カウチサーフィン(CouchSurfing)と愉快な仲間たち

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TV出演

ずーっとブログを更新してないのになんですが、テレビの取材を受けました。
番組の中で私の英語力のなさが明らかにされます。
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異人たちとの夏 (オフリド湖、マケドニア)

マリア、マリア、ああマリア! (オフリド湖、マケドニア)


今朝は5:30起き。
6時過ぎのバスに乗るためだ。

日本にいる時はぐーたらな生活を送っている私だが、旅に出ている時は違う。
せっかく海外に来ているのだから、1秒も無駄にしたくない。


今朝はまずスヴェティ・ナウムへ行き、その後はもう一度オフリド観光。
昼からはドラガンのボートクルーズの約束がある。
そしてその後はマリアと・・・




まだ早朝だというのに、スヴェティ・ナウム行きのバスはけっこう人が乗っていた。
だが、やはりまだみんな寝ぼけ眼らしい。
車内でしゃべる人間は一人もいなかった。

7:00に終点、スヴェティ・ナウムに到着。
観光客はおろか、売店の従業員の姿も見えない。
普通この時間に空いている観光地はないが、この聖ナウム寺院は朝の7時から開いているということだ。
まずは朝一でここを見学して、時間を有効に活用しよう。



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バス停から聖ナウム寺院への道はとてもよく整備されている。
きっとかなり有名な観光地なんだろう。


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途中、湧き水のような場所があって、そこからオフリド湖へと水が流れ込んでいる。
うそみたいに透きとおった水だった。
だからこの湖はこんなにもきれいなのか。


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釣り人たちが静かに糸を垂らしていた。
何が釣れるのだろう。
このオフリド湖はブラウントラウトの料理が有名らしいが、この釣り人たちがブラウントラウトを釣っているようには見えない。


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7時から聖ナウム寺院は開くと聞いていたのに、あたりは静まり返っている。
あちこちの門は閉まったままだ。
どっちの方角が寺院なのかわからず、ウロウロしていたのだが、なかなか見つからない。

ここかな?
とあたりをつけて門をくぐると、何人かの人がいた。
みんな軍服を着ている。

日本人の私はあきらかに部外者だ。
軍人たちにじろりとにらまれて、あわてて退散した。

門の外に出てからゆっくり確認すると、
「軍事施設につき立ち入り禁止」と書いてあった。

あぶない、あぶない。
あやうく射殺されるところだった。

それにしても、観光リゾート地になんで軍事施設があるんだろう。
まあ、フラフラと私に侵入を許すような警備体制なのだから、それほど重要な施設というわけではないのだろうが。



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スヴェティ・ナウムの入り口には、
「孔雀があなたを傷つけるかもしれないから気を付けてね」という注意書きがある。


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そして実際に敷地内には孔雀が何羽か歩き回っている。
ガイドブックにもこの孔雀のことが載っているくらいだから、きっとここの名物なのだろう。

でも、いらないと思う。
寺院の建築と孔雀の組み合わせが絵になるというわけでもない。


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聖ナウム寺院にて記念撮影。
ここも今回の旅行の目玉の一つだったのだが、なんだかパッとしない。
きっと曇りがちの天候のせいだろう。
夏は観光客でにぎわうこの場所も、9月に入ったためか、がらんとしている。


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それにしても寒い。
オフリド湖はサマー・リゾートのはずなのに、まだ9月なのに、寒い。
寒さに耐えきれず、自動販売機で温かい飲み物を買ってしまった。


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なんともやりきれない気分でバス停に向かっていると、急に太陽が姿を現した。
さっきまでどんよりとしていた湖が、さっと青色に染まる。
景色が一瞬にして変わった。

美しい。

きっとこの陽光の下、聖ナウム寺院も光り輝いていることだろう。
これは引き返してもう一度見なければ。

だが、このバスを逃すと、次は昼過ぎまでない。
貴重なオフリドでの数時間を、バス待ちなんかのために浪費したくない。

でも、明るい陽の下で聖ナウム寺院も見てみたい。


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誘惑に抗えず、寺院へと駆け戻った。
バスは逃すことになるが、後のことは後で考えることにしよう。
私は今を生きるのだ。

急いで写真を撮ったものの、かなりの部分が影に覆われている。
まだ朝早いので、太陽の位置が低いのだ。

観光客で混雑する時間帯を狙ってきたつもりだったのだが、どうやら裏目に出てしまったようだ。


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雲が多く、太陽はすぐに隠れてしまう。
それでも、晴れた瞬間のスヴェティ・ナウムはとても美しい。
ここは高台にあるので、オフリド湖が一望できる。
もしも晴れていればきっと、息を飲む光景を見ることができるはず。

晴れていれば・・・


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寺院を後にして再びバス停に向かっていると、また晴れてきた。
ついてない。
もう少し粘ればよかった。

このスヴェティ・ナウムには食事をする場所の他、宿泊設備も整っているらしい。
きっと夏の昼間は観光客でごったがえすのだろうが、今は人気がない。
湖畔のレストランも開いているのか閉まっているのかわからない状態だった。

今度来る時は、よく晴れた日を選ぼう。
湖を眺めながらの食事は格別のはずだ。


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バス停に戻ると、大型バスが停まっていて、たくさんの観光客が降りてきた。
いい具合に空は晴れている。
みなさんはラッキーですね。
きれいな寺院と、きれいなオフリド湖が見れますよ。

それに比べて俺は、帰りのバスの逃して足止めを食らっている。
なんてざまだ。


ヒッチハイクをしようにも、ここから幹線道路に出るまではかなりの距離がある。
売店でバスの時刻を確認すると、次のバスは12:30だという。
冗談じゃない。
今日はオフリド観光のメインの日。
貴重な午前中をまるまる失ってたまるか。

それにしても、このバスの本数の少なさはなんとかならないのだろうか。

こんな事態に備えてか、バス停には1台のタクシーが停まっていた。
ここからオフリドまでは車で約1時間。
いくら物価の安い東欧とはいえ、タクシーを使うとなれば、さすがにかなりの出費を覚悟しなければならないだろう。

仕方がない。
時間を金で買うとしよう。

決心したものの、貧乏性の私はタクシー運転手に声をかけるまでに長い間ためらってしまった。
そしてその優柔不断さが命取りとなる。
目の前で他の観光客にタクシーを奪われてしまった。


土埃をあげて走り去っていくタクシー。
呆然と立ち尽くす私。
なんてこった。
これでオフリドに帰る手段はなくなってしまった。


その様子を見ていたのだろう。
どこからか男が現れた。

「オフリドに戻りたいのか? 俺の車で送ってやるぞ。 5ユーロでどうだ」

おそらく彼の提示した値段はタクシーを使うよりも安いだろう。
だが、人の足元を見るかのようなそのやり口に腹が立ったので、彼の提案を断った。

「いいのか? 次のバスは12:30だぞ。まだ3時間以上もあるんだぜ」

確かにその通りだった。
彼にお金を払ってオフリドに戻るのが最良の手段だ。
だが、このままむざむざとこの男の言いなりになるのは無性に悔しかった。

彼は草むらに入って、野草や木の実を集めている。
その余裕しゃくしゃくの態度が、また腹立たしい。

考えろ。
なにかいい方法があるはずだ。

・・・

名案は浮かばなかった。
しゃくにさわるが、男に金を払ってオフリドまで送ってもらうことにした。



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最初はあまりいい印象を持てなかったこの男だが、よくよく話してみると、けっこういい人だった。
時々車を停めては、解説をしてくれる。
にわか観光ガイドだ。
これは安い買い物だったかもしれない。

彼はいったいどういう経歴の持ち主なのかはわからないが、なかなか知識が豊富な人だった。
英語だってしっかりしている。

マケドニアは旧共産圏の国のはずだ。
教育体制だって日本に比べればはるかに見劣りするにちがいない。

それなのに、オフリドではなぜかよく英語が通じた。
一大リゾート地だからだろうか。


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晴れた日のオフリド湖は美しい。
その湖畔をドライブするのだから、これまた気持ちいい。
リゾート地というのも悪くないな。


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カラフルに落書きされたトーチカ。
ほんの少し前まで、このトーチカは国中のいたるところで見られたそうだ。

そしてアルバニアでは今でもたくさん見ることができるという。
私は明日、アルバニアに入る。

ステルス戦闘機やミサイルの飛び交う現代戦で、こんな物がいったいどれほど役立つのだろうか。


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オフリドの街が見えてきた。
快適なドライブもそろそろ終わりだ。



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このおじさんの車でオフリドまで帰ってきました。
お金は取られたけど、なかなかいい人だったな。




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オフリドに戻ってきて、いきなり写真撮影を頼まれました。
彼はクルーズボートの船長らしい。


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そしてこの人はその助手っぽい。
オフリドの人は本当に侍が好きらしい。


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まずは聖ヨハネ・カネオ教会へと向かいます。
今日は快晴なので、さぞかし見ごたえがあることでしょう。

そしてここでも観光客につかまります。


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聖ヨハネ・カネオ教会。
オフリド湖の蒼とよく似会います。


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昨日のひげもじゃの彫刻師に会えるかと思ったのですが、彼の姿は見えませんでした。

教会の裏手に細い道があって、山の上へと続いています。
「ひょっとしたら絶景スポットがあるかもしれない」と思って登ってみたら、やはりありました!


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私はこの角度から見る聖ヨハネ・カネオ教会が大いに気に入りました。
これはもう写真を撮らずにはいられない。

ただ、セルフタイマーを使って思い通りの写真を撮るのって意外と難しいんです。
おまけにここは崖の上。
シャッターが下りる前に急いで駆けていくと、勢い余って崖下に転落しかねません。

教会とオフリド湖と私。
この3者がうまい具合に写真に納まるように、何度も何度も撮り直しました。


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「手伝ってあげようか?」

不意に後ろから天使の声が聞こえました。

何度もカメラと崖の間を往復している私を見かねて、この女の子が写真を撮るのを手伝ってくれました。
今まで写真を撮るのに夢中で気づきませんでしたが、彼女もこの場所で聖ヨハネ・カネオ教会の絵を描いていたのです。
なんたる不覚!
こんなにかわいい女の子の存在に今まで気づかなかったとは。
ほんとにマケドニアは美人の宝庫だなあ。


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彼女にみとれて、なんだか写真なんてもうどうでもよくなってきました。


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丘をさらに登っていくと、また教会があります。
おそらく、聖パンテレモン教会でしょう。
ここでうかつにもトラップにかかってしまいました。

ガイドブックには、各教会には入場料が必要なことが書いてあったのですが、今まで支払ったことはありませんでした。
おそらく、建物の内部に入らないかぎり、自由に見学できたのでしょう。

そのため、この聖パンテレモン教会にもふらふらと近寄っていったわけですが、ここは外から見るだけでもばっちりと料金を請求されてしまいました。

しまった。
そうと知っていれば、遠くからこっそりと眺めるだけにしておいたのに。


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聖クリメント教会。
私にはそれぞれの建築物の違いなんてわかりませんが、このオフリドの建築群はそれぞれがいい味をだしています。
どれも気に入りました。
けっこう写真を撮りまくったので、今日一日だけでかなりメモリーを消費してしまいました。


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侍の衣装を着ていると、よく子供たちにからかわれます。
うう、恥ずかしい。

でもいいのさ!


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なぜなら、この衣装のおかげでこんなグラマーなお姉さんを二人もゲットできるのだから。

それにしても、マケドニア人の女性というのはどうしてこんなにも魅力的なのだろう。


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サミュエル要塞は有料でしたが、せっかくですから入ることにしました。


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おそらくここがこの街で一番の高台なので、景色は抜群です。


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風にたなびくマケドニア国旗。


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サミュエル要塞自体はたいして見ごたえはありませんでしたが、そこから見える景色はよかったです。
湖から吹く風も心地いいい。

ドラガンとの約束に遅れそうだったので、急いで丘を降ります。
しかし、そういう時に限ってやっかいな連中と出くわす羽目になる。


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体格のがっしりした二人組。
笑顔のようなものを浮かべてはいるが、目は攻撃的な色を帯びている。

「俺は空手をやってるんだ。ショウトウカンだ!知ってるか?」
そういいながら拳を突き出し、蹴りの動作をする。

もう一人の男は日本語もどきの言語で道場訓のようなものを読み上げる。
聞けば、オフリドの近くには空手の道場もあるらしい。
昨日は合気道の道場生に会った。
日本の文化の影響力ははかり知れない。

「お前、サムライなんだろ? だったら空手はできるよな? ちょっと俺たちの相手をしろよ」

侍の衣装を着て歩いていると、いろんな反応が返ってくる。
が、今まではおおむね良好的なものだった。
ここまであからさまに挑発されることはめったにない。

「いや、俺は用事があるから・・・」
と言ってその場を立ち去ろうとしたのだが、彼らは私を離してはくれない。

「おいおい。つれないこと言うなよ。 ここじゃなんだから、向こうの林の中へ行こうぜ」
もう一人の男は準備運動のつもりなのか、
「イチ! ニッ!」
といいながら、空手の突きの動作を繰り返す。

私は空手をやっていた。
組み手はきらいじゃない。
だが、ここで彼らを相手に手合せしても、なにも得るものはない。
まだ沿ドニエストル共和国のカンフーの達人とやりあうほうがずっとおもしろうそうだ。

彼らは道をふさいで私の行く手を阻んでいたのだが、かなり強引に押しのけてその場を逃れた。
後ろから挑発的な声が飛んでくる。

「逃げるなよ臆病者。その侍の衣装ははったりか?」

悔しかった。
彼らの空手のレベルは低かったから、二人相手でも勝てただろう。
でも、それでどうなる?
彼らの道場では、「武術はみだりに使うべからず」ということは教えないのだろうか。


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オフリド湖の水の色は、なんとも形容しがたい色をしている。
この色を見ていると、昨日もらったラキアを思い出した。
さっきのごたごたのせいで、ドラガンとの約束の時間に遅れてしまった。
急がねば。


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もう一度振り返って、聖ヨハネ・カネオ教会を仰ぎ見る。
やはり美しい。
今度はボートに乗って、湖の上から眺めることにしよう。



桟橋に着いてドラガンの船を探したのだが、どこにも見当たらない。
しまった。
約束の時間に遅れたから、もう行ってしまったんだな。
昨日あんなによくしてもらったのに、約束を破ってしまった。


あてもなく湖面を眺めていると、別のクルーズ船の船長が寄ってきた。

「俺の船でオフリド湖を遊覧しないか?」

きっとドラガンは他の客を乗せてクルーズに出かけてしまったのだろう。
でも、待っていたらそのうち帰ってくるかもしれない。

「悪いけど、他の船に乗る約束をしているんだ」

そう答えると、意外な答えが返ってきた。

「知ってる。ドラガンだろ。奴はさっきまであんたのことを待ってたが、なかなか現れないんで沖へ出ちまった。
 待ってな。 今奴の携帯に電話してやるから」

なんと、彼はドラガンの知り合いだったのか。

「ここで待ってな。すぐにドラガンが戻ってくるから」


彼の言った通り、すぐに沖合からボートのエンジン音が聞こえてきた。
ドラガンだ。


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ドラガンは二コラとその息子も呼んで、4人でオフリド・クルーズに出かけることになった。
天気は快晴。
船長も同伴者もみな気のいい奴ばかりだ。
そして美しいオフリド湖。
これ以上なにを望もうか。


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オフリドの街が遠ざかっていく。


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石でヘイゼルナッツと叩き割る二コラ。
ラキアにはこのヘイゼルナッツが一番合うそうだ。

彼は午前中、近くの山でこれを拾い集めていたらしい。
どんだけひまなんだよ、お前。

そして味の方だが、はっきり言っていまいち。
わざわざ石で殻を割らないと食べられないという手間のわりには、なんの味もしない。

コンビニで売ってるつまみの方がよっぽどおいしいよ。

それでも二コラは次々と殻をむいて私に渡してくる。
食べないわけにはいかない。


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ある程度沖に出たところでボートを停めて、ラキア・タイム。
って、ドラガン、あんたも飲むのか?

酔っ払い船長の操るボートに乗るのはいやだなあ。
でもまあいいか。
たとえなにかあっても、このくらいの距離なら泳いで帰れる。
もちろん酔っ払いどもは放置しますよ。


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ドラガン船長自家製のラキア。
相変わらずいい色をしている。
オフリド湖にぴったりだ。


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とはいうものの、私はあまりお酒に強くありません。
しかも揺れるボートの上。

ううっ。
気持ち悪くなってきたぞ。


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ドラガンは聖ヨハネ・カネオ教会の沖合でもボートを停めてくれました。
オフリド湖の上から聖ヨハネ・カネオ教会を眺めながらラキアのグラスを傾ける。
これ以上のぜいたくはありません。


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湖畔にたたずむ聖ヨハネ・カネオ教会。
どの角度から見ても絵になります。


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ドラガンが見せてくれたオフリド湖の地図。
湖の真ん中に線が引かれているのがわかるでしょうか。
これがマケドニアとアルバニアの国境なんだそうです。
湖の真ん中に国境があるんですね。

私が今朝スヴェティ・ナウムで見た軍事施設は、どうやら国境守備隊の基地のようです。
というのも、アルバニアから越境してくる密漁者を取り締まる必要があるからだとか。

いわばあそこは最前線。
そんな軍事基地に、私は知らないうちに入り込んでしまったわけです。
それも、侍の格好をして。

よくも撃ち殺されなかったものだ。


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さらに奥へと進んでいくと、水着姿の人が見えます。
このあたりは観光地からはかなり離れているので、ゆったりとくつろげそうです。


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それほど大きな湖ではないのに、オフリド湖の透明度はおそろしく高い。
水はなんともいえないきれいな色をしている。
今日は快晴。
聖ヨハネ・カネオ教会を眺めながら泳いだら、さぞかし気持ちいいだろうなー。
私がぼそっとつぶやくと、
「泳げよ」
とみんなに言われました。

そう言われても、私は水着を持ってきていません。
「パンツで泳げばいいじゃないか。どうせ誰もいないんだから」
とドラガンたちは言います。

それもそうだな。
こんな美しい湖を見せられて、泳がずに帰れるか!


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パンツ一枚になってオフリド湖に入る私。


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夏とはいえ、まだまだ水は冷たい。

ところで、この湖には危険な生物は棲息していないだろうな。

「がははは! 心配するな。ここだけの話、この湖にはサメがいる。 オフリド・シャークだ!」

いや、ドラガン、この状況でそんなジョークは聞きたくないぞ。


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それではひと泳ぎしてきまーす。


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憧れの聖ヨハネ・カネオ教会を眺めながらオフリド湖で泳ぐ。
これ以上のぜいたくが他にあろうか。

これにて本日のミッション完了!


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さらにもうひと泳ぎして、教会にグッと近づいてみました。
私は昔、水泳の選手だったので、泳ぐのは得意なのです。


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しかしさすがに疲れたので一休み。
砂浜じゃないのが残念だけど、とにかく気持ちいい!
水に濡れて重くなったパンツがずり落ちそうだけど、そんなことは気にしないのさ。


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少し休憩して、すぐまた泳ぎ始めます。
とにかく気持ちいい。
このままいつまでも泳いでいたい。

「おーい、マサト。 いつまで泳いでいるつもりだ? さっさと上がって来いよ。メシの時間だぞ。」


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水があまりにも透明なので底がくっきりと見えるのですが、オフリド湖はかなり深いです。
今度来る時は水中メガネを忘れないようにしよう。


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最後にもう一度、聖ヨハネ・カネオ教会を通り過ぎます。
どこから見ても絵になる教会だけど、湖の上から見る姿もまた格別だな。

着替えのパンツは持ってきていないので、乾かすために私はずっとボートの上でパンツ一丁でした。

「おい、マサト。 いつまでそんな格好でいるつもりだ? もうすぐレストランに着くぞ。 パンツ一丁で食事するつもりか?」

まだパンツは濡れたままでしたが、その上から服を着ざるをえませんでした。


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あいかわらず酒浸りの二コラ。
この男はいったいどんな素性の人間なんだろう。

と思っていたのですが、なんと、彼はハングライダーのヨーロッパチャンピオンだというではありませんか。
夏の間はオフリド湖の近くでハングライダーを教えているのだとか。

「空を飛ぶのは気持ちいいぞ。 マサト、お前もやるか?」

ハングライダーには前から興味がありました。
ヨーロッパチャンピオンに教えてもらえるなんて光栄です。
来年の夏は、ついにハングライダーデビューか?

酒のまわった二コラは武勇伝を語り始めます。

「俺はオリンピック代表だったんだぜ」

ん?
オリンピック種目にハングライダーなんてあったっけ?




オフリド湖に面したレストランは、いかにもリゾートにふさわしい雰囲気を醸し出していた。
人生の楽しみ方を知り尽くした達人たちが、優雅に夏を謳歌している。
みすぼらしい東洋人の自分には、場違いな気がする。
ドラガンたちが一緒でなかったらきっと、自分一人ではこんなまぶしい場所には来れなかっただろうな。

レストランの中を見回してみたが、マリアの姿は見えなかった。
もしかして今日は非番なのか?
ここへは彼女の顔を見るために来たようなものなのに、マリアに会えないとしたら意味がない。
悲しい気分になったが、二コラたちが従業員になにか言っている。
きっとマリアを呼ぶように言ってくれているのだろう。
そう思いたかった。
一抹の不安はまだ残るが、考えてもしかたがない。
彼女には彼女の都合もあるのだ。

料理はドラガンたちにすべて選んでもらった。
彼らは地元の、しかも観光のプロなのだ。
彼らにまかせておけば安心だろう。

料理をみんなでシェアしたので、いろんな種類のマケドニア料理を味わうことができた。
同じマケドニアでも、スコピエとオフリドとではその内容はずいぶん異なる。
みんなでわいわい囲む食卓は楽しかった。
一人で旅行している身には、これ以上ないぜいたくな時間だった。

これでマリアさえこの場所にいてくれたら・・・

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「ハイ! 呼んだ?」

マリアだ!
彼女が来てくれた。
いったい今までどこにいたのだろう。

うれしくて、食事なんてそっちのけで、ついつい彼女と話し込んでしまう。
マリアは仕事中だから、私たちのテーブルにつきっきりというわけにはいかない。
オーダーが入ればそちらへと向かわなければならない。
それがまたもどかしい。
ああ、マリア。
彼女を独占できたらどんなにか幸福だろう。

やはりマリアは日本文化のファンだった。
私の話を興味深そうに聞いてくれる。


「ちょっと待ってて、マサト。あなたに見せたいものがあるの」
そう言って彼女は店の奥へと引っ込んだ。

二コラがからかうようにマリアの真似をして言う。
「マサト、あなたに見せたいものがあるの」
そう言って、シャツのボタンをはずし、胸を開く仕草をした。

「えっ、ほんとに! そんなもの見せてくれるの?」
そんなはずあるわけないのに、ちょっと期待してしまう自分が恥ずかしい。

店の奥から戻ってきたマリアの胸には、2冊の日本語辞書が抱かれていた。
こんなものをバイト先に持ってくるなんて、彼女はよっぽど日本のことが好きなんだろう。

ほとんどの日本人は、マケドニアのことなんてよく知らないと思う。
それなのに、このオフリドの湖のほとりには、日本のことをこよなく愛する少女がいる。
そう思うと、なんだか不思議な気がした。


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食事を終えたドラガンたちは、私を残して帰っていった。
「じゃあな、マサト。マリアとうまくやれよ」

な、なんなんだ、こいつらは。
妙なところで気を使いやがって。


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ひと泳ぎした私は、お腹がかなり減っていて、まだ食べたりなかった。
それに、マリアとももっと話していたかったので、追加でここの名物、マスを注文することにした。

オフリド湖産のマスと、輸入物のマスとでは、値段に雲泥の差がある。
だが、せっかくオフリド湖に来ているのだから、やはりオフリド湖で採れたマスを試してみたい。
それに、マリアの前でいい格好もしたかったのだ。

運ばれてきたマスは、お世辞にも豪華だとは言えなかった。
でもそんなことはかまわない。
運んできてくれたのはマリアなのだ。
彼女はひまを見つけては、私のテーブルに来ておしゃべりをしていく。
そうだ。私はここにマスを食べに来たわけではないのだ。


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マスを食べる時に、ナイフとフォークだけでなく、どうしても指を使うことになるのだが、魚を触って汚れた手を拭く特別なおしぼり器というものがあった。
マリアはそれの使い方を丁寧に教えてくれる。
そのおしぼりは、とてもいい匂いがした。

記憶と匂いは密接に関係している、という話を聞いたことがある。
私にとって、このおしぼりのいい匂いが、マリア、いや、オフリド湖の記憶と結びつくことになるのだろう。
もっとも、たとえこの匂いがなかったとしても、彼女のことを忘れることなんてできないのだが。


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食後のデザートを運んで来た時、マリアにメモ用紙を渡された。

「マサト、今夜、会える? 私はバイトで10時までここにいなきゃならないの。
 お客さんの状況しだいで、もしかしたら11時くらいになるかもしれないんだけど」

明日はアルバニアに向けて、早朝に出発しなければならない。
ここの国境越えはかなりややこしく、ハードだという話を他の人のブログで見た。
本来なら明日に備えて、今夜は早く寝なければならない。

だが、マリアからの誘いを断れるはずがない。
必ず会う。
這ってでも行く。

夢見心地でデザートを食べた。
こんなに甘いデザート、今まで食べたことがない。


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このレストランは観光客だけでなく、地元の人もけっこう利用しているようだ。
みんな顔見知りで、マリアは彼らの間でかなり人気があるらしい。
あちこちのテーブルから、ひっきりなしにお呼びがかかる。
「マリア! マリア!」
そのたびに彼女は忙しそうに、座席の間を走り回る。
マリアを呼ぶ男たちの声を聞きながら、私は彼女の後姿を目で追う。

「悪いな、野郎ども。あいにく今夜、マリアには先約があるんだ」


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テーマ : (恋愛)波瀾万丈・激動の恋愛documentary
ジャンル : 恋愛

スコピエ~オフリド湖(マケドニア)

スコピエ~オフリド湖(マケドニア)


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カウチサーフィンのホスト、アナと。
スコピエには2泊したのですが、彼女の家には1泊しかできませんでした。

スコピエはあまりおもしろそうな街ではなかったので、2泊でじゅうぶんだろうと思っていたのですが、ちょっともったいないことをしたかな、と反省しております。

たしかにスコピエの街自体はそれほどたいしたことなかったのですが、ホストのアナはよかった。
カウチサーフィンを利用して旅をしていると、そこで出会った人の印象が、その街の印象にかなり大きな影響を与えるのです。

知的なのに情熱的。
繊細なのに豪胆。
いろんな面を併せ持つマケドニア人女性というのは、スラヴ民族の中でも、かなり強烈な特色があるように見受けられました。

その土地土地に住む人を観察しながら旅をするのって、ものすごくおもしろいです。
やっぱり私はカウチサーフィンじゃなきゃ旅行できないや。


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今日は平日なので、当然アナには仕事があるのですが、忙しい中、私に朝食を付き合ってくれました。

マケドニアの朝食といえば、やはり「ブレキ」だろう、ということで、彼女が連れてきてくれたのがここ。
ブレキというのは、ようするに「パイ」なのですが、朝からなかなか濃いーなー。
マケドニア人が彫りの深い顔立ちをしている理由がわかったような気がしました。



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今日は朝からすがすがしい快晴。
スコピエの街を見下ろす山の頂上にはミレニアム十字架がくっきりと見えます。
その十字架を眺めながら食べるバルカン名物のブレキの味はまた格別です。

スコピエを離れるのがもったいなくなってきました。
というより、アナと別れるのが名残惜しいというべきか。


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なんとなーく、「スコピエ~オフリド」って書いてあるような気がする。

このバスの運賃、ガイドブックに載っている値段よりかなり安かったです。
普通、ガイドブックの情報よりも価格が上がっていることの方が多いので、安かったりすると不安になります。
ほんとにこのバスであっているのだろうか。


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鉄道網があまり発達していない東欧では、ミニバスが市民の重要な足となっています。
なので、通常、車内はかなり生活臭がただよっているのですが、オフリド行きのバスは違います。

まず、乗客の年齢層が若い!
おまけに肌の露出度が高い!
日焼け止めや香水の匂いがプンプンする!

もうね、なんとも言えない解放感にあふれているんですよ。
オフリド湖といえば、東欧屈指のリゾート地(らしい)。
夏のバカンスに向かう人々の熱気で、ミニバスの中はムンムンとしています。

わけのわからない熱気にやられて、つられて私もなんだか興奮してきました。
もしかしたら、ひと夏のアヴァンチュールが待ってるかも?!


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スコピエ~オフリド間のドライブは快適そのもの。
カラッとした天気で、窓の外を眺めるのが気持ちいいです。

マケドニアにはなにもないけど、こののどかな風景が私は好きです。
山と山の間に小さな村落が点在しています。
家と家の間も広く離れていて、日本とは大違い。


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こんな小さな集落にもモスクが存在するんですね。
ここの人々はよほど信心深いようです。


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途中のバスターミナルで車が停まります。
外に出て体を伸ばすのが気持ちいい!

いかにも夏らしい空の下、山の稜線がくっきりとしてきれいでした。


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ここで別の車に乗り換えです。
オフリドから来た乗客と、スコピエから来た私たちとがそれぞれのバスを交換する形となりました。

なんだかよくわからないけど、めんどくさい。


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そうこうしているうちに、オフリドに着いたようです。

「オフリドだ。ここで降りるか? それともバスターミナルまで行くか?」

と聞かれたのですが、とっさには答えられませんでした。
私はあまり綿密な計画をたてるタイプではなく、いつも着いてからその場で考えるからです。

あわてて地図を見ると、どうやらオフリドのバスターミナルは街の中心部からはかなり離れた所にあるようです。
ここで降りることにしました。

しかし、その前にすることがあります。
現在地を確認せねば。

というのも、以前私はラオスで、変な所でバスを降ろされて、その後数時間、重いリュックを担いで歩くはめに陥ったことがあるからです。

運転手を捕まえて、「ここはどこだ?」と聞いたのですが、「オフリド」という答えしか返ってきません。
そんなことはわかってるんだよ。
ここはオフリドのどこなのかを聞きたいんだ!

地図を見せて現在地を示すように促したのですが、なかなか要領をえません。
地球の歩き方に載っている地図は、通り名が現地の言葉で表記されています。
それなのに、彼は地図上で現在地がどこかわからないようです。
地図の読めない運転手の車に乗っていたのか、俺は・・・

悪戦苦闘したあげく、運転手は地図を指さしながら答えました。
「ここだ(と思う)」

彼の口ぶりはいかにも適当で、まったく信用できません。
(そして実際、彼は間違ってました。後でわかったことですが・・・)

それでもまあ、ここで降りることにしました。
今夜の宿を予約してあるわけでもないし、まだ日没までには時間があります。
なんとかなるでしょう。



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バスを降りたとたん、一気にテンションが上がります。
いかにも南国!といった雰囲気がビンビンと伝わってくるんです。

たしかギリシャもこんな感じだったような気がする。
気候風土が似ているのだろうか。


タクシーの運転手が何人か寄ってきましたが、地図を見る限り、オフリドの街はそれほど大きくはありません。
タクシーを使う必要はないでしょう。

そして、怪しげなおじさんも近づいてきました。

「今夜の宿はもう決まってるのか? まだならうちに泊まればいい。湖からは近いし、値段も安いぞ」

どうやら彼は、プライベートルームの勧誘に来たようです。
プライベートルームとは、日本でいう民宿のようなもので、バルカン諸国では利用する機会が多いです。

ちなみに、地球の歩き方のマケドニアの項にはこんな記述があります。

「マケドニア人は気さくで旅行者に親切な人が多く、プライベートルームでの宿泊は、宿主の家族にお茶を誘われたり、ときには食事に誘われるようなことも起こりうるなど、一般のマケドニア人の生活に触れられるまたとない機会となりうる」


おおー。なかなかおもしろそうです。
だが、問題は値段。

ところが、このおじさん、なかなか値段を言わないんです。

「とにかくうちに来い。実際に部屋を見てから料金の話をしようじゃないか」

あ・や・し・い。
怪しすぎる。
こういう場合、値段は相場よりも高いにきまっている。

おじさんとの交渉を打ち切って、歩き出そうとしたのですが、このおじさん、なかなかしつこくて、私を離してくれないのです。
「だからいくらなんだよ!」
それがわからないかぎり、交渉のしようがありません。
何度もしつこく聞いて、やっと答えてくれました。

「7ユーロ」

7ユーロ?
安いじゃないか。
なんで最初からそれを言わないんだよ。

地球の歩き方には、プライベートルームの相場は1500円くらいからと書いてあります。
だとすると、7ユーロはかなりお得じゃないか。

はっ!
「もしかしてドミトリー?」

おじさんに問いただすと、やはりドミトリーでした。
しかもすでに3人ほど同宿の人間がいるというではないですか。

あぶないところだった。
ドミトリーなら安くて当たり前じゃないか。
やはりこのおじさん、かなりのくせものだな。

「ちょうど日本人も泊まってるぞ。うちに来いよ」

この一言で、私がドミトリーに泊まる可能性は消滅しました。
なんでマケドニアまで来て日本人とつるまなきゃならないんだよ。

「ドミトリーはいやだ。 個室ならいくら?」

と聞いたのですが、やはりおじさんは答えません。
「部屋を見てから話し合おう」、の一点張りです。

疲れた。
もういいよ、あんたのとこで。


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ここが、今夜私が泊まることになったプライベートルーム。

個室を見せてもらうと、なかなか豪華です。
値段もかなり安い!
なんで最初から言わないんだよ。
この値段なら即決したのに。
まったく時間の無駄だ。

私はこの個室に決めたのですが、おじさんはまだ不服そうです。
「なんでドミトリーにしないんだ?」

普通、バックパッカーは1円でも出費を切り詰めるために、ドミトリーに好んで泊まります。
私の身なりはみすぼらしいから、おじさんも親切でドミトリーを勧めているんだろうと思っていました。

でも、どうもその口ぶりから、彼は別のことを心配しているようです。
どうやら彼は、私が女を買ってこの部屋に連れ込むことを警戒しているようです。

そんなことするかよっ!
(そもそもそんな金は無い)

自分がそんな目で見られていたのかと思うとショックでした。
もちろん私はそんなことをするつもりは毛頭ありませんでした。
この時は。

しかし、このおじさんの心配は、単なる杞憂ではなかったのです。
(詳しくは別の記事で)


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時刻はすでに夕方でしたが、せっかくオフリドまで来ているのに部屋に閉じこもっているなんてもったいない。
ヨーロッパの夏は一日が長い。
軽く湖まで行ってみることにしました。

私の予算は限られているので、リゾート地はあまり好きではありません。
物価は高いし、おしゃれに着飾った人々を見ていると、なんだか自分には場違いな気がするからです。

でも、このオフリドは違います。
東欧屈指のリゾート地でありながら、それほどけばけばしくないんです。
それに、このカラッとした空気がなんとも言えない解放感を与えてくれます。
イスラム地区のしっとりした空気もいいですが、このオフリドもなかなか捨てたもんじゃありません。


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オフリド湖へと向かうメインストリート沿いには、たくさんの出店があります。
そのうちのひとつの店の人に呼び止められました。

「一緒に写真を撮ってくれ!」

侍の格好をしてヨーロッパを歩いていると、こういうことはよくあるのですが、それぞれの街ごとに反応は異なります。
スコピエではほとんど無視状態でした。

でも、ここオフリドは違います。
なんというか、人々のノリがいいんです。
南国のカラッとした風土が、人々の精神に影響を与えているのでしょうか。

お店の人は写真を撮った後、

「ありがとう。 お礼になにかやるよ。 欲しいものがあったらなんでも持っていきな!」

と言ってくれたので、お言葉に甘えて、絵葉書を一枚もらいました。
しかも大きいサイズのやつ。

役得、役得。


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宿からオフリド湖まではすぐのはずなのですが、たくさんの人からの写真攻勢を受け、なかなか前に進めません。
10メートルおきに声をかけられます。

マケドニア人はサムライが好きなのか?!


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ようやくオフリド湖に到着。


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湖なんて世界中どこも同じはずなのですが、やはり人気リゾートはなにかが違います。
心の底からウキウキ感が湧き上がってくるんです。
リゾート地なんて嫌いだったはずなのに、なんとも言えない解放感に包まれました。


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「おい!」

鼻歌混じりで湖畔を歩いていると、どこからか声をかけられました。
あたりを見回してみたのですが、誰もいません。

「おい! ここだ!」

声は下の方から聞こえます。
湖岸に近寄ってみると、ボートの中に男が二人、私を手招きしています。


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「こっちへ来て、まあ一杯やっていけよ」

男たちは私を船へと誘います。

どうやらこれは遊覧ボートのようです。
乗ったが最後、無理やり出港して、乗船料をとられるんじゃないだろうか。
知らない男たちの船に乗り込んだりしたら、拉致されて北朝鮮に連れていかれるんじゃないだろうか。

いろいろと不安が頭をよぎりますが、そんなことを気にしていたら旅なんてできません。
ここは素直に彼らの誘いに応じることにしましょう。


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「ウェルカム・ドリンクだ!」

船長らしき男は船倉の扉を開けて、一本の瓶を取り出しました。
バルカン諸国の国民酒、ラキヤです。
なんと、彼の自家製だというではありませんか。

瓶の中には、なにやら得体の知れない怪しい海藻が漬かっています。
まさか、俺にこれを飲めというのか。


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普段お酒を飲まない私には、ラキヤはきつすぎます。
こんな強い酒を船の上で飲んだりしたら、すぐに気分が悪くなってしまうことでしょう。

でも、飲まずにはいれらませんでした。
エメラルドグリーンというのでしょうか。
グラスに注がれたラキヤは、何とも言えないきれいな色をしています。

私はお酒のことはよくわかりませんが、このラキヤは普通のラキヤとは違います。
オフリド湖の上で飲むラキヤは、どんな高級バーで飲むものよりもぜいたくな味がしました。

「明日はオフリド湖で泳ごう」

なんの脈絡もなく、ふと、そんな考えが沸き起こってきます。



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左が船長のドラガン。
彼は私と話をしている最中でも、観光客が船のそばを通るたびに、

「サムライと一緒にオフリド湖クルーズはどう? サムライ・ツアーだ!」

と声をかけています。

この野郎!
俺を客寄せパンダに使いやがったな。


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船長の帽子を借りて記念撮影。


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「コンニチハ!」

日本語で声をかけられました。

というのも、この男性、日本に暮らしていたことがあるそうです。
神戸のラジオ局でDJをしていたのだとか。
なんと、日本でCDも出したといいます。

いやー、世界ってせまいなー。


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今度はひとりの美少女が私のことを見つめています。
最初は気のせいかと思っていましたが、なんだか私を見つめる彼女の目がハート型になっています。

それもそのはず、彼女は日本のことが好きで好きでたまらないのだとか。
日本語を毎日熱心に練習しているというではありませんか。

そうか。俺のことが好きなんじゃなくて、この侍の衣装を見つめていたんだな。
そんなこったろうと思ったよ。


彼女の名はマリア。

「オフリドでも日本人の姿はたまに見かけるけど、侍の衣装を着ている人を見るのはこれが初めてよ」

それはそうでしょう。
まともな日本人はこんな格好で旅行したりはしませんから。

だが、恥を忍んで着てきたかいがあった。
こんなかわいい女の子と知り合いになれたのだから。


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「あっ、もうこんな時間。 もう行かなきゃ。
 私、この近くのレストランでバイトしてるの。 あなたともっと話したいわ。 よかったら来てくれる?」


行く行く行くー。 
なにがあっても絶対に行きます!


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私がマリアとの蜜月を楽しんでいる間に、 二コラはいつの間にか家族を呼び寄せていました。
どんだけひまなんだよ、お前。

平日の昼間っからボートの上で酒を飲んでいる二コラ。
彼はいったい何者なんだろう。

夏のバカンスにでも来ているのだろうか。
いずれにせよ、ゆったりとした時間を楽しむ彼の姿勢は、日本人とはほど遠い物です。
彼らは人生の楽しみ方を知っている。
日本人にはない心の余裕を持っている。
私もそんな人生を送りたいものだ。


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船長のドラガンは

「今からクルーズに行こうぜ。 安くしとくからさ」

と言いますが、もうすぐ日が暮れます。
どうせならもっとゆっくりと楽しみたい。

なので、明日、ドラガンの船でオフリド湖巡りをする約束をして別れました。


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出窓が特徴的な建築スタイル。
これは後日、アルバニアでたくさん見ることになります。

あとでガイドブックを確認したら、どうもここは国立博物館っぽい。
しまった! 見過ごした。


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オフリド湖は真珠の産地としても有名なんだそうです。
まあ、興味ないけど。


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オフリドなんて小さな街なのに、教会の数はやたら多いです。
その独特の形を見ていると、「ああ、オフリドに来たんだなー」という実感がわいてきます。


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彼は日本の古い映画が好きだと言っていました。
ほとんどの日本人はオフリドのことなんて何も知らないのに、オフリドの人は日本のことをよく知っている。
やっぱり日本ってすごいんだな。


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結婚式の写真を撮っていたカップルに、「一緒に写ってくれ」と頼まれました。
光栄です。


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せまい階段でサッカーをする子供たち。
そういえばこの街では広い空き地を見かけなかったな。
こんな場所でサッカーをしてたら、さぞかしボールコントロールがうまくなることでしょう。


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オフリドの人たちはほんとに陽気。

「まあ一杯飲んでいけよ」

とカフェに誘われました。
オーナーのおごりです。
やっぱり侍の衣装はお得だなー。


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今度はレストランに連れ込まれました。
ウェイターやシェフに取り囲まれて記念撮影。
ここでもコーヒーをご馳走になりました。
うう。 げっぷが出そう。


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オフリドの街はほんとに風情があって飽きません。

石畳の路地。おしゃれなカフェ。
アップダウンの激しい地形のおかげで、特徴的な教会の建物をいろんな角度から眺めることができます。
そして時おり姿を見せるオフリド湖。

私のお気に入りの街の一つになりました。
死ぬまでに絶対にもう一度ここに来よう。
今度は誰かと一緒に来たいな。


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古代劇場跡。
いつ頃の時代のものだろう。
しまった。予習を怠ったから、この街の歴史的背景なんて全然知らないや。
きちんと勉強してから来れば、また一味違った見方もできたことだろうに。


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教会がたくさんありすぎて、地図を見ても自分が今どの教会を見ているのかわからなくなってきました。


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聖クリメント教会。
この建築様式がとても気に入ったので記念撮影。
でも、太陽が沈みかけているため、なんだか薄暗い。
明日もう一度来よう。


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もうすぐ日が暮れるのですが、岬の先端にある聖ヨハネ・カネオ教会まで行ってみることにしました。
ここがこのオフリドのメインのような気がしたからです。


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夕陽で真っ赤に染まる聖ヨハネ・カネオ教会は、筆舌に尽くしがたいほど美しい。
思わず記念撮影。


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ちょうど夕陽がオフリド湖に沈む瞬間だったので、大勢の人が教会に腰掛けて景色を楽しんでいます。
でも、私は夕陽なんかよりも、この聖ヨハネ・カネオ教会の方が断然いいと思う。


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聖ヨハネ・カネオ教会に見とれていると、大柄の男が近づいてきました。
気のせいか、彼が私を見つめる目はハート形をしています。
まさか侍の衣装は美少女だけでなく、こんな毛むくじゃらの大男までも虜にしてしまうのか。

身の危険を感じた私は思わず後ずさりしたのですが、にじり寄ってくる彼のために、ついに崖っぷちまで追い詰められてしまいました。


実はこの男性、合気道をたしなんでいるのだとか。
オフリド湖の近くに合気道の道場があるなんて意外でした。

そして彼は彫刻家でもあります。
彼のアトリエは聖ヨハネ・カネオ教会の中にあるといいます。

「ちょっと寄っていきませんか」

と誘われたので、もちろん、お言葉に甘えることにしました。
普通の観光客は中に入れてもらえませんからね。
これも侍の衣装のご利益です。


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彼は教会から依頼されて、装飾を修復したりしているそうです。
そのひげもじゃの顔つきからは想像できませんが、かなり手先が器用なんでしょうね。


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彼はお土産なんかも作っているというので、オフリド周辺の土産物屋で売っている民芸品は、彼の作品である可能性が高いです。


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ライトアップされる聖ヨハネ・カネオ教会。
夕陽に染まる姿も圧巻でしたが、夜は夜でまた美しい。
明日は太陽に照らされる姿をボートから眺めるとしよう。


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オフリドのメインストリート。
昼間よりも夜の方が人通りが多い。
きっと暑い日差しを避けて、みんな夜に活動するのだろう。

このオフリドは有名観光地なのだが、他のリゾートとは違って、それほどうるさくない。
ちょうどよい活気があって、人混みが嫌いな私でも楽しめました。


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オフリドパールの店もけっこうあります。


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湖岸のレストランを何軒かあたって、ガイドブックに載っている「ロベチュカ・シュニツラ」という料理を食べようとしたのですが、
どこも扱っていませんでした。

なので方針を転換して、今夜はスーパーで買い物をして部屋で食べることに。
東欧はどこも物価が安いのですが、ここオフリドはリゾート地なので高いだろうと思っていました。

が、安い!
スーパーではほとんどタダ同然でパンやジュースが買えます。

明日はマリアのレストランで奮発するかもしれないので、今夜は節約だ。
それでも、マケドニアのビールは忘れずに購入しました。
その土地のビールを飲む。
ささやかなぜいたくです。


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今夜のところは、ダブルベッドに独りさびしく横たわります。
でも明日は!
明日はきっとなにかが起こる(はず)。

オフリド湖の熱風は、人の心を狂おしくさせます。



テーマ : 海外旅行記
ジャンル : 旅行

モスクで雨宿り(スコピエ、マケドニア)

スコピエでカウチサーフィン(CouchSurfing) スコピエ、マケドニア




このプライベートルームでは、朝食も宿泊料に含まれていました。
あまり豪華とは言えないけど、もらえるものはありがたくいただいておきます。


マケドニアでも、外国人旅行者は宿泊証明書が必要です。
公式には。

これまでの例から見て、きっと宿泊証明書はいらないだろうとも思えたのですが、やはり不安なので、宿主に要求しました。
しかし、
「え? 宿泊証明書? なにそれ?」
という反応が返ってきました。
やはりこのルールは死文化してしまっているようです。

まあ、なくてもいいや、と思っていたのですが、宿主からは思わぬ答えが。

「昨日のうちにインターネットで登録しておいたから大丈夫」

いかにもウソっぽい表情でウソっぽい答えが返ってきました。
ついさっき思いついたような顔をしています。
それに、私は彼らにパスポートを預けていないのに、どうやって登録したのでしょうか。



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これが私の泊まったプライベートルーム。
自分が予約した宿はホテルだとばかり思っていたので、この場所を探し当てるのに苦労しました。
夜中に、しかも雨の降りしきる中、何度もこの建物の前を素通りしたのです。


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昨夜はお金を払ってプライベートルームに泊まったのですが、今夜はカウチサーフィンを利用します。
ホストの住所はもらっているのですが、どうもわかりにくそう。
なので、スコピエ市内を観光する前に、一度ホストの家を下見しておくことにしました。
あらかじめ場所を確認しておけば、万が一暗くなってから到着したとしても、迷うことはないだろうと考えたからです。

そして実際、彼女の家はかなりわかりにくい場所にありました。
マケドニアも旧共産圏の一部。
その名残か、公共住宅は無機質で特徴がなく、どの建物も区別がつきにくいのです。


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ホストの家の下見を終え、いよいよスコピエ観光開始です。
この街を歩いていて気づいたのですが、おそろしく静かです。
車の数が少ないからでしょうか。
とにかく音が聞こえないのです。

と思っていたら、前の方からは馬車がやってきました。
なんと。
ここは首都の中心部なんだけどな。

いや、でも、騒々しいよりは静かな街の方が好きですよ。



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おっ!
なんだかマケドニアっぽい建物。
おそらく政府関係の建物でしょう。


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スコピエの観光地図。
なんだかいっぱい写真が載っていて、見どころ満載! なようにも見えますが、
この街はそれほどおもしろくありません。

でも、政府が必死で観光客を誘致しようとしている空気は伝わってきます。


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聖クリメント大聖堂。
なんだか奇抜な建築スタイルなので、思わず立ち寄ってしまいました。

でも、見たところかなり新しそうな建物です。
スコピエ全体に言えることですが、アレキサンダー大王の街にしては、歴史的建造物が少ないような気がします。


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聖クリメント大聖堂の中。
誰でも自由に入れます。
観光客向けではなく、市民の信仰の場のようです。


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スコピエの中心部、マケドニア広場についにやってきました。
おそらくここがスコピエ観光のハイライトなのでしょう。
お約束として、アレクサンダー大王と一緒に記念撮影。


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観光客の姿もちらほらと見えますが、それほど混雑しているというわけでもありません。
再開発が進んでいるのか、工事中の建物が多いような気がします。


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マケドニア門。
いかにも「マケドニア!」という雰囲気を醸し出しています。

が、かなり新しそう。

スコピエ市内にはたくさんのモニュメントがあるのですが、どれも真新しいものばかり。
ほとんどがここ数年内に作られたものだそうです。
ひどいのになると、去年できたばかりだとか。

アレキサンダー大王が活躍したのは2000年以上も前のことですが、この街にはどうも歴史を感じることができません。
マケドニア政府が観光客を誘致しようと躍起になって次々とモニュメントを建造しているようですが、あまりやりすぎると逆効果のような気もします。


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マケドニアといえば、アレクサンダー以外にも、マザー・テレサという偉大な人物を輩出したことで有名(だそうです)。
私はここに来るまで、マザーテレサがどこの国の人かさえ知りませんでしたが。


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ライオンと兵士の像。
なかなかマケドニアっぽいけど、やはり新しすぎてウソっぽい。


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カメン・モスト。
ガイドブックによると、オスマン朝時代に作られた石橋らしい。
そう言われてみれば、なんとなく風格があるような気もする。


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石橋を渡ってみます。


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石橋を渡った先にも多数のモニュメントが。
一応写真は撮りましたが、なんなんだろう、この物足りなさは。


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観光客と一緒に記念撮影。
侍の衣装を着て歩いているというのに、人々の反応は薄い。
東洋人の観光客はほとんどいないから、私の姿は目立っているはずなのに、どうもスルーされてるっぽい。
マケドニア人はもっと陽気なのかと思っていたのに、どうもイメージと違うぞ。


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石橋(カメン・モスト)の先をさらに歩いていくと、オールド・バザールと呼ばれる地区にでます。
ガイドブックによると、どうやらここはトルコ人エリアらしい。
そしてだんだんとイスラム色が濃くなってきます。
マケドニアにもムスリム地区があるんですね。
なんだかノヴィ・パザルを思い出してしまいました。
やはり私はイスラム文化が好きらしい。


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オールド・バザールとはいうものの、なかなかおしゃれな街並みです。
少なくとも私には、この地区はスコピエの中心部なんかよりずっとおもしろいです。


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道の真ん中に物乞いのような人が座っていましたが、このような光景は東欧に限らず、世界中どこでも見受けられる光景ですね。


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トルコ風の浴場でしょうか。
ううっ。このエキゾチックな雰囲気がたまらん!


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イスラム地区ですから、もちろんモスクもあります。


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写真だと伝わりにくいかもしれませんが、この通りを歩いているだけで、ものすごくウキウキした気分になります。
ムスリムの街並みって、なんとも形容しがたい雰囲気があるんです。
異国情緒に溢れているはずなのに、なぜかどこか懐かしい匂いがするのは、私の気のせいでしょうか。


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食事をする所を探していたところ、ショーウィンドーにおいしそうな食べ物が並んでいるお店を見つけました。
なんとなくマケドニアの伝統料理っぽい。
ガイドブックを確認したところ、どうも「タフチェ・グラフチェ」という食べ物に似ているような気がする。
お店の人に確認すると、「そうだ、タフチェ・グラフチェだ」という。

ガイドブックの写真と少し違うような気もしますが、店の人がそう言うのだから、まあ間違いないのでしょう。
ここで食事することにしました。


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これがその「タフチェ・グラフチェ」。
インゲン豆の煮込みらしい。
ガイドブックに書いてある通り、青とうがらしもついてきた。
これをちびちびかじりながら食べるのがマケドニア流らしい。

やっぱり旅行に出かけたら、その土地の食べ物を食べなきゃね。
ガイドブックをなぞってるだけだけど、私は旅の達人ではないのでこれでじゅうぶん楽しいのさ。


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このお店でトイレを借りたのですが、私は侍の衣装を着ているので、なにかと時間がかかる。
緩んだ紐を締め直して出てくると、店の主人が私を待っていた。
愛想の悪いイメージのあった店の主人だが、「ピクチャー! ピクチャー! OK ?」と言っている。
どうやら私と一緒に写真を撮りたいらしい。

店の奥から彼の父親らしき人も出てきて、みんなで一緒に記念撮影タイム。
なんと、食事代もチャラにしてもらえました。
侍の衣装を着ていると、役得が多いなー。
はるばる日本から持ってきてよかったー。


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食事の後も、オールド・バザールをブラブラと歩きます。
迷路のように小さな路地が入り組んでいるのですが、小さな街なので、しばらく歩くとすぐに見覚えのある場所に出てきてしまいます。
それでも楽しいんです。
私はほんとにこの街が気に入りました。


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侍の衣装を着ていても、スコピエの市街ではスルー状態だったのに、このオールド・バザールではいろんな人から声をかけられます。
トルコ系の人は陽気な性格をしているのだろうか。


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急に人通りが少なくなったと思ったら、雲行きが怪しくなってきました。
どうやら一雨きそうです。
雨宿りできる場所を探さねば。


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雨がポツポツと落ちてきたので、少しあせります。
丘の上にはモスクが見えます。
あそこなら雨をしのげる場所がありそうだ。


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このモスクで雨宿りさせてもらうことにしました。


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どのモスクにもこのような水場があるのですが、うまい具合に屋根もあります。
ここなら多少の雨はしのげそうです。

ここに逃げ込んだとたん、バケツをひっくり返したような大雨となりました。
ギリギリセーフ。

おそらく夕立なのでしょうが、この大雨じゃあ、しばらくは身動きがとれそうにありません。
なすすべもなく空を見ながらぼーっとしていると、突然スピーカーからお祈りのような声が聞こえてきました。
おそらくイスラム教のコーランでしょう。

すると、たくさんの人がモスクへと向かって歩いてきました。
おそらく礼拝の時間なのでしょうが、この土砂降りの大雨をもろともせず、大勢の信者たちがやってきます。
私は侍の格好をしていて、彼らからすれば明らかに「異教徒」です。
敷地内にいることを咎められるのではないかと心配でしたが、誰もなにも言いませんでした。

礼拝には大人だけでなく、子供たちもやってきます。
さすがに好奇心の旺盛な子供たちは、外国人である私のことをチラチラと見ていましたが、礼拝の時間が差し迫っているためか、モスクの中に駆け込んでいきました。

イスラム教の礼拝がどういうものか興味はありましたが、さすがに中に入って見学するだけの勇気はありません。
みんなモスクの中に入ってしまったので、再び私ひとりだけが外で雨宿りをすることになりました。


礼拝が終わり、人々は雨の中、それぞれの家へと帰っていきます。
信心深い人というのはすがすがしい空気を発していて、とてもおだやかです。

子どもたちは礼拝が終わった後、授業があるみたいで、モスクの隣にある教室へと入っていきます。
何人かの子供たちは私のことをチラチラと見ていきます。
その中の一人と目が合いました。
とてもかわいらしい女の子です。

彼女は足を止めて、私に何か言いたそうな表情をしたのですが、彼女の友人たちが私から逃げるように教室へと入っていったので、彼女も仕方なく立ち去っていきました。

「待って!」
と言って彼女たちを引き止めたかったのですが、「あまり変なことをするとイスラム教徒たちに殺されるかも」と怖くなり、声は出ませんでした。


雨はほとんど止んでいたのですが、さきほどの女の子のことが妙に気にかかり、雨宿りをするふりをして授業が終わるのを待つことにしました。
まるで変質者ですね。
日本の小学校の近くでこんなことをしたら、余裕で通報されるレベルです。


ほどなくして授業は終わり、子供たちが出てきました。
さきほどの女の子たちもいます。

例の女の子はまたもや私のことを見ています。
今度は覚悟を決めたのか、友達と一緒に私の方へと歩いてきました。
好奇心も勇気もある女の子のようです。



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右から2人目の女の子がリーダー格のようです。
私と話すのはもっぱら彼女だけ。
他の子は英語が苦手なのか、それとも恥ずかしがり屋なのか、一言もしゃべりませんでした。

「それは刀なの?」
リーダー格の女の子がたずねます。

「ああ、これ? これは偽物だよ。触ってみる?」
彼女たちを驚かせないように、できるだけおだやかな笑顔を浮かべながら刀を引き抜くと、彼女たちは一斉に息を飲みました。
よほど怖かったようです。


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彼女たちがそれぞれ手にしている物。
もしやと思い聞いてみたら、やはり、あのイスラム教の経典、「コーラン」でした。
実物を見るのはこれが初めてです。
彼女たちに見せてもらいました。

「コーラン」というと、もっと厳粛でおっかないイメージがありましたが、女の子たちのコーランは色とりどりのカバーに覆われています。
やはりどこの国の女の子も、こういうかわいらしい物が好きなんですね。


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しかし、そのかわいらしい外観とは裏腹に、中身はやはり難しそうなアラビア文字がぎっしりと詰まっています。

「これ読めるの?」
と彼女に聞くと、

「当然でしょ」
という顔をしていました。


カバーの中に、さらに布があって、コーランを包んで保護しているのがわかるでしょうか。
イスラム教徒にとって、コーランとはそれほど重要な物なのでしょうね。


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男の子たちも私に寄ってきました。
わんぱくさの中に、礼儀正しさも垣間見えます。

このおだやかな顔をした子どもたちも、大きくなったらイスラムの戦士として世界中で暴れるのだろうか。
アラーの名のもとに、異教徒を皆殺しにしようともくろむのだろうか。
とてもそんなふうには見えませんでした。

これは、彼らがまだ子供だからというわけではなさそうです。
このモスクに来ている他の大人たちも、みなおだやかな表情をしています。

仏教、キリスト教、イスラム教。
信仰に篤い人というのは、その奉ずる宗教とは関係なく、みんなおだやかな表情をしています。
凛とした姿勢をしています。

思うに、今、世界中を震え上がらせているイスラム原理主義者たちは、コーランの教えを誤解しているのではないでしょうか。
きちんとその協議を学習してこなかったのではないでしょうか。

「イスラム」と聞くと、思わず身構えてしまいますが、テロを行っているのはごく少数の例外だと思いたい。
ほとんどのイスラム教徒は、このモスクに通っている人たちのように、平和でおだやかなのだと信じたい。


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モスクの脇にある水場。
ここで足を清めてから礼拝に向かうのでしょう。


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とてもすがすがしい気分に包まれて、トルコ人地区を後にします。
スコピエの中心部に戻ってきました。
アレクサンダー大王像の遠く彼方の山頂に、十字架が立っているのが見えるでしょうか。

ミレニアム十字。
高さ66メートルの世界最大級の十字架だそうです。
この十字架が山の頂上からスコピエの街を見下ろし、市内のどこからでもその姿を見ることができます。

バルカンを旅していると、イスラムとキリスト教とがせめぎあっているのを肌で感じることができます。
二つの異なる文化が混ざり合って、とても刺激的な印象を与えてくれます。
特に宗教心に薄い日本人にとっては、この刺激は強すぎます。

バルカン諸国はあまりメジャーな観光地とは言えませんが、その知名度の低さに反して、とても楽しめます。
街を歩いているだけで鳥肌が立ってくるんですよ。


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マザーテレサ通りを歩いていて、こんな標識を見つけました。
これきっと、「マザーテレサ」って書いてあるんでしょうね。


今夜のカウチサーフィンのホスト、アナの家に着いて、呼び鈴を鳴らしたら、彼女はびっくりしていました。

「よくここがわかったわね?!」

なにを言ってるんだい。
住所をくれたのは君じゃないか。
それはつまり、自力でここまで来いという意味だろ。

それともなにか?
俺が迷うことを前提にしていたのか。
それならどこかわかりやすい場所を待ち合わせ場所に指定して、迎えに来てくれてもよさそうなものなのに・・・


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アナは暑いお茶と甘いお菓子で私をもてなしてくれました。
お茶は乾燥させた茶葉から淹れた本格的なもの。
お菓子もマケドニアの伝統的なものなのだそうです。

いったい彼女は親切なのか不親切なのか、よくわからなくなってきました。


アナの家は旧共産圏の公団住宅なのですが、その無機質な外観からは想像もつかないほど中身はゴージャス。
独り暮らしの彼女ですが、大きな部屋がいくつもあります。

でも、私にあてがわれた部屋は物置のようなせまいスペース。
どういうこと?


アナはけっこうお堅い仕事をしていて、その肩書もなかなかすごい。
留学経験もあり、相当なインテリのようです。

そういうわけだったので、彼女との会話はかなりシリアスなものとなりました。
日本の出生率の低下と働く女性の劣悪な職場環境との相関性とか、そんな話ばっかり。

若い女性の一人暮らしの部屋に招かれたという高揚感はみじんもありません。
くっ。
このまま色気のない話のまま終わってしまうのか。


そんな私の内心を知ってか知らずか、アナは

「もうすでにスコピエ観光をすませたんでしょうけど、これから私が「夜の」スコピエを案内してあげるわ。
化粧してくるからちょっと待っててね」
と言って自分の部屋へと消えていきました。

「夜の」スコピエ。
なんだか怪しげな響きです。
いったいどんなすごいことが待ち受けているのでしょうか。

あんなことやこんなこと、私がめくるめく妄想の世界に没入していると、
化粧を終えた彼女が戻ってきました。

おーっ!
メイクをばっちりきめた彼女は、なんだか別人のようです。
これだけ気合入れて化粧してきたってことは、ひょっとして、ロマンスを期待してもいいですか?


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まずは腹ごしらえのため、アナのおススメのレストランへと向かいます。
厨房ものぞかせてもらいました。
本格的なレンガ造りのかまどが見えます。


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台の上で職人さんが生地をこねます。
まさに手作り。


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かまどの中には、熱で膨れ上がった生地が見えます。
おいしそー。


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アナにすべておまかせして、マケドニアっぽい料理を注文してもらいました。


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おしゃれなレストラン。
豪勢な食事。
甘美なワイン。
そして、目の前にはマケドニア美女。

うわー、俺らしくねーぞ。
こんなぜいたくしていいのか?


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左が今夜のカウチサーフィンのホスト、アナ。
彼女に限らず、マケドニアの女性は彫りの深い顔立ちをしている。
それに加えてかなりどぎついメイクをするもんだから、どうしても「猛獣」を連想してしまう。


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食事のあとは、いよいよお待ちかね、「夜の」スコピエ探検です。

一国の首都にも関わらず、スコピエの街はとても静か。
東欧のロマンチックな街並みを美女と一緒に歩いていると、なんだか妙な錯覚にとらわれます。
俺はいったい今、なにをしてるんだろう?

アナが連れてきてくれた公園には、無数の球体が埋め込まれていて、それらが幻想的な淡い光を発しています。
人通りはほとんどありませんから、この光景を占有しているのは私たちふたりだけです。

ああ、俺はなんてぜいたくな旅をしてるんだろう。
ついこの間までスコピエなんてその存在すら知らなかったから、まったく期待していなかった。

それなのにどうだ、この充足感は。
カウチサーフィンでホストに恵まれると、その土地の魅力は十倍増しになる。



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これが今夜の私のカウチ。
なんか、生活感があふれてますねー。

いや、いいんですよ。
その土地の生の暮らしを味わえる。
それがカウチサーフィンの魅力なのですから。

けっして甘いロマンスを期待してはいけないのです。


テーマ : バックパッカー
ジャンル : 旅行

クラリェヴォ(セルビア)からスコピエ(マケドニア)へ

長かったセルビアとも今日でお別れ。
そして、クラリェヴォでの宿、ドラガチェヴォともお別れだ。

最後の最後に、大雨となった。
今回の旅行では、訪れるすべての国で雨に祟られている。
これも日ごろの行いの報いか。



セルビアを旅行する外国人は、出国時に宿泊証明書を提示しなければならないそうだ。
それがないと、思わぬトラブルに巻き込まれるのだとか。

ホテルに泊まる場合は宿主が宿泊証明書を作ってくれるからなんの問題もないのだが、
問題はカウチサーフィンを利用した場合。

その場合、家主とともに警察署に出頭し、宿泊証明書の手続きをしなければならないらしい。
ややこしい。

もちろん、そんなめんどくさいことをホストに頼むわけにはいかないから、ベオグラードでカウチサーフィンを利用したときは、
宿泊証明書をもらっていない。


だが、このホテル「ドラガチェヴォ」は安ホテルのくせに、きちんと宿泊証明書を用意してくれていた。




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クラリェヴォのバスターミナルには、例のおっさんがいて、ゲートを守っている。
私の顔を見て、

「チャイナ! お前のバスは6番ホームだ!」 と叫んだ。

昨日までは私のことを 「ブルース・リー」と呼んでいたのに、今日は格下げかよ。


スコピエ行きのバスはほぼ満席で、あいにく窓際の席は取れなかった。
約7時間の道中、外の景色を眺めることができず、退屈で死にそうだ。

夕方5時ごろ、国境を越えたが、宿泊証明書の提示は求められなかった。
どうやらこの規則は有名無実化しているようだ。



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スコピエのバスターミナル。
一国の首都だというのに、なんだかさびしい。


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スコピエのバスターミナル

今夜はカウチサーフィンではなく、予約しておいたホテルに泊まる。
インターネットの予約サイトで確認した地図によると、バスターミナルからホテルまでは歩いてすぐだった。

だが問題は、最初の一歩だ。
新しい街に到着してバスから降りたあと、私はいつも一時的に方向感覚を失う。
自分が今、どちらの方角を向いているのかわからなくなるのだ。

なのでいつも最初の一歩を踏み出すまでに時間がかかる。
なにかわかりやすい目印があれば、地図と照らし合わせて確認することができるのだが、このバスターミナル周辺にはそれといった特徴のあるものは見当たらない。

近くを歩いている人に確認しようとしたのだが、
「俺はここの住人じゃない」などと言われて、なかなか的確な答えを得ることができない。

ウロウロしていると、タクシーの運転手が寄ってくるが、歩いて行ける距離にタクシーを使うほど私は裕福ではない。

というわけで、グーグルマップのお世話になることにしたのだが、どうも調子が悪い。
現在地とマップ上の自分の位置がずれている。
今現在はバスターミナルにいることには間違いないはずなのに、グーグルマップ上では私はバスターミナルから離れたところに立っていることになっていた。


いつまでもこんなところでぐずぐずしているわけにもいかない。
もうすぐ日が暮れる。
暗くなる前に宿にたどり着きたい。


60パーセントくらいの確率で「まあこちらの方角だろう」という見当をつけて歩き出した。
交差点に備え付けられている標識にはストリート名が書かれている。
グーグルマップと照らし合わせてみるのだが、どうもしっくりとこない。

本当にこの道であっているのだろうか。
重い荷物を抱えながら歩いていると、ほんの少しのミスがとてつもないロスへとつながる。
貴重な時間と体力を無駄遣いしたくない。

そこへ、前から女の子の集団が歩いてきた。
年のころは高校生くらいなのだが、おそろしく化粧が濃い。
まるで今から舞台に立つかのようだ。
これがマケドニア女子のスタンダードなのか。

マケドニアの女の子は、それでなくても彫りの深い顔立ちをしている。
それに加えてこのメイク。
日本人がやったら明らかに「ケバい」のだが、彼女たちはとても似合っていた。

スコピエのJKは性格もサバサバしている。
親切に私の質問に答えようとしてくれるのだが、どうも要領を得ない。
こちらは一刻も早くホテルに着いて重い荷物を降ろしたいのに、一言話すたびに「きゃははは」と笑っている。
つられて私も笑ってしまった。

結局彼女たちからはなんの情報も得られなかったのだが、元気だけはもらえた気がする。
心なしか肩に食い込むリュックも軽くなった気がした。

しまった、写真を撮るのを忘れた。
きっとスコピエの女子高生の魅力に舞い上がっていたのだろう。



ホテルの予約サイトによれば、ホテルはバスターミナルから歩いてすぐのはずなのに、なかなか目的地は見えてこない。
とっくに日が暮れて、あたりは暗くなってしまった。
ブッキング・ドットコムのばかやろう。
おまけに再び雨。

もうずいぶんとスコピエの街を歩いたが、なかなかつまらなそうな街だ。
「これは!」というものがなにもない。


ようやく目当ての通りに到着した。
番地を一つ一つ確認していく。
細い通りだから、ホテルを見落とすことはないだろう。

と思っていたのに、通りの最後まで歩いても、ホテルなんてなかった。
いや、それらしき建物は一軒あったのだが、廃屋だった。

まさか、私が今夜泊まるはずの宿は、つぶれてしまったのだろうか。
そんなはずはない。
数日前にブッキング・ドットコムで予約したばかりなのだ。


雨が降りしきる中、暗い夜道を重い荷物をしょって通りを何往復もした。
どれだけ確認しても、ブッキング・ドットコムに載っていた住所には、ホテルなんて存在しない。
そこにあるのは、普通の民家だけだ。

いや、待てよ。
その民家の軒下にはプレートが掲げられている。
辺りが暗いので、そこになんと書いてあるのかは読めない。
もっと近づいて確認したかったが、そのためには門を開けて家の敷地に入らなければならない。

仕方ない。 
不法侵入だ。


幸い門に鍵はかかっていなかったので、勝手に開けて中に入っていった。
犬がギャンギャンわめいていたが、かまうもんか。
俺はもうへとへとなんだ。

その家に掲げてあるプレートには、「COMFY ROOMS TO RENT」と書いてあった。
なんてこった。
ここは「プライベートルーム」(日本でいう民宿)だったのか。

ブッキング・ドットコムで予約したから、てっきりホテルだとばかり思っていた。
バルカン諸国ではプライベートルームがポピュラーだという話は予備知識としては持っていたのに、まるっきり忘れていた。


家主は階上に住んでいて、生意気そうな男の子が私への対応にあたった。
きっとこの家の息子なのだろう。
ひととおり部屋の使い方を教えてくれた後、彼は「料金は前払いでお願いしたいんだけど」と言った。

そこで初めて私は、自分がまだこの国のお金を持っていないことに気づいた。
雨の降る中、重い足を引きずりながら、ATMを探しに外へ出ていくはめとなってしまった。

スコピエ。
なかなか手厚い歓迎をしてくれるじゃないか。


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今夜の私の部屋。
プライベートルームだったとは。
どうりで安いわけだ。


テーマ : ヨーロッパ旅行記
ジャンル : 旅行

ソポツァニ修道院の聖三位一体教会とスターリ・ラス(ノヴィ・パザル、セルビア)

ソポツァニ修道院の聖三位一体教会とスターリ・ラス(ノヴィ・パザル、セルビア)




ホテルでの朝食。
食堂の壁には赤い修道院の写真が飾られている。
たぶんジチャ修道院だろう。
本来ならここも訪れる予定だったのだが、どうも無理っぽい。


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宿泊代に朝食が含まれていると聞いて期待していたのだが、なんだこれは・・・

いえ、ぜいたくは言いません。
どうせ私は貧乏パッカーですから。


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クラリェヴォでの私の宿、「ドラガチェヴォ」
受付では英語が通じず、女主人の愛想も悪かったが、けっこう気に入った。
値段は安いし、WIFIも速い。居心地も悪くない。
またクラリェヴォを訪れるようなことがあれば、ここに泊まろうと思う。

でも、再びこの街に戻ってくることなんてありえるのだろうか?


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クラリェヴォのバスターミナルは鉄道駅に隣接しています。
鉄道といっても、驚くほどボロいのだけど。


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バスターミナルといっても、まるで空き地のよう。
なんにもありません。

それでもいっちょまえに、バスのチケットを持ってないと中には入れてもらえない仕組みになっています。
その入り口の係員のおっさんがまたなかなかいいキャラクターをしている。

私のことを
「おい、ブルース・リー!」と呼ぶ。

英語はあまり通じないのだが、こちらの質問にはきっちり答えてくれる。
しかも、どうやらすべてのバスの時刻と発着ナンバーを暗記しているようだ。

ただし、間違っていたが・・・・
ウソ教えんじゃねえよ!


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2時間後、ノヴィ・パザルのバスターミナルに到着。
バスを降りる前から背筋がゾクゾクとした。
「この街、おもしろそう!」


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変な形をした屋根。
この街はかなりイスラム色が強そうだ。
スカーフを被った女性も大勢歩いている。
これまで見てきたセルビアのどの都市ともまったく違う雰囲気を醸し出している。


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(ノヴィ・パザルのバスターミナル)

観光に繰り出す前に、まずは帰りのバスの手配をしておくことにした。

が、受付の女性はまったく英語が通じない。
なんとかクラリェヴォ行きのチケットが欲しいということは理解してもらえたようだが、それ以外は全然意思の疎通ができない。

「3番乗り場よ!」
と教えてくれたのだが、私が聞きたいのは、帰りのバスの時間なのだ。
それがわからないと、安心して観光に専念できない。

「5時台か6時台にクラリェヴォ行きのバスはある?」
と何度も聞いたのだが、ついに理解してもらえなかった。

こんなところで時間を無駄にするわけにはいかない。
帰りの時刻を確認することは諦めて、バスターミナルを後にした。

もしも帰りのバスがなかったら、この街に泊まればいいや。


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ノヴィ・パザルでは2つの世界遺産を訪れることにした。
だが公共交通機関はなく、タクシーを使うしかないようだ。

都合のいいことに、バスターミナルの隣にはタクシー会社がある。
たくさんのタクシーと、大勢のドライバーがたむろしている。

私がソポツァニ修道院に行きたがっていることを知ると、運転手たちは興奮して騒ぎ出した。
きっと、私が外国人旅行者だからたっぷりふんだくれると思ったのだろう。

そうはいくか。
頭のにぶそうな(人のよさそうな)ドライバーと交渉して、ガイドブックに載っている値段よりもかなり安い金額に決まりかけた、その時、英語のできる若い運転手が割り込んできた。
他のドライバーはみな英語ができないので、私のペースで交渉が運んでいたのだが、この男の登場によって一気にひっくり返されてしまった。

まわりを見渡しても、他のタクシー会社はなさそうだし、目的地に行くにはタクシーを利用するしかない。
どうやら私に勝ち目はなさそうだ。


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タクシーは狭い路地を走り抜けていく。
抜け道なのだろうか?
それとも、ノヴィ・パザルの道路はみんなこんな感じなのかな。


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何の変哲もない路地を走っているだけなのに、妙に楽しい。
ヨーロッパの街並みなんてどこも同じようなものだが、それでも確実に各街ごとに様相が異なる。
ごちゃごちゃした街中だと、その違いはいっそうはっきりと際立つ。
整備された高速道なんかより、こういう裏道を通る方がはるかにおもしろい。


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市街地を抜け、幹線道路に入った。
大きなモスクも見える。
ほんとにイスラム色の強い街だな。
同じセルビアといっても、ここまで違うものなのか。


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お目当てのソポツァニ修道院が見えてきた。


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こ、これは・・・・

昨日見たストゥデニツァ修道院とほぼ同じじゃないか。
いや、きっと全然違う形の建物なんだろう。
でも、建築物にはあまり興味のない私にとって、この二つの修道院はまったく同じに見える。

しまった。
これならジチャ修道院に行っとくべきだった。


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それでも来てしまったものは仕方がない。
貧乏性の私は、写真を撮りながらぐるりと修道院のまわりをまわることにした。


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昨日のストゥデニツァ修道院と違い、このソポツァニ修道院はけっこう観光客が訪れていた。
おしゃれな売店もあり、絵葉書を買うこともできた。


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それにしても、スラヴの女性のがたいはすごい。


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大型の観光バスが乗り付け、大勢の観光客が降りてきた。
そしてなぜか、私を囲んで記念撮影。
はるばるセルビアまで来て、俺はいったいなにをやっているんだろう。

そしてこの観光客たちも、俺の写真を取るためにノヴィ・パザルを訪れたわけでもあるまい。
修道院と侍なんてなんの関係もないじゃないか。


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スターリ・ラス。
ここも世界遺産に登録されているらしい。
が、なにもない。
ただのがれきの山だ。

きっと考古学的には貴重な遺跡なんだろうが、普通の観光客が訪れても楽しくもなんともない。
「世界遺産」といってもピンキリなのだな。

その昔、
「俺は世界遺産をすべて訪れる!」
と意気込んでいた時期が私にもあった。

でも、そんな必要はなさそうだ。



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世界遺産を二つとも訪れて、一応今日のノルマはクリア。
さて、あとはなにをしよう。


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またイスラムっぽい建物。
私は世界遺産なんかよりも、こっちの方がよっぽど好きだな。


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ノヴィ・パザルの中心部に戻ってきた。
この近代的な建物もモスクの一種らしい。



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案内してくれたタクシーの運転手さん。


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ノヴィ・パザルの中心部、イサベグ・イサコヴィッチ広場に降り立つと、いきなり子供たちに取り囲まれました。
といっても、もちろん私が人気者だからではありません。
彼女たちはなんの遠慮もなくお金をせびってきます。


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それにしても汚い服だなあ。
女の子がこんなドロドロの服を着てるの初めて見たぞ。


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ここノヴィ・パザルでは親友もできました。
彼の名はアドミラル。
家は貧しく、学歴こそありませんが、彼はなかなか流ちょうな英語を話します。
性格もおっとりとしていて、日本のことにも興味津々。
さっそくフェイスブックのアドレスを交換しました。

が、彼の持っている携帯電話を見てびっくり。
ものすごい旧式なのです。
画面の解像度も粗く、私のフェイスブックに載っている写真もぼやけてなにがなんだかわからない状態。

そういうわけだったので、アドミラルは私のiPhoneをとてもうらやましそうに見ていました。


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そしてここノヴィ・パザルでは、ガールフレンドもできました(うそ)。

それにしても、ムスリムの女の子ってどうしてこうも魅力的なんでしょうね。
澄んだ瞳がなんともいえずエキゾチック。
そう感じるのは私だけ?

そして自然な感じでそっと体を寄せてくる絶妙な間合いの取り方。
まだ子どもなのに、男心をくすぐるツボを心得ています。


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ムスリムの女の子と一度付き合ってみたいなあ。
婚前交渉とかは難しそうだけど・・・


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人種によって、顔の造りはこんなにも違うのか。


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妖精?
耳の形おかしくない?
目の形もかっこよすぎない?


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アドミラルとはすっかり意気投合して、彼の仕事が終わるのを待って、二人でノヴィ・パザルの街を歩き回りました。


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アドミラルのいとこ


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この娘、まだ子どもなのに妙に色っぽい。
スラヴの女は恐ろしい。


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一人の美少女が私たちに近づいてきました。


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この娘もアドミラルのいとこらしい。
セルビアにはいろんなタイプの美少女がいるんですね。


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彼女たちと一緒に過ごすのは楽しかったのですが、まだ完全に心を許したわけではありません。
私の足の間に荷物を挟んでいるのがわかるでしょうか。
彼女たちに中身をすりとられるんじゃないかと気が気でなかったのです。


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この女の子、なぜか妙に私になついていました。
スマートフォンがよほど欲しかったらしく、私に「貸せ、貸せ」とせがんできます。

その「お願い」をする仕草があまりにもかわいかったので、最後にはi Phone を彼女に貸してしまいました。
ちょっと軽率だったかな、とも思いましたが、彼女がうれしそうに i phone を何度もポケットに入れたり出したりして喜んでいるのを見てると、「まあいいか」という気になりました。


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イサベグ・イサコヴィッチ広場にあるセビリ(水場)。
イスラムの街のシンボルともいえるこのセビリに、なぜか私は心惹かれます。


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派手にクラクションを鳴らしながら、結婚式の車列が通り過ぎていきます。


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街のいたるところにイスラムの面影が。
ほんとに私はこのノヴィ・パザルが気に入りました。


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お菓子屋さんもなんともいえないエキゾチックな雰囲気を醸し出しています。

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侍の衣装を着ていると、私のようなどうしようもない男でも、こんな美女に逆ナンされます(うそ)。
役得です。


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歩き疲れたのでベンチに腰掛けていると、街の人たちに取り囲まれてしまいました。
みるみるうちに人数が増えて、最初のうちはちょっと怖かったです。

ほとんどの人は英語ができなかったのですが、アドミラルに通訳してもらいながら会話しているうちに、ものすごく盛り上がりました。
ノヴィ・パザルの人々は、好奇心旺盛な人が多かったです。
そういえば、この街では東洋人の姿を見かけなかったような気がする。
きっと日本人が珍しかったのでしょうね。


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私はほんとにこのノヴィ・パザルが気に入りました。
セルビアにはあまりいい印象を持てないでいたのですが、最後の最後にこの場所を訪れることができて本当にラッキーでした。

いつかきっとまた、この街に戻ってきたい。


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クラリェヴォに着いたのは20:00過ぎ。
それから昨日と同じレストラン「クラリュ」に直行しました。

昨日はラキヤを頼んだのですが、今日はセルビアのビールを注文しました。


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今日の夕食は、ラジュニチとコバシッツァ。
どちらもセルビアを代表する料理です。

セルビアは今夜が最後。
明日はマケドニアです。



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今日も朝から雨。
昨日のストゥデニッツァは期待はずれだったし、きっとスポツァニ修道院もどうせ大したことはないんだろう。
雨の中をわざわざバスに乗って行く価値はないにちがいない。
幸いここクラリェヴォではカウチサーフィンではなくホテルを利用している。
一日中部屋にこもっていても問題ない。
今日は休養日。
たまにはそういう日も必要だろう。

そう思っていた。

でも、できない。
せっかく外国にやってきているのに、一日中部屋に閉じこもっているなんて無理だ。


バスターミナルの受付は相変わらず不親切。
情報も不確実だ。
ある人は「9:25 に21番乗り場」だと言い、
ある人は「9:35 に25番乗り場」だと言う。


それでもノヴィ・パザルにやってきた。
片道2時間かけてでも来る価値はあった。
「この街はおもしろい!」
着いた瞬間にわかる。
相性というのは確実に存在する。
ノヴィ・パザルは私のツボにドンピシャ当てはまった。
バスを降りる前から身体中がゾクゾクする。
建物は他のセルビアの都市とは明らかに異なるし、スカーフを被ったイスラムの女性が普通に歩いている。
しまった。ここに泊まればよかった。
ノヴィ・パザルではなくクラリェヴォに宿をとったことを後悔した。


ソポツァニ修道院は予想通り大したことなかったが、たくさんの人と出会うことができた。
そのうちの一人が教えてくれた。
「サムライ」とはセルビア語で「唯一、神のもとに逝ける者」という意味だそうだ。

私はここノヴィ・パザルが大いに気に入った。
特に見所があるわけでもなくブラブラと歩いていると、小さな女の子が3人近づいてきた。
お金をくれ、と言う。
着ている服はみすぼらしい。
「ごめんよ、俺は人にあげるほどの余裕はないんだ」
そう言って断っても、なおもしつこく食い下がってくる。
無視して歩いても、どこまでもついてくる。
彼女たちは英語を話さないが、そのねだり方がまたかわいらしい。
両手をあわせて首をちょこんとかしげ、
「Please...」と哀願してくる。
もしも私に余分なお金があれば、いくらでもあげたくなるほどかわいい。

街の中心部にあるイサベグ・イサコヴィッチ広場に腰をおろすと、彼女たちも私の隣に座った。
彼女たちに奪われないように気をつけながら荷物を降ろす。
カメラに収めた写真を見ていると、彼女たちは「私たちの写真を撮れ」と言ってくる。
カメラを向けると大騒ぎしていた。
ポーズをとったり、逃げまわったり。
撮って欲しいのか嫌なのか、どっちなんだ?

そうこうしているうちに、彼女たちの知り合いがうじゃうじゃと集まってくる。
そのうちの一人の青年はかなり英語を話すので助かった。
彼はとても感じが良く、いろいろと話をし、みんなの写真を撮るのも手伝ってもらった。
名前はアドミラルというらしい。


そこへ別の男が近づいてきた。
場の空気が一瞬にして凍る。
「俺は警官だ。こいつらとはかかわらない方がいい。悪さをするからな。Be Careful 」
そう言い残して去っていった。

「警官だなんて大っ嫌い!」
男が去った後、一斉にみんながブーブーと文句を言い始める。
「俺たちは何も悪いことなんてしてないのに、なにかあるとすぐにあいつらは俺たちのせいにするんだ」
アドミラルはそう言って不満をあらわにする。

私の想像だが、どうやらこの子たちは貧民街(スラム)の住人のようだ。
みすぼらしい家に住み、人の嫌がる仕事にしかつけない。
子供達は日ごと観光客に金をせびりに広場にやってくる。
彼らと一緒に街を歩いていると、他の大人たちが彼らを追い払おうとする。
外国人観光客である私と一緒にいるところを目撃した警官は、
「コラッ、お前たち、その人に何をするつもりだ? さっさと失せろ」と怒鳴りつける。
明らかに彼らは差別されていた。

おそらく身を守るためには、この子たちのような人間とは関わらないのが賢明なのだろう。
ガイドブックにも「親しげに近づいてくる人間を信用してはならない」と書いてある。

でも、私はできるだけ地元の人たちに接してみたい。
ただ観光名所を巡るだけなんてつまらなさすぎる。
私だってそれなりに人生経験を積んできたから、人を見る目は持っているつもりだ。
私の見る限り、彼らはけっして悪い人間ではない。
もしも騙されたとしても、それは私に人を見る目がなかったというだけのこと。
その経験を次に活かせばいい。
私はこれからも人と触れ合う旅を続けていく。
多くの人々と触れ合って、人を見る目を養うことが私には必要なのだ。


女の子たちは私のカメラや携帯に興味を示した。
しきりに「使わせろ」と例の「プリーズ」ポーズをする。
アドミラルが「よさないか」と叱る。

「この子たちは俺のカメラを盗るつもりなのか?」とアドミラルに聞くと、
「いやいや、絶対そんなことはしないよ。ただ、あんたに迷惑かなと思っただけだ」と言う。

ならいい。
彼女たちに携帯やカメラを渡した。

ある女の子はカメラで写真を撮りまくっていた。
別の子は携帯をいじりまわし、ポケットに入れたり出したりしては、「へへへ」とうれしそうに笑っていた。

彼女たちはみょうに私になつき、体をすり寄せたり抱きついてきたりする。
10年後、いや5年後でもいい、彼女たちの胸が大きくなってからも同じことをしてくれたらうれしいんだけどな。

「もしや、俺の財布やパスポートを狙っているのか?」
と不安にもなったが、すでにカメラも携帯も彼女たちの手にある。
今さら疑っても仕方がないだろう。



ノヴィ・パザルの人たちは人懐っこい。
いろんな人が私に近づいてきた。
私の座っているベンチには、あっという間に人だかりができた。
どうやら「刀を抜いてなにかやって見せろ」と期待しているらしい。

悪いがそれは無理だ。
だってこれは本物の日本刀ではないのだから。

だが、そんなことを言ったら彼らを失望させてしまう。
私は神妙な顔をして、
「それはできない。刀は武士の魂だ。そんなに簡単に抜くものではない」と言うと、
みんな「おおっ」と感心していた。


また別の男が近づいてきた。
彼は片言の日本語を話す。
聞けば、合気道の初段を持っているらしい。
合気道の有段者は袴を履く。
だから彼は私も合気道の達人だと思ったらしい。

「ちょっと私の家で話をしないか?」と誘ってくる。
好意はありがたいが、もうすぐバスの時間だ。

彼は何人かの日本人の名前をあげて、彼らを知っているか?と聞いてくる。合気道連盟の重鎮らしい。
知っているはずがない。
私はこんな格好をしているが、合気道なんてやったことないのだから。

「セルビアには演武かなにかで来ているのか?」
彼は私を合気道の達人だと思い込んでいる。
申し訳ないが、この侍の格好は伊達なんだ。俺は本物の侍でもない。

コソボ国境に近いこんな辺鄙な街に合気道の有段者がいるとは・・・
冷や汗かいたぞ。


アドミラルはバスターミナルまでついてきてくれた。
道すがら、何人もの人に写真撮影を頼まれる。
「ごめんよ、本物の侍じゃなくて」
心の中で彼らに謝る。
日本に帰ったら、合気道や居合道の練習でもしようか。

ノヴィ・パザルにはまだまだ未練があったが、もう戻らなくてはならない。
クラリェヴォに帰り、昨日と同じレストランで食事をした。
ウェイターは「今夜も来てくれたんだ。ありがとう」と言って料金をまけてくれた。

セルビア。
けっこういい所だったな。
また来よう。





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ベオグラードからクラリェヴォへ。ストゥデニツァ修道院(セルビア)

ベオグラードからクラリェヴォへ(セルビア)


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いよいよベオグラードとも今日でお別れです。
ホストのアレクサンドラの家を朝の6時に出発。歩いて駅へと向かいます。

途中で例の爆撃跡を通ります。
もうすでに何度も見たはずなのに、どうしても足が止まってしまいます。
近づいて、中の様子も見てみました。

建物の中はめちゃくちゃに破壊されています。
死傷者は出たのでしょうか。
もう20年も前の出来事のはずなのに、ここにいるとなぜだか血が騒ぎます。




ベオグラード駅で朝食にする予定だったのですが、爆撃跡を見ていたら無性におなかがすきました。
脳が「生命の危機」と錯覚でもしたのでしょうか。
とにかく何か食べたくて仕方がありません。

駅に着くまで待てそうになかったので、近くのキオスクでスナックとジュースを買って食べます。
日本と違ってコンビニなんてありませんし、キオスクにはまともな食べ物も置いてません。
それでも、何か食べずにはいられませんでした。

不謹慎な話ですが、空爆によって無残に破壊された建物を眺めながらの食事は、ものすごくはかどります。
とにかく「飯がうまい!」のです。
なんというかその、「俺は今、たしかに生きてる!」という実感がわいてくるのです。


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朝のベオグラード駅は混雑していて、人々の熱気を感じます。
食べ物を売っている店もたくさんあり、バスの中で食べるものをここで買うことにしました。
さすがは駅前に店を構えているだけあって、バスや電車のなかでも食べやすいものが多かったです。



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昨日のうちに買っておいたバスのチケット。
なんて書いてあるのかまったくわかりません。
なんだか不安になります。


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車内で食べる食料も買い込んだことだし、いざ、バスに乗るぞ!
と意気込んでいたところ、いきなり足止めを食らいました。

バスターミナルにはゲートがあって、誰もが入れるわけではないのです。
私はチケットを買っているので、当然入れるはずなのですが、どうやってゲートを通り抜ければいいのかわかりません。

係員らしき人に聞くと、どうやらこのゲートを開けるには、専用のコインが必要なのだそうです。
「チケットを買った時にもらっただろ? あれをここに入れるとゲートが開くんだよ」

コインなんてもらってないよ・・・


昨日チケットを買った窓口に行って事情を説明したのですが、なかなか話が通じません。
「ほら、ここにチケットがあるだろ? 俺はバスに乗りたいんだ。 早くしないとバスが出発しちまうじゃないかよ」

最初はブツブツとなにかをつぶやいてしぶっていた窓口の係員ですが、最終的にはコインをくれました。
これでなんとかバスターミナルに入ることができます。
こういうことがあるから、時間には余裕をもって行動しないとダメですね。

ちなみに、後で気づいたのですが、財布の中に例のコインは入ってました。
どうやら、昨日チケットを買った時に、おつりと一緒に渡されていたようです。
セルビアの通貨にまだ慣れていなかった私は、そのコインと普通の通貨との区別がつかなかったのです。

そういえば窓口の係員もなにか言っていたような気がする。
でも、英語じゃないからわからないんですよね。

私は貧乏なくせに、おつりをもらってもその場で確かめません。
なので、どっちにしろコインには気づかなかったでしょう。
きっと今まで、おつりをごまかされたこともあったんだろうな。


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ベオグラードのバスターミナル。
さすが首都のバスターミナルだけあって、発着場がたくさんあります。
自分の乗るバスを探すのもひと苦労。


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見つけました。
これが私の乗るバスです。
目的地のクラリェヴォまでは約3時間。
クラリェヴォは終着駅ではないので、降りるタイミングを逃さないようにせねば。
日本の交通機関のように、「次は○○です。」というようなアナウンスはないので、自分で降りる場所を判断しなければなりません。
うっかり居眠りをしようものなら、とんでもないところで降りるはめになってしまいます。

まあ、それも旅の醍醐味のひとつかもね。


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車中で食べる食料もしっかり買い込んであるので、道中、退屈はしなくてすみそうです。

私は昔から、移動中にものを食べるのが好きでした。
日本でも、ドライブに出かける時はずっとお菓子をポリポリ食べています。
窓の外を流れていく景色を見ながら食べると、なんだかウキウキしてくるんですよね。

しかも、今回のドライブはセルビア。
クラリェヴォなんてほんの少し前まで名前も知らなかった街です。
そして今後の人生でもおそらく再び訪れることはないでしょう。

目に映るすべての景色は生まれて初めて見るものですし、今後、二度と見ることもない景色かもしれません。
そんな貴重な風景を眺めながら食べる食事がおいしくないはずがありません。
どんな高級レストランで食べるよりも、オンボロバスの窓際に座って食べる方がずっとおいしく感じられます。

クラリェヴォまでの三時間。至福の時でした。
たった数百円でこんなに幸せな気分に浸れる俺は、なんて安上がりな男なんだろう。



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ドラガチェヴォ。
クラリェヴォでの私のホテル。
この街でもカウチサーフィンのホストを探してはみたのですが、結局見つかりませんでした。
もともとカウチサーフィンの数自体少ないうえに、リクエストを送ってもことごとく無視されたのです。
まあそういう日もあるさ。

私のマイ・ルールは、
「訪れた国すべてでカウチサーフィンを利用する」
というもの。
すでにベオグラードでカウチサーフィンを利用したから、もうノルマはクリアしたのさ。

「地球の歩き方」にも載っているこのホテルですが、受付ではまったく英語が通じません。
それなのにパスポートを要求されたのでちょっと不安だったのですが、渡さないわけにはいきません。

そしてパスポートは帰ってきませんでした。
どうやら、ここに泊まっている間は、ホテルにパスポートを預けなければならないらしい。
なんだか不安ですが、そういうルールなんだからおとなしく従うしか仕方がないのでしょう。

あまりパッとしないこのホテルですが、WiFiは驚くほど速かったです。

部屋に荷物を置いて一段落したら、すぐにバス停へと向かいました。
今日はこれからストゥデニツァ修道院へと向かいます。
赤い色が印象的なジチャ修道院にも行きたかったのですが、時間がどれくらいかかるか読めません。
ここはやはり、ストゥデニツァ修道院を優先させることにしました。
「世界遺産」という響きには抗えないのです。

クラリェヴォのバスターミナルの職員は、あきれるほど能率が悪い。そして態度も悪い。
私が窓口で待っているというのに、係員はやってきません。
彼女は別の仕事で忙しいというわけではなく、椅子に座ってダラダラと過ごしているのです。
私の方をチラッと見たので、私が待っていることには気づいているはずなのですが、窓口にやってくる気配はまったくありません。

なにをもたもたしてるんだよ。できれば俺は今日のうちに2か所回りたいんだよ。こんなとこで油を売っているヒマなんてないんだ。
いつまでたってもらちがあかないので、大声で彼女を呼びました。
その女性はめんどくさそうに重い腰をあげて窓口へとやってきます。

私がガイドブックを見せながら、そこに行くバスのチケットが欲しいと言っているにもかかわらず、彼女はまったく理解しようともしませんでした。
彼女は英語がわからないらしく、あきらかに外国人である私と関わり合いになるのを嫌がっています。
「インフォメーション!」
とひとこと言っただけで、さっさと元の席へと戻っていきました。
そのインフォメーション・デスクはどこにあるんだよ。

このバスターミナルを拠点として、セルビア南部をあちこち訪れる予定だったので、ここでいろいろと情報収集をしたかったのですが、とてもそれどころではありません。
バスのチケットを買うのもひと苦労です。

ベオグラードではかなり英語が通じました。
同じセルビアなんだからここでも英語が通じるだろうと思っていたのですが、通じません。
驚くほど通じません。
通じないなりに意思疎通の努力をしてくれればいいのですが、みんなめんどくさそうに私を邪険に扱うだけです。



ウクライナも英語が通じず、不便な国だなあと思っていたのですが、セルビアはその比ではありません。
そもそも観光客を受け入れようという意識がまったく見えないのです。

でも、これが自然な姿だと思う。
みんなが英語を話す世界なんて気持ち悪い。
みんなが親切な世界はもっと気持ち悪い。

ずいぶん小さくなったとはいえ、まだまだ地球はでかい。
何十億という人間がいるのだから、いろんな言語があって当然です。
日本とセルビアなんてほとんど接点が無かったんだから、言葉が通じなくて当然です。
異なる文化、異なる景色、異なる人々。
それが見たくて私は旅をしている。
まったく英語が通じない相手に対して、いかにコミュニケーションをはかるか。
そこが旅の醍醐味でもあります。
それがめんどくさいと言うのなら、パックツアーを利用すればいいだけの話です。


ウシツェ行きのバスが出るまで1時間30分もあったので、なんとか時間をつぶさなければなりません。
クラリェヴォの街には特に興味はなかったので、バスターミナルの中でなにか食べることにしました。


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見るからにショボそうな店。
でも、こういうひなびた場所の方が、本物の伝統料理を出すこともあるんだよね。
看板にはセルビアの定番料理「プリェスカヴィツァ」の文字も見えます。

売店のおばちゃんはもちろん英語ができませんが、身振り手振りで私に話しかけてきます。
どうやら、「トッピングは何にする?」と聞いているようです。
そう言われても、何を選べばいいのかわからなかったので、適当に指さして、ケチャップは大目にしてもらいました。
これで私オリジナルのプリェスカヴィツァのできあがりです。
おいしそー!


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これがそのプリェスカヴィツァ。
かなり期待していたのですが、見事に裏切られました。

まずい!
こんなマズいハンバーガー、今まで食べたことない。
私は食べ物にはそれほどうるさくない人間なのですが、その私をうならせるとは、ここのプリェスカヴィツァ、ただものではない。

クラリェヴォのバスターミナルは、まったくいいとこなしだな。
がっかりだよ。



バスが到着すると、みんな我先にと入り口に殺到する。
勝手がわからず、重い荷物をかかえている私はどうしても後手後手に回ってしまう。

「ストゥデニッツァに行きたいんだけど、このバスであってる?」
と聞こうにも、みんな自分のことで精一杯でそれどころではない。


外は雨。
バスが走り出してしばらくすると、屋根から雨水が滴り落ちてきた。
今時こんなオンボロバスを走らせるとは。

バスは満席で、通路にも大勢の人があふれている。
雨漏りがするからといって、私が身をかわすスペースはない。
雨水に濡れるがままになっている私を見て、他の乗客は笑っていた。

OK。
いいだろう。
これがセルビア・クオリティだ。
これがセルビア人のメンタリティだ。


ウシツェでバスを降り、別のバスに乗り換えます。
といっても、案内板もないので、どのバスに乗り換えればいいのかわかりません。
いや、もしかしたらどこかに書いてあるのかもしれませんが、この国の文字を私は読むことができないのです。

そこでその場にいる人に聞くことになるのですが、これがまた不親切。
外国人である私とは、あきらかに関わり合いになりたくなさそうです。

そしてまた、セルビアの地名はややこしい。
ウシツェ、ウスツェ、ウジツェ。
私にはどれも同じに聞こえますが、まったく別の場所なのです。

こんな時に「地球の歩き方」は便利ですね。
写真を見せれば一発で分かってもらえました。
最初からこうすればよかった。


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この国の人にはがっかりさせられっぱなしでしたが、ウシツェからストゥデニツァ修道院へ向かう道はなかなかの景勝路。
雨が降りそうな空模様でしたが、それでも息を飲むほどきれいな景色がひろがっています。


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バスを降りて、ストゥデニツァ修道院へと向かいます。


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きっとあれが入り口なのでしょう。


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門をくぐるとそこには・・・


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古代の遺跡の残骸が散らばっていました。


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敷地はかなり広く、よく手入れされた庭がひろがっています。


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そしていよいよ、お目当てのストゥデニツァ修道院が見えてきました。
感動の一瞬です!


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世界遺産だというのに、観光客の姿は見えません。
いや、修道士の姿さえありません。
この広い敷地内には、私しかいないのです。
これではまるで、ストゥデニツァ修道院を貸し切っているみたいです。

世界遺産を独り占め!

といえば聞こえはいいですが、なんかさびしい。


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そんな状態でしたから、売店も当然閉まっています。
絵葉書買いたかったのに・・・


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建物内を歩いてみましたが、人の気配がまるで感じられません。
恐ろしいほどの静寂。
さすがは修道院。瞑想がはかどりそうです。


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世界遺産・ストゥデニツァ修道院。
一応セルビア旅行のハイライトのはずなのですが、おどろくほどつまらん。(※感じ方には個人差があります!)
もしもこれを見るためだけにこの国を訪れたとしたら、そのがっかり感ははんぱないだろう。
きっと膝から崩れ落ちてしまうにちがいない。

そういうわけだったので、一応侍の衣装に着替えてはみたのですが、いまいち気分は盛り上がりませんでしたとさ。
まあいろんな国を旅していれば、たまにはそういう日もあるさ。


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ストゥデニツァ修道院の近くには雑貨店があり、食料補給ができます。


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どこかのブログにバスの時間が書いてあったので、その30分前からバスを待っていたのだが、いつまでたってもバスは来ない。
売店の人に聞いてみると、次のバスが来るのは18時だという。
事前に調べておいた情報と違う。

うかつだった。
ネット上の情報を鵜呑みにしてはいけない。
いつでも変更はあり得るのだから、常に自分で裏をとらねば。


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ストゥデニツァ修道院自体はつまらなかったが、ここに来るまでの道はなかなかの景色だった。
歩くのも悪くはない。


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山あいに点在する村々を眺めながら歩くのは実に気持ちがよかった。
途中までは。

だが、歩けど歩けど、いっこうにバスターミナルのある村、ウシツェは見えてこない。
地図上ではたいしたことない距離でも、アップダウンのある曲がりくねった山道は予想以上に時間を食う。

まずいな。
このペースだとクラリェヴォ行きのバスを逃してしまう。
さっきまで晴天だったのに、ポツポツと雨粒が落ちてきた。

よし、ここはヒッチハイク開始だ。

ルーマニアと違い、このセルビアでどれくらいヒッチハイクが認知されているのかはわからない。
だが、この道は一本道で、ここを通る車は全部ウシツェを通過する。
距離だってそんなにない。
きっと乗せてくれるに違いない。

楽観的な気持ちで始めたヒッチハイクだったが、なかなか停まってくれない。
スピードを落とす気配すらなく、ビュンビュンと私のそばを走り去って行く。
せまい道だから、ヘタに親指を立てていると、腕ごと跳ね飛ばされそうになる。
だから車が横を通過する時には引っ込めなくてはならない。
なんとも腰の引けたヒッチハイクだ。

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ヒッチハイク成功!


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セルビア戦士の墓?


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世界中どこにでも一人くらいは親切な人がいる。
とりあえず今日のところは一人でじゅうぶんだ。

私を拾ってくれた彼はストゥデニツァ修道院の近くの村に住んでいて、ちょうどウシツェに行くところだった。
英語こそできなかったが、彼の性格が良いことはよくわかった。
私が何も言わなくてもウシツェのバス停で降ろしてくれ、その場にいた人たちに

「この日本人をクラリェヴォ行きのバスに載せてやってくれ」

と言い残して去って行った。
ここにはバス停の標識なんてなかったから、彼の助力がなければ苦労したことだろう。

その土地の印象は出会った人にかなり左右される。
これまでセルビアの人にはあまり良い印象を持てなかったが、最後にいい人と出会えてよかった。


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ウシツェの街。
なにもない小さな街だが、なんとも言えない風情がある。
こういう場所に泊まらないと、ほんとのセルビアはわからないんじゃないかという気がしてくる。

だが、私にはウシツェに泊まるほどの余裕がない。
もっとゆっくり旅をしたい。
もっともっと時間とお金が欲しい。


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この乗り合いバスが私をクラリェヴォまで連れていってくれるらしい。
車体には「イタリア」の文字が見えるが、まさかイタリアから走ってきたわけではないだろう。


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気のせいだろうか。
対向車がやたらとパッシングしてくる。

と思っていたら、クラリェヴォ行きのバスは警察に止められた。
検問だ。

バスの中にいた他の乗客たちはみなIDカードを取り出している。
私もパスポートを用意しようとして青くなった。

ない。

パスポートはホテルに預けてある。
これはまずいことになったぞ。

制服警官とは別に、人相の悪い男が二人、バスに乗り込んできた。
鍛え上げられた筋肉、全身から漂う威圧感。
どう見てもこいつらカタギの人間とは違う。
パスポートを所持していないことで、なにか因縁をつけられるんじゃないだろうか。
しかも私の荷物の中には、侍の衣装や日本刀(のようなもの)が入っているのだ。

だが、私服警官たちは私にはまったく興味を示さなかった。
他の乗客たちのIDカードは入念にチェックし、手荷物検査もしていたのに、私のことは完全にスルー。
いい意味で人種差別が働いてくれたようだ。

検査はかなり長く続き、その間ずっと緊張を強いられた。
警官たちはトランク内の荷物を全部降ろして、ひとつひとつ中身を調べている。
いったいなにが起こっているのかわからないので不安でしかたないのだが、誰も英語を話さない。

ある人はタバコを吸う仕草をした。
別の人はアルコールを飲む仕草をした。
「ドラッグ・コントロール」と言う人もいた。
ようするに密輸の取り締まりをしているらしい。
ここはコソボやマケドニアの国境と近いからだろうか。

ようやく検問が終わり、バスが走り出すと途端にドッと緊張が解けた。
それまで押し黙っていた人々が堰を切ったようにしゃべりだす。
大声をあげて笑う者もいる。

陽気なセルビア人たち。
私独りがその饗宴から取り残されていた。
ここはセルビア。
俺は異邦人。
まわりが騒々しければ騒々しいほど、自分が孤独なのだと思い知らされる。


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19時頃、クラリェヴォに到着。
その足でレストラン「クラリュ」へと向かう。

地球の歩き方に載っているレストランは、クラリェヴォではこの店だけ。
きっとほとんどの日本人旅行者はこの店で食事をしているんだろうな。


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英語のメニューはなかったが、なんとなくわかる。
ガイドブックにはセルビアの代表的な料理の名前が列挙してあるから、それをもとに見当をつけることができるからだ。

私が選んだのは「メシャノ・メソ」というミックスグリル。
一度にいろんな食材を味わうことができるらしい。


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セルビアの代表的な酒、「ラキヤ」も頼んだ。
普段お酒を飲まない私には、この酒はきつい。
疲れた体にしみわたる。


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これがその「メシャノ・メソ」
ボリュームがすごい。
すでに前菜としてサラダとパンもあったので、とても全部は食べ切れない。


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一人で黙々と食う私。
一人旅は気ままで楽だが、やはり食事時は寂しさを感じる。
カウチサーフィンを利用していれば誰かと一緒に食事をできるのだが・・・



食事を終えて店を出ると、大音量の音楽が聞こえてきた。
どこかでお祭りでもやっているのだろうか?
地図を見るとその方角には「セルビアの戦士広場」というのがあるらしい。
それほど遠くないので、とりあえず行ってみることにしよう。


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広場ではコンサートをやっていた。
いったいなんの催しだろう?


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夜店もでている。
なにかのお祭りらしい。

私は今回の旅では、行く先々で催し物に出くわす。
天候には恵まれなかったが、そういう意味ではラッキーだったのかもしれない。


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音楽にあわせて、人々が熱唱している。
まるで、ベルリンの壁崩壊を祝っているかのようだ。

歌われている曲は、セルビアの他の都市では聞かなかったから、ここクラリェヴォのローカルバンドのオリジナルだと思う。
セルビア語の歌詞だから、なんて言っているのかはまったくわからない。
ただ、サビの部分で「・・・ memory! memory! ・・・」と言っていることだけはわかった。

私は普段は音楽をそれほど聞かないのだが、この曲だけは妙に印象に残った。
セルビアの、しかも地方都市クラリェヴォのローカルバンドのオリジナル曲。
おそらく、二度とこの曲を耳にすることはあるまい。



祭りの広場からホテルへの帰り道、ふと、自分がその曲を口ずさんでいることに気づいた。
あのなんとも言えないもの悲しいメロディーが、頭の中にこびりついて離れないのだ。

これといった見どころもなく、印象の薄い国セルビア。
私にとってこの国でもっとも記憶に残ったのはこの曲となった。



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広場の近くでは、三人組の若者と出会った。
彼らは最初、おそるおそる
「チャイニーズ?」
と聞いてきた。

「いや、日本人だ」と答えると、彼らの表情がパッと明るくなった。

「私、made in Japan が大好きよ!」

そう言う彼女たちは、(自称)アーティストだ。
といっても、彼らの主な作品はストリート・アート(壁の落書き?)。

「メイドインジャパンの塗料が一番ノリがいいのよ!」と言う。

ヨーロッパの街角でよく見かけるストリート・アート。
そこにも日本製品が使われていると知り、なんだか複雑な気分になった。
ハイテク製品やアニメだけでなく、その他の品々でも世界中の市場を席巻する日本製品。
きっと我々は自分の生まれた国を誇りに思っていいのだろう。


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彼女が描いたというイラストを何点かもらった。

「もちろんこれも日本製のペンで描いたのよっ!」

そう言ってうれしそうに彼女がカバンから取り出したペンには、日本の有名文具メーカーの名前が書かれてあった。




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予定

次の更新は、8月30日か31日となる予定です。

ベオグラード観光(セルビア)

ベオグラード観光(セルビア)


翌日、アレクサンドラの家に荷物を置いて、ベオグラード市内を観光することにした。
どうやら今日も雨模様らしい。

「けっこう距離があるわよ。 バスで行ったら?」
とアレクサンドラは言ってくれるが、やはり歩いて行くことにした。

はっきり言って、ベオグラードにはあまり期待していない。
「これぞセルビア!」
という目玉がこの街にはない。

一応セルビアの首都だから、敬意を表して2泊することにしたのだが、特に見たいものがあるわけでもない。
しいていえば、街全体を見てみたい。
ベオグラードの街はそれほど大きくはない。
端から端まで歩いても、きっと時間を持て余すことになるだろう。
だから今日も一日、あてもなく傘をさして歩くことにした。



(聖サヴァ教会)

アレクサンドラの家は聖サヴァ教会の近くにある。
もしも道に迷ったら、これがいい目印になるだろう。

最初にこの様式の教会を見たのはブルガリアだっただろうか。
とても感動したような記憶がある。

だが、ヨーロッパの国をいくつかまわった後は、同じような教会を見ても、「またか」といった気持ちにしかなれない。
いや、これがブルガリアだったなら、きっと別の感慨がわいてきたことだろう。

だがここはベオグラード。
何を見ても憂鬱な気分にしかならない。
人と街との間には、相性というものがある。

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それでも、街を歩いているうちに、だんだんと気分が高揚してきた。
私は建築物には疎いのだが、それでも、それぞれの国ごとに微妙に建物の雰囲気が異なっていることには気づく。

旅を始める前は、「ヨーロッパなんてどこも同じだろ」と思っていたのに、今では新しい街を歩くたびにかすかな興奮を覚える。
これがセルビアか。
俺は今、確かにベオグラードにいる。

各都市の違いなんかわからないくせに、ひとり気分を高ぶらせていた。
憂鬱な雨だけど、見るべきものなんてなにもないつまらない街だけど、それでもやっぱり旅っていいな。


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そうしているうちに、それらしき建物が見えてきた。
今日のハイライトのひとつ、NAOT軍による空爆跡だ。

セルビアを紹介するガイドブックなどには必ず載っている、あの建物だ。

「おっ。 おおおおおっっっ!!!!!」


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写真で見ると小さな建物だが、やはり実物は迫力が違う。
ぽっかり空いた空洞に、目が吸い寄せられる。

これはぜひとも写真を撮らねば。
小雨がぱらついていたが、侍の衣装に着替えることにした。
雨を避けるために屋根のある場所に飛び込んだら、そこには迷彩服を着た兵士が2名いた。
なぜこんなところに軍人がいるんだ?
爆撃跡を警備でもしているのか?

彼らは私のことを見ているようだったが、目を合わさないようにした。
そそくさと袴のひもを締める。
日本刀のカモフラージュを取り外した時、その場の空気が一瞬凍ったような気がした。

兵士たちは腰の拳銃に手を伸ばしただろうか?
それとも、半笑いで侍姿の私のことを見ているのだろうか?

彼らの表情が気になってしかたなかったが、カメラを片手に屋根のある場所から飛び出した。
雨足が強まってきたから、急がねばならない。
三脚をセットして、自分と爆撃跡の写真を撮る。


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爆撃された廃墟をバックに写真を撮るも、なんだか落ち着かない。
兵士たちの視線が気になっていたせいもあるが、他にも理由はあった。

ここはベオグラード。セルビアの首都のど真ん中だ。
当然道行く人の姿も多く、私のそばを大勢の人が通り過ぎていく。
私にはまるっきり目もくれずに。

今まで侍の衣装を着て多くの国を旅してきたが、いずれの国でもそれなりの反応があった。
自分で言うのもなんだが、けっこう人目を引いていたと思う。

それなのに、なんだこの反応は。
まるっきりの無視。

人々は私の存在には気づいているようだ。
時々、ちらちらと私の方を盗み見しているのがわかる。

似たような反応は他の国でもあった。
それでも、今回はそれらとはまったく違う。
ベオグラードの人たちは、まったくの無表情なのだ。

日本で侍の衣装を着て歩いたら、きっとこんな反応が返ってくるのだろうな。
そう思わせるほど彼らの反応は冷たかった。

そんなわけだったから、ここでの写真撮影は早々に切り上げ、次の目的地に向かう。


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たぶん郵便局。 まあ立派だこと。


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(聖マルコ教会)

とても荘厳な教会で、ぜひとも写真に収めたかったのだが、建物が大きすぎて難しい。
いろいろと歩き回ってみたのだが、大きな木が邪魔して、なかなかいい写真が撮れない。
雨足は時おり強まるし、地面はぬかるんでる。

写真はもうあきらめよう。
アレクサンドラの旦那さんに教えてもらった、もうひとつの爆撃跡はこの近くにあるはずだ。


DSC06302.jpg

ユーゴ紛争の時は、テレビ局も空爆の対象となったらしい。
攻撃能力を持たないテレビ局を一方的に攻撃するのはちょっと卑怯な気もするが、戦略上しかたなかったのだろうか。

現在のテレビ局は大きなアンテナが目立つ小奇麗な建物となっている。
なのに、その間にはさまれるようにして爆撃跡が残っていた。
あれからもう20年も経つというのに、なぜそのまま放置してあるのだろう。
他の建物はきれいに復興しているのだから、経済的な問題とは考えにくい。
もしかしたら、アメリカやNATOへの抗議の意思表示なのだろうか。
それとも、広島の原爆ドームのような世界遺産化を狙っているとか。


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(国会議事堂)

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今回の旅行中、セルビアの人と話をする機会が何度かあった。
話がアメリカのことになると、みな一様に憎悪をむき出しにする。
歯もむき出しにして、感情を隠そうともしなかった。
20年以上過ぎても、自分の国を攻撃された記憶というのは薄れないようだ。

それなのに、国会議事堂横の電光掲示板には、マクドナルドのコマーシャルが数分おきに流れている。
セルビア一の大通りに掲げられるコマーシャル。
にっくき敵国の象徴でもある巨大ハンバーガーチェーンのCMを、この国の人たちはどんな気持ちで見つめるのだろう。

ロシアなど東側の国でも、マクドナルドは若者に大人気だという。
きっとセルビアの若者だって、マクドナルドは大好きなんだろう。
空爆は彼らが生まれる前に行われた。

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(クネズ・ミハイロ通り)

爆撃跡を見終わった時点で、本日のミッションは終了。
ガイドブックをパラパラとめくってみたのだが、私の興味をひきそうな場所はベオグラードにはなさそうだ。
雨も降っていることだし、どうも気分が乗らない。

かといって、せっかくセルビアくんだりまでやってきたというのに、一日中部屋に閉じこもっているのももったいない。
仕方なく、ガイドブックの一番最初に載っているカレメグダン公園に行くことにした。
そこまで行けば、ベオグラードの中心部をはしからはしまで歩いたことになる。

ここクネズ・ミハイロ通りはベオグラードのメインストリート。
「通り沿いにはカフェやファストフードの店が並び、週末には人通りが絶えない」らしい。

しかし、さすがにこの雨の中ではj人影もまばら。
あーあ、今度は晴れた日に訪れたいな。

しかし、ベオグラードをまた来ることなんてあるのだろうか。
きっともう来ないだろうな。


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遊歩道が終わり、公園が見えてくる。
このカレメグダン公園にはあまり期待していないが、
「もしかしたら、意外とおもしろいかも」という淡い期待が頭をよぎる。


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公園の敷地内には、みやげ物を売る露店が並んでいる。
私はみやげ物は買わないことにしているのだが、行く先々から絵葉書は送るようにしている。
「なにかいい絵葉書は売ってないかな」と物色していると、母娘とおぼしき女性2人に声をかけられた。
ベオグラードの人はけっして外国人に対して友好的とは言えないが、みやげ物店の店員は例外だ。
金を落としていってくれそうなカモには、とびっきりの笑顔であいさつしてくれる。

彼女たちは流ちょうな英語で、言葉巧みに私を誘惑する。
聞けば、この紙幣はギネスブックにも載った特別なお札なのだそうだ。

「0(ゼロ)が11個も並んでいるお札なんて、世界中どこを探しても他にはないわよ」

正常な思考力を持っている状態なら、「それがどうした」と一蹴していたことだろう。
だが、旅に出ると正常な判断力を維持するのは難しい。
油断していると、くだらないガラクタになけなしの金を使ってしまったりする。

気づいた時には、ギネス認定の紙幣を買ってしまっていた。
私はコインのコレクターでもなんでもないのに。

そういえば、ミャンマーでも「アウンサンスーチーさんのお父さんの図柄のお札」を買ったっけ。
あれは今、どこにあるのだろう。

ああ、こうしてまた、部屋の肥やしを増やしてしまったのだな。


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特に見るべきものもないのに、公園内はやたらと広い。
あちこちに標識はあるのだが、そもそも私には行きたい場所なんてなかったものだから、無為に歩き回ってしまった。


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それでも奥へ奥へと歩いて行くと、本丸らしき場所に近づきつつあるのがわかる。


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なぜか恐竜の模型が展示されていた。
ガイドブックには載ってなかったから、きっと常設展ではないのだろう。
この公園と恐竜はなにか関係があるのだろうか。
いずれにせよ、入場料を払ってまで見る価値はないと判断してパスすることにする。


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スタンボル門と時計塔。
いちおうここのメインアトラクションらしいので、写真を撮る。
しかしなんなんだろう、この高揚感のなさは。


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丘のてっぺんに登って眼下に広がる景色を見渡すと、ちょっと気分がよくなった。
ここベオグラードはサヴァ川とドナウ川が交わる要衝に位置する。
ということは、向こうに見えているのはあのドナウ川なのか。

ドナウ川!
名前はよく聞いたことがあるが、いったいなんで有名なのか思い出せない。
高校では世界史を選択したのに、ドナウ川にまつわる史実なんて覚えていない。

中学の時、音楽の授業でドナウ川に関係のある曲を習ったような気もする。
せっかく本物のドナウ川を目の前にしているのだから、口笛でも吹いてみようと思ったのだが、どんな曲だったか思い出せない。

よく、「学校の勉強なんか実社会では役に立たない」と言われるが、そんなことはないと思う。
やはり最低限の教養は必要だ。
でないと、せっかく遠くまで旅行に来ても、目の前の景色を素通りしてしまうことになる。
同じ景色を見ても、それにまつわる知識があるのとないのとでは、見え方がまったく異なるものとなるだろう。

もったいないことをした。
今度ヨーロッパを訪れる時には、しっかり勉強してこよう。


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「このエリアの散策は自己責任で」
(命の保証はしませんよ)

たしかにこの付近には、うっかりすると足を踏み外して崖下に転落してしまいそうな場所が何か所もある。
昼ならまだしも、暗くなってからだとほんとに危なそうだ。

それでも、むやみやたらと柵を設けたりしないところに好感がもてる。
この看板だっていらないくらいだ。


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(レオポルド門(だと思う))

せっかくだからいろいろと写真を撮ったが、あまりおもしろくない。
相変わらず雨は降ってるし、ずっと歩きっぱなしだったからお腹もへった。

いつもなら安いパンでも買ってささっと済ませるのだが、今日は雨模様なので、できれば屋根のある場所で食べたい。
観光地の中にあるレストランなんて高いのはわかりきっていたのだが、体が冷えてきた。
しかたない。ここで食事をとることにしよう。


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レストランの受付には、ものすごい美人がいた。
東欧にはほんとに美女が多い。
その中でも今目の前にいる女性はトップクラスの美貌の持ち主だ。
思わずみとれてしまう。

そして彼女も私の顔をじっと見ている。
なんだ?
日本人がそんなに珍しいのか?
それともひょっとして、彼女の好みは東洋人なのか?
だとしたら、はるばるセルビアまでやってきたかいがあるってもんだ。

彼女は私の体のすみずみに視線をはわせる。
しかしそれは、異性のパートナーを求めるそれではなかった。

「この店はけっこう高いわよ。あなたに払えるかしら」
彼女の目がそう言っているように見えた。

たしかにここは高そうだ。
不安になった私は、メニューを見せてもらうことにした。

セルビアの物価はかなり安い。
料理の値段はけっして安くはなかったが、払えない額ではない。

「じゃあこれをもらおうかな」
メニューを指さしながら私がそう言うと、彼女はほっとしたような表情を見せた。

「よかった。じゃあこっちに入れるわよ」
そう言って席まで案内してくれた。

このレストランはふたつの部分に分かれていて、飲み物しか注文しない客は別の場所へ案内されるらしい。
もちろん私は料理を注文したので、豪華な方へ案内された。


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普段、高級レストランなどとは縁のない生活をしているので、こういう場所はなんだか落ち着かない。
店内には他には客はほとんどなく、その静けさが余計に私を緊張させる。
脇に置いた汚いリュックが、自分が今、場違いな場所にいることを実感させる。


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緊張のあまり、動作がぎこちない私。
無理に笑顔を作ろうとして失敗した。


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私が注文したのはセルビアの伝統料理、「ムツカリツァ」。
豚肉をトマトソースで煮込んだもののようだが、これがまたうまい!

私はグルメではなく、料理にはこだわらないたちだ。
だが、このムツカリツァだけは別格だ。
こんなにおいしい料理は食べたことがない。
今回の東ヨーロッパ旅行で食べた料理のうちで、間違いなく一番の味だ。
いや、私の人生の中でも、もっともおいしかった料理のひとつと言えるだろう。

あまりパッとしないベオグラードだったが、このムツカリツァを食べるためだけに訪れる価値はあると思う。

この料理をたいへん気に入った私はその後、レストランのメニューでムツカリツァを見つけるたびに注文することになる。
だが、カレメグダン公園内にあるこのレストランの味を超えるものにはまだ巡り会えていない。


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私は貧乏性なので、来たからには隅から隅まで見てまわらないと気が済まないたちだ。
雨の降る中、モチベーションもかなり低い状態で、公園内をくまなく歩く。
ひととおり見てまわったけど、やっぱりつまんないよ、ここ。


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カレメグダン公園内にはいくつか教会がある。
教会は世界中にあるけれど、国や宗派によって建物の形はかなり違う。
私は建築物には詳しくないけれども、それぞれ異なった様式だということくらいならわかる。
そしてここで見た教会は、間違いなく私の好みのタイプだ。
ガイドブックの写真でもこれと似たようなのを見かけたから、これから訪れるバルカン諸国にはこの様式の教会がたくさんあるのだろう。
そう考えただけでぞくぞくしてくる。
私の旅はまだまだ続くのだ。
こっとこの先も、素晴らしい景色が私を魅了し続けることだろう。

だがその前に、今日この一日をなんとか乗り切らなければならない。
雨がさらに強くなってきたので、この教会の中で雨宿りすることにした。

夕方にならないとアレクサンドラの家には入れてもらえないので、それまではなんとかして外で時間をつぶさなければならない。
きっと雨は一日中降り続けるのだろう。
なんという憂鬱な一日だ。

レストランでさっき食べたムツカリツァの余韻も冷めてきた。
どれほどおいしい料理を食べて身も心も温まろうと、物理的な体温低下にはかなわない。
降り続ける雨は、容赦なく私の体温を奪っていく。
寒い。
まだ9月初旬だというのに、寒い。

ガイドブックをめくっていると、思いがけないものを見つけた。
「トルコ風浴場施設」と書いてある。
この教会からは目と鼻の先だ。
冷え切った体を温めるには、これ以上のものはないだろう。
しかも名前がまたいい。
「トルコ風」
なんとエキゾチックな響きだろう。

雨が降る中、傘もささずに飛び出した。
少しくらい濡れたって、暑い湯船に浸かればなんということはない。
いつになく私の気分は高揚していた。
そりゃそうだろう。
雨に濡れて震えてる体を癒すことができる。
しかも「トルコ風浴場施設」で!
これぞ旅の醍醐味だ。

それらしい建物を見つけて飛び込んだ。
そしてすぐに希望が絶望に変わった。
なぜならそこは、トルコ風浴場施設「跡」だったから。
暑いお湯で満たされた湯船も、浴室に充満する湯気もなかった。
そこにあるのは、長い年月によってボロボロに風化した遺跡だった。

スーパー銭湯のようなものを期待していたわけではない。
おしゃれなスパなんてなくたっていい。
ただ、体を温める場所が欲しかっただけなのに。





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ガイドブックによると、このカレメグダン公園には軍事博物館があるようなので、行ってみようと思っていた。
雨をしのぐにはちょうどいいと思えたからだ。

だが、その必要はなかった。
城壁の周りには戦車や大砲がズラリと並んで展示されている。


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これが軍事博物館。
でももういいや。
戦車も大砲もいやというほど見たし。

ようやく雨もあがったことだし、本格的にベオグラード市内散策に繰り出すとするか。
あてもなくただブラブラと歩くのもいいが、やはり目的地があったほうが張り合いがある。
ということで、「リュビツァ妃の屋敷」というのを見に行くことにする。
理由は簡単。
ガイドブックでカレメグダン公園の次に載っていたからだ。


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これがそのリュビツァ妃の屋敷。
きっと歴史的には重要な場所なんだろうけど、私にはそのありがたみがわからない。


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次に訪れたのは「セルビア正教大聖堂」。
その仰々しい名前のわりには、それほどでもなかった。
もう教会はいいや。


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セルビア国立銀行。


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銀行の前にはこんなものが。
かつてはここに衛兵が立っていたのだろうか。


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なにやら怪しげな店。
その名も「Hyde」
「ジキル博士とハイド」のハイドだろうか。
堅苦しそうなセルビア国立銀行の前にあるのが印象的だった。


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ベオグラードの中心部、テラジエに戻ってきた。
雨がやんだせいか、人通りが多くなっている。


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「国立劇場」「国立博物館」「共和国広場」
このあたりにはものものしい名前の施設が多い。
さすがは首都の中心部。

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ガイドブックの地図をひろげて眺めていると、女の子に声をかけられた。
「なにを探しているの?」

私はスカダルリアを探していたのだが、迷っていたわけではない。
現在位置は把握していたし、目的地はもう目の前だった。
彼女の力を借りずとも、ほとんどスカダルリアにたどり着いたも同然だったのだ。

それでも彼女の親切はありがたかった。
異国に独りでいると、ちょっとした優しさが身にしみる。
こんなささいなことでも、この街の印象はガラリと変わってしまう。

ベオグラード、なかなかいい街じゃないか。


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スカダルリア。
ガイドブックによると、ここは「ベオグラードのモンパルナス」と呼ばれているらしい。
たしかにおしゃれな店がならんでいる。
せっかくベオグラードに来たからには、ここで食事をするべきなのだろう。
だが、私はついさっき昼食を食べたばかりだ。
ここからホストのアレクサンドラの家まではけっこうな距離があるから、夕食を食べにここまでわざわざ来るのもしんどい。

しかたがない。
スカダルリアは次回の宿題ということにしよう。
これでベオグラードを再び訪れる口実ができた。


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ヨーロッパ人の子どもがサッカーをすると、なんだか絵になるのはなぜだろう。


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スカダルリアの外れは、どうやらムスリム地区になっているようだ。
これはセビリ(水場)というそうだ。
初めて見た。
こういうのを目の当たりにすると、「ああ、遠くまで来たなあ」という気分になる。

私は知らなかったのだが、バルカンはイスラムとは関係が深い。
実際、この後私はさらにディープなイスラム世界を体験することになる。
こんなセビリはまだ序の口だったのだ。


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国立劇場


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最後にもう一度、テラジエを目に焼き付けておく。
あんなにつまらなく思えたベオグラードも、これでお別れかと思うと名残惜しくなる。

長生きしてりゃあ、もう一回くらい来る機会はあるさ。


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王宮


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最後にもう一度、クロズ・ミロシュ通りに戻ってきた。
雨もあがったことだし、じっくりと爆撃跡を見たかったからだ。


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空爆を受けてから20年間放置されてきた建物。
20年後、再び訪れた時、ここはいったいどんなふうに変わっているのだろう。


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廃墟と化したビルの写真を撮っていると、詰所から兵士が血相を変えて飛び出してきた。
なにかわめいているが、英語ではないのでなにを言っているのかわからない。
侍の衣装がまずかったのだろうか。
それとも日本刀?

拙い英語で兵士が説明するには、どうやら建物の前に置いたリュックが問題らしい。
きっと、爆弾テロを警戒しているのだろう。
この通り沿いには、政府関係の建物が多数存在するから、神経質になるのも当然か。

兵士は私の侍の衣装にはまったく興味を示さなかった。
ちょっとさびしいぞ。


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ベオグラード駅。
歩いていると、男たちにからかわれた。
「ヘイ! サムライ!」

ベオグラード市内を侍の衣装を着て歩いても、まったくのスルーだった。
唯一声をかけてきたのが、客待ちでヒマを持て余しているタクシーの運転手たち。

いつもなら、どんな相手に声をかけられても、それなりに相手をしていたのだが、今日は気分が乗らない。
無視して通り過ぎた。


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鉄道駅のとなりにあるバスターミナルで、明日のクラリェヴォ行きのチケットを買った。
クラリェヴォ。
どんな街だろう。
ベオグラードよりはおもしろいことを祈る。


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ホストのアレクサンドラの家へと向かう。
あたりが暗くなってきたが、不安はない。
今日は一日、ベオグラードの街を歩き回ったから、地理は頭に入っている。
もう地図を見なくても迷う心配はない。


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夜の聖サヴァ教会。
ここまで来れば、アレクサンドラの家はもうすぐだ。


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アレクサンドラの家に帰り着くと、彼女たちはすでに夕食を食べ終えたという。
一緒に食べようと思っていたのに残念だ。
しかたなく、独りで近所のレストランへと向かう。
ここは昨日の夜は閉まっていた。
アレクサンドラによると、なかなか評判のいい店らしい。
セルビアの伝統的な料理もあるという。
これは期待できそうだ。


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通りに面した屋外の席はあいにく満席。
仕方なく、店内へ入る。


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プリェスカヴィツァ。
セルビアの伝統的なハンバーグらしいが、はっきり言っておいしくない。
マクドナルドの方が数倍ましだ。

それなのに、私はこの後、行く先々でこの料理を食べるはめになる。
「旅をするからには、現地の料理を食べる」
というのは私のモットーだが、これには閉口した。
味気ないくせに、ボリュームだけはやたらとあるのだ。
私は残すのは嫌いだから、時間をかけて最後まで食べた。
まるで罰ゲームのようだ。


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「訪れた土地では、必ずその土地の地ビールを飲む」
というルールに従って注文したのがこれ。

私は日本ではお酒をほとんど飲まないから、ビールの味の違いなんかわからない。

でもきっと、これがベオグラードのビールの味なのだろう。

ベオグラード、そんなに悪くはなかったな。
また来てやるか。

テーマ : ヨーロッパ旅行記
ジャンル : 旅行

ベオグラードでカウチサーフィン(セルビア)

ベオグラード(セルビア)でカウチサーフィン(CouchSurfing)




ここベオグラードでのホスト、アレクサンドラの家は、鉄道駅からかなり離れた所にありました。
アレクサンドラはタクシーの利用を勧めてくれたのですが、あえて歩きます。
重い荷物を持ってガシガシと。

歩くの好きなんですよ。
セルビアなんてマイナーな国、今度はいつ来れるかわかりませんからね。
自分の足で歩いて、自分の目で街を見てみたいのです。

まあ、正直言うと、タクシー代がもったいないだけなんですけどね。
直通バスはないから、乗り換えもめんどくさそうだし。


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与えられた住所だけを頼りに、ホストの家を捜し歩く。
カウチサーフィンの醍醐味です。


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アレクサンドラ一家はすでに夕食を済ませていたので、独りで外に何か食べに行くことにします。

「セルビア料理が食べたいんだけど、この辺になにかある?」
と聞いたところ、近所のレストランはあいにく今日は閉まっているということでした。

「この時間だと閉まってる店も多いと思うから、私が開いてそうな店を一緒に探してあげるわ」
と、アレクサンドラもついてきてくれました。

彼女の言葉通り、夜も遅いこの時間では、ほとんどの店は閉まっています。
私に選択肢はありません。
プリェスカヴィッツァの店で手をうつことにしました。

これはこれでセルビアを代表する料理なのですが、私が訪れた店はトルコ人が経営しており、
現代風にアレンジされたファーストフードです。
アレクサンドラに言わせれば、

「こんなのプリェスカヴィッツァじゃないわ」
ということらしいのですが、仕方がありません。

明日はもっといいものを食べることにしましょう。


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ベオグラードでのカウチ。
アレクサンドラの家はそれほど広くありません。
私にあてがわれたベッドも、いつもは誰か他の人が使っているのでしょう。
私のために誰かが窮屈な思いをして眠ることになるのかと思うと、やはり申し訳ない気持ちになります。


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アレクサンドラと彼女の息子。
彼は空手を習っているそうです。

「ほら、マサトさんに聞いてもらいなさい」

母親にうながされて、男の子は

「イチ、ニ、サン、シ・・・」

と日本語で数を数え始めました。


空手を習わされたり、日本語を教え込まれたり。
日本大好きな母親を持つと、息子も苦労するよな。



アレクサンドラの旦那さんは、物書きをやっているようです。
昼夜逆転の生活を送っていて、地下室に彼の書斎はあります。

あまり外に出ずに、部屋にこもってもくもくとペンを走らせているだけあって、彼はあまり社交的な性格には見えません。
皮肉屋の表情が顔にこびりついているようにも見えます。

そんな彼でしたが、私のためにコーヒーをいれてくれ、一緒に飲みながら話をしました。
私がアレクサンドラ一家に到着したのは夜遅かったため、ちょうど彼の活動が活発になる時間帯にあたっていたのかもしれません。


文筆家らしく、寡黙な彼ですが、話がユーゴ紛争のことに及ぶと、かなり饒舌になります。
明らかにアメリカに対して敵対心を抱いていました。

「あいつらは偽善者だ。
 「軍事施設だけを狙った」なんて言っているが、とんでもない。
 街の真ん中に爆弾を落としておいて、よくもまあそんなことが言えたもんだ。
 一般市民に被害が及ばないとでも思っているのか?」


日本では一般的に、「セルビア側が悪」のように報道されがちですが、
セルビアの一般人にだって大勢の犠牲者がでたのです。

「マサト、あんたも自分の目で見てくるがいい。
 あいつらアメリカが、俺たちにどんなにひどいことをしたかを」

そう言って彼は今なお残る爆撃跡の場所を教えてくれました。
一つはガイドブックなどによく載っている、官庁街。
もう一つはテレビ局です。

ユーゴ紛争時の爆撃跡を見るのは、ベオグラードでのハイライトの一つだったので、
さっそく明日行ってみることにします。

実は駅からアレクサンドラの家に来る途中、私はその場所を通っていたのですが、
夜で暗かったため、まったく気づきませんでした。



アレクサンドラは日本のことが大好きなようです。
大学では日本語を専攻し、現在でも学校で日本語を教えています。

彼女のカウチサーフィンのプロフィールには、
「日本人は大歓迎よ。 ぜひうちに泊まりに来て」
と大きく書いてあります。

彼女は最近カウチサーフィンを始めたので、私が彼女の家に泊まった、記念すべき第一号のカウチサーファーでした。


「おいマサト、アレクサンドラとなにか日本語でしゃべってみてくれよ」

旦那さんが皮肉な表情を浮かべながらそう言います。
アレクサンドラの日本語がどの程度のものか、試してみたいようです。

ベオグラードにはそれほどたくさんの日本人がいるわけではないので、アレクサンドラも日本人と本格的に会話した経験はほとんどないのだとか。

おっかなびっくり日本語で会話してみましたが、けっこうスムーズに話は進みましたよ。


常にハイテンションのアレクサンドラですが、ユーゴ紛争の話になると興奮度はマックスになります。
それもそのはず、彼女は戦争で危うく母親を失うところだったのです。

「紛争当時、私の母親は将軍の秘書をやっていたの。
爆撃を受けた、まさにあの建物が彼女の職場だったのよ。
アメリカ軍の爆撃目標は軍の司令部だったから、私の母の職場はもろに攻撃を受けて、木っ端みじんに吹き飛んだわ。
爆撃のニュースを聞いた時、私はまだ学生だったから、一目散に学校から帰ったきたの。
母がどうなったのか、気が気でなかったわ。
母親が無事で生きていることを聞いて、わあわあ泣いたことを今でも覚えているわ。
母と抱き合って泣いた後、落ち着きを取り戻した私はふと不思議に思ったの。
母の職場だった司令部はミサイルの直撃を受けたのに、どうして彼女は無事なのかしら?って。

攻撃を受ける直前、匿名の電話がかかってきたんですって。
「もうすぐそこはアメリカ軍の攻撃を受けるから逃げろ!」って。
その電話を受けて、ビルにいた人たちはみんな避難したらしいの。
だから、建物はあれほど大きな被害を受けたにもかかわらず、犠牲者はほとんどでなかったのよ。

でも、不思議な話よね。
いったい誰が電話してきたのかしら。
セルビア軍にはアメリカ軍の攻撃を予測できるだけの情報収集能力なんてなかったはずだし、
匿名の電話ってのも変な話よね。
だからあれはアメリカの情報筋が電話してきたっていうのが、もっぱらの噂よ」

これから攻撃しようとする相手に対して、
「今からそっちにミサイルが行くから、逃げろ!」
と警告する。
アメリカならそれくらいのことはやりそうだ。


ユーゴ紛争当時、私はセルビアのことなんてほとんど知らなかった。
まさか自分がそこへ行くことになるなんて、夢にも思わなかった。

それなのに、私は今、ベオグラードにいる。
当時、戦火の下にいた人たちと言葉を交わしている。
それどころか、彼女たちの家に泊まっている。

20数年前、ユーゴ紛争のニュースをテレビで見ていた自分に教えてやりたい。

「よく見とけよ。それは他人事じゃないんだぞ。
 お前はそこに行くことになるんだぞ。
 そこに泊まることになるんだぞ。
 今そこで爆撃を受けている人たちと、お前は言葉を交わすことになるんだぞ」


アレクサンドラは今、日本に旅行に来る計画をたてている。
それも1週間やそこらの短い期間ではなく、数か月の単位で。

旅行の資金が潤沢ではない彼女は、もちろんカウチサーフィンを使うつもりだ。
日本語大好きの彼女は、英語もフランス語も堪能。

日本のみなさん、アレクサンドラからカウチリクエストを受け取ったら、ぜひ彼女をホストしてあげてください。
ユーゴ紛争を経験した当事者から、貴重な話が聞けますよ。



テーマ : カウチサーフィン(Couch Surfing)
ジャンル : 旅行

カウチサーフィン(CouchSurfing)とは?

CouchSurfingKyoto

Author:CouchSurfingKyoto
.カウチサーフィン(CouchSurfing)とは。

日本に観光に来た外国人の宿として無償で自宅を提供し、国際交流を深めるというカウチサーフィン。

また、自分が海外に旅行に行く時には、現地の一般家庭に泊めてもらい、その土地に住む人々の生の暮らしを体験することだってできてしまいます。

ここは、そんなカウチサーフィンの日常をありのままにつづったブログです。

「カウチサーフィンは危険じゃないの?」
そんな危惧も理解できます。
たしかに事件やトラブルも起こっています。

なにかと日本人にはなじみにくいカウチサーフィン。

・登録の仕方がわからない
・詳しい使い方を知りたい
・評判が気になる

そんな人は、ぜひこのブログをチェックしてみてください。
きっと役に立つと思います。

最後に。

「カウチサーフィンを利用すれば、ホテル代が浮く」

私はこの考え方を否定しているわけではありません。
私もそのつもりでカウチサーフィンを始めましたから。

しかし、カウチサーフィンは単なる無料のホテルではありません。
現在、約8割のメンバーはカウチの提供をしていません。サーフのみです。

だって、泊める側にはメリットなんてなさそうですものね。

「自分の部屋で他人と一緒に寝るなんて考えられない」
「お世話したりするのってめんどくさそう」

時々私はこんな質問を受けることがあります。

「なぜホストは見知らぬ人を家に招き入れるのか?」

それはね、もちろん楽しいからですよ。

自己紹介
プロフィール


こんにちは。
京都でカウチサーフィン(CouchSurfing)のホストをしている、マサトという者です。
ときどきふらりと旅にも出ます。
もちろん、カウチサーフィンで!


(海外)
2011年、ユーレイル・グローバルパスが利用可能なヨーロッパ22カ国を全て旅しました。
それに加えて、イギリスと台湾も訪問。
もちろん、これら24カ国全ての国でカウチサーフィン(CouchSurfing)を利用。

2012年、東南アジア8カ国とオーストラリアを周遊。
ミャンマーを除く、8カ国でカウチサーフィンを利用しました。

2013年、香港、中国、マカオをカウチサーフィンを利用して旅行。 風水や太極拳、カンフーを堪能してきました。

2014年、侍の衣装を着て東ヨーロッパ20か国を旅行してきました。


(日本国内)
これまでに京都で329人(53カ国)のカウチサーファーをホストしてきました(2013年6月25日現在)。

もちろん、これからもどんどんカウチサーフィンを通じていろいろな国の人と会うつもりです。



カウチサーファーとしてのカウチサーフィン(CouchSurfing)の経験:


オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、チェコ共和国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、ルーマニア、スロヴェニア、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、台湾

シンガポール、インドネシア、オーストラリア、マレーシア、タイ、ミャンマー、ラオス、カンボジア、ベトナム

香港、中国、マカオ

スロヴァキア、ポーランド、リトアニア、ラトヴィア、エストニア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドヴァ、沿ドニエストル共和国、ルーマニア、セルビア、マケドニア、アルバニア、コソヴォ、モンテネグロ、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、リヒテンシュタイン


ホストとしてのカウチサーフィン(CouchSurfing)の経験:


アイルランド、アメリカ、アルゼンチン、イギリス、イスラエル、イタリア、イラン、インド、インドネシア、ウクライナ、エストニア、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カナダ、韓国、クロアチア、コロンビア、シンガポール、スイス、スウェーデン、スコットランド、スペイン、スロヴァキア、スロヴェニア、タイ、台湾、チェコ共和国、中国、チュニジア、チリ、デンマーク、ドイツ、トルコ、日本、ニューカレドニア、ニュージーランド、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、ブラジル、フランス、ベトナム、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、香港、マダガスカル、マレーシア、メキシコ、モルドバ、リトアニア、ルーマニア、ロシア



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