秘密
こんばんわ、マサト。
あなたはまだ気づいていないと思う。
でもね、私たちはすでに出会っているのよ、パラレル・ワールドでね。
私は今この手紙を未来から書いています。
実はね、私と私の姉、そしてマサト、そう、あなたのことよ。
この3人が3月21日にこの惑星を救うことになるの。
といっても、きっと何のことだかわからないわね。
いいわ。
これから順を追って説明していくわね。
私たちは駅で出会うの。
その5分前に、あなたは偶然一人の少女を見かける。
その子は髪に赤いリボンをつけていて、あなたのひざの上にたこのおもちゃを落とすの。
あなたはすぐにその子を追いかけるけど、女の子はすぐに人混みに紛れてしまうわ。
それからきっかり48秒後、あなたは一片の紙切れを目にすることになる。
そこにはこう書かれているわ。
「けっして振り返ってはいけない。
目の不自由な男が躍るダンスだけを見よ。」
2分と14秒が経過したあと、どこからともなく音楽が聞こえてくるわ。
http://www.youtube.com/watch?v=XnBbjc5hmho
29秒後、あなたは一人の盲人に気付くの。
紫のスーツを着て、金色の靴をはいてるからすぐにわかるはずよ。
彼はタップダンスを踊っていたのだけれど、曲の途中で電車の中に駆け込んでいく。
もちろんあなたは彼を追いかけるわ。
でも、車内に残されたのは彼のジャケットのみ。
そのジャケットの背中にはこう書いてあるの。
「左に5歩。右に1歩。
トンネルに入れ。
ひたすら南へ進め。小川のせせらぎが虹に変わるその場所まで」
トンネルの終点であなたは虹色で描かれた落書きと、一本のレバーを目にすることになるわ。
きっとあなたのことだから、ためらわずにレバーを引くのでしょうね。
それでいいのよ。
洞窟の奥の方に暗い人影が立っているのが見えるわ。
怖がらないで。
それが私よ。
未来から来たわたし。
燃えるような赤毛と、およそ正気の沙汰とは思えないまゆ毛。手には太った猫を抱えてるわ。
ほんとうに太った猫なのよ。
そこで私はあなたに、とても重大なことを伝えなければならないの。
今夜いったい何が起こるのか。
私だってこんな恐ろしい事は言いたくないわ。
巨大なたこのモンスターが京都の街を襲うなんて、考えただけでもぞっとするもの。
でも、私はどうしてもあなたに伝えなくてはならない。
私と、私の姉と、そしてマサト、そうあなたよ。
この3人で地球を救わなくてはならないの。
これはあなたの運命なの、マサト。
逃げちゃだめ。
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カウチサーフィンをしていると、こんなメッセージをもらうこともあります。
ええ。もちろんすぐに返事を書きましたよ。
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どうやら俺は、運命からは逃れられないらしいな。
わかったよ、ハナ。君たちにつきあうことにするよ。
実は俺も、君に伝えておかなきゃならないことがあるんだ。
どんなに控え目に言っても、俺は料理がまったくできない。
だが、一つだけ例外がある。
なぜか、たこ焼きだけは作れるんだ。
ばあちゃんの遺言だからな。
「いいかい、マサト。
このたこ焼き器だけはいつでも使えるように、毎日きちんと手入れをしておかなくちゃいけないよ。
たこ焼きソースをきらさないように、いつも気をつけておくんだよ。
じゃないと、とても恐ろしいことになるんだからね。」
ばあちゃん、ボケてたわけじゃなかったんだな。
クククッ。
まさかほんとに、このたこ焼き器を使う日が来るとはな。

真ん中がハナ。左が姉のサラ。
クロアチアからの初のカウチサーファーです。
それにしてもハナは、なんちゅうきれいな足をしとるんじゃ。
たこのモンスターなんて、もうどうでもいいわ。