ベラルーシのトランジットビザ申請 (2014年7月)
日本人がヨーロッパを訪れる際、基本的にビザは不要だ。
だが、今回の訪問国のうち一か国だけ例外があった。
ベラルーシだ。
このベラルーシ、かなりやっかいな国で、観光ビザを取得するためには招待状が必要だったりと、かなりハードルが高い。
ロシアと同じで、個人の自由旅行には不向きな国のようだ。
ただ、トランジットビザ(通過査証)なら招待状は不要らしい。
30日間有効な観光ビザとちがい、トランジットビザは48時間しか効力がない。
まあでもベラルーシには特に見どころも無いようだし、夜行列車などをうまく利用すればまるまる二日間観光できる計算になる。
トランジットビザで十分だろう。
しかし私は京都在住。
ベラルーシ大使館は東京にあるので、ビザを申請するためにはわざわざ東京にまで出向かなければならない。
即日発行してくれるわけではないので、少なくとも2回は行くことになる。
世界一周中の人の間では、隣国のリトアニアやウクライナで通過査証を取得するのが定番となっているようだ。
だが、貴重な現地での滞在時間をつまらない事務手続きのために無駄にはしたくない。
日本でできることは日本にいる間にやっておきたい。
ベラルーシ大使館のホームページによると、どうやら郵便でもビザの申請は受け付けているようだ。
知らなかった。
わざわざ東京まで行かなくてもいいのか。
大使館のホームページには申請方法がひととおり記載してある。
だが、郵送でビザを申請するのはこれが初めてなのでやはり不安だ。
そこで、領事館に電話していろいろと聞いてみようとしたのだが、いきなり共産国家の洗礼をうけることになる。
だいたいどこの国でも、公務員というのは不愛想なものだ。
だが、私の電話に応対した大使館の女性の冷たさはそんなレベルではなかった。
共産国家の官僚に比べれば、日本のお役所仕事がよっぽど親切に思えてくる。
彼女の話す日本語におかしなところはないが、なんとなく違和感を感じる。
おそらくベラルーシ人なのだろう。
他の仕事で忙しいのだろうか。
それともビザに関する質問は毎日何十回も受けていて、もううんざりしているのだろうか。
とにかく「こんな電話、早く切ってしまいたい」というオーラが彼女の言葉の節々からよーく伝わってくる。
こちらもそんな人と関わり合いになるのはいやだが、ビザを取得するためにはいくつか確認しておきたいこともある。
ここはがまんだ。
それでも、彼女との不毛な会話から得るものもあった。
トランジットビザを取得するためには、通過後の国でのホテルの予約確認証が必要だということだ。
これはベラルーシ大使館のホームページ上では確認できなかったことだ。
私はカウチサーフィンを利用するつもりなので、もちろんホテルの予約などしていない。
だが、彼女の冷たい反応から察するに、ここはおとなしくルールに従っておいたほうがよさそうだ。
「カウチサーフィンで現地の人の家に泊めてもらうから、ホテルは使いたくないんです」
なんて言おうものなら、問答無用で申請を却下されかねない。
ここで生まれてはじめてホテルの予約サイトなるものにアクセスしてみた。
いつもはカウチサーフィンを使うか、現地でゲストハウスを見つけるかしていたので、この手のサイトにはこれまで縁がなかったのだ。
だが、その値段を見て驚いた。
首都のど真ん中のドミトリーでも、1泊400円くらいからある。
ビザ申請のためにパスポートを簡易書留で送る料金が片道450円(往復900円)。
宿泊代金の方が安いとは。
もしかして東欧というのは、東南アジアなみの物価なのか?
これは思ったよりも豪遊できるかもしれない。
書類をそろえてその日のうちに簡易書留をベラルーシ大使館に送った。
郵送料は往復で900円ほどかかったが、ビザ自体の申請料は無料なのでそれほど痛い出費ではない。
こんな簡単な事務手続きだけでトランジットビザを取得できるなら安いものだ。
ビザ申請だけのためにヴィリニュス(リトアニア)での貴重な半日を費やすのがバカらしく思えてくる。
日本での半日と海外滞在中の半日とでは、その重みがまったく異なる。
あとはトランジットビザが送り返されてくるのを待つのみだ。
ホームページには所要5日間と書いてある。
余裕を見て1か月前に手続きを開始したから安心だ。
と思っていたのだが甘かった。
私はすぐに共産国家の能率の悪さを思い知らされるはめになる。
土日をはさむから、1週間くらいで到着するだろうと思っていたのだが、届かない。
2週間たってもまだ来ない。
だんだん不安になってきた。
他の人のブログを見ると、11日間くらいかかっていたようだ。
ベラルーシ大使館のホームページに所要5日間と書いてあるのは、大使館に直接出向いた場合に限るのだろうか。
待てども待てどもビザは届かない。
余裕を見て1か月前に申請したはずなのに、すでに3週間が経過しようとしている。
おかしい。
いくらなんでも遅すぎる。
もしかしてなにか手違いでもあったのだろうか。
私の大事なパスポートはどこかで迷子になってしまったのではないだろうか。
あれがなかったら、ベラルーシどころか今回の旅そのものがご破算になってしまう。
これはもう大使館に電話するしかない。
あの無機質な大使館員と再び話をするのは気が進まなかったが、他に方法はない。
午後の部の郵便配達が届くのを待って、そこにパスポートが含まれていなかったら電話しよう。
「ビザに関する質問の受付時間は12:30まで」と大使館のホームページには書いてあるが、そんなのかまうもんか。
相手がでるまでベルを鳴らし続けてやる。
と思っていたら簡易書留が配達された。
私が郵便局で投函してから20日後のことだった。

あまりのうれしさに、私は郵便配達員にキスしかねない勢いだった。
うれしい。
とにかくうれしい。
長い長い3週間だった。
他の人のブログによると、2日間有効のトランジットビザでも、1週間くらいの幅をもたせて発行されると書いてあった。
だが、私の場合はなぜかきっちり48時間。
これでもう日程の変更はできない。
それでもベラルーシに入国できるのだ。
行くからには目いっぱい48時間を有効に活用してやる。
待ってろよ、ベラルーシ!