カウチサーフィン(CouchSurfing)と愉快な仲間たち

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沿ドニエストル共和国(ティラスポリ)旅行記

沿ドニエストル共和国(ティラスポリ)でカウチサーフィン(CouchSurfing)


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(沿ドニエストル共和国、ティラスポリの郵便局)


独立を宣言しているものの、ほとんどの国がその存在を認めていない未承認国家「沿ドニエストル共和国」。
国際社会の目が行き届かないことをいいことに、武器や違法ドラッグの流通拠点となっているという、なんともアングラな臭いのするトランスニストリア。

そんな異質な国の中で孤独感に打ちひしがれていた私を、一人の女性が救ってくれた。
孤立無援だった私に優しく手を差し伸べてくれた彼女はまさに女神そのもの。
彼女の体からほとばしる、幾筋もの神々しい光が見えた(ような気がした)。

彼女の名はイリャーナ。
彼女はずっとつきっきりで私の手助けをしてくれた。
初対面で素性の知れない、しかも侍の格好をしたへんてこな東洋人に、損得勘定抜きで親切にしてくれた。
荒んだ印象のある沿ドニエストル共和国にだって、こういう心優しい人はいるのだ。


まずは絵葉書を買うのを手伝ってもらった。
「観光」という概念が希薄なこの国では、絵葉書を買うことすら一仕事なのだ。

私がいくら探しても見つからなかった絵葉書だが、イリャーナが売店の女性に一言言うだけで、店の奥から持ってきてくれた。
単体では売ってくれず、20枚くらいのセットで買わなければならないらしい。
その絵葉書はかなりの年代物のようで、角がすり減っている。
図柄はミグ戦闘機や戦車、レーニン像など、およそ一般的な観光地とは趣を異にするシロモノだが、かえってこういう物の方がドニエストルらしくていい。


私が絵葉書を書いている間も、イリャーナは辛抱強く待っていてくれた。
彼女のおかげで、郵便局で切手を買う手続きもスムーズに運んだ。
やはり現地の人が一緒にいてくれると、なにをするにしても便利だ。


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郵便ポスト。
ゴミ箱かと思った。


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「ロシアのおじちゃん、ありがとう!」

世界中のほとんどの国から独立を認められていない沿ドニエストル共和国ですが、ロシアは違います。
軍事顧問団を派遣して、この国を強力にサポートしています。
なのでこの国ではロシア人はモテモテ。


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「私たちは負けない! 最後まで戦う!」

砲弾を愛おしそうに抱きしめる女性兵士。
第二次世界大戦を彷彿とさせる古めかしい軍服。
なんともシュールなポスターだ。

沿ドニエストル共和国内にはこのようなプロパガンダをあちこちで見かけます。
他の国とは一味ちがいます。
なんておもしろそうな国なんだ。
やっぱり来てよかった。

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イリャーナは私をこんな狭い路地に連れてきてくれました。
いや、気持ちはありがたいんですけど、できたらもっと有名な観光地のほうがいいな。


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「ここは有名なホテルだから写真を撮れ、撮れ!」

とイリャーナは言うのですが、私としてはあまりおもしろくありません。
この国には他に面白い場所はないのか?


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せっかくですから、沿ドニエストル共和国の国旗と一緒に記念撮影。


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オペラ劇場


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イリャーナと一緒に歩くようになって、いろんな人から声をかけられるようになりました。
私一人で歩いていた時とはえらい違いです。

彼女が言うには、みんな私の持っている刀を本気で怖がっているのだとか。
本物の日本刀を持って歩けるわけがないだろう、と思うのですが、武器であふれているこの国では、日本刀を腰に差して歩いている人間がいても不思議ではないのかもしれません。


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この女性がイリャーナ。
孤独の淵に沈んでいた私を救ってくれた恩人です。

彼女はこれから行く場所があるということで、忙しそうな様子。
なので、最初は郵便局についてきてくれるだけだったはずなのですが、なぜかその後もずっと私と一緒にいてくれました。

異国の地でこんなふうに親切にされると、思わずほろりとしてしまいます。
やばい。
惚れてしまいそうだ。


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人類初の有人宇宙飛行士、ガガーリンの像。
イリャーナによると、彼はこのティラスポリ出身らしいのですが、ウィキペディアの記述とは食い違っています。


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沿ドニエストル共和国の国会議事堂?
こんな重要な場所、写真に撮ってもいいのだろうか。
ティラスポリの駅前で兵士に写真撮影を制止された記憶がよみがえります。
当然、この建物の周辺にも兵士の姿があちこちに見えます。

私がためらっていると、イリャーナは

「平気、平気。写真を撮っても大丈夫よ。
 なんなら私も一緒に撮ってあげようか?」


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ほんとに国会議事堂の前で写真を撮ってしまった。
遠くには警備の兵士が歩いているのが見えます。

台湾の総統府前でも写真撮影は禁止されてるのに、この沿ドニエストル共和国で許されるとはとうてい思えないんだけどなあ。
まだ私は半信半疑です。


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おそるおそる国会議事堂に近づいてみると、建物の正面にレーニン像がありました。
せっかくだからこのレーニン像と一緒に写真を撮りたい。
でも、警備の兵士の目が気になる。


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レーニン像の周りをウロウロしていると、ティラスポリ市民に写真撮影を申し込まれました。


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左側にいるのは、順番を待っている人たちです。
なんと、私と写真撮影するために行列ができているではありませんか。
いつから俺は有名人になったんだ?!


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いつの間にかイリャーナは私のマネージャーのような存在になっていて、記念撮影希望者を仕切っています。

「はいはい、サムライと一緒に写真を撮りたい人はこちらに並んでねー」

それだけではなく、なぜか彼女も一緒に写真に写っています。
カメラに向かって笑顔を振りまいています。
あれ? あれ?


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すっかりモデル気分で機嫌がよくなったイリャーナ。
もしかしたら今日一日、彼女は私のガイド役を引き受けてくれるかも?


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その後もティラスポリを歩いていると、大勢の人に声をかけられました。
最初はとっつきにくそうに思えた沿ドニエストル共和国民も、ふたを開けてみればなかなか人懐っこい。

よく見たらこの男性のシャツには漢字のようなものがプリントされています。
東洋の文化に興味があるのでしょうか。


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一人の男性に呼び止められて、なにやら話し込むイリャーナ。
知り合いなのでしょうか。

男性からもらった名刺をよく見ると、そこには

「 School of Kung-Fu 」

の文字が。


どうやら彼はカンフーの道場を開いているらしく、私にそこへ来いと言っているようです。

「1時間でいいから、俺と手合せをしてくれ」


カンフーには前から興味があったので、一度本物を見てみたかったのですが、この男はかなり強そう。
しかも私のことを日本の武道の達人と勘違いしているようなので、手加減なしで戦わされそうな予感がする。
それに、日が暮れるまでにはモルドヴァに帰りたいので、ティラスポリでの残り時間はあとわずかしかない。

というわけで、彼の申し出は丁重にお断りしました。


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「私はここで用事を済ませてくるから、ここでしばらく待っていて」

イリャーナはそう言い残して建物の中へと入っていきました。
残されたのは私とカンフーの達人のみ。
まだいたのか?
いったいどこまでついてくるつもりなんだ。
彼は英語がまったくできないのですが、しきりと私に話しかけてきます。
でも、なんて言っているのかはわかりません。

話しかけてくるだけでは物足りず、そのうち彼は私に向かって拳を突き出してくるようになりました。
もちろん本気ではないのですが、よけなければ顔に当たります。

わっ! わっ!

カンフー映画は何度か見たことがありますが、本物のカンフーの使い手と戦うのはこれが初めての経験です。
私は空手の心得があるのですが、カンフーの攻撃に対してどう対処していいのかわかりません。
彼の繰り出してくる攻撃をさばくのが精いっぱいで、防戦一方でした。

ところが、私のよけかたが男には意外だったようで、彼はおもしろがってなおも拳を繰り出してきます。
しかも、だんだんとそのスピードが速くなってきているではありませんか。

その男は拳を突き出すたびに、

「これはどうよける?」

というふうに目で私に語りかけてきます。
なかなか研究熱心な男のようです。
もしかしたら彼も空手家と対戦するのは初めてだったのでしょうか。
私の流派は他の空手とは少し異なるので、余計に興味がわいたのかもしれません。

しかし、実験台にされているこちらはたまったもんじゃありません。
よけなければ確実に彼の拳は私の顔面にヒットするのです。
しかもこの男、強いっ!
明らかに相手の方が格上です。
私の空手は大したことありませんが、相手がどの程度の実力の持ち主かくらいは私にだって判断できます。

今はまだ手加減してくれていますが、だんだんと彼の攻撃は激しさを増してきています。
もうこれ以上は持ちこたえられそうにもありません。

どうしよう。
このまま走って逃げてしまおうか。
いや、でも、この男の方が足も速そうだ。
まいったな。


「もうそろそろ限界」
というところで、タイミングよくイリャーナが建物から出てきてくれました。
これで戦いを止めるきっかけができました。

彼はまだ物足りなさそうで、イリャーナになにか言っています。

「彼がどうしても道場に来てくれって言ってるけど、どうする、マサト?」

もうけっこうです!
これ以上やったらほんとに殺されちゃうよ。


しかし、なかなかおもしろい体験をさせてもらえました。
まるで自分がジェット・リーやドニー・イェンと戦っているような気分になれたのです。
まさか沿ドニエストル共和国でカンフーの達人と手合せをすることになろうとは、夢にも思いませんでした。

なにがおこるかわからない。
だから旅はおもしろい。


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(軍事歴史博物館?)


カンフーの使い手から命からがら逃げだし、イリャーナはなにかの博物館に私を連れていってくれました。
老婦人が一人で番をしているその博物館は、こじんまりとしていて、私たちの他に閲覧者はいません。

イリャーナは入場料を払ってくれました。
どうしてそんなに親切にしてくれるのだろう?

彼女はティラスポリ出身なのですが、この国の将来に不安を感じた彼女の両親は、イリャーナをアメリカの高校へと留学させたそうです。
当時彼女は英語がほとんど話せませんでしたし、アメリカに知り合いがいたわけでもありません。
いきなり異国の地に放り出されて、イリャーナはかなり苦労したようです。

自分がそんな大変な経験をしてきたからこそ、他の人が困ってるのを見過ごすことができないのかもしれません。
いずれにせよ、彼女と奇跡的に出会うことができた私はツイてます。
彼女がいなければ、他の旅行者と同じように沿ドニエストル共和国に対してネガティブな感想を持ったまま出国していたことでしょう。


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博物館自体はまったく面白くありませんでしたが、そんなことはどうだっていいんです。
イリャーナがいなければ、私はこの国を一人で旅行していたはずです。
きっと味気ない旅となっていたことでしょう。

でも今は違う。
イリャーナのおかげで、沿ドニエストル共和国は私にとってディズニーランドなど足元にも及ばないくらいに刺激的で面白い場所となった。
この国をここまで楽しんだ観光客はそうはいないだろう。
その土地で出会う人によって旅の面白さはまったく変わってくる。
私はほんとうにラッキーだ。


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ロシア風の帽子を被せられたサムライ。
隣にはわけのわからない彫像。
バックにはシリアスでコミカルなポスター。

私はいったいここでなにをやっているのだろう。


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博物館を出てしばらく歩くと、一人の女性に出会いました。
イリャーナの知り合いで、彼女の家の近所に住んでいるそうです。

なにかと色眼鏡で見られがちな未承認国家・沿ドニエストル共和国。
でも、そこに住んでいる人はごく普通のどこにでもいるおばちゃん。
そんな当たり前のことですら、イリャーナがいなければ気づかなかったかもしれません。
彼女と一緒でなければ、よそ者の私と笑顔で一緒に写真など撮ってくれなかったことでしょう。


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沿ドニエストル人とロシア人のカップル


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公園で昼間からビールを飲んでいた青年たち。
なんだかトランスニストリアらしくていいぞ。


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サムライ姿の私を見て大興奮の若者たち。
他のブログで言われているのとはまったく異なり、沿ドニエストル共和国に住む人たちはとてもフレンドリーで好奇心旺盛でした。

彼らのおかれている状況を鑑みれば、これは驚くべきことです。
この国が将来どうなってしまうのか、誰にも予測はつきません。
そんな不安定な状況下でも、彼らはとても明るく過ごしています。
彼らの笑顔はとても印象的でした。

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一人の男と話し込むイリャーナ。
知り合いなのだろうか?


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私の買った絵葉書の中に、「空飛ぶ戦車」があったので、イリャーナにそこへ連れていってくれるようにお願いしました。
すると、この男も一緒についてきたのです。
彼はプロのカメラマンで、侍の衣装を着た私はまたとないいい被写体だから、ぜひ同行させてくれと言っているようです。
プロのカメラマンに撮ってもらうのも悪くはないか。


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イリャーナとはまだ出会ってから数時間しか一緒に過ごしていませんが、なんだかもうずっと昔からの知り合いのような気がします。
ずっとこのまま彼女と一緒にいれたら、どんなに幸せだろう。

だが俺は、もうあと数時間でこの国から出なくてはならない。
この国は特殊な場所なのだから。


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しかしこの時すでに俺の腹は固まっていた。
彼女のために、この国に骨を埋めることなど厭わない。

空飛ぶ戦車と教会に、永遠の愛と沿ドニエストル共和国への忠誠を誓う。
さらば日本国籍。
今日かぎり、俺は日本人であることを捨てる。


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「楽しかったわ、マサト。
 また連絡ちょうだいね。
 私はもう行かなくちゃならないの。
 あとは彼があなたのことを面倒見てくれるから。
 じゃあね!」

イリャーナはそれだけ言い残して、さっさと行ってしまった。
あまりにも突然の別れに、私はなすすべもなかった。

後に残されたのは英語のまったく話せないむさくるしいカメラマンの男のみ。
思わず苦笑いがこぼれた。

ま、俺の人生なんてこんなものか。


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マントをはためかせるレーニン像。
遠くを見つめる彼の瞳には、いったいどんな風景が写っているのだろう。


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墓地。
おそらくここには国家の英雄が祀られているのだろう。


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空飛ぶ戦車よ。
お前はどこへでも飛んで行け。

沿ドニエストル共和国、なかなかおもしろい国だったが、
俺が再びこの地を踏むことはないだろう。


カメラマンは私と並んで歩き、ずっとシャッターを押している。
彼はポーズをとった写真が嫌いで、被写体の自然な表情を撮りたいのだそうだ。

そういえば彼はプロのカメラマンだと言った。
ということは、私の写真も仕事で使うのだろうか。

自分の写真がいったいどんなシチュエーションで使われることになるのかはわからないが、
世界中のほとんどの人がその存在すら知らない国の片すみで、侍の衣装を着た自分の写真が流通するというのもなんだか変な気分だ。


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またコニャックの店に出くわした。
この国の人間はそんなにこの酒が好きなのだろうか。

カメラマンが私に向かって、「酒は好きか?」と聞いてきた。
もちろんだとも。
沿ドニエストル共和国の名物だというコニャック。
せっかくこの地に来たからには試しておきたい。

カメラマンは私に向かって、「ちょっと待ってろ」と言い残し、店の中へと入っていった。
だが私はこの国のお金をほとんど持っていない。
他の国では文字通り紙屑となってしまう沿ドニエストル共和国の通貨を、これ以上両替するつもりもない。
もうすぐ私はこの国を出国し、二度と訪れることはないのだろうから。

しかし、お金の心配は不要だった。
店の中から複数の目が、ガラス越しに私のことを見つめている。
きっと侍姿の日本人が珍しいのだろう。
店の主人と思しき男が、私を手招きして中へと招き入れてくれた。

彼がなんと言っているのかまったくわからない。
通訳してくれる人もいない。
だが、店の主人はうれしそうに私の肩に腕をまわし、何枚も一緒に写真を撮らされた。
きっと、後で店の宣伝にでも使うのだろう。

そして別れ際、一瓶のコニャックをくれた。
ラッキー!


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戦利品のコニャックを手に、私とカメラマンは公園へと向かう。
彼はさっきからしきりとあたりを気にしている。

「この国では外で酒を飲むことは禁止されているんだ。
 警官に見つかったらやっかいだ。
 俺は向こうの通りを見張ってるから、お前はあっちを見ていてくれ。
 私服の警官もいるから気をつけろよ。
 少しでも怪しい奴を見かけたら、すぐに酒を捨てて逃げろ」

なんだかおもしろくなってきたぞ。
この公園には樹木はほとんどないから、外からは丸見えだ。
もし本当に警官が取り締まりに来たら、簡単に見つかってしまう。

カメラマンはカバンでコニャックの瓶を隠しながら、私のコップに注いでくれた。
あたりを気にしながら飲む酒が旨いはずがない。
モルドヴァに帰ってからゆっくりと飲みなおしたい。
だが、コニャックの瓶はカメラマンのカバンに入ったままだ。
警官の目に触れないよう、彼がしっかりと隠している。

でもそれ、侍姿の俺にって店の主人がくれた物なんだけどなー。


カメラマンは英語がまったくしゃべれなかったが、不思議と意思の疎通はできている。
彼は自分のカバンを得意げに私に見せる。
自分で作った物のようだ。
よく見ると、そのカバンは柔道着でできていた。

「柔道着は分厚いから、切ったり縫い合わせたりするのは骨が折れるんだぜ。
でもおかげで俺のカバンはとても丈夫な物に仕上がった。
かなり乱暴に扱ってもびくともしない。
市販のカバンじゃとてもこうはいかない」

お前、柔道をやってるのか?
「押忍!」

誰からも独立を認められていない国には、カンフーの達人や柔道を練習している男たちがいる。
モルドヴァには合気道の道場まであった。
アジアの格闘技って、やっぱり人気あるんだな。


カメラマンに例のカンフー・マスターの写真を見せてみた。
彼はこの男のことを知っているらしい。
祖父の代から道場を開いていて、あの男は幼少のころから英才教育を施されてきた、正真正銘のカンフーの達人なのだそうだ。

やばかった。
あの男の道場にのこのこついていかなくて本当によかった。
でなきゃ今頃俺はボコボコにされていたことだろう。

沿ドニエストル共和国はほんとに危ない国だったのだな。
いろんな意味で。


言葉が通じないにもかかわらず、カメラマンとの会話は弾んだ。
彼は片言の英語も話せないのだが、不思議なことにお互い何を言いたいのかはわかるものなのだ。

「俺の部屋に寄ってけよ。 駅の近くだから列車の発車時刻ギリギリまでうちにいればいい」
彼の提案は願ってもないものだった。
未承認国家・沿ドニエストル共和国に住む人の家に招かれるチャンスなんてそうそうあるもんじゃない。

「晩飯になにか作ってやるよ。
 スーパーに寄って買い物していこう」


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店の前の広告には

「 BANZAI 」

と書かれてある。

世界中のほとんど誰もがその存在すら知らない国の片すみに、ひっそりと日本語の広告が掲げられている。
外国でこういうのを目にするたびに、いつも再認識させられる。
これほど影響力のある国って、他にはないんじゃないだろうか。
日本にいる時はなにも感じないが、実は俺たちの国ってすごいんじゃないんだろうか。


感慨にふけっていると、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
どうやらパトカーのようだ。
意味もなく不安な気持ちになる。
まさかパトカーは我々に向かってきているわけではないだろうが、なんなんだろうこの焦燥感は。

カメラマンも同じ気持ちのようだ。
話すのをやめ、じっと音のする方を見つめている。


猛スピードで走ってきたパトカーは、我々の行く手を阻むように停止する。
どういうことだ?
カメラマンの方を見ると、舌打ちして目を伏せている。
なんだ?
もしかしてヤバい状況なのか?

パトカーから降りてきた警官は二人。
一人はカメラマンの方へ。
もう一人は私の方へまっすぐにやってきた。

いったいどういうことだ?
もしかして、さっき公園で酒を飲んだことと関係があるのだろうか。
まさかそんなことくらいでパトカーがサイレンを鳴らして駆けつけてくるとはとても思えない。
じゃあなぜ?

警官にパスポートを要求される。
彼は英語が話せないようなので、私への尋問はなかった。

しかし、カメラマンは執拗に何か聞かれている。
私のことを時々見ながら話しているから、きっと私のことについて質問されているのだろう。

「だからこんな奴知らないって言ってるだろ。
 さっき会ったばっかりで、こいつが誰なのか俺はまったく知らないんだってば!」

そう言っているように聞こえた。


警官の興味の対象が私なのは明らかだ。
だとしたら私は今、とてもマズい状況に陥っているのだろうか。
外務省の危険情報の文言が脳裏によみがえる。

「沿ドニエストル地域には、モルドバ政府の施政権が及んでおらず、仮に日本人渡航者が同地域での事件・事故等に巻き込まれた場合、モルドバ政府が十分な救済措置を講じることができない状況にあります。

「モルドバには、日本の大使館が設置されていません。
このため、緊急事態や事件・事故に遭遇した場合には、日本国大使館等による迅速な対応を得ることができず、事実上身動きがとれない状態に陥ることとなります」


やましいことはなにもしていない(酒を飲んだだけだ)。
警官に私の刀が本物ではないことを証明し、荷物検査にも積極的に協力した。
それでも警官たちはねちねちとカメラマンに対して何か言い続けている。

ようやく取り調べから解放された。
しかし、パトカーに乗り込む際にも警官はカメラマンに対してなにか言っていた。

「へんな外国人なんかに関わり合いにならない方がお前の身のためだぞ」

そう念押ししているように聞こえた。


パトカーが走り去った後も、カメラマンはすっかり萎縮したままだ。
私からは距離を置いている。
私の存在を持て余している様子がはっきりと見て取れる。

どうやら彼の家に招待されるという話はなかったことになったようだ。
残念だが仕方がない。
準戦時下にあるこの国では、国家権力の統制はかなり厳しいのだろう。
警官に目をつけられでもしたら、いろいろと面倒なことになるのかもしれない。

まだ日没までには時間があったが、ここらが潮時だ。
次のバスでキシニョウに帰ることにした。


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ティラスポリ駅前


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モルドヴァは美人の宝庫だ、という話を聞いたことがある。
でも、この写真のような美女はあまり見かけなかったような気がする。

真偽のほどはわからないが、ヨーロッパの娼婦の3割はモルドヴァ出身だ、という話も聞いたことがある。
そういえばトランスニストリアではあまり女の子の姿を見かけなかったような気もする。
若い娘はみな、西ヨーロッパへ出稼ぎにでも出かけているのだろうか。


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帰りのバスでは窓際に座れたので、沿ドニエストル共和国の街並みをじっくりと見ることができた。
伝統的なモルドヴァ家屋が点在している。

世界中の国から独立を認められていない国家。
この国はいったいいつまでこんな不安定な状態を続けるつもりなのだろう。

今は戦乱は収束しているようだが、問題が解決したわけではない。
ウクライナ情勢をうけて、再び紛争が勃発する兆しが見え始めているともいう。

沿ドニエストル共和国。
つい数日前まで私は、この国の存在すら知らなかった。

だが、今では忘れることのできない国となってしまった。
一見とっつきにくそうに見えるが、人々はとても明るく、人なつっこい。
侍姿の私を見つけると、大喜びで肩を組んで一緒に写真を撮るような人たちだ。

たくさんの人たちとメールアドレスの交換をし、フェイスブックの友達になった。
「絵葉書を送るから」
と、住所を教えあった人もいる。

沿ドニエストル共和国。
日本のマスコミにこの国の名が登場することはほとんどない。
だが私にとってはもうこの国は「得体の知れない遠い世界の話」ではなくなってしまった。

次にこの国の名をニュースで聞くときは、それがいい話題であることを願うばかりだ。
もしもまた戦争が起こったら、こんなに狭い国のことだ、きっと全土が戦場と化すことだろう。

彼らにはどこにも逃げ場はない。


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などと感傷に浸っている場合ではなかった。
気づくとバスは国境の検問所に差し掛かっている。

すっかり忘れていた。
ここは旅行者泣かせの悪名高き沿ドニエストル共和国なのだ。
これまでに数多くの旅人たちが別室の賄賂部屋に呼ばれ、屈辱的な目に遭っている。

他人のことを心配している場合ではない。
まずは自分が無事にこの国から脱出することを考えねば。

多少の賄賂を支払うことには目をつぶろう。
でも、なんとしてでも写真だけは守りたい。

カメラからSDカードを抜き出し、別のカードとすり替える。
隠すところなどどこにもないが、軽い身体検査くらいには耐えられるようにSDカードを隠し持つ。

来るときには簡単に国境を超えることができたが、出る時も同じとは限らない。
用心しすぎるということはないだろう。


バスは検問所に停まり、係官が乗り込んできた。
一人ひとりパスポートをチェックしていく。
出国する時にはバスから降りなくてもいいのだろうか。

係官はパスポートをさっと一瞥しただけで、すぐにバスから降りていってしまった。
再びバスは何事もなかったかのように走り出す。
国境ゲートを通過した。

拍子抜けするくらいにあっさりと出国できてしまった。
他のブログに書いてあったことはいったいなんだったのだろう。
賄賂なんて要求されなかったし、荷物検査もなかった。

きっとこれはいいことなのだろう。
でも、なにか物足りない。
他の人のブログであれほど悪しざまに書かれていた沿ドニエストル共和国の国境越え。
一度体験してみたかった。


バックパッカー旅行は、驚くほど快適になってきている。
「深夜特急」時代にはインターネットなんてものはなかったから、すべてが手さぐりだった。
もちろん苦労も多かっただろうが、その分得るものも多かったはずだ。

しかし、今はなんでも事前に準備できてしまう。
情報は瞬時にして世界中を駆け巡り、リアルタイムで情勢を知ることができる。
写真や動画付きで。

悪名高き沿ドニエストル共和国の国境はもう存在しない。
この惑星はどんどん均質化し、平和で豊かになっている。

きっとよろこばしいことなのだろう。
だが、なんなのだろう。 この焦燥感は。

私は経験値を徐々に上げていき、ゆっくりと旅の難易度も上げていくつもりだった。
しかし、もっと急いだ方がいいのかもしれない。
この惑星からすべてのロマンが消え去ってしまう前に、訪れておきたい場所が私にはいくつもある。


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ティラスポリで親切にしてくれた女性、イリャーナとは、今でも交流が続いている。
日本に帰国後、絵葉書のやり取りもした。
彼女のフェイスブックからは、息子を溺愛している様子が痛いくらいに伝わってくる。

もちろん彼女は祖国である沿ドニエストル共和国を愛してはいるが、
息子にはアメリカで教育を受けさせるつもりだ。


トランスニストリアよ、われら汝を称える
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テーマ : バックパッカー
ジャンル : 旅行

女神に座禅を妨害される

ヴィーナス(アメリカ)とカウチサーフィン(CouchSurfing)


今回のゲストはアメリカから。

やはりアメリカ人の英語はかっこいい。

テンポよく繰り出される英語についていくのは大変だが、頭の良い人の話す英語はカツレツがはっきりとしているので、なんとか食らいついていくことができる。

そういう人と話していると、自分の英語力がメキメキと上がっていくような気がして、なんだかうれしくなってしまう。



彼女の名はヴィーナス。

名は体を表すというが、彼女はまさしくヴィーナス(女神)だった。

その理由は・・・



ヴィーナスはアメリカ生まれのアメリカ育ちだが、彼女の両親は中国系ベトナム人。

CPA(公認会計士)らしく、その思考法はとても合理的。

話し方から彼女の知性がうかがえる。


だが、けっして面白みのないガリ勉タイプではなく、週末の夜は朝までクラブで踊りまくったり、

コンサートで絶叫したりと、なかなかアクティブな一面も併せ持つ。

日本でもサマーソニックに参加するのだそうだ。


そんな彼女は意思表示もはっきりしていて、およそ遠慮というものを知らない。

「あっ、バナナ。私これ好きなの。ちょうだい!」

私が返事する間もなく、台所に置いてあったバナナをパクっとくわえる。



男との別れ方も豪快だ。

「私、仕事を辞めて、旅に出ることにしたから」

たったその一言だけで、8年間も付き合った彼氏のもとを去っていったヴィーナス。

「8年もつきあった彼氏と、そんなに簡単に別れられるものなの?」

驚いた私が彼女にそうたずねると、ヴィーナスはちょっと不思議そうな顔をした。

まるで、「何を言ってるの、この人は?」とでも言いたそうな表情だ。


「だってしょうがないじゃない。私の旅は長いものになりそうだし、彼には自分のキャリアを追及する必要があるんだから」

ヴィーナスの元彼も会計士で、社会的地位や会社での責任がある。

そう簡単に長期間の旅になど出ることは不可能だろう。


合理的思考もつきつめるとこのようになるのだろうか。

なんだか彼女という人間に興味がわいてきたので、いろいろと質問を浴びせたら一喝されてしまった。

「なにそれ? さっきから私の話ばっかりしてる。なんだか面接を受けてるみたい」


一緒に外へ夕食を食べに行った。

お好み焼きは先週も他のカウチサーファーと食べに行ったばかりだが、ここ嵐山には他に選択肢がほとんどない。

お好み焼きは私の好物だから問題はないのだが、なかなか食べることに集中できない。


というのも、ヴィーナスはかなりの巨乳の持ち主で、それを誇示するかのように胸元がくっきり強調されたシャツを着ているのだ。

そんな状況で「見るな」と言われてもそれは酷というものだろう。





ヴィーナスの両親はふたりとも中国系ベトナム人。

いったい何を食ったらそんなにダイナマイトなボディになるんだ?

目のやり場に困るじゃないかよ。

アジア人のDNAを受け継いでいたとしても、アメリカナイズされた生活を送っていればこうなるのか。




気取られないようにじゅうぶん気をつけていたつもりだが、私の視線にヴィーナスは気づいたのかもしれない。


「私、明日はお寺で座禅をするんだけど、マサト、あなたも一緒に来た方がいいんじゃない?」


はい、そのとおりです。

お坊さんに喝を入れてもらって、煩悩をしずめる必要が私にはありそうです。



ところで、ヴィーナス。

君はその格好で座禅をするつもりなのか。

そんなに胸元の大きく開いた服装で来られたら、

他の参加者は気が散って瞑想どころじゃなくなるじゃないかよ。





というわけで、やってきました妙心寺。




ここの境内は広く、たくさんのお寺の集合体となっています。




あまりの広さに、道に迷ってしまいました。

ウロウロして別のお寺の敷地の中に入ってしまうと、

「勝手に入ってもらったら困るんやけど」

とお坊さんに注意されてしまいました。





やっとのことでお目当てのお寺に到着。




今日お世話になるのはここ、春光院です。

ここの住職はアメリカ留学の経験があるそうで、英語で座禅の教室を開いています。




ここが瞑想の間。




しばらくすると、他のお客さんでいっぱいになりました。

私を除く、全員が外国人です。


それもそのはず、ここは英語で座禅を行う、特殊なクラスなのです。

普通、日本人は来ません。




今日は参加者が多かったため、部屋に入りきれません。

そこで急きょ、瞑想の場所を縁側に移すこととなりました。

日本庭園を眺めながら座禅するのもなかなか風情があっていいものです。




住職さんが英語で丁寧に座禅の仕方を教えてくれました。

しかし、未熟者の私はまだまだ悟りの境地に達することはできません。

うつらうつらと居眠りをしてしまいました。

それも、夢をみるくらいに深い眠り。

もちろん夢の中にはヴィーナスのダイナマイトボディがでてきましたよ。

神聖なお寺で、崇高な座禅をしながら居眠りをして、みだらな夢にふける私。

この背徳感がたまりません。


本来ならここで、お坊さんに

「喝っ!」と叫ばれて棒で肩をたたかれるべきなのですが、

ここにはそういうサービスはないようです。

残念。





住職のありがたいお話(もちろん全て英語)を聞いた後は、自由にお寺の中を見て回ることができます。




このお寺には文化的に貴重なものや、歴史的に重要なものがたくさんあります。




それにしても外国人ばっかりだなあ。




最後にお茶とお菓子のサービスがありました。

2000円もだしたのにこれだけかよ。

と毒づいたりしてはいけません。

ここには修業に来たのですから。




まだまだ煩悩を捨て去ることができない私は、一人居残り、瞑想の自主練に励みました。


ヴィーナスはこの後、大阪へ花火大会を見に行き、私の部屋に戻ってきたのは深夜遅くなってからでした。

そして翌朝早くに広島へと出発。

その後はまた大阪へ戻り、そこからピーチ航空で沖縄へと飛ぶそうです。


なかなかいそがしい女神だな。

きっと彼女は沖縄のビーチで、男どもの視線をくぎ付けにするんだろうな。


座禅中もそんなことばかり考えている私は、まだまだ修行が足りんようです。

テーマ : 京都旅行
ジャンル : 旅行

熱帯マラソン

ずいぶん長いことカウチサーフィンをやってきたが、カンボジアからのゲストはこれが初めてだな。


今回のお客様はイリーナ。

カウチサーフィンのプロフィールではいちおう国籍はフィンランドとなっていたが、

話を聞くとなかなか入り組んだ事情がある。


まず、彼女はハーフだ。

父親はバングラデシュ出身のベンガル人。

母親はフィンランド人。

両親は二人ともロシアに留学していた経験があり、そこで出会い、結婚した。

そういういきさつがあったから、家庭内での公用語はロシア語だ。

そのためもちろんイリーナ自身もロシア語のネイティブ。



ここでふと、日頃から感じていることを彼女にぶつけてみた。

「欧米人男性とアジア女性のカップルは掃いて捨てるほどいるけど、

 その逆はほとんど見たことがない。

 そのことをふまえると、君の両親は特異な存在だね」


「そんなことないわよ。ここだけの話、インド系の男性はロシアではモテモテなのよ」


にわかには信じがたい話だ。

だが、もしそれが本当だとしたら、この地球のどこかには日本人男性が白人女性にモテる国があってもおかしくない。

生きる希望がわいてきた。



イリーナ自身はアメリカの大学を出ているため、英語はネイティブレベル。

そして今はカンボジアで働いている。


彼女がカンボジアで暮らすようになってからまだ数年ほどしか経っていないが、

すっかり現地人と同化している。

彼女の顔立ちはどこから見てもカンボジア人のそれだ。






「カンボジアに住んでると聞いてたから、てっきり君はカンボジア人だと思っていたよ」

私がそう言うと、彼女はちょっと不服そうな顔をした。


「私の仕事はエンジニアなの。

 といっても、研究室の中に閉じこもっているわけではなくて、

 カンボジアのギラギラと照りつける太陽の下で一日中働いているのよ。

 だからこんなに日焼けしてこんな顔になっちゃってるけど、

 本当はもっと白いのよ。

 だって母親はフィンランド人なんですもの。」



イリーナの白い顔とやらを想像してみた。

だが、どうもうまくいかない。


彼女の顔つきはどこから見ても東南アジアのそれだ。

3か月以上東南アジアを放浪していた私が言うのだから間違いない。


それに、彼女の色が黒いのは顔だけではない。

腕だって東南アジア人特有の浅黒い色をしている。

白い肌の白人がいくら日焼けしたからといって、こんなふうになるものだろうか。


ちらっと彼女の胸元にも目をやった。

どこまでも浅黒い色が続いている。

このシャツの下には白い肌が隠れているなんてとても信じられない。





「私、空手の黒帯を持ってるのよ」


な、なにを突然言い出すんだ、この子は。

やはり女は鋭い生き物だ。

こちらがヘンな想像をしていると、すぐに見透かされてしまうものらしい。



お好み焼き屋でビールを飲んだ後、嵐山の鵜飼を見に行った。

だが、イリーナはあまり関心はなかったようだ。

水面に映る幻想的な炎などそっちのけで、ずーっとしゃべっていた。


彼女の話を聞いていると、どうしても東南アジアを旅行した時のことを思い出してしまう。

東南アジアというのは不思議な地域だ。

人の心を惹きつけるなにかがある。


また行かねば。


「マサト、あなたマラソンやるんでしょ。

 いい話があるわよ。

 毎年アンコールワットでマラソン大会が開催されるの。

 ぜひ参加しなさいよ。

 私もマラソンやるから、一緒に走りましょ。

 壮大な遺跡の中を走るのって気持ちいいわよ」



私にとってカンボジアでの記憶といえば、灼熱の太陽しかない。

思いバックパックを背負って毎日歩きまわったから、体重が激減した。

3ヶ月間朝も夜も、汗の乾く暇もなかった。


あの広大な遺跡群を屋根の付いたトゥクトゥクでまわってもフラフラになったのだ。


マラソン?

ちょっと考えさせてくれ。



テーマ : 今日の出来事
ジャンル : 日記

リトル・オバマ



右からデレク(アメリカ)、イーシャン(台湾)、ジュン(香港)、そして私。

今夜は多国籍ナイトなのだな。


「マサト、今夜は空いてる?」

朝、出かける準備をしながらイーシャンが聞いてくる。

台湾人の彼女は今、私の家に泊まっているのだが、カウチサーフィンを利用してたくさんの人に会いたいようだ。

今日も別のカウチサーファーと会う約束があるので、一緒に食事でもどうか、ということだった。


それはいいが、イーシャン、なんだその格好は。

彼女は昨日私と会った時は、いかにもバックパッカーらしい、シンプルないでたちだった。

ところが今朝の彼女はとてもオシャレ。

ひらひらしたスカートにハイヒール。メガネをコンタクトに変え、化粧も念入りに。

どこからともなくいい香りが漂っている。


俺と会う時と他のカウチサーファーと会う時ではずいぶんと気合いの入れ方が違うじゃないかよ。



イーシャンのお目当ての人はデレク。京都で英語の教師をしているアメリカ人だ。

英会話スクールではなく、公立学校で教えているらしい。


職業柄、彼は日本人の英語が壊滅的にひどいということを知っている。

そのせいか、私に話しかける時もとてもはっきりと発音してくれる。

たいへんありがたいことなのだが、なんだかくやしい。


デレクは会話する時、必ず最初に相手の名前を呼ぶ。

一見するとフレンドリーなようだが、まるで教師が生徒に語りかけているようでもある。


彼は小柄で歳も若いのだが、とても貫禄がある。

全身から自信がみなぎり、威風堂々としているのだ。

かといって、えらそうにしているわけでもない。

アメリカ人にはこういうタイプが多い。


そしてバリトンの効いた声で理路整然と話す。

なんだそのかっこよさは。

まるでオバマ大統領じゃないかよ。


そんなわけだから女性陣はうっとりとして、目がハートになっている。

はっきり言っておもしろくない。



食事の後、4人で八坂神社へ行った。

そこで干支の話になり、私を除く3人ともが同じ干支であることが判明。

私を除く3人で大いに盛り上がっていた。



話せば話すほど、デレクという人間の素晴らしさがわかってくる。

本来ならこういう人間に出会えたことに感謝するべきなのだが、俺はそんなにできた人間じゃない。

そう素直には喜べない。


だめだ。

勝てる気がしねえ。

テーマ : カウチサーフィン(Couch Surfing)
ジャンル : 旅行

銭湯の女神

ヴィヴィアン(中国)とCouchSurfing



(渡月橋を背景に)

今回のカウチサーフィンのゲストは中国の北京から。

ヴィヴィアンは北京大学卒の才媛で、現在はアメリカ系企業に勤めています。


北京大学って日本でいえば東大にあたるんじゃなかったっけ?

しかしヴィヴィアンの性格はおっとりとしていて、とてもエリートには見えません。

ただ、外資系企業で働いているというだけあって、彼女の英語はネイティブなみです。



ピークは過ぎたとはいえ、まだまだ桜は楽しめます。

天気も快晴。

そしてなにより、とびきりの美少女と歩く嵐山!


今日も楽しい一日になりそうだ。




ワンちゃんたちも京都の桜を満喫しているようです。




嵐山名物「ゆば」を使ったソフトクリーム。

ヴィヴィアンが私の分も買ってくれました。

ふたりでソフトクリームをなめながら向かった先は、天龍寺!




天龍寺の周辺には、小さなお寺がいくつか点在しているのですが、

ほとんどの観光客は、天龍寺へと一直線に向かいます。

こんなマイナーなお寺には目もくれません。




そのため誰もいないお寺は、私たちふたりだけの貸し切り状態。

なんだか、こっそりデートしてるみたいで、ドキドキするねえ。





遅咲きの桜が咲き誇っております。




現在、天龍寺は改修工事中なのですが、庭園だけでもひと目見ようと観光客が押し寄せてきます。

日本人だけでなく、台湾や中国からのツアー客もなだれこんできて、それはもう大騒ぎでした。


あまりの人混みに、写真を撮るのも一苦労。

私の前でカメラを構えていた男性がいたのですが、

なんと、一人の女性がそのカメラを「ぐいっ」と手で押しのけて通っていきました。


ヴィヴィアンが申し訳なさそうに謝ります。

「ごめんなさいね。同じ中国人として恥ずかしいわ」


その時たまたま中国人の観光客のグループがいたので、その乱暴な女性は中国人だとばかり思っていました。

しかしすぐその後で、くだんの女性は日本人だということが判明。

穴があったら入りたい。




ヴィヴィアンは天龍寺がいたく気に入ったもよう。

カメラを持って走り回っています。


そんな彼女をながめていると、なんだかじんわりとあたたかくなってきました。





カメラを向けると、にっこりと笑ってポーズをとってくれるヴィヴィアン。

こういう人と一緒にいると、何をしても楽しいもんです。




天龍寺の庭園は広く、桜以外にもいろんな花を楽しむことができます。




曹源池の対岸。

この後は竹林を抜けて、嵯峨野めぐりです。




奥の方に見えているのは、落柿舎。




「紅葉の馬場」で有名な二尊院。




足を伸ばして、ついに化野までやってきてしまいました。

このエリアは、外国人には不評なことが多いので、普段はあまり来ません。

「見る人を選ぶ」コースなのです。


ヴィヴィアンはといえば、もちろん大満足。

「あ・ら・し・やま、あらしやま~」

と勝手に歌を作って歌っています。



太陽が山の陰に入ってしまい、急速に暗くなってきました。

あれほどたくさんいた観光客たちも、潮が引くようにいなくなってます。

まだまだ嵐山を堪能したそうなヴィヴィアンですが、さすがに今日はたくさん歩いたので、ここらで休憩にすることにしました。




ヴィヴィアンは一冊の本と一緒に旅をしています。

タイトルは、「門外漢的 京都」。


もともとは台湾で出版されたものらしいのですが、翻訳されて、中国版もあります。

ヴィヴィアンが持っているのは、もちろん中国語版




この本が推奨するコーヒーショップを探してウロウロ。

丸太町通りはもう何百回も通ってますが、コーヒー豆になんか興味のない私は、こんな所にお店があることすら知りませんでした。




このお店は外国人観光客向けではないので、英語のメニューなんて置いてありません。

コーヒーの銘柄なんてまったく知らない私に翻訳しろなんて無理な話です。


でも、よくよく話を聞いてみると、ヴィヴィアンだってコーヒーのことなんてなんにも知らないらしい。

ただ本に載ってたから来てみただけなのだと。


結局ふたりとも、「当店のスペシャル・ブレンド」とかいうコーヒーを注文しました。



コーヒーができあがるまでの間、ヴィヴィアンは大きなカメラを片手に、お店の中をウロウロ。

なんの変哲もないコーヒーショップの写真を撮りまくっている彼女のことを、

他の客は奇異な目で見ています。



「みなさーん、彼女は日本人じゃないんですよーっ!

 中国から来た観光客なんですぅー!」

とふれてまわりたかったです。





お腹がすいてきたので、今度は食事のできるお店に移動です。

もちろん、彼女の本が推奨するお店。


あ、この店は知ってる!

嵐山を紹介する雑誌によく載ってる場所だ。


この店の前を何百回も通ったことあるけど、実際に中に入るのは初めてです。

カウチサーフィンのおかげで、また経験値が上がったぞ。





このお店は、もともとは銭湯だったのを、おしゃれなカフェに改装したものです。

彼女の後ろにたくさんのシャワーがあるのが見えるでしょうか。




あちこちに、その昔、銭湯だったころのおもかげが残っています。

これは水風呂の跡か?




体重計まである!

しかし、ヴィヴィアンはけっして上に乗ろうとはしませんでした。




例によって、店内の写真を撮りまくるヴィヴィアン。


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カウチサーファーと仲良くなれたかどうかのバロメーターの一つに、写真があると思います。

本当に親しくなったら、お互いに写真を撮るのが自然な流れですよね。


悲しいことに、何日も泊っていっても、私の写真なんか1枚も撮らなかった人だってたくさんいました。


その点、ヴィヴィアンは違います。

私の写真をバシャバシャ撮ってくれます。


「マサトー、ちょっとここに立ってー」

と要所要所で必ず私の写真を撮るのです。

もちろん、悪い気はしません。

彼女の思い出の一部になれるのだとしたら、こんな光栄なことはありません。



さらにうれしいことに、彼女は私のことをなにかとほめてくれます。

「まさと、足ながーい!」

「スタイルいいー。モデルさんみたーい」


たぶん目の錯覚だと思うぞ、ヴィヴィアン。

俺の体型のことは、自分が一番良く知ってるから。



そしてあろうことか、

「まさとってハンサムねー」

とまで言い出す始末。



これまでの長い人生において、女の子に「ハンサム」と言われたことなんて一度もありません。

いったい俺のまわりで今、なにが起こってるんだ?!


彼女の目はゆがんでいるのだろうか。

それとも、もしも本当に彼女の目には俺がハンサムに見えてるのだとしたら、

それは少なからず彼女が俺に好意を抱いている、ということになるんじゃないだろうか。



いやいや、あまり深く考え過ぎるな。

単なるリップ・サービスに決まってるじゃないか。


落ち着け、落ち着け、落ち着け・・・







もっとヴィヴィアンに近づいて写真を撮りたかったけれど、

ふたりの間にあるシャワーヘッドが邪魔をします。


あせることはないさ。

彼女は今夜も俺の家に泊るんだ。

時間ならたっぷりある。




食事を終えて、お店の外に出る頃には、あたりはすっかり暗くなっていました。

今夜は長い夜になりそうだ。

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テーマ : 京都旅行
ジャンル : 旅行

ムスリム女とカウチサーフィン



初めてのチュニジア人カウチサーファー、アミラ。

見た目どおり、タフな女です。






アラビア語のキーボードはこんなかんじ。


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カウチサーフィンをはじめてから、女性の下着を見てもなんにも感じなくなった。


というのはウソです。

めちゃめちゃ気になります。



私の家は、トイレの近くに物干し場があるのですが、現在、そこにはアミラの洗濯物が干してあります。

自分のパンツの横に女性物の下着が並んでいるのを見るのは、なんとも恥ずかしいものです。


トイレに行くたびにそわそわしたり、なんとなく彼女に朝食をごちそうしてしまったりと、

落ち着かない日々を過ごしました。




アミラはチュニジアの出身。

アルジェリアとリビアにはさまれたこの国からは、なんだか危険な匂いが漂ってきそうなイメージがあります。


でも、彼女に言わせると、のどかで、とても過ごしやすい国なのだとか。

一応イスラム教国なのですが、戒律はぜんぜん厳しくありません。


現にアミラはお祈りをしませんし、スカーフだって被りません。

パンツだって干しちゃうしね。



そんな彼女はついこの間までニューヨークで働いていました。

話をよく聞くと、彼女はアメリカの大学を出てるそうです。

MBAだって持ってます。

うわー、すごいなー。



「MBAっていったって大したことないのよ。

 あんなの簡単よ。誰だってとれるわ。」


誰でも取得できるわけないだろ。嫌みか?



バリバリのキャリアウーマンだったアミラは、観光も精力的にこなします。

分刻みのスケジュール。


しかし、さすがに長旅のため、少々お疲れ気味。

今日はちょうど雨だったので、休息日にあてることになりました。



ところが、窓の下を托鉢の僧侶の列が通り過ぎるのを見て、どうにもがまんができなくなったようです。

雨の中、彼女は飛び出して行きました。

傘もささずに。



タフな女だぜ、まったく。


テーマ : カウチサーフィン(Couch Surfing)
ジャンル : 旅行

突然の闖入者

ファブリッツォ(アメリカ)とCouchSurfing(カウチサーフィン)


今日からキティが私の家にやってきます。

オーストラリアで会ってから、もうすでに10カ月ほど経ってるのか。

なつかしいなあ。

早く会いたいなあ。


キティの記事(オーストラリア)

キティの記事(京都・日本)


そわそわしながら待っていると、キティから電話がかかってきました。

おっ、やけに早いな。

まだ準備ができてないけど、まあいっか。


久しぶりにキティに会えるということで、ルンルン気分だった私ですが、

彼女の一言で奈落の底へと突き落されました。


「友達も一緒なんだけど、一緒に行ってもいい?」


え?そうなんだ。

キティだけじゃなかったんだ。

そういうことは前もって言っておいてほしかったな。

いろいろ準備もあるし。



「でも心配しないで。

 彼は日本語もしゃべれるのよ。

 今、電話を代わるね」


え?友達って男なんだ。

一緒に旅行するくらい仲がいいって、いったい二人はどんな関係なんだろう。



電話にでた男は流暢な日本語をしゃべります。

彼の友達が迎えに来てくれるはずだったのに、トラブルがあって夜まで会えないらしい。

夕方まで部屋で休ませてくれないか、ということだったのでOKしました。

今にも雨が降り出しそうななか、大きな荷物をかかえた旅人を外に放り出すのもかわいそうだし。


それに、彼は今夜は友達の家に泊まると言っているのです。

なにも問題はないでしょう。





左から私、キティ、そしてファブリッツォ。


キティの友達だというから、てっきり香港人かと思っていたら、違いました。

彼は北米人と南米人のハーフなんだそうです。

だから英語とスペイン語のネイティブ。


背が高く、顔立ちもどこかエキゾチック。


日本語は仕事で必要だったから自分で勉強したのだとか。

1年ちょっとでほぼネイティブレベルに達しています。

きっと彼は語学の才能があるのでしょう。



ひとしきり会話した後は、2人とも長旅でお疲れのようだったので、お昼寝タイムとなりました。


・・・・・・・・・


そして夕方。


私とキティは近所のスーパーに夕食の材料を買いに行くことになりました。

「じゃあ、俺たちは買い物に行くから(だからそろそろ出ていってくれないかな)」

と言うとファブリッツォは

「OK.じゃあ行こうか」


え?

君も一緒に来るの?

ということは、夕食も一緒に食べるつもりなのか。



うーむ。

せっかくキティと二人きりになれると思っていたのに、残念。


まあいいか。

どうせ夕食の後は彼は出て行くのだし。

あともうしばらくのしんぼうだ。





ファブリッツォは納豆も平気で食べれます。




食事の後は、キティの持ってきてくれた中国のワイン(?)をみんなで飲みました。


しかし、ファブリッツォはいったいいつ友達の家に行くつもりなんだろう。

友達と連絡を取り合ってる様子もありません。



彼がトイレに行ったすきに、キティを呼んで小一時間問いつめてやりました。


「いったいどうなってるんだよ。

 夕方まで俺の家で休憩した後は、友達の家に行くはずじゃなかったのか?」


「そんなこと私に聞かれたってわからないわよ。

 ファブリッツォに聞きなさいよ」


「わからないって、無責任じゃないかよ。

 ファブリッツォは君の友達なんだろ」


「だから知らないって言ってるじゃない。

 彼とは今日、飛行機でたまたま隣の席になっただけで、それ以上のことは何も知らないのよ」



な・・・

そんな得体の知れない奴を、気安く俺の家に連れてくるなよっ!



そうこうしているうちに、夜も更けてきました。

ファブリッツォが言いにくそうに切り出します。


「悪いんだけど、マサト、今夜は君の家に泊めてくれないかな?」


はいはい。

なんとなーくこういう展開になりそうな予感はしてましたよ。



というわけで、どこの馬の骨ともわからない人間を泊めることになってしまいました。

何をやってるんだろう、俺は。

カウチサーフィンを通り越してしまった気がする。

テーマ : カウチサーフィン(Couch Surfing)
ジャンル : 旅行

ニューヨーカー

シンディ(アメリカ)とカウチサーフィン(CouchSurfing)




今回のゲストは、ベトナム系アメリカ人のシンディー。

最近彼氏と別れ、現在は韓国人の男の子を物色中。

肉食系か?



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彼女は馬刺しを食べたがったのだが、あいにくこの店にはなかった。

その代わりに鳥のたたきを注文したのですが、結局彼女が食べたのは一切れだけ。



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シンディはとてもインターナショナルなバックグラウンドを持っている。


彼女の祖父は中国に生まれ育った後、ベトナムに移住した。

そこで彼は中国系ベトナム人女性と結婚し、シンディの父親が生まれる。

彼は香港に渡り、後にアメリカに移住。

その娘、シンディはニューヨークで生まれ育ち、現在は韓国に暮らしている。



そういう経緯があるため、彼女は英語はもちろん、中国語とベトナム語のネイティブでもある。

うらやましい。

英語と中国語の組み合わせって無敵だよな。



ニューヨーク育ちの彼女の英語はとてもかっこいい。

身のこなしも洗練されていて、全身から自身がみなぎっている。


「世界の中心地で暮らしている」という自負が人間を変えるのだろうか。

だとすれば、ニューヨークで暮らせば、私もスマートになれるのかな。



シンディの元カレは中国系アメリカ人。

彼女が日本に旅行に行くことを告げると、彼は激怒したそうだ。


「なんであんな国に行くんだ?日本なんてやめておけ」

彼は中国系とはいえ、アメリカ生まれのアメリカ育ち。

その彼ですらこれだ。


普通の中国人は日本のことをいったいどんなふうに思っているのだろう。




居酒屋で食事した後、しばらく外を散歩した。

もう夜なので、京都観光できる場所は限られている。


祇園と先斗町を案内したのだが、シンディにはかなり不評だった。

「え?祇園ってこれだけ?先斗町って何がおもしろいの?」


目の肥えたニューヨーカーは辛口なのだな。



テーマ : カウチサーフィン(Couch Surfing)
ジャンル : 旅行

先は長いぞ、歩けよ乙女

ウィン(ミャンマー、アメリカ)とカウチサーフィン。




ウィンはアメリカ国籍を持ってはいるが、もともとはミャンマー人。

彼女が子供のころ、両親が亡命だか難民だかになったため、祖国を追われることになった。


そのため、彼女の性格もちょっと特殊なものになったようだ。

アメリカ人の傲慢さと、東南アジア人のしたたかさ。

ウィンはその両方を兼ね備えているように思われる。



彼女と話していると、時々その展開についていけなくなることがある。

「それはちょっと違うんじゃない?」

とツッコミたくなる。


でも、しない。


一見すると温和そうな顔のウィンだが、実はかなり頑固。

自説は絶対に曲げない。

批判されると、つばを飛ばしながら反論してくる。


長く一緒にいると疲れるタイプだ。

彼女の滞在が一泊だけでよかった。



ウィンは京都の後は、東京へと向かう。

「次のホスト先は見つかってるの?」

と私が聞くと、


「うん、何人かの人から招待された。」

とウィン。



そうなのだ。

若くてきれいな女性カウチサーファーの場合、ホスト探しに苦労することはない。

黙っていても、向こうの方からお誘いがかかる。

「俺の家に泊りに来いよ、ベイベー」

という具合に。



そうか。

すでに複数のオファーを受けているのか。

まあ一応、ウィンも女性だからなー。



しかし、ウィンはうかない顔をしている。

「どうしたの?」

「それがね・・・」



彼女に誘いのメールを送ってきたのはいずれも男性で、中には性的な要求を匂わせる文面のものもあったという。

「そういう人の家には行かない方がいいんじゃない?

 もっと信用できそうな人を他に探すか、女性のホストを選べば?」

と私が忠告すると、彼女はムキになって反論してきた。



彼女の言わんとすることは、私にはあまりよく理解できなかったが、本人が決めたことだ。

これ以上、何も言うまい。






ウィンは京都観光において、乗り物を使わない。

電車にもバスにも乗らない。

ひたすら歩くのだ。



「市バスの一日乗車券を使えば効率的に京都を回れるよ。

 たった500円で乗り放題なんだ。」

と私がアドバイスしても、頑として首を縦に振らない。


「私は歩くのが好きなの。

 歩くことによって、その国の本当の姿が見えてくるのよ。

 バスに乗っていたら決して見えないものがね。

 私はいつもそうやって旅をしてきたわ。」



確かに、時間に余裕があるのなら、そういうスタイルもいいだろう。

しかし、彼女の滞在時間は短い。


まあ、本人が決めたことだ。

もう何も言うまい。




ウィンはこれから、京都大学まで歩いて向かう。

人と会う約束があるそうだ。


嵐山から京都大学まで。

気の遠くなるような距離だ。

自転車でもしんどい。


それをこの炎天下の中、重いリュックを背負って徒歩で行くというのか、君は。

そんなのは、もはや「観光」とは呼べない。

「苦行」だ。



9月に入ったとはいえ、まだまだ残暑は厳しい。

まだ朝だというのに、太陽は猛烈に照りつけてくる。


歩き始める前に、すでにウィンは大量の汗をかいている。

顔に塗りたくった日焼け止めクリームが白く浮かび上がり、汗に混じってしたたり落ちていく。



「バスで行きなよ」

と言ったって、どうせ聞く耳持たないんだろうな。


まったく、強情な女だぜ。

テーマ : カウチサーフィン(Couch Surfing)
ジャンル : 旅行

ハニートラップ (中国)

突然ですが、日本を訪れる外国人観光客って、どこの国の人が一番多いと思いますか?

やっぱりアメリカ?

それともフランス?


いえいえ、ダントツで韓国、次いで中国なんです。


ニュースなどを見ている限りでは、彼らは日本の事が嫌いで仕方がないみたいに見えます。

デモ行進をするだけにとどまらず、日本車を破壊したり、日系の商店を襲って略奪したり・・・


にもかかわらず、毎年多くの観光客が日本にやって来るんですね。

これをどう解釈したらいいのだろう。



そしてもう一つ、腑に落ちないことがあります。

私はこれまでにたくさんのカウチリクエストをもらいましたが、

その中に韓国や中国からのものはほとんどないのです。


おかしいと思いませんか?

ビザの関係で、カウチサーフィンを使いにくいのかもしれませんが、それでも不自然です。


やっぱり日本人は嫌われてるのかな。



と思っていたら、中国人からカウチリクエストが来ました。

私はちょうど、「レッド・ゾーン」という本を読み終えたところです。

この本には中国に関する記述がたくさんあったので、いろいろと中国の人に聞いてみたいこともありました。

ナイス・タイミング!


さっそくカウチサーフィンのウェブサイトに行って、彼女のプロフィールを見てみました。



どうやら彼女にとって、これが初めての海外旅行らしい。

いきなりカウチサーフィンを利用するのか。

若い女性の一人旅なのに、勇気があるなあ。



もちろん、女性をホストするのはこれが初めてではありません。

でも、なにかが私の心に引っかかるのです。


現在、尖閣問題などで反日感情が吹き荒れています。

インターネット上でも、

南京大虐殺や731部隊など、「日本は過去にこんなひどいことをした!」

という情報が意図的に流されています。



もしかして、彼女の目的も、

「日本人の家に泊めてもらったら、こんなヒドいことをされた!

 やっぱり日本人はサイテーだ。」

などというデマを流すのが目的なのかも・・・



というのは、考え過ぎだろうか。


テーマ : カウチサーフィン(Couch Surfing)
ジャンル : 旅行

カウチサーフィン(CouchSurfing)とは?

CouchSurfingKyoto

Author:CouchSurfingKyoto
.カウチサーフィン(CouchSurfing)とは。

日本に観光に来た外国人の宿として無償で自宅を提供し、国際交流を深めるというカウチサーフィン。

また、自分が海外に旅行に行く時には、現地の一般家庭に泊めてもらい、その土地に住む人々の生の暮らしを体験することだってできてしまいます。

ここは、そんなカウチサーフィンの日常をありのままにつづったブログです。

「カウチサーフィンは危険じゃないの?」
そんな危惧も理解できます。
たしかに事件やトラブルも起こっています。

なにかと日本人にはなじみにくいカウチサーフィン。

・登録の仕方がわからない
・詳しい使い方を知りたい
・評判が気になる

そんな人は、ぜひこのブログをチェックしてみてください。
きっと役に立つと思います。

最後に。

「カウチサーフィンを利用すれば、ホテル代が浮く」

私はこの考え方を否定しているわけではありません。
私もそのつもりでカウチサーフィンを始めましたから。

しかし、カウチサーフィンは単なる無料のホテルではありません。
現在、約8割のメンバーはカウチの提供をしていません。サーフのみです。

だって、泊める側にはメリットなんてなさそうですものね。

「自分の部屋で他人と一緒に寝るなんて考えられない」
「お世話したりするのってめんどくさそう」

時々私はこんな質問を受けることがあります。

「なぜホストは見知らぬ人を家に招き入れるのか?」

それはね、もちろん楽しいからですよ。

自己紹介
プロフィール


こんにちは。
京都でカウチサーフィン(CouchSurfing)のホストをしている、マサトという者です。
ときどきふらりと旅にも出ます。
もちろん、カウチサーフィンで!


(海外)
2011年、ユーレイル・グローバルパスが利用可能なヨーロッパ22カ国を全て旅しました。
それに加えて、イギリスと台湾も訪問。
もちろん、これら24カ国全ての国でカウチサーフィン(CouchSurfing)を利用。

2012年、東南アジア8カ国とオーストラリアを周遊。
ミャンマーを除く、8カ国でカウチサーフィンを利用しました。

2013年、香港、中国、マカオをカウチサーフィンを利用して旅行。 風水や太極拳、カンフーを堪能してきました。

2014年、侍の衣装を着て東ヨーロッパ20か国を旅行してきました。


(日本国内)
これまでに京都で329人(53カ国)のカウチサーファーをホストしてきました(2013年6月25日現在)。

もちろん、これからもどんどんカウチサーフィンを通じていろいろな国の人と会うつもりです。



カウチサーファーとしてのカウチサーフィン(CouchSurfing)の経験:


オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、チェコ共和国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、ルーマニア、スロヴェニア、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、台湾

シンガポール、インドネシア、オーストラリア、マレーシア、タイ、ミャンマー、ラオス、カンボジア、ベトナム

香港、中国、マカオ

スロヴァキア、ポーランド、リトアニア、ラトヴィア、エストニア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドヴァ、沿ドニエストル共和国、ルーマニア、セルビア、マケドニア、アルバニア、コソヴォ、モンテネグロ、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、リヒテンシュタイン


ホストとしてのカウチサーフィン(CouchSurfing)の経験:


アイルランド、アメリカ、アルゼンチン、イギリス、イスラエル、イタリア、イラン、インド、インドネシア、ウクライナ、エストニア、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カナダ、韓国、クロアチア、コロンビア、シンガポール、スイス、スウェーデン、スコットランド、スペイン、スロヴァキア、スロヴェニア、タイ、台湾、チェコ共和国、中国、チュニジア、チリ、デンマーク、ドイツ、トルコ、日本、ニューカレドニア、ニュージーランド、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、ブラジル、フランス、ベトナム、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、香港、マダガスカル、マレーシア、メキシコ、モルドバ、リトアニア、ルーマニア、ロシア



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