飛んでる男
私はこれまでにたくさんの台湾人カウチサーファーと出会ってきたので、
本来なら彼と会おうという気にはならなかっただろう。
だが、私は今、中国語を勉強中。
中国語圏の人と出会う機会はできるだけ大事にしたい。
それが語学上達の一番の方法だと思うからだ。
だが、私が彼と会ってみようと思う気になったのは、
彼が中国語圏の人間だという理由だけが原因ではない。

(ウェインのカウチサーフィンのプロフィールより)
彼の写真を見て笑ってしまった。
文字通り、「ぶっ飛んで」いる。
なかなか楽しそうな男だ。
ウェインは彼女と一緒に日本にやってくる。
カウチリクエストを送ってきたのはウェインなのだが、
それ以降の連絡はウェインの彼女とするようになった。
というのも、彼女は日本語を勉強していたことがあるらしく、
私とメールをやり取りすることで自分の日本語能力を高めようという魂胆があるらしい。
なんということだ。
彼らを私の中国語練習の踏み台にしようとしていたのに、
逆に彼女の日本語の練習相手をさせられるはめになってしまった。
だが、どことなくホッとしている自分がここにいる。
それはそうだろう。

こんなキャラクターの濃い人間と毎日話をしていたら、
実際に会う前に疲れてしまうよ。
ウェインの彼女、シャーリンとはLINEを通じて毎日のように連絡をとりあった。
facebookでもなければGmailでもない。
ほんとにLINEはアジア圏でその勢いを増しているのだな。
そして待ち合わせ当日。
あれほど念入りに待ち合わせ方法を打ち合わせしておいたというのに、
彼らを見つけることができない。
駅の「○○出口」で!
というふうに取り決めておいたから、間違えようがないはずだ。
いくら日曜日で駅前は混雑しているといっても、
ウェインを見つけられないはずがない。
なぜなら、

こんな人間がいたら、気づかないわけがない。
いやでも目に飛び込んでくるはずなのだ。
それなのに彼らが見当たらないというのは、いったいどういうことなのだろう。
ハッ!
もしかして職務質問でもされて警察署に連行されてしまったのだろうか。
意味もなくこんな満面の笑みを浮かべていたら、警官に怪しまれてもしかたがない。
ふと気づくと、シャーリンからLINEにメッセージが入っていた。
「私たちはすでに5番出口にいるわ!」
そんなはずはない。
私は今、その5番出口にいるのだ。
もう一度あたりをよく見渡してみるも、彼らの姿はそこにはない。
すると、遠くの方から一人の女の子が大きく手をふりながら私の方へと走ってきた。
シャーリンだ。
なんでシャーリンはあんな遠くから走ってくるんだ?
待ち合わせ場所はここのはずなのに。
ウェインたちは、約束していた場所からは少し離れたところにあるインフォメーションセンターにいた。
なかなか私と会うことができず、不安になった彼らは私と連絡をとろうとしたのだが、外国では携帯電話を使うわけにはいかない。
そこでWIFIを求めてインフォメーションセンターまで移動したということだった。

とにかくお腹がへったというので、とりあえず昼食をとることにしました。

彼氏の前でシャーリンを口説く私。
彼女とはずっとLINEで連絡を取り合っていたので話も弾みます。

ウェインたちに歌舞伎の説明をしたのですが、彼らは歌舞伎のことをまったく知りませんでした。
少し興味はもったようですが、入場料は私たちにはとうてい手の届かない額。
写真だけ撮ってさっさと次のポイントへ移動。

清水寺。
あいかわらず極上の笑顔を見せるウェイン。
驚くべきことに、この笑顔はけっして作り物ではないのです。
彼の底抜けに明るい性格が自然と表情ににじみでているだけなのです。



ギオンコーナーでは芸者や舞子の資料が展示してあるので、それをウェインたちに見せようと立ち寄ったところ、
中から音楽が聞こえてきました。
どうやら琴か三味線のようです。
「なんだろうねえ」
と言いながら私たちがうろうろしていると、
「どうぞ」
受付に座っていた女性が立ち上がって、
にっこりとほほ笑みながらパンフレットを差し出してきます。
いや、「どうぞ」って言われても。
きっと入場料も高いんでしょ。
さっき歌舞伎の南座で見た法外な料金表が脳裏をかすめます。
「いえいえ、無料ですからどうぞお気軽にお入りください」
ウェイン、君たちはツイてるね。
無料だってさ。
パンフレットを見ると、筝曲の演奏会と書いてあります。
全部で10曲以上演奏するようですが、伝統芸能に造詣の深くない私たちには一曲でじゅうぶん。
早々に退散しました。

今日の観光はこれで終了。
本当は彼らに金閣寺や伏見稲荷なんかも見せたかったのですが、明日には奈良に行ってしまうそうです。
彼らのリクエストにより、夕食はラーメン。
ウェインは相変わらずいい笑顔をしています。
もちろんシャーリンも負けてはいません。
あれ、もしかして君たちおそろいのメガネなのかい?

彼らは絵葉書をくれました。
自分で撮った写真をプリントアウトしたものだそうです。

絵葉書の裏には直筆のメッセージが。
なんだかうれしいねえ。
私はもうすぐ東ヨーロッパに行くのですが、その時に台湾の航空会社を利用します。
そのため行きも帰りも一度台湾に立ち寄るのですが、時間が中途半端。
台北まで行くにはちょっと厳しいスケジュール。
でもせっかくだから台湾も味わってみたい。
都合のいいことに、ウェインは桃園空港のすぐ近くに住んでいます。
やった、カウチ ゲットだぜ。
彼は台湾名物、夜市も案内してくれると言っています。
世界中に着々と拠点を築きつつある実感。
これぞホストの醍醐味と言えるでしょう。
台湾で会おう、ウェイン&シャーリン!
日本国内編はこれでしばらくお休みとなります。
これからは海外編。
できるかぎりリアルタイムでブログを更新していきたいとは思っています。
しかし、今回訪れるのは旧共産圏の国々。
はたしてネット・インフラはどれくらい充実しているのだろうか。