親猿の骨も固いかの?
私のカウチサーフィン人生始まって以来の大物の訪問だ。
だが彼女は彼氏連れだった。
それはそうだ。
そんなウマい話がそうそうあるわけがない。
極上のセレブがこんなむさ苦しい部屋に来てくれるだけでも感謝せねば。

ウィミーの彼氏はニュージーランド人のフェイリー。
フェイリーがインドネシアを旅行した時に彼らは知り合い、現在はニュージーランドで一緒に暮らしている。
彼らが知り合ったきっかけは、カウチサーフィンのパーティーだったとか。
そういう出会いもあるんですね。
ところでウィミーはとても流暢な英語を話す。
きっとインドネシアでもかなりの上流階級の出身なのだろう。

彼らのおみやげはこの「リコリス」。
ニュージーランドでは有名らしい。
メイサンも知っていた。
メイサンにこのことを報告すると、
「もう食べた? おいしい?」
「ああ食べたよ。なかなかおいしかった」
「へええ。私あんまりそれ好きじゃないのよね」
そういう言い方するなよ。
ほんとは俺も「あまりおいしくないなー」、と思ってたんだけど、人からもらったものをそんなふうに言っちゃダメかな、と思ってたんだからさ。

フェイリーとウィミーはとても気さくなカップルで、3人で一緒にずーっとしゃべってました。
彼らはニュージーランドでシェアハウスに住んでいて、カウチサーフィンのホストもしています。
ニュージーランドでミス・インドネシアの家に泊まれるなんてなかなか素敵な話だと思いませんか?
特にフェイリーは話好きで、夜遅くまでひざを割って話しました。
というのも彼は大の日本文化びいきで、本物の日本人と一度じっくりと話してみたかったそうなのです。
しかし、必ずしも日本の事をすべて受け入れているわけではありません。
日本のことをよく知っているからこそ、かなりセンシティブな話題にまで話はおよび、二人ともヒートアップしてしまう場面もありました。
そういう時でも、ウィミーがやんわりと仲裁に入ってくれたおかげで事なきを得ましたが。
「俺は日本人のことは好きだが、クジラを食べることに関しては絶対に許せない。
IWCの委員会では調査捕鯨は認められているが、あれは調査とは名ばかりで、実態は完全に商業捕鯨じゃないか。
やり方がこそくだ。
さらにひどいことには、委員会での投票の際、日本は発展途上国の票を金で買っていることだ。
貧乏な国の足元を見て、経済援助をちらつかせては、日本に有利な裁定が出るように買収する。
そんなやり方をして恥ずかしくないのか?
およそ日本人らしくないぞ」
彼の怒りはかなり激しく、私の弁明などまったく聞く耳をもたない。
彼だけではなく、オーストラリアやニュージーランド、さらには欧米の人たちはみんなそんなふうに思っているのだろう。
ちょっと悲しくなった。
フェイリーは日本の格闘技が大好き。
なかでも須藤元気の大ファンなんだそうだ。
だから彼が格闘界を引退した時はおおいに悲しんだのだとか。
「現在でも彼には注目している。音楽や執筆など、いろんな分野で彼は多彩な才能を発揮しているからね」
そう言ってyoutubeで須藤元気のビデオを見つけてきては、私に見せてくれた。
その後、3人で映画を見ることにした。
日本の映画が大好きだというフェイリーの強いすすめで、
「13人の刺客」という映画をチョイスした。
この映画、かなり残酷なシーンから始まる。
いきなり切腹。
しかも腹を3回にもわたり切り刻む。
なかなか終わらない。
日本人の私でも、この苦痛に満ちたシーンは耐えがたかった。
その後も残虐なシーンのオンパレード。
稲垣吾郎扮する殿様の暴君っぷりがものすごい。
若い女性の両手両足、そして舌まで切断したあげくに慰み者にし、飽きたら裸のままポイ捨て。
新婚夫婦の新妻を凌辱した後、彼女の目の前で旦那を惨殺。
呆然とする妻に言い放った言葉は、
「山猿の骨は固いのぉ」
「だめ、吐きそう」
あまりの残酷さに、ウィミーは途中で席を立ってしまいましたとさ。
こんな映画を見せつけられたら、日本人ってむちゃくちゃ残虐な民族だと外国人に思われてしまうよ。
ウィミーとフェイリーは一緒に暮らしているのですが、どうやら財布は別々のようです。
レストランなどでの支払いの時は、お互いがそれぞれ自分の分を支払っていました。
私がそれを珍しそうに見ていると、
「日本のカップルはどうしてるの?」
とウィミー。
「日本ではデートの時、基本的には男が払うよ」
と私が説明すると、
「だって」
と彼女はフェイリーを挑発します。
「おいおい。なんで俺がお前の分まで払わなきゃならないんだよ。逆だろ。
聞いてくれよ、マサト。 こいつの給料はいくらか想像つくか?
1時間ほどカメラの前でにっこりとほほ笑むだけで、俺の1カ月分の給料を軽く超えるんだぜ。
やってられないよ、まったく」
さすがは元ミス・ジャカルタ。
TVレポーターやモデルとしてのギャラは、かなり高いみたいだ。
そんな女性を彼女に持ってしまったフェイリーには彼なりの苦悩があるのだろう。
でもね、フェイリー。
世界中の男は君の事をきっと羨望のまなざしで見ていると思うよ。
テーマ : カウチサーフィン(Couch Surfing)
ジャンル : 旅行