カウチサーフィンと恋愛感情。
ニュージーランドからやって来たカウチサーファー、リリィーが私の部屋に泊まるようになってから今日で1週間。
彼女のことを知れば知るほど、リリィーの魅力に惹きこまれていきます。

どこで知ったのか、リリィーが壬生寺に行くと言い出しました。
「今日はサムライ・ハウスに行くわよっ!」
確かに竜馬ブームに沸いた昨年から、壬生寺を訪れる人は激増したことでしょう。
でも、リリィー、新撰組のこと知ってるのか?
日本の歴史なんか面白いか?

実は私は隠れ竜馬ファンです。
「おーい、龍馬!」や、「龍馬伝」などを読んで、
壬生寺には一度行ってみたいと思ってました。

あいにくの雨の中、到着してさっそく写真を撮る私たち。
でもリリィー、こんな写真、君にとって意味があるのかい?

一通り新撰組や、当時の時代背景をリリィーに説明したのですが、
わかったのかわからないのかよくわからないリアクション。
記念撮影を終えて、中に入ろうとしたら、なんと入場料1000円!
実はここは壬生寺ではなく、八木邸跡だったのです。
リリィーが私に尋ねます。
「1000円も払う価値はある?」
そんなこと聞かれても、私も中に入った事はないのでわかりません。
ちょっと高いような気が・・・。
「ハッキリ答えなさいよ。使えない男ね。
もういいわ。私をさっさとサムライ・ハウスに連れて行きなさいっ!」

壬生寺は確かに新撰組の屯所です。
でも、「サムライ・ハウス」ってなんか違うような気がするんですけど。
ほんとに私の解説がわかってるんでしょうか、リリィーお姉さまは。
近藤勇って知ってるの?

リリィーはこの壬生寺が気にいったようです。
何の変哲もない、マイナーなお寺が彼女の趣味なのです。
上機嫌な時の彼女はとても美しい。
できればずっと笑っていてもらいたいものです。
壬生寺を後にした我々は、バスで京都駅に向かいます。
いったんランチをとったあと、本願寺と東寺に行くためです。
ところが、またまたリリィーさんの気まぐれが始まりました。
「私、雨の中を歩くのは気が進まないわ。
どこか室内で楽しめる所はないの?」
今日は雨だから、三十三間堂やまんがミュージアムに行こうと私が提案したら、
あっさり却下したのは誰でしたっけ?
「そうだ!映画が見たいわっ!
そういえば私、日本の映画館って一度行ってみたかったのよね。
私って、なんて冴えてるのっ!」
ということで、河原町へ向かいます。
映画館で松田 龍平のポスターを見て大興奮のリリィーさん。
「彼、モロ私のタイプだわっ!
キャーッ、どうしよう!」
そんなことより、リリィーさん、何の映画を見るのか決めないと・・・
『ツーリスト』(The Tourist)なんてどう?
「えーっ、日本の映画館って1800円もするの?
それに、私、アンジェリーナ・ジョリーって嫌いなのよね。
知ってる?
彼女は人の旦那を寝取ったのよっ。
許せないわ。
最低の女よ!
それに、日本を旅行中の私が『ツーリスト』(The Tourist)を観るなんて、
悪い冗談だわ」
というわけで、彼女は「エンジェル・ウォーズ」を推します。
でも、せっかく1800円も払うのだから、私はもっと中身のある映画が見たいです。
リリィーには悪いけれど、私はアンジェリーナ・ジョリーが好きです。
それにジョニー・デップも。
私がそう言うと、リリィーはあっさり折れました。
なんだか気味が悪いです。
そういえば、映画館で映画を見るのって久しぶりだな。
彼女とデートしているような錯覚が、不意に私を襲います。
(何を考えてるんだ。
勘違いするな。
これはデートなんかじゃない。
落ち着け、俺。)
なんだか急にリリィーの事を「女」として意識しだした私。
中学生の時、初めて女の子と一緒に映画を観に行った時よりも、
もっとドキドキしています。
映画の予告編を見ながら、リリィーとたわいもない話をしているこの瞬間の、
なんといとおしいこと!
映画館の中で会話をする時には、周りの人に迷惑がかからないように、
リリィーは私の耳元に口を持ってきて囁きます。
その瞬間、甘く、くすぐったい感覚が私の脊髄を走り抜けます。
映画を見ている間、何度もリリーの腕や肩が私に触れます。
その度に、彼女を抱きしめたくなる衝動に耐えねばなりません。
それにこの映画、とても美しいんです、いろんな意味で。
クライマックスシーンでアンジェリーナ・ジョリーが声を出さずに
「I love you」
と言うシーンなんて、鳥肌が立っちゃいました。
普通のカップルなら、映画を見た後ホテルへ直行コースです。
ところがリリィーさんの反応は冷めたものです。
「は?
あんたは中学生のウブな女の子なの?
まあ、ハリウッド映画にしては上出来かもね。」
この女にはロマンスのかけらもないのか。
映画を見た後は、待ち合わせポイントへと向かいます。
夕食はリリィーの友人などと一緒に食べる約束があったからです。
ベジタリアンの彼女でも食べられる、海鮮料理のお店に入りました。

めざしを焼く私。
このお店は潮の香りがプンプンしてて、なかなか良い雰囲気です。
ここなら、外国人のカウチサーファーを連れてきたら喜びそうです。

左から、私、ルミ、フィリップ、リリィー、ティム。
例の黒人のファノンは結局来ませんでした。
ちなみにフィリップはカウチサーファーではありません。
本屋さんでリリィーにナンパされたそうです。
なにやってんだ、リリィー!

日本人の若い男の子が大好きなリリィー。
一緒に写真を撮って、大はしゃぎしています。
「たった2杯ビールを飲んだだけなのに、なんだか私、変だわ。
あら、いやだ、恥ずかしい。
どうしよう!」
若い男に囲まれて、そんなにうれしそうな顔をしないでくれよ、リリィー。
なんでそんなにデレデレしてるんだよ。
それに、ガキども!
気易く俺のリリィーに触るなっ!
なれなれしく肩なんて組んでんじゃねえっ!
あれ?
なんなんだ、この感覚。
リリィーと付き合ってるわけでもないのに、ジェラシー?
ヤバいぞ。
本気で惚れてしまったのか?
恋に落ちてしまったのか?
でも、明日にはリリィーは旅立ってしまうんだぞ。
テーマ : カウチサーフィン(Couch Surfing)
ジャンル : 旅行