに何もない。

本当にこんな所が世界遺産なのか。

観光客はそれほど来ないのだろうか。



道を歩いていると、一人の老人が「こっちだ」と手招きする。

彼は英語ができなかったが、どうやらチェスキークルムロフまで連れていってくれるらしい。

ラッキー。


その老人は、ブディェヨヴィッツェ門の所では写真まで撮ってくれた。

彼は街を歩きながらあちこちを指差す。

何を言ってるのかまったくわからないが、おそらく「ここが写真を撮るポイントだ」とでも言ってるのだろう。

「Oh! beautiful!」と私が言うと、彼はうれしそうにうなづく。


老人はその後もあちこちに連れていってくれた。

結果的には遠まわりになったのだが、今日はたっぷり時間がある。

ここは地元の人のガイドに素直に従おう。


彼が「今夜はここに泊まるのか?」と聞いてきたので、

「プラハに宿がある」と答えたら寂しそうな表情になった。

きっと自慢の街を、もっとじっくりと見てもらいたかったのだろう。



老人と別れ、チェスキークルムロフ城を目指す。

ここの塔からの眺めは格別だと聞いたからだ。



狭いらせん階段を登り切ると、そこには息を呑む光景が広がっていた。

寒かったが、すぐに降りるのはもったいなかったのでしばらく塔の頂上でボーッとした。

たまにはこういうスローな日もいいものだ。



チェスキークルムロフは小さな町だが、ずっといても飽きることがない。

ここでゆっくりランチを食べる予定だったが、とてもそんなヒマはなかった。

時間があっという間に過ぎる。

まばたきするのも惜しい。

街全体が美し過ぎる。



列車が来るのを待つ間、チェスキークルムロフの駅前のスーパーに立ち寄る。

昼食を探していたのだがロクな物がない。

パンばっかり。


ふとラーメンが食べたくなった。

日本に帰ったらたらふく食べることにしよう。



チェスケーブディェヨヴィツェで乗り換える時に気付いた。

カメラがない。

どこで失くしたんだろう。

電車の中か。


昨日の分までの写真はiPadに入れてある。

だが、せっかくチェスキークルムロフで撮った写真が失われてしまった。

残ったのは絵葉書のみ。


まあいいか。

また今度来よう。

この街は気に入ったし。



プラハで日本製のカメラ買えるかなあ。

出来れば同じ型のがいいな。



プラハに向かう列車で、座席を探してウロウロしていると、

車掌に「そこは一等車だ」と言われた。

だが、私はユーレイルパスを所持しているので、一等車も乗り放題なのだ。



「わかってる」と言って座ろうとすると、チケットの提示を求められた。

その車掌は「お前みたいな若造が一等車に乗るなんて100年早いわ」とでも言いたげな表情をしている。

私はそんなにみすぼらしい格好をしているのだろうか。



プラハに着いてすぐにマニュに電話した。

だが、彼らはチェコに来てまだ二ヶ月。

日本製のカメラを買える場所は知らないらしい。



プラハの駅構内には電気屋はなさそうだ。

市の中心部に行くしかないか。

時刻は七時を回っている。

まだ開いているだろうか。



急いで繁華街へ向かっていると、「OLYMPUS」という看板が目に飛び込んで来た。

私の失ったカメラはNikon。

出来れば同じカメラが良かったのだが、この際仕方が無い。

日本製のカメラならどこのでも問題はないだろう。



ん?

よく見ると、店内にはOLYMPUSだけでなく、Nikonのカメラも陳列してあるではないか。

しかも私の失くしたカメラと全く同じ機種もある。

これはまさに天の恵みだ。


問題は値段。

日本で買った時の値段よりかなり高い気がする。

悩んだ。


だが、あと一ヶ月以上もカメラ無しで旅行するわけにはいかない。

携帯電話やiPadのカメラでは心もとない。


店員の説明によると、EUから出国するときにある程度の税金が還付されるそうだ。

それを考慮に入れればそんなに悪い買い物ではない。



店員の兄ちゃんはとても親切で、もう夜も遅いというのに、カメラのセッティングをやってくれた。

もちろん日本語モードにしてくれている。

ストラップも付けてくれ、おまけになんと三脚までくれた。



使い慣れたカメラを再び手に入れることが出来た私はすっかり舞い上がってしまい、

店員の兄ちゃんと記念撮影までしてしまった。


聞くと、この店は普段は6時半には閉めるそうだ。

私はツいてる。

これからは絶対にカメラを肌身離さず持っていよう。



しばらくしてエヴァとマニュが迎えに来てくれた。

マニュの同僚たちのたまり場のパブに連れていってくれるそうだ。

残念ながらそのパブはチェコのものではなくメキシカン。

まあいいか。



ところが、そのパブにはスナック程度しかなく、本格的な料理は食べられない。

そこでいったんそのパブを出て、別のレストランに連れていってもらった。



明日はチェコの祝日。

そのため、どこのレストランも満席で、マニュとエヴァはあちこち探しまわってくれた。


ようやく見つかったレストランは典型的なチェコ料理の店ではなく、クネドリーキは置いていない。

残念だが、これ以上彼らの手をわずらわせるわけにもいくまい。



豚肉の料理とビールを頼んだ。

彼らはすでに夕食を済ませているらしい。

私に付き合ってくれたのか。

申し訳ない。



その後くだんのメキシカンパブに戻ったのだが、店内は満席でマニュの同僚たちとは離れた席になってしまった。

マニュには悪いことをした。



店内は騒々しく、大声で怒鳴らなければ隣の人と会話もできない。

私はあまりこういう場所は好きではないのだが、ホストの意向には逆らいたくない。

ここがカウチサーフィンのつらいところか。



隣に座ったカップルが話しかけて来た。

彼らも旅行者で、ウルグアイから来たらしい。

なんと、横浜に住んでいたこともあるとか。


彼はよくしゃべる男で、なかなか話が止まらない。

二杯目のビールで酔いがまわってきた私は眠くて仕方がない。

早く帰っって寝たいなあ。

明日は4時半起きなのだから。



それにしてもプラハの路面電車は不便だ。

車内でチケットを買うことはできない。

全ての停留所に自動券売機があるわけでもない。

おまけに自動券売機はコインしか受け付けない。

しかもコインが古かったりすると機械が受け取ってくれなかったりする。


エヴァが携帯電話でeチケットを買ってくれなかったら、無賃乗車するしかないところだった。




彼らのアパートに帰ってからも出発の準備をしなければならない私は、結局2時すぎに寝た。

三時間も寝れないのか。


やっぱり2カ月で22カ国すべてを回るのは無理があるのかなあ。

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ジャンル : 旅行

ベルリン プラハ
















ベルリン プラハ

ベルリンの駅の周辺には、時間を潰せそうな場所は何もなかった。
これだけ大きな都市なのに。
駅構内の店もほとんどが閉まっている。

体が冷えてきた。
とにかく温まらねば。

マクドナルドに入る。
本当なら地元でしか味わえない食べ物を食べたいのだが、ビッグマックとホットチョコレートを頼む。

てんないには、私と同じように大きな荷物を抱えた人たちが大勢いる。
ここで夜を明かすつもりだろう。
仲間がたくさんいて心強い。

夜中の2時ごろ、マックの店員に起こされた。
ドイツ語で何やら言っている。
他の客もゾロゾロと席を立っている。
24時間営業じゃなかったのか。

と思ったら、別の場所にみんな移動していた。
よくわからないが、寒い外に放り出されなくて良かった。

こんな状況でも意外と眠れるものだ。
朝の5時頃にはスッキリ目が覚めた。

電車とプラットフォームの確認をする。
予約は必要ないことは確認済みなので、乗り込むだけだ。
今日は楽な一日になりそうな予感がする。
強いて言えば、通貨の両替くらいか。
果たして、スウェーデンのクローネはチェコで受け取ってもらえるかな。

ハンガリー行きの電車の一等車は、ボックス席しかなかった。
まあいいか。
どうせ寝るだけだ。

昼前にプラハに到着。

駅で荷物を預ける。
ここの係員はえらく人懐っこく、話が止まらない。
きっとこの部署はヒマなのだろう。
私が日本人だと知ると、日本円のコインをくれないか、と聞いてくる。
なんとずうずうしい。
たまたまデンマークのコインが余っている。
もう必要ないのであげると、ほかの係員も飛んできた。
この国は貧しいのだろうか。

ここでのホスト、エヴァとマニュとの約束の時間まで四時間もある。
あいにくプラハは雨だったが、ひととおり市内を散策することにした。

駅を出た瞬間にわかった。
この街は今までのとは違う。

これまでにも美しい街を見てきた。
だが、プラハは別格だ。
街全体が息を飲むほど素晴らしい。

私は芸術に造詣があるわけではない。
それなのに、鳥肌が立った。
なんでもない道を歩いているだけで幸福な気分になれる。

ただ、やはり雨はやっかいだ。
片手に傘、もう片方の手にガイドブックとカメラ。
写真を取るたびに持ち替えなくてはならない。

ガイドブックも濡れてしまった。
貴重な「地球の歩き方」を何度も水たまりの中に落としてしまった。
やはり私は学習能力が低いらしい。

地図で現在位置を確認しながら歩いていたつもりだったが、何度も迷った。
それでもかまわない。
小さな路地ですら厳かな雰囲気を持っている。
むしろ迷ったほうがガイドブックに載っていない掘り出し物に出会える。
そう感じさせるほど、この街は全体がワクワクする。

もちろん有名な見所はやはり外せない。
国立博物館、ヴァーツラフの像、ティーン教会・・・
なかでも旧市街広場は圧巻だった。

ヤン・フスの像とミクラーシュ教会の組み合わせはとても絵になる。

ちょうど正午だったので、旧市庁舎のまわりはものすごい混雑ぶりだった。
そう、天文時計を見るためだ。

今日は雨なので、傘をさしているひとが多い。
それが混雑にさらに拍車をかける。
とても正面には回り込めそうにない。

なんとかポジションを確保したものの、肝心のカラクリ時計はそんなに大したことはなかった。
やはり私には芸術を理解する心が無いらしい。

その後ユダヤ人地区をウロウロする。
ここの建物は一味違った。
なんだか空気も冷たくなった気がする。

そしていよいよカレル橋を渡る。

いやあ、すごい すごい。
これぞ観光地。
さまざまな国の、いろんな人種の人たちが一斉に記念写真を撮っている。
もっとも典型的な観光地を一つ挙げなさい、と言われれば、私は迷わずカレル橋を渡る選ぶ。
欧米人は日本人と比べてそれほど記念写真を撮らない。
その彼らがシャッターを押したくてウズウズするほどこの場所は魅力的なのだ。

しまった。
時間を使いすぎた。
急いでプラハ城へと向かう。

上り坂を歩くのはきつかったが、距離的には大したことはない。
石畳の道は中世ヨーロッパを彷彿させる。
などと思っていたら足をくじきそうになった。
危ない危ない。
自分の体だけが頼りなのだ。
ここで捻挫などしたら身動きが取れなくなる。

プラハ城からは市内を一望することができる。
景色に見惚れていると、遠くから勇ましい掛け声が聞こえてきた。
衛兵の交代式が始まったらしい。

ガラムスタンの交代式は軍楽隊の演奏も長く、ショー的な要素が多かった。
ところが、ここプラハ城のは質実剛健だ。
一切の無駄が省いてある。
兵士の持っている銃も飾りではなく、実弾が入っているのでは?と思わせる雰囲気だった。
制服も戦闘服。
「いつでもやったるぞ こらあっ!」
という空気がピリピリ伝わってくる。

各国の衛兵の交代式はそれぞれ趣が異なっていて面白い。
衛兵の交代式マニアになりそうだ。

そろそろ約束の時間だ。
プラハ本駅に戻らねば。

待ち合わせの場所は駅構内にある本屋。
中で時間を潰していると、ロンリープラネットの西ヨーロッパ版を発見した。
本当は「地球の歩き方」が欲しいのだが贅沢は言ってられない。
これで手を打つことにした。

本屋周りをウロウロしていると、金髪の美少女が話しかけてきた。
エヴァだ。
写真で見るよりもずっと美人だ。
それにとても親切で、チェコ市内の交通システムについて丁寧に教えてくれた。

彼らのアパートへは地下鉄とメトロを乗り継いで行く。
距離的には大したことはないのだが、道順を覚えるのは大変そうだ。
だが、次からは自力でこの道を歩かなければならないのだ。

アパートではマニュが待っていた。
こちらも写真で見るよりもずっと男前だ。
そして今更気づいたのだが、彼らはとても若い。
私とは二回りほど年齢が離れている。
果たして、3日間 彼らとうまくやっていけるだろうか。

エヴァはスロバキア人。
マニュはフランス出身。
彼らはフィンランドで出会った。
そして今はチェコで暮らしている。

エヴァもマニュもとても知的で、話題が豊富だ。
とくに社会問題などの真面目な話が好きらしい。
ジプシーやプラハの春などの話題になると興奮して熱くなり、上着を脱ぐほどだ。

マニュはフランス語の教師のアルバイトをしている。
彼の仕事が終わった後、地元のレストランに連れていってもらった。
カウチサーフィンで宿代が浮く分、食事は豪勢にいきたい。
私一人なら注文もままならないが、今は彼らがいる。
典型的なチェコ料理を頼んでもらった。
もちろんチェコのビールも。
このレストランは独自の蒸溜所を持っているので、オリジナルのビールが自慢だ。

クネドリーキはもっと硬いのかと思っていたが、まるで肉まんのように柔らかかった。
ザウアークラウトは辛く、ビールのつまみにはもってこいだ。
だが、チェコのビールは強く、すぐに酔っ払ってしまった。

彼らも酔いが回ってきたのか、いちゃつき始めた。
お互いの体をまさぐりあっている。
目のやり場に困ってしまった。

会計は私がもったのだが、驚くほど安い。
三人でお腹いっぱい食べて、彼らはビールとパンのおかわりまでしたのに日本円で約2500円ほど。

この瞬間、私はこの国が大好きになった。

食事の後はすぐに寝たかったのだが、昨日はベルリンのマックで寝たのでシャワーを浴びていない。
いくらなんでも二日連続はマズイだろう。
彼らのシャワーを使わせてもらうことにした。

が、途中でお湯が出なくなった。
まだ石鹸の泡が体についているのに、冷たい水しか出ないのである。
心臓が凍りそうになった。

体を拭いた後エヴァに聞くと、よくあることらしい。
やはり日本は恵まれている。
自分がいかに温室で育ってきたか、今回の旅で思い知らされた。
ヨーロッパですらこれだ。
他の発展途上国はいったいどうなっているんだろう。

私の寝床はリビングルーム。
夜は一応個室になる。
快適だ。

だが、Wi-Fiが使えない。
彼らのパソコンを借りたが、できることが制約されてしまう。

あと、洗濯機も借りることはできたのだが、洗濯物を干すスペースは屋外。
今日は雨が降っているので使えない。

カウチサーフィンは万能ではない。
各ホストの家毎にいろんな制約がある。

それでもそれを上回るメリットのほうが圧倒的に多い。

タリンクシリアライン ストックホルム コペンハーゲン ロスキレ ハンブルク ベルリン








タリンクシリアライン、ストックホルム、コペンハーゲン、ハンブルグ ベルリン

予想外の個室で、すっかり肩の力が抜けてしまったようだ。
一晩中たっぷり眠ったにもかかわらず、なんだか体がだるい。
朝が来ても起きたくない。
結局、時間ギリギリまで寝ていた。

ストックホルムのターミナルでは、ムーミンが出迎えてくれた。

ターミナルからは地下鉄でストックホルム市内に向かう。
意外と近いんだな。

ストックホルムで列車の手配をしようとすると、国際線のカウンターは10:00から開くという。
なんと。
私は8:21の電車に乗りたいのだ。

だが、話をよく聞いてみると、コペンハーゲンまでの電車なら手配できるという。
脅かすなよ。
それで十分だ。
あとはコペンハーゲンでなんとかするさ。

出発まで時間があったので、駅の売店で朝食を買う。
せっかくだから地元でしか食べられない物を食べようと思っていたのだが、頭の中で無意識にデンマークの食べ物を探していた。

違う違う。
ここはスウェーデンだ。
連日移動を繰り返しているおかげで、頭と体のコンパスが狂い始めている。

デンマークへ向かう電車の中でインターネットをつかおうとしたら、有料だった。
車内では五時間ほど過ごすことになる。
ボーッとするのはもったいないので、千円ほど払ってパスワードを購入した。

が、電車の揺れがひどく、酔ってしまった。
日本では電車に酔うことなどないのに・・・
せっかくお金を払ったので無理して画面をにらんでいたら本当に気分が悪くなり吐きそうになった。

せっかくまとまった時間を情報収集にあてるチャンスだったのに残念だ。

デンマークに着いた時、なんだか懐かしい気がした。
ここには一泊しただけなのに変な気分だ。

私の乗る予定だった電車は今日は運行されないらしい。
そんな身勝手な・・・
こういうことはヨーロッパではよくあることなのだろうか。

次の電車までは時間があったので、コペンハーゲンから少し足を伸ばしてロスキレ大聖堂を見に行くことにした。

場所はすぐにわかった。
が、人気がない。
これでも世界遺産なのだ。
カメラのシャッターを押してくれる人が現れるまでじっと待つ。
一人で旅行しているとこういうときに不便だ。

夕焼けに照らされるロスキレ大聖堂はとても美しい。
もっと眺めていたい気持ちを抑えてコペンハーゲンに戻った。

コペンハーゲンでは時間の余裕があるはずだったのだが、またもや私の乗る電車がない。
いや、電光掲示板には表示されているのだが、プラットフォームナンバーが表示されていない。
代わりになにかゴチャゴチャと書いてあるが英語ではないので読めない。
ドイツ行きの国際線だぞ。
英語で書けよ!

駅員に聞くと、代替バスがでるという。
またか。
今回の旅は、なんだか想定外の事がよく起こる。

だが、ものは考えようだ。
バスでコペンハーゲン観光ができると思えばラッキーじゃないか。
そうだ、ポジティブ思考だ!

しかし無情にも、バスは観光地とは反対の方向を進む。
世の中なかなかうまくはいかないものだ。

このドタバタのおかげで、ハンブルグでのホスト、カールに連絡する事が出来なかった。
どうやらハンブルグに到着するのは夜遅くになりそうだ。
バスの中ではインターネットは使えない。
カールの電話番号はもらっていない。

それに、このバスがどういう経路を取るのかも把握していない。
説明はあったのだが、よく聞き取れなかった。
隣の人に聞いてもわからないという。

今日は単なる移動日で楽勝のはずだったのに。

バスごとフェリーに乗り込む。
といっても、すぐにドイツ側に到着するので、くつろぐことはできない。
トイレに行くくらいだ。

フェリーを降りたら、バスは少し走ってまた止まった。
今度は電車に乗り換えだ。
なんともあわただしい。

ただ、ハンブルグ行の電車の中では暖かい飲み物とお菓子をいただいた。
電車の遅延のおわびらしい。

予定より大幅に遅れてハンブルグに到着したので、もう夜遅い。
ここでのホスト、カールに会うことは断念したのだが、なんとか連絡をとらねば。
しかし、ハンブルグの駅の中にWi-Fiが使える所は見つからなかった。

明日のことを考えて、ベルリンまで行く。
ハンブルクに比べて、ここの方が選択肢が多いからだ。

ベルリンの駅は大きかった。
が、寝れそうな場所がない。
おまけに寒い!

せめてもの救いは、スターバックスのFREE WiFi が使えること。
果たして、この寒さに朝まで耐えることができるか?

ナーンタリ ヘルシンキ タリンクシリアライン















ナーンタリ、ヘルシンキ(フィンランド)

朝の8時だというのにまだ暗い。
ナーンタリのバス乗り場まで歩く。
昨日の夜にマルコとクセニアはから道順を詳しく聞いておいたのでバッチリだ。
今回の旅はカウチサーフィンのメリットをたっぷりと享受させてもらう。

ムーミン村へは最終のバス停で降りればいいから楽だ。
とはいえ、やはり見知らぬ土地でバスに乗るのはドキドキする。
一旦間違うと、とんでもない所に連れて行かれそうで怖い。
時間に余裕があればそれもまた楽しかろうが、今の私にはそんな余裕はない。

ムーミンワールドはおそろしく閑散としていた。
というより、ナーンタリの町自体がまるでゴーストタウンのようだ。
道を訪ねようにも誰もいない。
ホームレス風の人に道を聞いたら無言である方向を指差してくれた。
どこまでも静かな町だ。

ムーミンワールドはあちこち改修工事中だった。
こんな光景、子供達には見せたくないなあ。
シーズンオフだから、すべての施設はもちろん、土産物屋やレストランも閉まっている。
ブルドーザーのエンジン音が恨めしい。

教訓

北欧には夏に来るべし!

ムーミンワールドからマーケット広場に戻り、トゥルクの駅に向かう。
思った以上に距離がある。
間に合うか?

途中で東洋人風の男に道を訪ねたら、なんとポケットから「地球の歩き方」を取り出して説明してくれた。
私も日本人だと名乗ると話が長くなりそうだったので、最後まで英語で話した。
私はなんとしても次の電車に乗らなければならないのだ。

ギリギリ ヘルシンキ行の列車に間に合った。
しまった。
食料を買うのを忘れてた。
そういえば朝から何も食べてない。
お腹減ったなあ。

せっかくフィンランドまで来たのだから、足を伸ばしてヘルシンキまで行くことにしたのだが、四時半にはトゥルクに戻ってこなければならない。
マルコとサウナの約束があるからだ。
というわけで、ヘルシンキにいれるのはわずか一時間。
なんともあわただしいスケジュールだ。

本当はフェリーに乗ってスオメンリンナ島に行きたかったのだが、次回に回すしかなさそうだ。

元老院広場、ヘルシンキ大聖堂、ウスペンスキー寺院を見たあとマーケット広場へ向かった。
今日もいい天気で海を眺めるのが気持ちいい。
もっとじっくりとヘルシンキを満喫したかった。

港には大小様々な船が泊まっている。
この中にスオメンリンナ島へ行く船があるのかと考えると辛かった。

ヘルシンキの駅で絵葉書とチョコレートを買う。
列車に乗り込んでくつろいでいると、
「そこは私たちの席よ」と言われて移動した。
次の駅で乗り込んで来た男性にも同じことを言われ、また移動した。
めんどくさいなあ。
予約済みの表示なんてどこにも見当たらないぞ。

電車は少し遅れてトゥルクに到着した。
まずい。
マルコとの約束に遅れそうだ。

途中、トゥルクの大聖堂を通り過ぎる。
じっくりと見学したかったが、次回のお楽しみ、ということにしておこう。


四時半を少し過ぎて彼らのアパートに到着した。
遅刻かな?
と思っていると、ちょうどマルコも帰ってきた。
よかった。

そして念願のサウナ!
予約してあったので我々二人の貸し切りだ。
他の人に気兼ねなく写真を撮ることができる。

マルコはビールを用意してくれていた。
もちろんフィンランドのだ。

サウナでビール?
少し危険な気がしたが、せっかくだからいただくことにしよう。

ガイドブックに載っているような、葉っぱで体をたたくようなことはできなかったが、一時間あまりプライベートサウナを楽しむことができた。
ありがとうマルコ。
ありがとうカウチサーフィン。

サウナでリラックスしたあとは、マルコとクセニアとおしゃべりをした。
それにしてもなんて気の利くカップルなんだろう。

サウナで使うタオルを貸してくれた。
自分のを使うからいいよ、と断わると、
マサトはサウナを使ったあとすぐに出発するでしょ。
乾かすヒマがないじゃない、と言ってくれる。

それに港までのバスも調べてくれた。

カウチサーフィンって、善意の固まりでできているのだろうか。

予め調べてあったにもかかわらず、バス停を見つけるのにとまどった。
バスターミナルにはいくつもの路線が乗り入れており、一つ一つ調べていったからだ。

タリンクシリアラインのフェリー乗り場は怖ろしく混雑している。
例によって子供連れも多い。
フィンランドはバカンスのシーズンなんだろうか。

フェリーの中のレストランは高いので、何か夜食を買っておこうとしたが、このあたりには店がない。
しかたなく自動販売機で1ユーロのポテトチップスを買う。
これが今夜の私の夜食だ。
豪華客船にはおよそふさわしくないな。

フェリーに乗り込んでびっくりした。
なんとまさかの個室。
一番安いチケットを買ったので、てっきりドミトリーだと思っていた。
しかもトイレ・シャワー付き。
おまけにテレビまでついているではないか。

よし、決めた。
思いっきりゴロゴロしよう。
この船にはサウナやカジノやジャグジーが備わっているのだが、
サウナはすでにマルコと体験済みだったのでもういいや。

あれ?
インターネットが使えない。
それはちと不便だな。

トゥルク フィンランド












トゥルク (フィンランド)へ

トゥルク行きのフェリーは7:10に出港するので、朝の5:00に起きた。
私だけではなく、ジアドもだ。
日曜の朝だというのに、本当に申し訳ない。
彼はフェリー乗り場まで車で送って行ってくれるという。

申し訳ないので私が断っても、譲らない。
ジアドの家からはバスや電車の接続が悪く、車で行った方が圧倒的に速いらしい。

早朝なので車は少なく、あっという間に港に着いた。
本当にジアドにはどうやって感謝したらいいのかわからない。

フェリーのチェックインは機械で行ったが、eチケットは英語表記ではないのでイマイチわかりにくい。
世界中から観光客がこの船に乗るだろうに、なんなんだろうこの不親切さは。

フェリーのチケットは一番安いデッキクラスを買った。
だがeチケットには私の部屋番号は書いていない。
まさかと思ってインフォメーションセンターで聞いたら、デッキクラスには部屋は無いそうだ。
勝手に船内をウロウロしといてくださいということらしい。

なんてこった。
行きのフェリーは昼便だからまだいい。

しかし、帰りは夜行便を予約してあるのだ。
いったいどこで寝ろというのか・・・
雨風をしのげるだけマシか。

朝日が登ってきたので甲板に出た。
というより、私には他に居場所がない。

甲板には誰もいない。
ご飯をこっそり食べるチャンスだ。

昨日の夕食の残りをジアドが袋詰めにしておいてくれたものを食べる。
フェリーの乗客は金持ちそうな人が多く、私のようなバックパッカーは他には見当たらない。
みんな高そうなレストランで食事をしている。
なんだか急に自分がみじめに思えてきた。

食事を終えて、旅行の計画を練っていると、一人の男が近づいてきた。
私に握手を求めて来る。
もう片方の手にはウィスキーの瓶。
どうやら酔っ払っているらしい。

彼の名はオッセ。
フィンランド人で、BMWのセールスマンをしていたらしい。
だが、いきなり解雇された。
それで朝っぱらから飲んだくれているのか。

目は座っているが、私には危害を加える気はないらしい。
フィンランドの話も聞きたかったので、しばらく彼の話に付き合うことにした。

彼は二度 結婚している。
合計で五人の子供がいる。
私とはそんなに変わらない年齢なのにとても大所帯だ。
うれしそうに子供達の写真を見せて来る。

ふと疑問に思った。
彼の家族はこのフェリーには乗っていないのだろうか。
私なんかとしゃべっているより、かわいい娘達と一緒に居た方が楽しかろうに。

だが、そのその話題に触れると急に怒りだしそうな気がしたのでやめておいた。

今日は快晴で、太陽がとても気持ちいい。
それでも海の上の風は冷たく、レインコートを着ていないと寒い。
それにもかかわらず、オッセは半袖のシャツ一枚だ。
フィンランド人は身体の造りが違うらしい。

彼はラップランドの出身らしい。
私がトナカイの肉を食べたがっていることを知ると、ラップランドに来い、と言う。
ヘルシンキなどの都会では、本当のトナカイ料理は食べられないらしい。

ロシアの話になると、オッセの鼻息が荒くなる。
どうやらロシアが大嫌いらしい。
彼が私には聞いてくる。

「で、お前はどこの国が嫌いなんだ?
正直に言ってみろよ。
わかってるさ。
アメリカだろ。」

いや、別にきらいじゃないけど・・・

じゃあ、どこの国が嫌いなんだとしつこく聞いてくるので、北朝鮮と答えておいた。
だが彼は北朝鮮のことを知らなかった。
中国の一部か?
とか言っていた。

ウィスキーの瓶が空になったらしく、オッセが新たな酒を買うために席を立った。
「I'll be back!」
と何度も言いながら。

これ以上酔っ払いの相手をするのも面倒なので、私も席を移動することにした。

ちょうど船はオーランド島に寄港するところで、向きをグルグルと変えている。

身体が冷えてきたので船内に入った。
この船はジャグジーやカジノなどの豪華設備が自慢なのだが、どうも行く気にはなれない。
日の当たる場所で、海を眺めながら昼寝することにした。

それにしても、フェリーの中にはやたらと子供が多い。
あちこち走り回って、うるさいことこの上ない。
日曜日だからだろうか。

あまりにも天気がいいので、もう一度甲板に出てみることにした。
せっかく目の前に大海原が広がっているのにキャビンに閉じこもっているのはもったいない。

青い海を眺めながら、エマにもらったチョコレートを食べることにしよう。

寒い!
こんなに晴れてるのに寒い。
風がものすごい勢いで吹いている。
どうりで甲板には誰もいないわけだ。

鼻水をすすりながらエマにもらったチョコレートを食べる。
ウィスキー入りなのだが、つぶれてリュックの中がベトベトになっていた。

スウェーデンで買ったお菓子も食べた。
チョコレートの中にキャラメルが入っているのだが、これがとても固い。
普通のキャラメルなら口の中で溶けるのに、これは歯にくっついたままだ。
あまりの寒さに、せっかくのおやつを味わう余裕は無かった。

船内放送が流れる。
あと三十分でトゥルクに到着すると言う。

え?
なんか早くないか。
遅れることはあっても、予定より早く着くことはないと思っていたのであせった。
そう言えばスウェーデンとフィンランドの間には時差があるんだっけ。
忘れてた。

ドカッ、ドカッっと大きな音がする。
どうやら若者が殴り合いの喧嘩をしているらしい。
酔っ払いのオッセといい、フィンランド人というのは血の気が多いのだろうか。

ここトゥルクでもカウチサーフィンを利用する。
マルコとクセニアの指示通り一番のバスに乗ろうとしたら目の前でドアを閉められた。
バスのドライバーからは私が見えているはずなのに。

例のごとく、バスの中には電光掲示板は無い。
車内アナウンスもない。
この状態で、どうやって降りるバス停を確認しろというのだろうか。

隣の女性に聞いてみたが、知らないという。
マルコとクセニアに電話したがつながらない。

後ろに座っている男性に聞いたら、今度は丁寧に教えてくれた。
助かった。

待ち合わせ場所の広場に到着しても、まだ問題は残っていた。
彼らに電話することができないのだ。
メールも送れない。

今回のヨーロッパ旅行では同じことが度々起こった。
ある国ではちゃんと携帯電話が使えるのに、別の国では役に立たないのだ。

こういうこともあろうかと、予め彼らの家の周辺地図を保存しておいた。
iPadを開く。
画像が崩れていた。
モザイクのようになっていて、肝心なところが見えないのだ。

なんてこったい。
この寒い寒いフィンランドで野宿か。

と、その時、クセニアからメールが届いた。
「もうトゥルクには着いた?
あなたからの連絡を待ってるのにどうしたの?
何かトラブルでも?」

今 広場にいる、と即座に返信した。
不思議なことに、返信は問題なくできる。

「すぐに行くからそこを動かないで!」
クセニアからすぐに返事がきた。
とにかくこれで助かった。

クセニアとマルコは自転車で現れた。
とても穏やかで親切なカップルだ。

私がトナカイを食べたがっていることを知ると、わざわざホテルの受付まで行って聞いてくれた。
近くにバイキング料理のレストランがあるらしい。

彼らのおかげで念願のトナカイ料理を食べることができた。
意外にも、とても柔らかい。
もちろんフィンランドのビールも味わいましたよ。

店内はこれでもか、と言わんばかりにバイキング風の内装を施している。
クマの剥製、鹿の毛皮、バイキングの武器など。
ウエイトレスもバイキング風の衣装を着ていて、とても感じの良い人だった。

マルコはフィンランド人だが、クセニアはロシア出身。
二人とも寿司が大好きで、日本にもかなり興味があるらしい。
日本人の友達もいるとか。

食事のあと、彼らの家まで歩いた。

フィンランドでの私の目的は、トナカイ料理とムーミン村とサウナだと伝えると、いろいろと教えてくれた。
ここがカウチサーフィンのいいところだ。

彼らのマンションには共同のサウナがあるので、明日使わせてもらうことになった。
観光地にあるような豪華なサウナではないが、実際に地元のフィンランド人が使っているものだ。
私にとってはそのほうがありがたい。
せっかくカウチサーフィンをしているのだから、普通の観光とは違ったこともしてみたい。

ここでも快適な個室があてがわれた。
今のところ、ハズレのホストはなし。
ツイてる。

ストックホルム 2日目












ストックホルム 2日目

ヴィスビィ行きを断念したため、時間に余裕が出来た。
今日はのんびりストックホルム観光をすることにしよう。

ジアドは朝食も用意してくれた。
パレスチナのパンとヨーグルトとしリアルと果物と野菜と・・・・
朝から豪華な食事を堪能した。
ここまでしてもらってもいいのだろうか。

しかも、あろうことか、車で市内まで送ってくれるという。
どこまで親切なんだろう、この人は。

今朝はゆっくり寝たので、もう昼近く。
急いでガムラスタンに向う。
ここにはすでに昨日来ていたのだが衛兵の交代式があると聞いたので再び訪れた。

土曜日だけあって、観光客が大勢いる。
観光バスが何台も乗り付け、大勢の乗客を吐き出す。
そこかしこで日本語が飛び交っている。
どうやらここは、日本人観光客に人気のスポットらしい。
宮崎駿の「魔女の宅急便」はここ、ガムラスタンとヴィスビィがモデルになっていると聞いたことがある。
その影響だろうか。

王宮の広間に人が集まり出した。
もうすぐセレモニーが始まるらしい。
なんとか最前列の席を確保できた。

風が強く、寒い。
鼻水が出てきた。
これで雨でも降ってきたら最悪だな。

遠くからブラスバンドの演奏が聞こえてきた。
いよいよ始まるらしい。

ロンドンのバッキンガムでも衛兵の交代式は見たが、こちらの方が迫力がある。
なんといっても距離が近いのだ。
軍楽隊のサービス精神も旺盛で、何曲も演奏してくれる。
一曲演奏が終わるたびに大きな拍手が沸き起こる。
バッキンガムでは見られなかった光景だ。

勇ましいドラムだけでなく、ソロのトランペット(?)の演奏もあった。
なんだかジーンとくる。
寒空の中、鼻をすすりながらでも見物する価値は十分ある。

予想していた以上にこのセレモニーは楽しめた。
なんだかますますこのガラムスタンが好きになった。
ユーミンの歌を口ずさみながら、あてもなくガムラスタンの街をさまよう。

また絵葉書を買ってしまった。
出す相手なんていないくせに。
おそらくこの絵葉書もペギー行きだな。
恋人でもない男から毎日ポストカードが届いて、さぞかし気味悪がっていることだろう。

もっとガムラスタンにいたかったが、フィンランド行きのフェリーのチケットを買いにストックホルムに向かった。
ユーレイルパスを使うと半額になるというので、豪華客船「タリンクシリアライン」を使うことにしたのだが、思ったほど安くはない。
それでもフィンランドには行きたかったので思い切ってチケットを買った。

これで今日の用事は済んだ。
後は心ゆくまでストックホルムを堪能しよう。

市庁舎の塔からガムラスタンの街が一望できると聞いたので行ってみる。
ストックホルムの駅からはさほど遠くない。
なるほど、高い塔だ。
登ろうとしたら、入り口にいた女性に止められた。
10月から5月までは塔は開放されていないのだそうだ。
シーズンオフに旅行すると空いているのだが、こういうデメリットがある。
リッダーホルム教会も閉まっていた。
雨がぱらついてきたので、ストックホルム駅にもどってサンドイッチをかじる。
インターネットが使えたので調べてみると、セーデルマルム島からガムラスタンが一望できるらしい。
歩いていける距離だ。

しかし、展望台は閉まっていた。
これだからオフシーズンは・・・

山の上へと続く階段が見えたので登ってみた。
すると、なんと、あの展望台に通じているではないか。
しかもタダで入れた。
ガムラスタンの景色を心ゆくまで楽しんでからジアドにメールを送った。
すぐに迎えにきてくれるらしい。
ちょっと甘え過ぎな気はしたが、帰り方がわからないから他に選択肢はない。

この日の夕食も、ジアドがご馳走してくれた。
羊の肉と玉ねぎとトウモロコシとトマトと・・・・・
そしてもちろん米の飯も!

料理の合間に洗濯もした。
彼の部屋には洗濯機はなく、地下の共用スペースに行かなければならない。
タイムスケジュールが決まっていて、その日はちょうどジアドの番だったのだ。

乾燥機もあった。
しかし、私の知っている回転式のものとは違う。
日本では見たことの無いタイプのもので、なかなか面白いし、それに合理的だ。
なんといってもシワにならないのがありがたい。

本当にジアドの家は快適だ。
私はホストに恵まれている。

ストックホルム スウェーデン












ストックホルムへ

次のホストからの連絡がないと思っていたら、私の出したメッセージが届いていなかったようだ。
急いでメールを送る。
まだ彼の連絡先を聞いていないのだ。

そして、また一つミスを犯していることに気づいた。
ゴットランド島のヴィスビィ行のフェリーは、土曜日には減便されるのだ。
飛行機を使うべきか。
いや、予算オーバーだ。

次のホスト先はもう決まっているので、日程は変更できない。
こういうところがカウチサーフィンの不便なところだ。
まあ、最初から日程に余裕を持たせておけば問題はないのだが。

朝早くにも関わらず、イヴェルタが見送ってくれた。
ヤーシャはまだ寝ている。

荷造りに手間取ってしまい、駅まで走って行った。
霜が降りているので滑って転びそうになる。
あせって道を間違えそうになった。
もしも電車に乗り遅れたら、次のストックホルム行の直通列車は数時間後になる。

オスロの駅は早朝にもかかわらず混雑していた。
ストックホルム行きの電車に乗る前にまずはバスに乗らなければならない。
バス停にはすでに多くの人が集まっていた。
全員乗れるのだろうか。
ふと不安に思ったが、バスは何台も来たので問題は無かった。

バタバタしていたので、ペギーに絵葉書を出しそびれた。
せっかく「ムンクの叫び」の絵葉書を買ったのに。

バスから列車に乗り換える。
霜が降りているせいで、あたりは真っ白だ。
水たまりが凍っているのに気づかず、またもや転びそうになった。

フィンランド行きの列車から見える景色は最高だ。
さすがは森と湖の国。
湖面から立ち昇る湯気が朝日に照らされて、とても美しい。
一等車はガラガラで、とても静か。
ゆったりとした朝を過ごすことが出来た。

車掌がやってきて、コーヒーの準備が出来たという。
このサービスは料金に含まれているとか。
いいね!
あとこれでインターネットが使えれば文句はないのだが。

せっかくだから、食堂車でフリーのコーヒーをいただくことにした。
お腹も空いてきたことだし、ここでノルウェーのコインも使い切ってしまおう。

食堂車のお姉さんはとても美人だった。
が、ノルウェーのコインはきっぱりと断られた。
スウェーデンのお金しか使えないという。
私からすれば、ノルウェーもスウェーデンも同じような国なのに、なんか不便だな。

ストックホルムの駅は恐ろしく混雑していた。
道ゆく人は皆速足で、とても道を聞ける雰囲気ではない。

バーガーキングを見つけたのでiPadを開く。
が、インターネットのサービスは内容だ。
代わりにストックホルム駅のWiFiサービスを見つけた。
どうやら無料のようだ。

とにかくホストのジアドと連絡をとらねば。

彼からメッセージが届いていた。
待ち合わせの段取りが書いてある。
これで今夜は野宿せずにすみそうだ。

突然回線が途切れた。
フリーのWiFiは15分間だけのようだ。
後は金を払えということらしい。

次はお金だ。
ここではディナーやフェリーの予約などで結構出費がかさみそうなので多めに用意しておきたい。

まずはノルウェーのお金を交換した後、ATMを探す。
やっと見つけたATMは私が使ったとたんに故障した。
さっきまで正常に動いていたのに・・・

使い方が間違っているのかと思い、他の人に変わってもらったがダメだった。

後ろに並んでいる人たちが恨めしそうに私を見る。
私が悪いのか?

逃げるようにその場を去った。

次はフェリー会社の事務所を探す。
だが、その場所にはメガネ屋さんがあった。
どうやら別の場所に移動したらしい。

時間を無駄にしてしまった。
急いでガムラスタンに向かう。

話に聞いていた以上に美しい街だ。
天気もよく気持ちいい日だが、その分観光客も多い。
朝早くに来るべき場所だな、ここは。

一通りガムラスタンを堪能した後、ジアドとの待ち合わせの場所に向う。
彼は車で迎えに来てくれた。
とても親切そうな人だ。

ジアドはパレスチナ出身で、二人の娘さんがいる。
家のあちこちに彼女たちの写真が飾ってある。
二人ともとても美人だ。
紹介してくれ、と頼んだら即座に却下された。
お前とはあまりにも歳が離れすぎているじゃないか、と苦笑していた。
そりゃそうだ。ジアドと私とは同年代。
彼の娘さんたちは18歳と22歳なのだから。

スウェーデン料理を食べたかったので、レストランに行こうとジアドを誘ったのだが、彼が料理を作ってくれるという。
パレスチナ料理だ。
しかもうれしいことに、ご飯も炊いてくれるらしい。

毎日パンばかりで、そろそろ日本食が恋しくなってきていたので、これはなんともありがたい申し出だ。
もっとも、日本のご飯とはかなり異なる代物だったが。

ジアドは大量の肉を焼いてくれたのだが、味付けはかなりいい加減。
パレスチナの調味料を適当にフライパンに放り込む。
彼は健康にはかなり気を使っているようで、野菜も豊富にストックしてある。
スウェーデンのビールも振舞ってくれた。
なんとも豪華な食事だ。

一本のビールでフラフラになり、ムチャクチャ眠たくなってきた。

だが、私にはまだやることがある。
明日はなんとしてもヴィスビィに行きたい。
何かいい案はないかとジアドに聞いてみたが、どうもなさそうだ。

ジアドはもう一泊余分に泊まっていけばいい、と言ってくれるが、
フィンランドでのホストはもうすでに決まっている。
ここがカウチサーフィンの悲しいところだ。

ヴィスビィは断念するしかなさそうだ。
また宿題が増えてしまった。

ジアドの娘さんのベッドで寝させてもらう。
フカフカしてとても気持ちいい。

今夜もぐっすり眠れそうだ。
カウチサーフィン(CouchSurfing)とは?

CouchSurfingKyoto

Author:CouchSurfingKyoto
.カウチサーフィン(CouchSurfing)とは。

日本に観光に来た外国人の宿として無償で自宅を提供し、国際交流を深めるというカウチサーフィン。

また、自分が海外に旅行に行く時には、現地の一般家庭に泊めてもらい、その土地に住む人々の生の暮らしを体験することだってできてしまいます。

ここは、そんなカウチサーフィンの日常をありのままにつづったブログです。

「カウチサーフィンは危険じゃないの?」
そんな危惧も理解できます。
たしかに事件やトラブルも起こっています。

なにかと日本人にはなじみにくいカウチサーフィン。

・登録の仕方がわからない
・詳しい使い方を知りたい
・評判が気になる

そんな人は、ぜひこのブログをチェックしてみてください。
きっと役に立つと思います。

最後に。

「カウチサーフィンを利用すれば、ホテル代が浮く」

私はこの考え方を否定しているわけではありません。
私もそのつもりでカウチサーフィンを始めましたから。

しかし、カウチサーフィンは単なる無料のホテルではありません。
現在、約8割のメンバーはカウチの提供をしていません。サーフのみです。

だって、泊める側にはメリットなんてなさそうですものね。

「自分の部屋で他人と一緒に寝るなんて考えられない」
「お世話したりするのってめんどくさそう」

時々私はこんな質問を受けることがあります。

「なぜホストは見知らぬ人を家に招き入れるのか?」

それはね、もちろん楽しいからですよ。

自己紹介
プロフィール


こんにちは。
京都でカウチサーフィン(CouchSurfing)のホストをしている、マサトという者です。
ときどきふらりと旅にも出ます。
もちろん、カウチサーフィンで!


(海外)
2011年、ユーレイル・グローバルパスが利用可能なヨーロッパ22カ国を全て旅しました。
それに加えて、イギリスと台湾も訪問。
もちろん、これら24カ国全ての国でカウチサーフィン(CouchSurfing)を利用。

2012年、東南アジア8カ国とオーストラリアを周遊。
ミャンマーを除く、8カ国でカウチサーフィンを利用しました。

2013年、香港、中国、マカオをカウチサーフィンを利用して旅行。 風水や太極拳、カンフーを堪能してきました。

2014年、侍の衣装を着て東ヨーロッパ20か国を旅行してきました。


(日本国内)
これまでに京都で329人(53カ国)のカウチサーファーをホストしてきました(2013年6月25日現在)。

もちろん、これからもどんどんカウチサーフィンを通じていろいろな国の人と会うつもりです。



カウチサーファーとしてのカウチサーフィン(CouchSurfing)の経験:


オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、チェコ共和国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、ルーマニア、スロヴェニア、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、台湾

シンガポール、インドネシア、オーストラリア、マレーシア、タイ、ミャンマー、ラオス、カンボジア、ベトナム

香港、中国、マカオ

スロヴァキア、ポーランド、リトアニア、ラトヴィア、エストニア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドヴァ、沿ドニエストル共和国、ルーマニア、セルビア、マケドニア、アルバニア、コソヴォ、モンテネグロ、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、リヒテンシュタイン


ホストとしてのカウチサーフィン(CouchSurfing)の経験:


アイルランド、アメリカ、アルゼンチン、イギリス、イスラエル、イタリア、イラン、インド、インドネシア、ウクライナ、エストニア、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カナダ、韓国、クロアチア、コロンビア、シンガポール、スイス、スウェーデン、スコットランド、スペイン、スロヴァキア、スロヴェニア、タイ、台湾、チェコ共和国、中国、チュニジア、チリ、デンマーク、ドイツ、トルコ、日本、ニューカレドニア、ニュージーランド、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、ブラジル、フランス、ベトナム、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、香港、マダガスカル、マレーシア、メキシコ、モルドバ、リトアニア、ルーマニア、ロシア



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